仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

◆告知◆ #おもしろ同人誌バザール 8 に忍者学本の委託について~大阪会場 バイロン本社【9番】~

第五回文学フリマ福岡、参加された皆さま、お疲れさまでした!委託先のバイロン本社様のブースで、弊サークルの委託本をお読みいただいた方々にはお礼申し上げます。

 

さて今回は、次のおもしろ同人誌バザール8の大阪会場での委託情報をお知らせ致します。

 

 

おもしろ同人誌バザール 8 委託について~バイロン大阪会場 バイロン本社【9番】~

委託先は第五回文学フリマ福岡に引き続き、宮田秩早様の「バイロン本社」。吸血鬼の登場する文学作品映画の評論本を中心に出されているサークル様で、文フリ福岡の本はBOOTHで通販を受け付けておられるようです('19年10月31日まで)↓

takoyakiitigo.booth.pm

 

イベント、および委託先サークル様の情報をまとめさせて頂きました。

 

<開催場所や日時の情報>

おもしろ同人誌バザールは、情報系同人誌(「読者に伝えたい「情報」をテーマに

まとめられた同人誌」)のジャンル本を中心とした即売会です。情報系同人誌は、既存のジャンルでいうと「「評論・情報」のジャンルに属する同人誌を中心」とする本を指し、具体的には、

食べ物、飲み物、旅行、本、映画、スポーツ、学問、世界の国と地域、文化、家電、雑貨、ライフスタイル、さらには各種の趣味や仕事……。

http://hanmoto1.wixsite.com/omojin/blank-4

といったジャンルの本が一応、挙げられます。弊サークルの学術系同人誌は、「学問、世界の国と地域、文化」等に合うでしょう。 

 

<委託先サークルの出展情報>

うちの仲見研から委託するのは、忍者学の特集号です。日本史関係で熱い!という忍者に関する研究ニュースを特集しています。メディア作品と甲賀忍者の子孫宅で発見された「秘伝」忍術書の話題に、中国や韓国の忍者のような職の人物画が出てくる漫画紹介の記事、三重大学が力を入れている忍者学の研究をめぐるニュースを収録しました。

 

本体は、1部500円で、表紙(一部)はこちら↓

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噂の #藤村シシン講座 のアポロン神と神託の回に行ってみたレポ:主にアポロン神の二面性の謎編~『 #古代ギリシャのリアル 』の話も~【 #FGO 関係】

<秩序の神アポロン、萌えたい人々に「二次創作」される?>

  • 4.前回「講義の内容編」までの話、今回のテーマについて
  • 5.アポロン神の二面性の謎~原因は古代の人の「二次創作」だった?~
  • 6.藤村シシン講座の人気の謎に迫る~研究者および講師・教員寄りの視点から~
    •  その1.絵師としてのレベルが高い!歌も披露する!実演形式の強み
    •  その2.地道な準備に支えられていること、学術的なスタンスのこと
    •  その3.講師が楽しいオーラを放ち、それを受け取れる受講者が集まること
    •  小結
  • 7.このシリーズの終わりに

4.前回「講義の内容編」までの話、今回のテーマについて

2019年6月、第2部第四章の配信が始まり、スマホ向けRPGFate/Graod Order』(以下、FGO)の本編に、ギリシャ神話の医神アスクレピオスがキャラクターとして登場し、彼に心を奪われた私(仲見満月)。古代ギリシャのことを調べるうち、私はその父神アポロンギリシャ神話の様々なエピソードで「色恋が絡むと悲劇を起こす」一方、立法や道徳を司る秩序の神でもあることに気づき、その二面性に疑問を感じるようになりました。

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(イメージ画像:アポロン アポロン-柱 像 - Pixabayの無料写真の写真を仲見がトリミングしたもの)

 

また、以前から、古代ギリシャ研究家であり、その情熱と研究を生かしたイベントで参加者を楽しませ、Twitter上で話題になっていた藤村シシン先生のこと、私は存じておました。タイミングよく、「古代ギリシャの神託にせまる」と題した講義をNHK文化センターでされると聞き、神託担当の神でもあるアポロンについて知るため、申込をして参加してきました。その講義内容については、前回↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

噂の #藤村シシン講座 のアポロン神と神託の回に行ってみたレポ:講義の内容編~『 #古代ギリシャのリアル 』の話も~【 #FGO 関係】 - 仲見満月の研究室

 

