仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

自家製本のすすめと「学術書」~グルースティックによるコピー論文の製本を通じて~

0.ブログの近況報告および本記事の導入

今週、アメリカのトランプ氏が次期大統領選に勝利し、世界がこの話題で持ちきり。そんな週の後半、当ブログは読者登録が100人になりました!皆さま、いつも、お読みいただき、時にはスターを下さったり、たまにはてなブックマークに入れてコメントされたり、ありがとうございます。これからも、よろしくお願い致します。

 

以上、ブログの近況報告でした。おめでたいネットの外、現実世界の私は、いつもと変わらず、日常生活の中、ゴリゴリと文献を集めることをしておりました。今回は、その集めた文献を管理する形にどう加工するか、というお話です。

 

f:id:nakami_midsuki:20161111145443j:plain

 

〈本記事の目次〉

1.今回のコピー用紙合計200枚以上の論文製本の経緯

時は遡ること9日の水曜日。私は論文集(アンソロジータイプ)、雑誌からにコピーした論文数件をまとめ、そのボリュームA4用紙にして合計200枚以上の束を目の前にして、コピー・製本屋キンコーズに立っていました。

www.kinkos.co.jp

同じ著者による数件の論文200枚以上、統一されたテーマのものばかりだったこともあり(現時点でこの統一テーマによる博士論文は提出されていない模様)、思い切って、無線綴・くるみ製本で一冊の本に作ってもらうことを頼みました。翌日仕上がるということで、心待ちにしていると、翌朝10日にキンコーズから電話があり、

 ・申し訳ないが、コピー用紙全体の数が多く、分厚くて機械製本が不可能になった

  (本文だけで用紙200枚以上、それを1枚ずつ半分に折ってA5サイズの本に

   製本すると、3.5センチ以上の厚みになると予想されるから)

 ・2冊に分けての製本なら無線綴は可能である。

とお知らせをいただきました。予定のずれに一度、肩を落としましたが、気を取り直して、改めて、

 ・2冊に分けて無線綴をする。

 ・表紙は2冊を合体した際の背表紙の厚さを考慮したくるみ表紙を制作する。

ということを依頼しました。

 

10日の午後、無線綴済みの2冊の冊子、くるみ表紙を受け取った私は、そのまま、繁華街で大きめの100円ショップ・ダイソーに向かいました。2冊の冊子を合本すべく、時価製本の道具を買いに行ったのです。

 

 

2.グルースティックを使った自家製本に挑戦してみた

 2-1.以前の水溶性ボンドによる自家製本

以前、チャレンジした自家製本の方法は、以前、ここのブログで書きました。 

 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

院卒にともなう研究室からの引っ越し作業の一つで、コピー室の「自炊」が死にそうに大変だったというお話です。当時、やっていた製本作業を引用してみましょう。

図書によっては、一旦、作業室の裁断機で本をバラし、複合機で自動読み取りにかけました。

 その後、裁断でバラバラなページや表紙などのパーツをきちんと組み立て直して無線綴で接着し、背表紙にダブルクリップを5個ほどつけてとめ、読めるように復元しました。こういう形の面倒な作業が出来たのは、2冊が限界でした。製本し直したのは、電子媒体とは別で、本として捲り、本文に線を引くなどして使うためです。

 接着に使ったのは、水溶性のボンドです。ボンドを使って本文用紙を無線綴にすると、乾かした後、水分の蒸発次第で本文の背表紙側に皺が寄ったまま固まり、読もうとすると、開きにくくなることがありました。書籍用紙より紙質の劣るコピー用紙なら、言わずもがな、です。

 

今回は本文用紙だけで200枚を超えており、完成後に開きにくくなるのは、大変困ります。既に自家製本作業の決定した10日の午前、私はネットを駆使し、皺の寄らない自家製本のやり方を調べました。いくつかページが見つかり、もっともリーズナブル、やり方次第では、製本後の本の強度や保存性が高くなる方法を選びました。それが、様々な種類のプラスティックを材料に、熱を加えると溶け、冷めると固まる接着剤のグルースティック(ホットボンド)でした。

(グルースティックの参考URL:http://www.technos.to/gluestick01.html

 

