仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

指導教員による学生の放置および指導の放棄・拒否によるアカハラ

<今回の内容>

1.はじめに

2017年も年が明けて、3週間目に突入しました。大学・大学院では、後期末の試験勉強やレポートに取り組んだり、早いところで卒論の口頭試問や公聴会のスケジュールが発表されたり、修論の締切後に公聴会の準備にとりかかったり、何だかんだで皆さん、忙しい時期だと思います。インフルエンザが流行し、風邪もいっそう引きやすい時期です。どうか、休み休みしつつ、取り組まれてください。

 

さて、昨日、社会人の著者による大学院受験の体験記として、次の記事を私は投稿しました。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

上記の受験準備の3の項の「3―6.担当志望教員にアポを取って許可を得に行く」のところで、私は社会人の受験生に対し、次のように注意事項を述べました。

ところで、私が気になったのは、学生よりもずっと森先生に年齢が近かった著者へ、「やりにくいなあ(笑)」という森先生の一言。著者は、ブランクがあるから問題ありません、という一言で押し切りました。しかし、この指導教員と社会人院生との年齢の近さ、あるいは指導教員よりも社会人院生のほうが年上という状況は、時に注意が必要です。最悪、指導教員のほうが社会人院生へ指導を遠慮したり、放置してしまったり、指導放棄に近い状態に陥る危険性があるからです。この指導放棄は、私の知人の社会人院生に実際、アカハラとして起こったこともりましたので、本当に気を付けてください。

(「専門卒社会人の著者による大学院修士課程の受験体験記~森井ユキ『突撃!オトナの大学院』より引用)

また、「4.東京造形大学大学院の修士受験の結果とまとめ」のところにおいて、「社会人の院志望者の方に覚えておいて頂きたいポイント」の3つ目に、

3.指導教員と社会人院生との年齢の近さ、あるいは指導教員よりも社会人院生のほうが年上という状況は、最悪、指導放棄に近い状態に陥る危険性があること

(「専門卒社会人の著者による大学院修士課程の受験体験記~森井ユキ『突撃!オトナの大学院』より引用)

と再度、注意点として指摘をしました。 

 

なぜ、ここまで社会人の院志望者に対し、注意を促すような書き方をしたかというと、引用部分にも書いていますが、別の研究室ではありますが、私の知人で社会人院生のMさんが、指導教員のV先生から指導放棄に近い扱いを受け、何度も苦しまれた姿を見ていたからです。しかも、Mさんがアカハラとして捉えていた発言と、同じ内容の言葉を我々、他の院生の前でV先生がされていたことがあり、V先生の直接的な指導対象の院生でなかった私としては、居心地の悪い思いをしたことがありました。

 

そういうわけで、今回は社会人の院生だったMさんの事例を入口に、指導教員による学生の放置、および指導の放棄や拒否によるアカハラを見ていきたいと思います。

 

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2.具体的に受けたアカハラ行為

 2-1.Mさんが社会人の院生博士院生になった経緯とV先生による「斥け兆候」

還暦近くのMさんは、働きながら別の国公立大学で修士号を取得し、修士課程の指導教員が引退されることもあって、博士課程進学にあたり、私のいた文理総合系大学院で、M先生より2~3歳年下のV先生の研究室の研究生となりました。いわば「見習い院生」としてV研究室に入ったMさんに、まずV先生は「僕が特別に課す博士課程編入試験の資格として、査読論文を一本、通すこと」という、修士修了直後のMさんにはハードと思える課題を出しました。四苦八苦しながらも、Mさんは一年後に査読論文を通し、その年度末の編入試験を突破しました。

 

この課題の話は、Mさんが博士課程編入試験の合格発表の日、V先生のいないところでMさんから聞いたことでした。さらに数日後、MさんとV先生のいないところで、私と同期のV研究室の博士院生と食事をしつつ、この話をしたところ「Mさんだけに、私たち若年の編入組よりもハードな入学試験資格の取得課題を出すとは、V先生、最初からMさんと馬が合わないのを察知して、本当のところは、合格させたくなかったんじゃないの?」とい、同期の人から指摘がありました。内部事情に詳しいV研究室の同期院生によると、どうやら最初からV先生はMさんを気に入っていらず、排除しようとしていたらしいのです。が、自分の課した課題をクリアされ、さらに編入試験も突破したMさんを、成績上、さすがに不合格にできず、合格させて自分の博士院生として受け入れざるを得なかった。という事情に、私は推測していました。

 

この時点で「Mさん、V先生はあなたと相性がよくないと感じておられているみたいだから、入学するのは少し、慎重になったほうがいいんじゃないんですか?」と、誰か声をかけられたら、Mさんはアカハラで苦しまずに済んだのかもしれません。しかし、気が付いていたのは我々、若年世代の院生たちであり、自分の親世代ほど年上のMさんには気が引けて、はっきりと伝えることはできませんでした。

 

なお、V研究室は私のいた研究室の近所にあり、文化人類学的な事象を理系的な計測術も含めて分析していく、文理両者の境界上にある分野を扱っていました。博士学位の出やすさは、課程博士の理系と論文博士の文系の間の4年ほどが目安の研究室のようでした。

