仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

ヘンテコな「果物の王」ドリアンの取り扱い説明書~塚谷裕一『カラー版 ドリアン―果物の王』~

*2016年7月現在、Youtuberさんが食べるのにチャレンジしたり、身近に出張で東南アジアに行くという話が持ち上がったりして、ふとこのファンキーな王様を思い出しました。
 
読み始めたきっかけは、2010年代の初め、マレーシアに旅行中、何かにつけてドリアンの話がつきまとっていたので。
 
 
カラー版 ドリアン 果物の王 (中公新書)[Kindle版]


熟すと、地上20メートル以上の大木から落下し、トゲのついた人頭大の実は、凶器と化す。食べようとすれば、時期を見極めて割らなければ、都市ガス並みの臭いに圧倒されてしまう。収穫でも食卓でも、一苦労。それが「果物の王」たるドリアンの姿である。
 
本書は、ドリアン好きの著者が研究者の視点も織り交ぜつつ、その生態、人間との関係、おいしい食べ方、独特の臭い(著者曰く「芳香」?)の正体など、あらゆる角度からドリアンに迫ったガイドブック。新書というコンパクトさもあって、読みやすい。

臭いの成分、戦前日本における東南アジア産の果物の「記憶」など、読者を飽きさせないテーマと構成をとっている。実用書ながら娯楽として十分、楽しめる内容になっている。

私が笑ってしまったのは、ドリアンがオランウータンと深い共生関係にある逸話である
。著者は、ドリアン研究の先達の著述を沢山引用しているが、以下のものが特に興味深い。
たとえばウォーレスは、捕獲されるのを避けようとしたオランウータンが、ドリアンの「大きな刺だらけの実をもぎとったりして、この飛び道具を雨あられと降り注いで私達を木に一歩も近づけさせ」まいとした行動も記録している。
(本書より、掲載ページ忘却しました…)
 
そして、臭さに関して、著者のいる大学の理学系学部の研究室でドリアンを切っていたら、隣の研究室の人が都市ガスが漏れたと勘違いして、ガス屋さんを呼ぶレベルだったそう。

どこをとっても、ヘンテコで不思議な「果物の王」。気になったら、本書を手にとって見てください。
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