 2-2.グルースティック製本方法のページと私が使った道具

グルースティックによる製本で、初心者の私にもできそうな次のページを見つけ、何回か読み返しました。基本的に、今回の製本はこちらを参考にし、同じ工程を行いましたので、こちらではグルースティック製本の詳細は省きます。その代わり、私なりの製本の工夫については、補足として、書きます。

matome.naver.jp

読んでみると、同人誌の自家製本方法ということで、暑さが1センチ前後までの薄い本向きの方法でした。今回、厚さ3.5センチ以上の合本で強度が欲しかった私は、背表紙にグルースティックを厚く塗って補強する方向で対処しようと考えます。

 

10日の午後、キンコーズを後にし、ダイソーに行き、足りない工具と材料を入手しました。新たに買い足したのは、写真の6点。これらの道具は、ほかの自家製本サイトによると、セリアなど他の100円ショップでも、置いてる店舗があるそうです。予算としては、6点で合計金額は1000円ギリギリか、少しオーバーするくらい。私がダイソーで買ったもので、特に価格表示のないものは、100円(税抜き)商品です。

f:id:nakami_midsuki:20161111125752j:plain

・右上:グルースティックを入れ、それを溶かして定着させるグルーガンは、手芸コーナーにありました。

・中央:2冊の冊子をまとめて固定する万力(クランプ)は、上の製本方法のページによるとクリップタイプのものが使いやすく、Amazonで入手できるとのこと。早く製本したかったこともあり、私はダイソーの工具売り場のをさっと買いました。

 

既に自宅に持っていた道具として、次の3つのものを使いました。

 ・アイロン(背表紙を固めて綴じるために塗ったグルースティックを溶かす

       →平らにならすのに使う)

 ・30センチものさし(片方の辺に金属プレートのつき、カッター使用に便利)

 ・カッターナイフ(小口に付着して固まったグルースティック、余った紙を切断)

 

 2-3.作業の振り返りと注意点

道具をそろえ、帰宅した10日の夕方から晩にかけて、ゴリゴリと4時間ほど、作業しました。ここでは、一連の作業の中でも、忍耐力と注意力が必要で、気をつけないとケガをしていたかもしれない、重要な工程を振り返ってます。

 

最初にしたのは、冊子をまとめて万力で固定後、カッターノコで本文の背表紙側に深さ0.5~1ミリほどのミゾを作る工程。グルースティックを塗る時、紙同士の結合を高めて本の強度を増すのが目的でした。途中、紙の粉が出て本文に付着するわ、クランプの位置を変えないと切り込みにくいわ、疲れて注意力散漫になれば指先をケガする恐れがあるわ、面倒でした。どうにか、1時間くらいかけて完了。

 

次、背表紙を固めて綴じるために塗ったグルースティックを溶かし、背表紙側の紙の上からグルーガンで塗って接着後、クッキングシートを背表紙側に被せた上から熱いアイロンで再度、平らにならす工程をしました。グルーガンが溶けて出てくるグルースティックも、アイロンも、高温になるので、やけどに注意しました。

グルーガンを使う前半の作業から、アイロンを使う後半の作業に移るとき、グルーガンのコンセントを抜いた時、アクシデント発生。グルースティックを伏せ、余ったクッキングシートの上に付けていたら、溶けた高温のグルースティックがシートに付着。そのシートをうっかり持ち上げた私の指に付着してしまいました。冷まして、ペリペリ、グルースティックを剥がせたからよかったものの、グルーガンを電源に繋いだままだったら、やけどしていたでしょう。

 

 

3.グルースティック製本の仕上がりと全体の感想

 3-1.グルースティック製本の仕上がり

さて、今回の自家製本は、作業工程の詳細はリンク先のページに譲りました。最後、料理番組のように、ここでは仕上がった本を見たいとおもいます。

 

①本の表紙

f:id:nakami_midsuki:20161111133412j:plain

こちらが表紙です(あとでタイトルや著者の書いたラベルを貼る予定)。手前の小口から右側に向かい、背表紙を見てみても、本文が直線となっていて、皺が見られません。 水溶性のボンドに比べて、水分の少ないグルースティックを使うと、仕上がりは本文が皺でヨレヨレなりにくいことが分かりました。

 

