仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

院生の助成金申請書類の作成過程~院生獲得の助成金使用問題の補足~

 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

上の投稿に関して、一日、院生の個人申請による獲得助成金を申請者以外が使った、つまり、不正使用した場合、どうなるのか?じっくり考えました。

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もっと分かりやすく言えば、

 

院生個人の名前で出した書類で申請・獲得した助成金を、他人がその院生の許可なく、助成対象の研究に関係のない研究に使用した場合、院生の今後はどうなるのか?

 

それは、

 

申請者である院生の将来を「潰す」ことになる。

 

ということです。助成金の不正使用について、助成団体や大学内の研究費・助成金担当者に報告すると、不正使用した人は最悪、所属先の大学を辞めざるを得なくなります。そこまでいかなくても、この問題がもとで研究室、学内の人間関係にしこりが残ってしまい、「告発」した院生の居場所がかつての研究室・学内には無くなる可能性が出てきます。加えて、狭いアカデミックの世界だと、こうした人間関係の厄介さをいとい、この院生が研究者として望む道を閉ざす可能性だって、十分ありうるのです。

 

 ここまでは、上にリンクを貼った昨日更新の記事をなぞったものです。

 

今回は、その先。例えば、院生が個人の名前で研究助成を民間団体に申請する場合、所属先の研究室、同じ学科や講座(同じ学問分野の研究室が集まった大学院内の単位)の教員や他の院生、研究員は、その院生に書類作成に関して依頼をされたとしましょう。どういったことに気をつけ、協力したらよいのでしょうか?

 

おそらく、かなりの大学教員の方々、研究員の方がされている方法だと思うのですが、研究計画書・推薦状・助成をする理由書類等については、申請当人である院生に前もってたたき台を作らせ、それを指導する立場の人がチェックし、院生本人に繰り返し添削させること。そうやって各種書類の下書きを院生に作成させ、あとは書式に合わせて、必要なら先生方が推薦状の清書をし、捺印する。そういったことが、院生時代、私の周りではなされていました。私の先輩も、学振の特別研究員の申請書類から民間団体の助成金申請書類まで、たたき台を作ってはボス先生に添削して戴き、推敲を繰り返して所定のドキュメントファイルのテンプレートに入力し、印刷。最後は指導教員のボス先生に捺印して戴いて、書類を郵送していました。

 

ボス先生の方針だったのか、研究室のほかの教員の先生も同じ方法で、返済型奨学金の返済額減免制度の書類、授業料免除の申請書類などの理由書を準備する時も、院生には上記の方法で書類のたたき台を出させて、仕上げをさせていました。指導の立場にある人たちが一から申請書類を作るのではなく、院生にたたき台を作らせ、自分はチェックだけするというポジションにいること。あくまで、書類を作るのは申請を希望する院生であって、自分はチェックするだけにとどまるようにする。そうすることができれば、院生の書類作成能力はアップします。あと、人によると思いますが、「まあ、この助成金は院生が申請したものだしな」と、院生が獲得できた助成金に対して、みだりに手を出そうという気は起きにくくなるかなぁと。

 

ちなみに、指導教員が科研費や民間団体の助成金、大学内の出版助成金等を申請する時は、たたき台の作成を院生にさせることが、よくあります(タダ働きな研究室が今も多い模様)。指導教員から見れば、弟子である院生を自分の研究費獲得のために「手伝わせる」、「指導」することは、私の周囲では「当たり前」であり、様々な国内の学会大会で聞いたことなので、今までの日本のアカデミックな世界ではよくあることだと言えます。

こういった「慣習」が大学院や研究機関に存在したことによって、「院生が個人申請で助成金を獲得できたのは、自分の指導があってのこと。だから、その申請の獲得助成金を自分も使ってもいいだろう」と、「思いこんでしまっている」教員や研究員が今の日本にも存在し、上のリンク記事のような助成金をめぐる問題が起こっても、何ら不思議ではないと言えるのです(。

(もちろん、こういった「思いこみ」をしていない先生方も、ボス先生をはじめ、大勢いらっしゃいます)

 

さらに、上のリンク記事にも書きましたが、同じ大学院や同じ学科の中でも、教員同士の人間関係が微妙なところがあり、一口に学閥だけでは説明できない複雑な人員構成の組織もあるようです。もし、院生が助成金の申請書類の添削を頼む人が欲しいと考えた場合、添削を依頼する人を選ぶ際は、学内の人間関係にも気を配らなくてはならない場合があります。要は、研究費の獲得準備ひとつ取って見ても、面倒くさいことがあるんです。

(ここらへんの人間関係は、分野関係なく、ヘンテコで癖のある性格の人が多い研究者特有の人同士の相性があるので、院志望者は入学前に希望研究室の院生と学外で食事したり、飲み会で聞いてみたり、情報を集め、雰囲気をつかんでおくとよいでしょう)

 

 

まだまだ、閉鎖的な大学はあるようです。そして、同じ大学や大学院であっても、研究科や学府といった部局同士の横のつながりが薄く、院生同士の人間関係構築が難しいようです。情報をキャッチすることもできないまま、問題が起こった時、該当者の院生が孤立して苦しむことも少なくないと聞きます。最悪、支援の手が届かないまま、自ら命を絶ってしまう院生もいるでしょう。

 

今回の助成金問題等のいわゆる「アカデミックハラスメント」に対策を立てることが困難な場合もあるかと思いますが、ここのブログでは大学院で起こる問題について、可能な限り取り上げ、何かしらの形で情報発信をしていきたいと考えております。

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