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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

コミュ障の地元女子大生の恋愛と成長~シギサワカヤ『溺れるようにできている。完全版』~

抜き差しならない、そして面倒な状態へと進んでゆく、男女の重い関係を描かせたら、おそらく右に出る者はいない(と私が勝手に思っている)、漫画家のシギサワカヤ氏。

 

シギサワカヤ『溺れるようにできている。完全版』白泉社、2015年

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本作は、様々な出版社を越境して氏が描いてきた、海老沢三姉妹の次女(カバー表紙絵)が主人公。

『九月病』(ジェッツコミックス、白泉社)の長女、『ファムファタル~運命の女~』(電撃コミックス、アスキー・メディアワークス)の三女に比べると、それほどのドロドロ具合はないかな、と。

 

ストーリーは、山梨の地元大学に通う、ちょっとコミュニケーションが苦手な女子大生の佳織がある日、帰省した年上の幼馴染みの「圭ちゃん」と再会するところから始まる。二人は山梨と東京の間で、「中距離恋愛」となる。佳織は就職活動で書類準備や筆記試験の勉強に追われ、彼氏の上から目線のアドバイスにモヤモヤし、コミュニケーション力のアップが目的で(?)バイトに挑戦し、という感じで成長して行く話。

 

Amazonのカスタマーレビューでも指摘がありましたが、シギサワ作品の中では、割とライトな部類に入る作品です。佳織と彼氏の圭ちゃんのすれ違いといっても、まず、長女の碧(みどり)の同僚の男性銀行員(広志)との関係ほど曖昧でギスギスなレベル、三女の由佳里が年下の後輩男子(斎藤一)を盛大に振り回す程度に比べれば、まったくもって「巷のカップルによくあるイザコザ」という軽いもの。

 

個人的に共感してしまったのは、食べるの大好き!いっぱい食べる君が好き!という圭ちゃんが佳織の気持ちを無視して、とにかく、たくさん食べさせようとする食事とそれに突入するまでのシーン。とはいえ圭ちゃんは、元彼女の一人に「デートが食べるだけで単調だ」と言われ、けっこう気にしている様子。佳織は、そういったところも含めて「変態」な圭ちゃんを相手にしていた元彼女たちに直接会ってみて、「その人たちに、圭ちゃんのどこが気に入ったのか、聞いてみたい」と問うてみたいと、考える。

確かに、目の前にいる恋人を一時でも好きであった、という意味で「同士」に当たる元彼女たちに会い、腹を割って話し合ってみたい、というのは私も純粋にあります。

(それが修羅場へ通じる道であったと分かっているので、実行はしませんが)

  

本作は、もともと連載誌が芳文社の『エール!』というタイトルで、テーマにあった作品だといえましょう。旧版は、まんがタイムKRコミックス エールシリーズから出されたこちら↓

 シギサワカヤ『 溺れるようにできている。』(まんがタイムKRコミックス エールシリーズ) 2008年

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上に挙げている白泉社のほうが完全版。なので、増刊号や同人誌の読み切りが追加され、ほかの姉妹との関係や過去を知ることができ、なかなかの読みごたえでした。先に芳文社版を読んでいましたが、今回、完全版を買って満足です。

 (読了:2015年12月中旬)

 

(追記:2016年7月17日)

実は、シギサワ作品には、ちらほら、大学院生が出てきます。主に理系院生ばかりで、その一人が佳織の妹で三女・由佳里。三女の出てくる『ファムファタル~運命の女~』(電撃コミックス、アスキー・メディアワークス)全3巻は、こそっと学術振興会の特別研究員の制度等が絡んだり、大学のサークル現役生と卒業したOBOGの院生たちとの関係も実際に近い様子で描かれています。こちらの作品は、院生が登場する作品として、別記事でレビューしたいですね。

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