仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

「忍者もの」のフィクション作品と人文科学~「「トカゲ丸焼き」で毒薬配合…甲賀の「秘伝」忍術書見つかる」(ITmediaニュース/産経新聞)~

甲賀の「忍術書」と人文科学について>

  • 1.「「秘伝」忍術書見つかる…甲賀の「秘伝」忍術書見つかる」(ITmediaニュース/産経新聞)の概要と甲賀忍者のイメ-ジ
  • 2.「渡辺家文書」から分かる甲賀忍者とフィクション作品の忍者もの
  • 3.今回の「甲賀の「秘伝」忍術書」と「忍者もの」のフィクション作品に関する私のコメント~結びにかえて~

1.「「秘伝」忍術書見つかる…甲賀の「秘伝」忍術書見つかる」(ITmediaニュース/産経新聞)の概要と甲賀忍者のイメ-ジ

hatena.ne.jpの「学び」カテゴリーに5月8日お昼過ぎ、忍者の「秘伝」の書の内訳が分かったというニュースがあり、気になり、リンクを貼り、紹介することにしました:

(※リンク切れ確認済み)
www.itmedia.co.jp

 

提供元は、産経新聞の次の記事のようです:

www.sankei.com

「トカゲ丸焼き」で毒薬配合、夜襲方法も詳述…甲賀の「秘伝」忍術書見つかる 諜報活動の秘密守る誓約書も(1/3ページ) - 産経WEST

 

内容のあらましは、

 滋賀県甲賀市で平成12年に見つかった江戸時代の古文書「渡辺家文書」に、毒薬配合や夜襲方法などを記した忍術書17点や、諜報活動をする「御忍役人」として仕えた尾張徳川家に「有事にはすぐに駆け付ける」「秘密契約のため、父子兄弟や友人にも話さない」と記した誓約書が見つかったことが30日分かった。

 

 17点のうち古い4点は江戸時代初期の1670~80年代に書かれていた。甲賀と伊賀の忍術を辞典のようにまとめた忍術書「万川集海」(1676年)と内容が似ている部分はあるが、甲賀で代々、忍術が継承されていたことを示す貴重な史料という。

 

 渡辺家文書は約150点で、甲賀市の元会社員渡辺俊経さん(79)宅で発見され、昨年から市が解読していた。

 

 古い4点は「忍次之火巻」「忍法行巻」など。毒薬としてハンミョウやトカゲを丸焼きにして粉にし、井戸に入れるとあった。ハンミョウは当時、毒があると信じられていた。「ネムリ薬」では「クソムシの抜け殻やタバコなどの粉を火であぶると、煙で敵は眠る」と書かれていた。

(「トカゲ丸焼き」で毒薬配合、夜襲方法も詳述…甲賀の「秘伝」忍術書見つかる 諜報活動の秘密守る誓約書も(1/3ページ) - 産経WEST、2017年05月08日 07時55分 更新)

 

国史以上に門外漢ですが、高校時代、文系クラスで習った日本史Bの教科書で確認すると、旧国制の地図に甲賀近江国南部の地名)は載っていました。ここは、三重県の伊賀と並んで、「忍者のふるさと」として知られた地域です。時代劇ファンの方の中には、山田風太郎甲賀忍法帖 』(1巻、講談社文庫)の小説シリーズ、私くらいの世代だと、前作の小説原作とする作品『バジリスク~甲賀忍法帖~』 (1巻、ヤングマガジンコミックス)シリーズ*1のアニメ版で、甲賀卍谷衆が登場し、知っている方もいらっしゃるかもしれません。産経新聞のニュースを読むと、どうやら、その甲賀忍者の渡辺家の末裔で、元会社員・渡辺俊経さん(79)宅で発見された文書を、「昨年から市が解読して」おり、どんな内容が書かれていたのか、今回分かり、合わせて忍者がどこの大名家とどのような雇用契約を結んでいたかも、合わせて産経新聞は伝えています。

 

本記事では、この「渡辺家文書」の甲賀忍者に関する報道を通じて、「忍者もの」のフィクション作品の背景、さらには古い時代の出来事や古典作品を一般の人たちに伝える過程における人文科学のはたらきについて、少し、書きました。

 

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2017年5月の第1週目の振り返りとメインのテーマ記事更新お休み

連休も後半に入り、Uターンラッシュが始まっているようですね。私のほうは、久しぶりに絵筆をとって、絵を描きました。一応、現状を反映した自画像になっております。

 

 

