仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【メモ】「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 Togetterまとめ:前編~ #若手問題2017 ~

<今回の内容>

0.はじめに

ここ数カ月、歴史学の分野を中心に、「若手研究者問題」シンポジウムが開かれるよ!アンケートよろしくね!という告知がなされ、今月頭の4日にシンポジウムが開かれたそうです。シンポ当日までの告知活動から、当日の実況がまとめられていました。こちらで、紹介をさせて頂きます。 

togetter.com

 

なお、アンケートと実際のシンポジウムの発表題目は、公式サイトに挙がっていました。

sites.google.com

 

公式サイトに挙がっている(おそらく一部と思われる)発表題目は、次のようになります。

〇報告「日本歴史学協会ウェブ・アンケート報告――日歴協若手研究者問題検討委員会より」【レジュメ】
報告者 浅田進史(駒澤大学
〇報告「学部・大学院教育の現在――国立大学の事例から」                
報告者 山田 賢(千葉大学
〇報告「若手研究者問題は若手研究者問題か? 「大学改革」の30年と失われた未来、そして奪還への遠い道のり」
報告者 橋本伸也(関西学院大学
〇コメント「日本学術会議から」
コメンテーター 高埜利彦(学習院大学日本学術会議会員)
〇コメント「西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループから」【レジュメ】
コメンテーター 松本涼(福井県立大学

 (「若手研究者問題」解決に向けた歴史学関係者の研究・生活・ジェンダーに関するウェブ・アンケート調査より転載)

転載元にシンポジウム時のレジュメ資料がダウンロードできるようです。

 

もとのtogetterまとめは、10ページにも及ぶため、ここでは気になった話題をピックアップして、拙ブログ記事とリンクさせる形で、考えていきたいと思います。本記事は、まとめの5ページまでの内容を扱う前編です。6ページ目以降は、別記事の後編で扱います。

 

先におことわりをさせて頂きますが、まとめの中の方々のツイートは、上記togetterからの引用ということで、個人のアカウント名は除いた形にして、こちらで転載させて頂きます。もし、誤字脱字、誤りがあったり、不快な思いをされたり、等がありましたら、こちらのお問い合わせメールフォーム、または全開放している私のTwitterのDMにて、ご連絡頂けると助かります。できるだけ、迅速に対応させて頂きます。

 

f:id:nakami_midsuki:20170314020310j:plain

 

 

 

1.そもそも、何故アンケートの回答が思ったより、少なかったのか?

togetterまとめを読むと、様々な意見が出ていましたが、邪推を申し上げますと、

 ・アンケートの協力や依頼がインターネットを中心に拡散していた印象

 ・2ページ目までに出ていましたが、現場の人々が研究時間を週10時間も確保できないほど、多忙だった→アンケートに回答する時間さえ惜しかった

という ことが挙げられると思います。

 

 回答者の割合は、「日歴共のアンケート調査では、回答者は国立6割、日本史5割か いわゆる東洋史1割と少ない」(「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 (2ページ目) - Togetterまとめより)とのこと。東洋史含む東洋学の中には、嘘のような本当のような話ですが、文明の利器を使わない研究者も、実はけっこう、います*1

あと、中国史をやっている人には、Googleが撤退した大陸中国に留学、調査をしている人がいて、アンケートの協力依頼が回っているのに気が付かなかった、あるいは、気が付いて回答しようとしたけれど中国の情報統制が強まってしまい、アクセスできなくなって回答できなかった。という研究者も若手にはいたんじゃないでしょうか?

 

2つ目の多忙さについては、若手のポスドクや院生も同じです。特に、遺物調査や文献調べにあちこち、出かけることにの多い人は、歴史学にも少なからずいます。現実的に研究室や院ゼミでも、協力を得ようとしても、まず、人が集まらない!ということがあったんじゃないでしょうか?院生時代、自分の研究以外では、研究室の論文集の校正作業、それから科研費の出版助成部門の書類作成が長引き、非常に忙しかったです。

 

原因はさまざまに考えられますが、500人もの人たちが回答してくれたというのは、思ったよりも少なかったけれども、逆に言えば、かなりの数が集まったと見ていいのではないでしょうか?

