プリズム挿画とM.I.B風のSF~星新一『地球から来た男』(平成23年の改版)~
星新一といえば、私が思い浮かべるのは新潮文庫版。たしか1998年に夏休みの読書感想文のため、手にとったのが『どんぐり民話館』。なので、角川文庫版で作品集が思った以上に刊行されていて、驚きました。
柔らかい筆致で、プリズムの世界を作品に描きだす片山若子。角川文庫新装版の星新一作品集は、この方が手掛けています。このファンタジックな絵につられて、ホイホイ、私は買ってしまったのであります。角川書店の戦略にはまって(笑)
本書の中で、もっとも印象深かったのが「向上」という作品。名もなき男が酒を飲みに行って、見ず知らずの男と話し、相手の誘いに乗る。ここまでは、他の数作品と同じ展開ですが、ちょっと先、見ず知らずの男が名もなき男を組織へ引き入れるという話の筋が、途中から「メン・イン・ブラック」と似た展開だったという!!(本作で退治されるのは宇宙人ではありませんが)
独特のオチをつける作家ながら、作品の展開にはSF作品の定型も踏んでいる。そんな星新一の面白さに笑いつつ、久しぶりに味わったショートショートでした。
(読了日:2012年11月下旬)