②見開き

f:id:nakami_midsuki:20161111133955j:plain

本文の終わりのほう、奥付直前くらいの位置です。見開き中央、本文を綴じ目のある「のど」を見て頂くと、凸凹した様子がありません。「のど」のほうに皺が寄っていないことが分かります。実際、めくってみても、本文の紙が引っ張られて開きにくいストレスは、感じませんでした。

 

今回の製本で仕上げた本は、グルースティックを背表紙固めで細かく、集めに塗り、強度と保存性はありそうです。ただ、背表紙を強固にしたため、「のど」の奥まで大きく開くことが難しくなり、見開きでコピーすることがやりにくくなりそうでした。このあたりは、今後の課題ということ致します。

 

 

 3-2.全体の感想 

まず、全体の製本作業時間について、キンコーズで1日(セルフコピー+2冊に分冊製本の依頼)かかり、その後は工具購入(1時間)とグルースティック製本による合本作業(4時間)で、だいたい1日半分~2日で仕上がりました。

ちなみに、前回の水溶性ボンドの自家製本では、無線綴作業の後、完全乾燥まで入れると、2日半ほど。グルースティック製本のほうが、少し早目に仕上がりました。

 

どちらも自家製本とはいえ、今回は水溶性ボンドの製本方法よりも、カッターノコ、万力、グルーガン、アイロンといった、金属工具や熱をもつ電動工具を多く使用しました。ちょとした不注意、見落としによって、大きなケガをすることもあります。作業前、同居人が「それ、立派なDIYじゃん」と言っていました。たしかに、そうです。

 

仕上がりを水溶性ボンドとグルースティックとで比較すると、前者が乾燥後に本文がヨレヨレ・ボコボコの皺寄りになりやすく、特に厚い本の製作には向かなさそうでした。それに対し、後者は皺が寄らずに美しく、強度のあるものに仕上がりました。

 

予算としては、コピー代を差し引くと、水溶性ボンドの製本のほうが安価になりがち。グルースティック製本は、工具をそろえる分、高額出費になりがちではあります。

 

総合すると、水溶性ボンドの製本と比べて、今回のグルースティック製本のほうが、

 ・作業時間が少なめ。

 ・工具を使う分、DIYになるため、作業には注意が必要。

 ・出費は高額になりがち

 ・仕上がりは、皺が寄りにくく、きれい。特に厚い本向き。

というポイントがありました。

 

あとは、キンコーズ等のコピー・製本の専門業者への依頼との比較になります。ぶっちゃけ、時間とお金があって、厚さが1~2センチの背表紙の本なら、業者に依頼したほうが、きれいに仕上がり、強度・保存性にも優れているでしょう。厚さが3センチを超すようなら、今回のようにグルースティック製本を選択してもいいでしょう。

 

 

4.最後に

今まで、私は単著を出版されていない研究者の方のコピーした論文を集め、製本したことが何回か、ありました。今回、製本したとある研究者の方の論文を、様々な論文集や雑誌から複写してきたわけですが、その合計のコピー金額は、2000~2500円ほどだと計算しています。ここにキンコーズで頼んだ2冊の冊子製本等の代金が1500円前後、グルースティックの自家製本にかかった合計金額が1000円前後で、トータルで出すと最大5000円くらいになります。この金額を高いと見るか、安いと見るか。

 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

以前、研究成果としての学術書は、既存の特殊な出版背景から、一般図書に比べて、高額になるということを上の記事で書きました。金額で言うと、低価格帯で4000円台、まあまあ安いか、そこそこくらいが1万円台だと、私は認識しています。件の研究者の方は単著こそ出版されていないけれど、統一のテーマに沿って書かれたと思われる論文コピーのまとまりをコンパクトな1冊に製本できるなら、現時点において、今回使った5000円は適切な価格だと、私には割り切れる出費でした。

 

先行研究の論文を手に入れ、どのような媒体で持っておくか。これから、もし、バッテリーなしの紙媒体で持ち歩け、携帯性に適した本で読みたいとお考えの院生や先生方、在野研究者の方がおられたら、本記事で書いた自家製本のことを一考されてみてはいかがでしょうか。

↓いいね!だったら、ポチッとお願いします。

にほんブログ村 大学生日記ブログ 博士課程大学院生へ
にほんブログ村