仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

先月のJ-STAGEへのサイバー攻撃と国の学術情報検索サービスの問題~続・「「Ciniiがなくなる?!」という噂の真相」~

<今回の内容>

1.前回の記事のあらすじ

本記事は、2017年4月5日㈬更新の次の記事の続編です↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

この「Ciniiに関する記事」は、概要を示すと、

 ①Ciniiで検索した文献(主に学術的な論文)にPDFファイルがある場合、Cinii内の論文情報のページに行き、PDFファイルのアイコンを押すと、PDFファイルを閲覧できるサービスが2017年3月までで終了

 ②2017年4月になって、Ciniiで検索してもCinii内でPDFファイルが見られなくなった

 ③同年4月5日、「PDFファイルがCiniiで見られない→Ciniiがなくなる?!」とネット上で騒ぎとなる 

 ④Ciniiを管理・運営する国立情報学研究所(NII)の告知によると、  

 論文などの学術情報検索サービス「CiNii(サイニィ)」から4月5日現在、電子化(PDF化)された論文や書籍などの一部の情報が閲覧できない状態になっている。国立情報学研究所(NII)の電子図書館事業(NII-ELS)終了に伴うものだが、研究機関や学生などから困惑する声も上がっている。(中略)

  ただ、国は学会誌の電子化支援について、科学技術振興機構JST)が運用する電子ジャーナル出版プラットフォーム「J-STAGE」に一本化することを決めた。このため、NIIは電子図書館事業を17年3月に終了すると発表していた。

 終了したのは電子図書館であるNII-ELSであり、論文検索サービスとしてのCiNiiは存続している。だがCiNiiから検索した論文が閲覧できないため、「CiNiiが廃止?」などとTwitterに投稿する人が相次ぎ、トレンドにも入った。

(「CiNiiで論文が見られない」電子図書館終了に困惑の声 - ITmedia ビジネスオンライン)

   という経緯があった

 ⑤以上の経緯より、ふと私は、大学院で図書館司書課程を履修していた時、情報サービス関係の諸々の授業で、「国立情報学研究所のCinii管理しているところは、PDF化の予算を削減する予定なので、CiniiでPDFを表示してほしいなら、論文のPDFファイルを自分で送れば、PDFファイルへのリンクボタンを設けてもらえる」という話を思い出した。今回のCiniiでのPDF扱い終了の報を聞き、結局、J-STAGEへの一本化することが決まったのか、と理解。

 ⑥現在、Ciniiの学術情報検索サービスの機能が、J-STAGE等の他の期間が管理・運営する場所へ移行作業中だけど、その途上で、各ジャーナルや研究機関の学術誌のデータ移動がうまくいかなくて、問題が起こっている模様

 ⑦まとめとして、

  ・「Ciniiがなくなる?!」ことは、今のところ、デマ

  ・ 今まで便利だったという意味でのCiniiはなくなる、という意味では、「Ciniiがなくなる?!」という噂は、あながち、嘘ではなかったと言えないのでは?

  ・日本の学術情報検索サービスを握り、国の関係機関や法人であることは変わらないし、現在の我が国の財政的な状態、それから学術に向けられている社会の意識を思うと、どこまでCiniiやJ-STAGEのような、サービスを維持できるのか、少々心配

  ⇒これからは、職業研究者のいる学術機関、それから民間企業、自治体でも学術情報の検索サービスを、特定分野だけでいいですから、作っていった方がいいのでは?

  (大学や研究所等のリポジトリ等)

 

という風になります。

 

f:id:nakami_midsuki:20170406175836j:plain

 

 

2.前回に対するネット上(主にTwitter)での反応とJ-STAGEへのサイバー攻撃

前回の記事を投稿した日の翌日午後、アクセスを見ると、ここ一週間の一日平均アクセスが3倍の1200人台となっており、私を「ファ?!」と驚かせ、危うく、飲みかけのコーヒー牛乳を吹きかけさせるほどの事態を起こしました。こからのアクセスが多いのか、調べたところ、どうやら、上記のCiniiに関する記事を紹介した次のツイートがTwitterで拡散されたようです。

 