 

  2-2.Mさんの院生生活とV先生からの指導放置→放棄

博士課程に入学後、Mさんは時間に融通の利きやすい勤務先におられたのか、繁忙期を除くと、午前中の院ゼミ、午後の時間のうちの授業にいらしていて、このあたりは、私たち若年世代の院生とあまり変わらない院生生活を送っておられました。ただし、この院生生活において、MさんはV先生から放置を受けていくことになります。

 

例えば、Mさんからお聞きしたところでは、当時、私と同じくらいの若年世代の院生には、院ゼミできちんと研究発表でコメントするのに対し、Mさんが発表すると「君は博士課程の受験前、課した課題として一本査読論文を通しているけれど、今回の発表も含めて、博士論文のほんの小さな一部にしかならない程度のものだよ」というような、発言をされたそうです。ともかく、博士課程に来たMさんは、論文をたくさん投稿して、審査をパスしていかなければなりません。原稿修正に困るV先生のコメントに耐えつつ、Mさんは書き直した投稿論文をV先生に見せますが、上記と同じコメントに。

 

指導教員からのアドバイスにならないアドバイス。Mさんは、ぐっとそのストレスに耐え、V先生の了承なしに出した投稿論文が査読を通り、ジャーナルに掲載されました。その報告をV先生にすると「ふーん、あんなのを通しちゃったのか、そのジャーナル。僕なら即掲載不可にしたけどね」と一言。それ以降、V先生はMさんが投稿論文の原稿を持ってきても「忙しいから」と目を通すのを拒否し、他の若年世代の院生の原稿ばかりチェックしていたそうです。

 

そんなことが2年ほど続いたある時、「Mさんには、同期で入って来た若い博士課程の院生たちと同じくらいの年数では博士論文の審査時期にゴーサインは出さないからね」と、オブラートに包みつつも、そういう意思のことをV先生は直接、Mさんに言われたそうです。私が修士院生のころに研究生だったMさんは、この時、60後半に達し、ストレスで不眠や頭痛を抱えて処方薬を飲みながら、大学院に通っていました。Mさんより少し年下のV先生は、我々のいた大学院の既定で当時だと1年後に退職が決まっている状況でした。そんな中、私がV研究室の院生部屋に遊びに行っていた時、ふっとティータイムに現れたV先生は「僕もあと一年で退職で、君たち受け持ちの若手には責任を持って博士論文にゴーサイン出すけど、退職後、MさんはMさんで後は頑張ってもらわないとね」と告げられました。そこにい若年世代の院生の顔は、みんな神妙になり、私は真顔でいるしかありませんでした。当時のMさんへのハラスメント的行為は水面下では部局内で知られていたので、V先生はこの発言でMさんへの指導放棄をしたことになると、若手院生の間で確認がされました。

 

実はV先生はその分野の世界で「偉い先生」、つまり大家だったこともあり、大学院の部局内でも発言力と人を動かす権限とも、非常に大きな方だったようです。その一方、近い分野の先生で、同じ学会で同席することのあった元ボス先生によると「その学会大会をうちの大学で開催していた期間中、V先生は研究調査対象の地域に長期で行ってしまったことがあってね。仕事を私たちに割り振った後、いなくなった時点で、仕事と研究はできる人だけど、ちょっと上(組織の)に立たせとくには問題のある人かもねって、大会運営を手伝ってくれていた近所の大学の先生たちと話していたんだよ」とのこと。先生方の間でも、V先生はちょっと人間性に問題がある人ではないか?という声が上がっていたようです。

 

以前、「大学院に行きたいと思ったら見極めるべきこと~指導教員の選び方について:主に文系向け~」の「3-3.弟子である院生後輩研究者を大切にし尊敬できる人間性のある先生を選ぼう」で書きましたように、指導教員選びでは、自分との相性も含めて、やはり人間性が重要になってきます。もし、早い段階でV先生のように人間性に少しでも問題があるのでは?という情報をキャッチしたら、院志望者の方は警戒したほうがいいかもしれません。そして、できる範囲でその先生に関する評判や情報を集めたほうがよいでしょう。

 

 2-3.指導対象の院生が持ってきた「休学許可願」への捺印拒否

好転しないV先生の指導状況と、目標であった博士学位取得に向けた研究状況が進展しないことのストレスからか、V先生が退職する年度の初め、Mさんは頭髪の異常な脱毛、頭痛、胃腸の激痛、不眠状態の悪化などの体調不良により、かかりつけの医師から検査を含む長期入院をすすめられました。一度、V研究室の環境から一時的に離れることを考えていたMさんは半年の休学をしようと、関係書類に記入し、最後に指導教員が休学許可を認める印鑑を休学届に押してもらおうと、V先生のもとに行きました。ここでV先生、休学届の指導教員欄に押しませんでした。Mさんは何回もV先生に頼みましたが、V先生は捺印を拒否しました。

 