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今月に入りまして、いろんな方々にお話をうかがっておりました。今週末は、長期的なテーマに向けて色々と下準備をしておりまして、7日はメインのテーマ記事更新、お休み致します。

 

代わりに、今月1日からゴールデンウィーク中の更新記事をまとめておきます。先月末に話題となった学芸員シリーズ、死後の人文学者の蔵書をめぐる問題の目次、Next49さんの国立大学を中心とした内定・採用通知に関する就業規則に関する調査結果、中国に関する記事が2つ、映画『夜は短し歩けよ乙女』の批評を書きました。

 

どうぞ、ご覧ください。

 

naka3-3dsuki.hatenablog.com 

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【2017.5.6_2130追記】映画『夜は短し歩けよ乙女』見てきました~森見登美彦と「京都学生もの」ほか~

<今回の目次>

  • 1.はじめに
    • 2.映画版『夜は短し歩けよ乙女』全体の内容と感想コメント
    •  2-1.春パート:夜の結婚パーティーと木屋町
    •  2-2.夏パート:下鴨納涼古本まつり
    •  2-3.秋パート:学園祭
    •   2-4.冬パート:流行風邪をひいた人々の病床
    •  
  • 3.本作全体へのコメントと他の作品との比較
  • 4. 最後に(2017.5.6_2130追記)
  • 5.関連する記事

1.はじめに

皆さま、連休、いかがお過ごしでしょうか?私は、ずっと気になっていた『夜は短し歩けよ乙女』の映画を見に行ってきました。この作品は、同名の京都を舞台とする大学生たちが登場する小説を手がける作家・森見登美彦氏の原作にした作品です。

 

原作者自身は京都大学大学院の農学研究科で竹の研究を行って修了。国立国会図書館の職員をしながら、数々の幻想的な小説やエッセイを執筆。一時、複数の作品を並行して執筆してたことや多忙が重なったためか休筆した後、作家活動を再開したそうです。現在は、国会図書館を退職して専業作家になっているようです。

森見氏は、同大学法学部出身で、京都の様々な大学の学生が登場する『鴨川ホルモー』シリーズで知られる小説家・万城目学氏と親交があるようです。私は森見氏と万城目氏を合わせて、勝手に「京大”おちゃら系”作家」と呼んでいます(お二人は、決して、おちゃらけた作品ばかり、書かれているわけではありません)。

 

さて、この小説版『夜は短し歩けよ乙女』(以下『夜乙女』)は、2006年に単行本として出版されました。第20回山田周五郎賞を受賞し、2007年の本屋大賞の第2位にランクイン。それから十年ほど経ちますが、根強い人気をほこり、 今年の4月に映画版が公開されました。次の本が原作小説です: 

 

 

主要人物は、京都の大学に通う男子大学生で星野源が演じる「ある先輩」(以下、先輩)と、先輩が思いを寄せる相手で花澤香菜演じる「黒髪の乙女」(以下、乙女ちゃん)。映画版では、乙女ちゃんの大学OB・赤川先輩の結婚パーティーに出席し、彼女に「ナカメ作戦」(なるべく彼女の目にとまる作戦)にてパーティーの別席で彼女を探す先輩、それぞれの語りからスタートします。原作では、結婚パーティーのあった春の夜、夏の下賀茂神社の納涼古本市、秋の学園祭、冬の流行風をひいた人々の病床を、天真爛漫で何事にも物おじせず、好奇心のままに歩き回る乙女ちゃんの1年におよぶ冒険譚を扱っています。映画版では、約90分という時間尺におさめるべく、乙女ちゃんの冒険を「一夜のファンタジー演劇」として演出し、彼女を追いかけて動き回るヒロイン的な先輩の様子とともに、原作のテイストを失わない仕上がりになっています。

 

実は、ヒロイン的な先輩(CV:星野源)には「就活を先延ばしにして大学院に進学」するという設定がついています。しかも、舞台は政令指定都市で最も大学生・短大生などの学生が多い京都市!そういうわけで、本記事では映画版『夜乙女』について、作品の背景、本作とパラレル的な関係にあるとされ、森見氏のもうひとつの「京都学生もの」小説が原作のアニメ版『四畳半神話大系』などと比較しつつ、レビューをすることに致しました。

 

なお、原作小説は前にパラパラと読んだ単行本、それから書店で手にした文庫版に加え、映画を見た後、買った次の次の映画版『夜乙女』のガイド本を参考文献として、参照しました:

 

ネタバレがあるため、まだ映画版や原作をご覧になっていない方は、以下、ご注意ください。それでは、いきましょう!

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