このツイート後、5日の晩から、今回の「Cinii消失騒動」に対して、togetterまとめに纏められていないか等、検索していたところ、何と騒動の一か月ほ前、2017年3月、「科学技術振興機構JST)が運用する電子ジャーナル出版プラットフォーム「J-STAGE」」が、外部から3月8日にサイバー攻撃を受けたことが判明↓

togetter.com

下がJ-STAGEの実際のツイートです。

そして、緊急のセキュリティ対策と対応により、同月15日前後まで、サービス停止状態になっていたことが分かりました。

(復旧については「J-STAGE サービス再開に際してのお詫び」の文書が出ています)

 

上記まとめについて、私がざっと読んだ印象では、どうやらJ-STAGEを含むいくつかの国の関連機関や官庁のサイトについて、それらの脆弱性を突いたものだった模様です↓ 

www.itmedia.co.jp

 

こうしたJ-STAGEへのサイバー攻撃を見て、思わず、私は前回の記事と関連付けて、次のツイートを致しました。

仲見満月@経歴「真っ白」博士 @naka3_3dsuki

この問題、今はデマで済んでいますが、セキュリティの脆弱なところを各々、用意周到な作戦でまとめて一気に突かれると、J-SATGE、Ciniiほか、日本国の学術情報検索サービスは、機能不全起こしてしまうでしょう。復旧できなければ、嘘から出た真実にいずれはなるでしょうね。リスク分散推奨

 

仲見満月@経歴「真っ白」博士 (@naka3_3dsuki) 

J-STAGEに訂正させて頂きます。失礼致しました。

 

上記のツイートのリスク分散に関しては、前回の記事の読者の方から、

大学や研究所等のリポジトリのように、職業研究者のいる学術機関、それから民間企業、自治体でも学術情報の検索サービスを、特定分野だけでいいですから、作っていった方がいいのでは?

【2017.4.6_0056追記】「Ciniiがなくなる?!」という噂の真相~「「CiNiiで論文が見られない」電子図書館終了に困惑の声」(ITmediaビジネスより)~ - 仲見満月の研究室

の終盤の提言に賛同をいくつか、頂きました。

 

先月のJ-STAGEへのサイバー攻撃、そして、Cinii機能の一部を他機関の管理・運営している場所への移行作業に時間がかかっている現状を考慮すると、やはり、大学・大学院および各学会、民間企業や自治体のおいて、それぞれが得意とする分野でいいですから、学術情報の検索サービスの構築を急いだほうがよいでしょう。

 

実は、理学・工学系の一部の巨大学会では、そこから出している学術ジャーナルに掲載された文献について、既に独自でPDF化し、学会員限定ではありますが、学会のサイト等で公開しているところが存在しています。おそらく、企業会員を複数抱えており、学会が法人格のところもあるようで、技術的にも資金的にも会員向けの学術情報の検索サービスが作れたのではないか、と私は踏んでいます。

 

問題は、巨大学会ほどの規模を持たず、検索サービスを構築しにくい理系の各種学会、それから、現在は様々な面で資金難・会員数の減少が危惧されている文系の各種学会、それから大学・大学院、国公立の研究所といった研究機関だと思われます。国立であったとしても、国から十分な資金を得られなければ、今回のCiniiのように、サービスを種る用しなければならなくなるでしょう。Twitterで小耳にはさんだところ、今回の「Cinii消失騒動」は、国立情報学研究所のCinii関連の事業に対する資金が十分でなくなったため、サービスを縮小せざるを得なくなった、という指摘のツイートを見かけました。

 

 

3.2014年に「国立情報学研究所電子図書館事業」の終了告知とその周辺の問題

4月6日の午後、「Cinii消失騒動」について引き続き、ネット上で調べていたところ、2014年の段階で、Ciniiを含む「国立情報学研究所電子図書館事業」(NII-ELS)が二年後の2016年に終了すると告知されていたことを、次の「リポート笠間」の記事で知りました↓

kasamashoin.jp

 

この「リポート笠間」第57号の記事によれば、

NII-ELSは、学会誌の新刊、バックナンバーを受けとって無償で電子化し、データベースに登録、公開するサービスをこれまで行ってきており、日本文学研究の学会誌でこの事業に依存しているところは少なくない。もし各学会が何の対策も講じなければ、現在新刊の学会誌をNII-ELSに渡して電子化、公開している学会誌は、その時点以降の号の電子化、公開が途絶えてしまいかねない。