そのことを授業の休み時間に、V先生のいないところで泣きそうな顔で話すMさんに、「カウンセリングルームや部局内の人権問題の対策委員会とかに、相談してみましょう」と言う院生もいました。しかし、Mさんは相談した部署から、部局内で権力のあるV先生に相談内容が漏れ伝わることを恐れて、ひたすら、耐え忍びました。私や同期の若手院生が動こうとしたところ、「あなたたちも、博士号取得にリーチがかかっているんだから、下手なことはしなさんな!」とMさんに言われ、ひるんでしまい、何も私たちはできませんでした。

 

その年の夏、中途採用でうちの大学院に新しいP先生が教授として赴任されました。V先生が自分の後任に後輩のP先生を引っぱって来たのではないか?と私が勘ぐっておりました。ここで、Mさんの状況が変わっていきます。P先生がV先生に話を持ちかけたようで、このP先生がMさんの新しい指導教員に交替する手続きが、V先生も含め、後期の頭に起こったのです。直後にMさんは休学届けの許可ハンコをP先生にもらい、休学されました。その年度末、V先生は退職。

 

Mさんは検査の結果、休学期間が半年以上になり、その間に私は博士学位を取得し、大学院を出ました。現在、Mさんは大学院に復学され、P先生指導のもと、博士論文の執筆に入っているとのことでした。ちなみに、P先生はMさんより10歳ほど年齢が下だそうですが、関係はうまくいっているようです。振り返ると、MさんはV研究室への編入を経て、私のいた大学院に7年以上、在籍して未だに博士学位を取得していない状況となっていました。

 

 

3.学生の放置や指導の放棄・拒否によるアカハラまとめ

Mさんの場合は、博士課程受験前の受験資格取得のための課題による斥け行為、直後のV先生からの放置・指導放棄に当たるハラスメント行為を 受けた時点で、担当を依頼する指導教員の変更を試みたり、指導教員の交替制度を調べて対処したり、早い段階で手を打つことができたと思います。Mさんのことがあって、個人的にアカハラに対処するにはどうしたらよかったか、考えるようになり、次の記事を書くことになりました。

menhera.jp

 

もう一つ。実は、放置系研究室は社会人院生だけでなく、現役で入学してきた20代の修士課程の学生にも、厄介な問題として降りかかることがることを、次の記事で知りました。

d.hatena.ne.jp

大学院に行きたいと思ったら見極めるべきこと~指導教員の選び方について:主に文系向け~」の「5.参考」にもリンクを貼らせて頂きました。こちらは理系に入る情報系研究室であり、 

そもそも我が研究室は非常に放任主義の放置系ブラック研究室であった.いくつか例を挙げると

  • 論文紹介や輪講などない
  • M2になってから7回程度しかゼミをやった記憶が無い
  • 研究テーマが上から降ってくることがない
  • 教授が卒論修論のテーマを提出の一ヶ月前まで把握していない
  • 研究しない
  • 論文(書かない|書けない)
  • (研究会|全国大会|諸々)(出ない|出さない|出せない)
  • そもそも何がいつあって締切りがいつとか知らない
  • 学生が学会に何一つ加入していない

などが挙げられる.このような環境の結果として,私は無事ノー論文ノー学会ノーポスター,業績欄及び所属学会空白で大学院をフィニッシュする予定である.

放置系ブラック研究室で楽しく生きるにあたって - 糞ネット弁慶より)

 という、先生方が放置も甚だしい研究室だったようです。記事を書かれたrepose氏は、放置系研究室のメリットに挙げているように、自由な時間を使って、外部の勉強会に出たり、インターンシップに参加したり、プログラミングのバイトに行ったりと、外部で技術を磨き、自分の今後のキャリアを積むための行動をしたようです。次の「補足」を読むと分かりますが、他大学の院試に落ちたこともあり、学部と同じ学内にある院へ内部進学するにあたり、repose氏は修士課程まで行くと限定した上で、放置系研究室であっても割り切って進学し、自分の技術を磨き、持っているリソースを増やすことをしました。

d.hatena.ne.jp

ただ、論文執筆・投稿や学会発表など、本来の研究活動で忙しい周囲の院生に比較して、repose氏は劣等感を持っていたことも認められているようです。

 

今回の社会人博士院生のMさんのようにV先生から嫌味を言われて指導放棄・拒否された事例にしても、開き直って修士論文はきちんと提出しつつ自分の自由時間でプログラミングの技術をアップさせたrepose氏のケースにしても、やはり、本来、所属者が研究を行って論文を書き、成果を上げるリソースと学位を与える機能を持つ大学院と言う意味において、学生の放置および指導の放棄・拒否は院生たちの研究活動を妨害していることになると私は思いました。そういう意味で、今回のMさんの事例も、repose氏のケースも、アカデミック・ハラスメント、つまりアカハラに当たるでしょう。

 

読者の中の社会人院志望者の方、それからストレートで学部から院に進もうとしている志望者の皆さん、過干渉な指導教員も困りますが、今回のような学生の放置・指導の放棄・拒否をしてくるような研究者にお気をつけて、受験に備えてください。そうした教員のいる「ブラック研究室」の回避方法は、下の目次に挙げましたので、ご参照ください。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

それでは、今回はこのあたりで終わりに致します。

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