中国の代表「奇書」の『三国志演義』・『西遊記』を解説
中国文学では、おなじみ井波律子氏による中国白話(口語)小説の案内書。
↑の記事の下巻では『水滸伝』・『金瓶梅』・『紅楼夢』を紹介。研究の関係上、先に下巻を読みました。
今回は、その上巻で世界的に中国を代表する「奇書」として有名な、『三国志演義』と『西遊記』の解説書を少しだけ、レビューします。(*読了は、2015年2月ごろです)
井波律子氏は、小説『三国志演義』と歴史書『三国志』の両方の翻訳を別レーベルや会社で出されています。この新書では翻訳中、気がついた四方山話が多数、登場です。
もともと、演義とは小説だけど、フィクショナルな話の展開は史書にも見え、事実だったと知ることができます。読者もワクワク。出典場所も、史書のほうの○○伝のように、場所を書いてくれていて東洋学の学生は学びやすいと思います。
面白かったのは『西遊記』のほうでした。玄奘三蔵と猪八戒のヘタレ度が同じであり、そこの指摘が何とも笑えました。特に玄奘三蔵は、僧侶のくせして空腹になると、「孫悟空や、何か食べるものはないのか?」と頻繁に聞いてきます。猪八戒のほうは、食欲も旺盛な上、色欲も強い女好きで、たびたび女性に化けた罠に引っかかる。この二人のヌケっつぷりに、孫悟空は振り回されっぱなし。ポカやっては孫悟空を呼んで妖魔を退治、旅は続くという筋書き。
井波律子氏によれば、旅の先々で起こる事件は如来が設けた試練だそう。この試練を乗り越え、化け物を元に戻してやることて徳を積み、旅の一行は極楽浄土へたどり着くことだできる。ゴールは分かっているわけですかえら、読者は安心して読み進められるものの、途中、孫悟空が玄奘三蔵と猪八戒に嫌気がさして旅を抜けるシーンもあり、ハラハラする時もあります。
そういう、物語全体の構成について、全体的に眺めて分析しているのも、東洋学の初心者には知識として重要だと思いました。
あと、『三国志演義』については申し訳ありません。再読して、きちんと追記したいと思います。
関連記事