 

 

2.時間と経済的な問題(学会大会への参加、文献購入費用など)

 2-1.学会大会への参加に関する時間とお金の問題について

はい、時間とお金に関することとして、ガバっと、まとめました。時間の確保は、先の多忙による時間の確保とも重なる問題です。

全立場に共通する「研究を進めていく上での困難な点」は研究時間の確保と時間的制約による学会参加への困難 #若手問題2017 

(このシンポには、50〜60くらいは入っている?)

「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 (2ページ目) - Togetterまとめより)

まず、学会大会やシンポジウム同士が同じ日に重なると、非常に悲しくなります。特に、付き合いの長い先生方や研究者の方の学会とシンポジウムが同じ日に3つも集中すると、だいたい、開催時間が重なり、どうしたらいいんでしょうか。テクノロジーが発達してSkypeやハングアウトで中継できても、出席者が「分身の術」でも使えない限り、複数の会合に一度に参加するというのは、現時点では不可能です。

 

それから、小規模な学会であれば、人手不足で運営業務が回らなくなる危険は、既に指摘しました↓ 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

若手研究者、院生やポスドクの人たちは、活気があって、人が集まる場所でないと、よほど時間とお金に余裕があり、自分の興味がなければ、行く時間を惜しむようになってくると思います。主に、大学の学部や研究科内の学会は、危ういのではないでしょうか。院生の場合、2010年代半ばくらいは、修士課程で就活をして多くの人は学会どころではありませんし、博士課程のほうは入学者がゼロの年度だって、大学院によってはあるでしょう。

 

これらの小さな問題を解決するには、小規模な学会、それから研究会をまとめいき、大規模な学会にまとめてしまうことではないでしょうか?そして、一つの年度内の大会は一回とし、その一回の中で分科会や小さなセッションを置くようにする。必要があれば、部会や研究班を構成し直して、その小さな単位で集まって勉強会を開く。

自由記述欄より「類似の研究会で共催することで参加者の負担を軽減して欲しい」 これは本当にそう。どうにかならないかね。 #若手問題2017

(「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 (3ページ目) - Togetterまとめより)

共催もよいですが、何よりも、全体の類似学会の大会を合同で行ってほしいです。また、お金を少しでも節約したい院生や非常勤講師の人たちは、入会する学会数が少ないだけで、かなり経済的に助かると思います。

(特に、私のような境界領域をゴリゴリ、掘り下げているような研究者には有り難い!)

 

そういうわけで、時間とお金の節約のために、小さな学会をまとめて、大規模な学会にしてしまうというのは、合理的だと思われます*2

 

 2-2.研究資金と文献に関する費用とその周辺について

次に、文献を買ったり、論文執筆に必要なPCを買ったり、文献をコピーしたり、公文書館に行くための交通費だったり、研究資金のことが挙がっていました。

大学院生の5割以上、非常勤講師の7割以上が研究費の80-100%を私費でまかなう。 #若手問題2017

 (「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 (3ページ目) - Togetterまとめより)

ここに、私は学会の会費、論文の掲載料なんかも含めていいと思います。あと、学術書の出版費用も含めたいところです。ということで、そのあたりのことは、次の拙ブログ記事にまとめました。ご参照頂けたらと思います↓

naka3-3dsuki.hatenablog.co

 

 大学図書館については、こちらをご参照ください↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

学術書や文献コピーとその周辺についての話はこちら↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

そもそも、「研究資金より前に、学費と生活費、どうしよう?」というお話は、こちらをご参照ください。様々な金策、最近の国の動きが分かります↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

 

3.非常勤講師の研究者番号無しと収入の問題、研究機関を離れた後の研究資源との断絶について

はい、今の私の状態とも、非常に関係のあるお話です。今まで拙ブログの関係記事からすると、まず、個人で仕事をもって食べつつ研究費を捻出するなり、家族に養ってもらうなり、民間の助成金を申請するなりして、「在野研究」のことを扱ってきました。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