(笠間書院 kasamashoin ONLINE:和田敦彦「学会誌電子化・公開の明暗―NII-ELSの事業終了を視野に」●リポート笠間57号より公開)

という、NII-ELSの仕組みとサービス内容、NII-ELSが2016年に終了することで発生する新たな問題に対して指摘がされています。NII-ELSの2016年終了については、執筆者の仲見自身が前述のとおり、図書館司書課程を履修時に情報を授業担当の先生方から聞いていたという事実と合致します。

(私がNII-ELS具体的に終了時期については、聞いてませんでしたが、2010年代後半ごろには終了するのでは?と先生方がキャッチしていた情報のようでした)

 

この2016年にNII-ELS終了ということは、事前に告知され、情報を受け取っていた人たちがいたにも拘わらず、今回の「Cinii消失騒動」は発生しました。国立情報学研究所によって、終了のお知らせは2014年には出ていたものの、告知を受け取った人たちが少数にとどまっていた遠因として、私が邪推したことは、

 

 ・国立情報学研究所が広範囲に終了告知を周知できないほど力を持っていなかった、あるいは力を失っていた

 ・ある程度、広範囲に終了告知は拡散されていたが、各研究機関、特に大学・大学院の教職員が雑務に忙殺され、各機関での告知がそれほどなされていなかった

 (雑務によつ忙殺の件は次の拙記事を参照:日本の大学は研究と教育を分離するべき話~「現役工学系教授からみた日本の大学の惨状」(Htelabo::AnonymousDiaryより) - 仲見満月の研究室

 

ということです。加えて、もし2014年に2年後の授業終了が告知されていたとしても、年々、会員数の減ってきている学会のある研究機関内の文系学会等では、対応が難しかったと思われます。そもそも、大学や研究機関を運営する法人、予算を出す国や自治体、学校法人等が学術情報のサービスを契約・管理する各図書館にお金を割けなければ、対応は困難です。

 

これからは、様々な面で資金難・会員数の減少が危惧されている文系の各種学会、それから大学・大学院、国公立の研究所といった研究機関で発行されている・されていたジャーナルについて、上記の「リポート笠間」57号の記事で和田氏が指摘しているように「電子化、公開が途絶えてしまいかねない」ことが、より表面化してくると思われます。

 

 

 4.最後に

NII-ELS終了後の現在、我々は学術情報の検索サービスについて、どのような策をとっていけばよいのか?和田氏が「リポート笠間」57号の記事で紹介しているのは、J-STAGEへの移行のことに触れつつ、特に和田氏の専門とされている日本文学に関して、

より安価に、そして大規模にこうした事業を学術機関が担う可能性もある。国文学研究資料館や、国際日本文化研究センターといった機関が中心となり、代替サービスの提供とまではいかなくとも、学会誌の電子化、公開を支援、推奨するプログラムを作っていく可能性もある。

笠間書院 kasamashoin ONLINE:和田敦彦「学会誌電子化・公開の明暗―NII-ELSの事業終了を視野に」●リポート笠間57号より公開

という可能性を述べておられます。おそらく、文系分野についても、私は同じことが言えるとは思います。が、先述のように、国の各機関に日本の学術情報サービスの管理・運営の多くを委ねておくことに、私は大変な不安を抱えております。

 

長々と今回の記事で述べてきた現状と可能性をもとにすると、やはり、繰り返しになりますが、自分たちの分野だけの可能な範囲で、学術情報の検索サービスを各種団体で構築しておくことが先決と思われます。同時にその他の関連団体と連携をとり、近い将来、ある程度の団体の連合で、学術情報を共有するプラットフォームを構築すれば、いいのではないでしょうか?ただし、このあたりは団体ごとのお金と時間的余裕、サイバー環境や技術者等の確保に大きく左右されるので、実現性は未知数です。

 

Twitter上では、一部の研究者ユーザーのの方々が自分の論文の情報と公開先のURLに「 #CiNiiは闇に呑まれたから私の論文を読め 」のタグを付ける動きが始まっています。これも、学術情報の広い意味での保存に寄与するかもしれません。

(しないかもしれません)

 

今回の学術情報の検索サービスに関する諸問題は、現在進行形です。今後も引き続き、私のほうでも追っていけたらと考えております。

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