学会大会中の託児室
本日のテーマは、「続・大学の先生たちと子育て」です。下の記事の続編として、学会大会中の託児室のことを紹介します。
1.まず、学会、それから大会やシンポジウムって何?
学会とは、とある分野の研究者たちが集まる団体で、研究成果を大勢の前で発表報告する機会を設け、その報告を論文という形で募り、審査を経て文章で発表する場をジャーナル(ここでは学術雑誌を指す)として設ける、というのを大体、基本的な活動とていいます。
学会は会員から年会費を集め、そのお金をもとに、ジャーナルを発行し、また発表報告をする大会やシンポジウム(大体、年に一度の開催)を行います。その時期は日本(または世界)中から会員が一同に会し、学術的な議論を行ったり、分野の偉い先生方に講演やパネルディスカッションに出て頂いたり、知識を深めるイベント等を実行します。
あと、研究者同士の情報交換や親交を深めることを目的とする飲み会、いわゆる懇親会を実施したり、遺跡や近代建築、博物館の見学会やツアーを催したりします。(まぁ、人によっては、後者のほうが真の目的という方もいます)
発表報告や各種学術イベントほか、下の記事にありますように、関連分野を扱う書店や出版社の出店があり、いわば学会の年一回の大祭的な雰囲気があります。
学会のメインである発表報告や、講演会等の学術的イベントに参加する方には、自分の周りに預かってくれる施設や頼める人がおらず、小さなお子さんを大会に連れてこられる人もいらっしゃいます。そんな時、助かるのが一時預かりをしてくれる託児室です。
2.学会ごとの託児室利用システム
さて、具体的に託児室を設けている学会を3つ紹介しましょう。
①の日本建築学会、および②の電気学会は、工学系学会におてい2~3万人という一市町の人口規模の会員数を抱える学会であり、全国大会のたびに1万人は参加するらしい。特に①の大会の場合、開催地の経済効果はすさまじい半面、受け入れ大学は収容人数を考えると、やはり大規模でないといけず、それもそれで会場大学の選定に難儀するとか、聞いたことがあります。
③の日本中国学会は、人文科学系学会の全国規模のものとして、平均的な2000人前後の会員数を持ち、主に中国語学・中国哲学(中哲)・中国文学(中国の文学作品に加えて日本の漢詩を含む)の分野の人々が所属します。託児室の開設は会員の実施アンケートにより、2015年に試験的な設置が行われ、利用が始まりそうだとのこと。
①日本建築学会(aij)
・会員数:3万4000人(2016年、根拠はこちら)
・全国大会の開催期間:毎年8~9月(そのうちの3日間)
・託児室利用対象者:aijの会員が同伴する子ども
・託児室の利用時間帯:午前の部(8:30~12:30)/午後の部(13:30~17:00)
・利用料:2000円(人/半日)、4000円(人/一日)
・子どもの年齢:生後満3ヶ月から未就学児
・申し込み法等:事前申し込みの予約制(web予約)
・託児料の支払い方法:利用初日に現金払い
*参考ページ
②電気学会(iee)
・会員数:2万2000人弱(2013年、根拠はこちら)
・全国大会の開催期間:3月中旬(うち3日間、2016年)
・託児室の開設時間:8:30~17:30
・利用料:500円(人?/1時間)
・子どもの年齢:1歳から小学校3年生
・申し込み法等:事前申し込みの予約制、下の案内ページから業者に直接申し込む
・託児料の支払い方法:後日に学会が徴収
*参考ページ:電気学会:電気学会全国大会 託児室のご案内
③日本中国学会(日中学会)
・会員数:1753人(2015年、根拠は同年の学会発行冊子)
・全国大会の開催期間:毎年10月(第2周土・日、2015年)
・託児室の開設時間:初日が9:00~18:00、2日目が9:00~17:00
・利用料:1500円(人?/午前のみ・午後のみという半日で)、3000円(全日)
・子どもの年齢:3ヶ月から未就学児
・申し込み法等:事前申し込みの予約制、学会の担当者に直接メールで申し込む
・託児料の支払い方法:当日支払い
*参考:同学会2015年度大会要項
3.まとめ
①~③の学会の託児室利用システムを見ると、半日単位で1500~2000円で、どこも事前の予約申し込みが必要になっています。いずれも、託児室の運営をしているような業者に委託している模様。自分も配偶者も、頼れる人が身近にいなくて、これなら事前に申し込んでしまおう!という会員には、合った制度だと思います。
また、当日、子どもの体調が悪く、発熱等があると預かりを断るケースがあるとのこと、どの学会のサイトページ・告知に書いてありました。そして、保険をかけるよう(学会によっては申し込みを合わせて受付)、注意事項にかいています。
4.最後に
もし、学会に連れていき、託児室に預けようと思ったら、体調を崩してしまった我が子をどうしよう?実際、私も小学校低学年くらいまで、熱を出したり、やんちゃで大けがをしてたりで、親が困っていた経験から、もしもの時を考えてしまいます。
具体的な実践を調べると、②の会員で東京大学工学研究科准教授の熊田亜紀子氏の場合、ご両親を亡くされているので、夫の実家、それもダメなら、自分の兄弟やいとこの家とか、思いつく限りの手を全てつくしたそうです。
(参考文献:内田麻理香『理系のお姉さんは苦手ですか? 理系な女性の10人の理系人生カタログ』、技術評論社、2011年)
両親共働きで、いざという時、どうしても子どもを預けられる先が見つからない。そういうご家庭が近年、増えているとお聞きします。だからこそ、様々な学会大会で託児室の設置をしてほしいなぁ、とお子さん連れの先生方を院生時代に見ていた私は思っています。
もし、会員の方から学会大会での託児室設置をしてほしいと提案があったら、上記の①~③のシステムを参考に、アンケートを実施して、試験的にやってみるのもありかと思います。学会ごとの事情に合わせて、ご検討ください。
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