上記の荒木氏の書いている内容との合わせ技として、Twitterで様々な方に教えて頂いたのが、科研費を申請できる資格を持つ研究者を共同研究の代表者にして科研費や、民間の助成金の申請をし、その共同研究者にしてもらうという方法があるそうです。

 

プラス、私が今年の1月28日に、京都アカデメイアさんのトークイベントでお話させて頂いたこと↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

 

研究機関を離れた後の研究資源との断絶については、修士課程で経済的に研究の困難さを抱えて就職したけど、研究業界に戻りたい!とか、博士号を取得したけどアカポスに就けなくて、研究資源と断絶してしまったり(便宜的に在野ドクターと呼びます)、そういった問題と重なってきます。

 

まず、研究資源の断絶に就いては、歴史学を含む人文科学の場合、荒木優太氏も言っておられましたが、大きな図書館、それから大学のある都市に住んで、資料アクセスを確保するということが対策として、考えられます。はい、大学図書館の利用ですね↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

修士卒の社会人の人が、社会人ドクターに戻りたかったり、在野ドクターが研究を続けるために利用したらよさそうな制度については、下の私が行ったアンケート調査でも、DMで寄せられた意見でした。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

知りたいこと1の「在野研究者や社会人ドクター」については、私のほうで調べております。今月末から来月初旬ごろ、情報がまとまる目途がつきました。前者では、例えば客員研究員や非常勤研究員について、後者については働きながら大学の博士課程に在籍する方法について、「研究室通信」に暫定的な情報を整理し、お届けしたいと考えております。「研究室通信」Vol.2の配信が決まり次第、追ってブログで告知する予定です。

【アンケート結果・人気記事のランキングより】トーク企画・「仲見研ラジオゼミ」第一回のテーマ決定! - 仲見満月の研究室より)

そういうわけで現在、いろいろと情報をまとめている状態です。このテーマをまとめて、在野ドクターや非常勤講師の人たちの研究資源へのアクセスの現実を浮き彫りにし、次の段階へと進めたいなぁ、とな考えておりますが、年度末で、仲見が多忙なため、予定より大幅に配信が遅れております。申し訳ありません。代わりと言っては何ですが、Twitter上で関係することを話したり、「いいね」登録したりしています。お急ぎの方は、私のツイートをたどってみて下さい。 

 

ちなみに、民間企業に勤務している方が、民間助成団体からの助成金で研究をすると、勤務している企業の調査で分かりまして、副業規定に違反しなくても嫌味を言われたり
(研究に割く力を会社の仕事のほうに注げ、など)、会社に居づらくなったり、するそうです。加えて、年齢を重ねると、心身の衰えと戦いつつ、研究活動をすることになるため、やはり若年のうちにある程度、研究をするならしておくというのも、理解できます。

 

 

4.セクハラやアカハラの防止・対策について

セクハラ・パワハラアカハラなどの相談窓口とガイドラインの整備、学会間の情報総合サイト、学会・研究会の共催などが必要では? #若手問題2017

「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 (3ページ目) - Togetterまとめより)

出ました、各種ハラスメントへの対策です。このブログでは、実際に私とその周辺で起こった主にアカデミック・ハラスメントの事例紹介、ハラスメントの起きやすそうな指導教員や研究室の避け方、現時点での対処の仕方、そして、今回の「若手研究者問題」シンポジウムとは別のところで動いていた人たち、国や「神エクセル」変革者・河野議員の取り組み等、取り上げてきました。

 

あまりにも記事が増えたため、系統立てて目次に整理しました。ご査収ください↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

「若手研究者問題」シンポのまとめ者の方には、ツイートを飛ばしてご案内しましたが、もし、気になる方がおられましたら、シンポジウムとは別のところで動いていた人たちにつきまして、上記の目次の「6アカデミックハラスメント対策に向けて反アカハラ運動と国の動き」をご参照ください。繋がれると、上記の引用させて頂いた対策や必要な機関の設置に向けて、より大きな動きができると思います。

 

 

5.歴史学を含む人文科学系の学術分野の存在について、その魅力は十分に伝わっているか?