の「講義内容編」の「2.講義「古代ギリシャの神託にせまる」の内容を振り返る」をご覧ください。

(忙しい人は、第2項の冒頭のポイントだけ、見てね~)

 

本記事では、前回で予告したように、主にアポロン神の二面性について、お話を致します。息子であるアスクレピオスの誕生エピソードを含めて、アポロンは、色恋エピソードによって周囲に悲劇をもたらす話が、日本でも広く知られています(その例はこちら)。その権能には「疫病、突然死」があるとから、私は「アポロン神、色恋の話題を抜いても、権能からして疫病神やん!」と、マイナスイメージを持っていました。

 

さて、聞きに行った講義の予習を藤村先生の本『古代ギリシャのリアル』していたところ、アポロンの紹介部分が、他の神々より長く、アポロンがお好きなように感じられます。NHK文化センターの講義について調べていたところ、次のインタビュー記事を発見し、私の中で、「藤村先生、アポロンが推し神であること、決定!」となりました。www.e-aidem.com

「私、アポロンに操を立てる」古代ギリシャ・ギリシャ神話に人生を捧げる藤村シシンさんの情熱 - はたらく気分を転換させる|女性の深呼吸マガジン「りっすん」

 

講義の受講中、藤村先生はアポロン像のミニチュアを取り出しては、語る!語る!アポロンへの愛が窺えました。質問コーナーで、その愛がさく裂し、仲見が求めていた答えも得られます。

(ただし、上記のインタビュー記事によると、最初は神々の中で最も苦手な神だったのが、アポロンらしい。)

 

ということで、本記事では、主にアポロン神の二面性について、藤村シシン先生のお話に、ご著書『古代ギリシャのリアル』(以下、本書)で補足をする形で、レポートを致します。また、後半では、受講した私の目線から「どうして、藤村シシン講座は楽しいのか?」ということについても、迫ってみたいと思います。

古代ギリシャのリアル

古代ギリシャのリアル

 

 

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噂の #藤村シシン講座 のアポロン神と神託の回に行ってみたレポ:講義の内容編~『 #古代ギリシャのリアル 』の話も~【 #FGO 関係】

  • 1.FGOの医神にハマった仲見、その父アポロン神と神託のことを学びに「藤村シシン講座」へ行く~
  • 2.講義「古代ギリシャの神託にせまる」の内容を振り返る
    •  2-1.最初に「今回の講義内容の要点」
    •  2-2.講義「古代ギリシャの神託にせまる」の内容とそれへのコメント
      •   世界の中心地デルフォイとその神託所にアポロンがいる理由  
      •   「お伺い」から神託を受けるまでの流れとピュティアのこと
      •   神託所は今のGoogle検索である!
      •   韻律をもつ神託のメッセージ
      •   デルフォイの神託所の終焉
  • 3.講義の内容編の終わりに

1.FGOの医神にハマった仲見、その父アポロン神と神託のことを学びに「藤村シシン講座」へ行く~

2019年6月、第2部第四章の配信が始まり、スマホ向けRPGFate/Graod Order』(以下、FGO)の異聞インドの物語に、ギリシャ神話の医神アスクレピオスがキャラクターとして登場しました。この医神に心を掴まれてしまった私こと仲見満月は、彼について知りたいと思い、少しずつ調べ始めました。アスクレピオスを中心に、古代ギリシャの情報を集めるうち、オリュンポス十二神の一柱ずつの紹介や、古代ギリシャの人々の生活を紹介した書籍『古代ギリシャのリアル』(以下、本書)にたどり着き、読み進めることに↓

古代ギリシャのリアル

古代ギリシャのリアル

 

 

本書の著者で、古代ギリシャ研究家の藤村シシン先生については、以前から、色々とネット上で話題になることもあってか、お名前を存じ上げておりました。例えば、

といった数々の出来事。上記のとおり、藤村先生は「古代ギリシャへの愛」、それから研究で得た専門的な知見をフルに生かしたご活動をされており、ときどき、Twitterのタイムラインに流れて来るツイートによると、藤村先生のイベントや講座に参加した方々は、何だか、楽しそう。いつか、会って色々と古代ギリシャのことをお尋ねしてみたい、そんな気になる研究者の方でした。

 

さて、マイペースに本書を読んでいたある日。私は、アスクレピオスのことを調べていて、第3章の「病気の治療は夢の中で」の箇所と、その父神アポロンの紹介セクションを読んでいました。アポロンといえば、ギリシャ神話では、自他ともに恋が絡むと悲劇が起こるエピソードの多い神。私が知っているエピソードは、主に次の3つです。

  • クピドをからかったことによる呪いで、恋したダフネに嫌われ、彼女を追い続ける。追い詰められたダフネは、月桂樹に姿を変え、最後までアポロンを拒絶した
  • 恋仲にあった人間の王女コロニスは身籠る。(お互いに会えないうちに)アポロンは彼女の不貞の話を聞きつけ、激昂して矢を放ち、重傷を負わせた。彼女はアポロンとの子を妊娠していことを告げ、息絶えた。アポロンは火葬前にコロニスの胎内から子を助け出し、ケンタウロスの賢者ケイローンに預けた(この子がアスクレピオス) *1
  • 姉神アルテミスの恋人である狩人のオリオンを嫌い、一計を案じて、アルテミスにオリオンを殺させる

 

そんなアポロン、本書の権能の欄には、光明、律法や道徳と共に「疫病、突然死」と、不穏なワードが並んでいます(本書p.54)。この時、私の中のアポロンのイメージは、「色恋の話題を抜いても、権能からして疫病神やん!」と、(自分の知識のなさを棚に上げて)黒寄りのものとなりました*2

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(イメージ画像:アポロン アポロン-柱 像 - Pixabayの無料写真の写真を仲見がトリミングしたもの)

 

一方で、アポロンは律法や道徳を司る神でもあります。色恋により悲劇を起こす感情的で不安定なイメージと、律法や道徳といった規律や秩序に関係する要もの。「その二面性は、どこから来るのか?」と、私は不思議に思いました。

 

そんな折、NHK文化センターの京都教室で、藤村シシン先生が、「古代ギリシャの神託にせまる」と題して、講義をされる情報が入って来ます。神託といえば、デルフォイアポロン古代ギリシャ世界で一手に引き受けていたと聞いたことがあり、そういえば本書の彼の権能にも、太い文字で「神託」と記されていました。

 

分からないことは、専門の研究者に聞いてみよう!というわけで、私は楽しいと噂の藤村シシン先生の講座で、アポロンと神託の回に行ってきました:

 ●NHK文化センター京都教室:10/27 古代ギリシャの神託にせまる | 好奇心の、その先へ NHKカルチャー

 

本記事では、この「古代ギリシャの神託にせまる」(以下、「アポロン神と神託の回」とも)のレポートをいたします。ところどころ、藤村先生のご著書『古代ギリシャのリアル』を読みつつ、補足。古代ギリシャに関して、私は学んでいる途上であり、よく分からない箇所がございますが、何卒、ご寛恕ください。

(誤りがありましたら、こっそり、こちらの「匿名メッセージ送信サービス」等で、ご指摘ください)

 

長くなるため、今回は「講義の内容編」と「主にアポロン神の二面性の謎編」の2回にわたって、お送り致します。

*1:この「アポロンとコロニスの恋物語」は、本書によると、今流布しているバージョンで、もとはオウィディウス『変身物語』がベースになっているタイプだそう。オウィディウスは、ギリシャ神話のマイナーな話を題材にストーリーを膨らませたり、「まったく新しい解釈を付け加えたりして神話をより物語的なものにし」ました(いわゆる、古いギリシャ神話の二次創作的な存在が『変身物語』、本書p.63参照)。

古代ギリシャのバージョン(本書p.65~)では、アポロンが姉神アルテミスをコロニスのもとに向かわせて殺させたことになっている、とのことです(後者は、ヘシオドス『エホイアイ』、パウサニス『ギリシャ案内記』第2巻26の話などから藤村先生が要約したも部分を参照のこと。

*2:紀元前4世紀以降、アポロンと太陽神ヘリオスは、混同されるようになり(本書p.59)、太陽に関する権能も引き継がれたのではないでしょうか?その権能の中には、「植物を枯らし、物を腐らせ、疫病を流行らせ」、生物を死に至らしめる(本書p.60)といった、太陽のマイナスイメージも付与されるようになったようです。

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