今回のtogetterまとめを読み進めた中盤、以下のようなツイートが出てきました。

歴史学分野は統一的な学会もなく、ロビー団体として自分たちの労働市場をなんとか出来る組織もない #若手問題2017

「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 (5ページ目) - Togetterまとめより)

つまり、日本には統一的な歴史学分野の学会がなく、一点集中型の強力なパワー砲のような、「声明」や主張をまとめて、打ち出せないという理解で、よろしいのでしょうか?こういったロビー団体というか、学問分野の主張をしたり、魅力を言えていなかたったりというのは、文学や哲学といった、ほかの人文科学系の学問にも通じると思われます*3

 

研究ポストの現象は、私が言うのもなんですが、その分野を学びたいという人を引っ張ってこれないということだと思います。

諸学問領域の中にあった歴史のポストが消えている。歴史の重要性が低下している。これは学問観の変化。 #若手問題2017

「若手研究者問題」シンポジウム2017『歴史学の担い手をいかに育て支えるか』 (5ページ目) - Togetterまとめより

 

歴史学に集中して書くと、日本の中高の社会科で学習する歴史の内容と、現代日本の社会人生活でのコミュニケーション論的な意味合いで、初めて役に立てたと実感したのは、次のツイートで取り上げた、お悩み相談にラブホテルのスタッフをされている「上野さん」が回答するもので、そのテーマは”正論戦争”のお話でした。

正論を振りかざして、相手に大きな損害を与えると、「窮鼠猫を噛む」のごとく、相手は死に物狂いの捨て身レベルの全力で、反撃にかかってくるぞ!第二次世界大戦に向かったドイツの背景には、その前の第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約で、フランスに大きな打撃を与えられたことが原因の一つとして考えられる。だから、正論はビジネスの場で振りかざしても、誰も得をしないから、振りかざすものではない。大雑把に「上野さん」の回答をまとめると、こんな感じになります。

そういうわけで、歴史学の魅力を伝え、ある程度の専門的な学習を希望する人口を引っ張ってくるところから考えると、初期の段階で、上記のようなお悩み相談レベルの分かりやすく、そこそこマニアックな用語も交えて知的好奇心を刺激し、最終的に私たちの日常に役に立つよ、というオチをつけられる説明の仕方が必要になってくるんじゃないでしょうか。歴史的に有名で大きな事実が私たちの日常生活と直接リンクしてくるような、分かりやすい物語というか、説明の仕方が必要ではないかと。

 

過去を消費財化することに批判もあるかと思いますが、そうでもしないと、生き残れないと思います。そのくらい、歴史学を含む人文科学系の学問て、他分野からすると溝幅と深さがありすぎて、容易に埋まらないんですよ。そんな不理解から、「人文科学系の学部は要らないよね?」という軽視に繋がっているのでは?

 

加えて、大学院で歴史学の分野に進むメリットについて語り、設立した大きな統一的なロビー団体でメリットをアピールすると、いいのではないでしょうか*4

 

 

以上、ここまでがtogetterの5ページ目までの 内容になります。予想以上に長くなりましたので、後編へ続きます。 

*1:実際、私の学部時代のゼミの先生がそうでした。ケイタイ不携帯、大学支給のメールアドレスも通じないで、打ち上げや飲み会の連絡を回すのに、ゼミ委員で一苦労しました。

*2:なお、学会同士の対立や人間関係の面倒さは、存じ上げております。あくまで業務効率性と会員数確保の重視という合理性を重視した立場での見解です。どうか、ご寛恕ください。

*3:なお、歴史学を含む人文科学系の分野の分かりにくさについては、成田ずみさんがクリアにご指摘なさっています。文句あるか省に軽視されても、しょうがないくらいの分かりにくさだと正直、元人文科学系の人間として認識しました↓

zarameyuki.hatenablog.com

*4:文系大学院という選択肢のメリットを、分かりやすく書いておられるエントリ記事を見つけましたので、リンクさせて頂きました。

aniram-czech.hatenablog.com

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