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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

AIでresearchmapに研究者の業績を拾ってくる改修案~衆議院議員 河野太郎「お花見中の研究者の皆様への皆様へ」その2~

<国の研究者データベースに人工知能を使う案が出ているらしい>

1.日本国の研究者DB兼コミュニティサイトにAIという話?!

先ほどから、アカハラに関する第三者機関活用の速報+「文科省の統一ルール」のこと~衆議院議員 河野太郎「お花見中の研究者の皆様への皆様へ」~ - 仲見満月の研究室に引用した、河野衆議院議員の報告ページを再読しておりました↓

www.taro.org

 

アカハラ対策の話題の後、研究者の業績のデータや競争的資金のテーマが出てくるんですが、読んでいて「ん?」とスルーできない話が出てきました。前後関係の文脈もあるため、大幅に引用させて、下に書かせて頂きます。

研究者の業績のリサーチマップへの統一は一歩ずつ進んでいます。(中略)

 

科研費に関しては、現在進行中の大規模改修の後、リサーチマップへの対応の手直しを行うことになり、今年9月の平成30年度の公募には間に合いませんが、来年3月の公募にはシステム改修も終わり、対応ができるようになっているはずです。

 

リサーチマップに統一していくよという周知も間もなく始まるはずです。

 

JSTで、AIを使ってリサーチマップに研究者の業績を拾ってくるという改修を考えているようですが、まあ、やればいいじゃんということで、それがないと何か始まらないということにはなりません。

 

(お花見中の研究者の皆様へ | 衆議院議員 河野太郎公式サイト)

ちょっと待て?!国立研究開発法人・科学技術振興機構ことJSTは、自分のところで管理・運営している国の研究者データベース兼コミュニティサイトのリサーチマップ(researchmap)に、研究者の業績を拾ってくるため、ハイテクなAIを使う改修を考えているのか・・・。あまりにも驚いた改修案で、思わず、下線を引いてしまいました。

 

f:id:nakami_midsuki:20170408172756j:plain

 

引用部の下に、いろいろと情報を出しました。こういった言葉になじみのない読者の方には、「JSTって、何?」、「researchmapって、何ができるの?」という固有名詞に対する疑問が出てきたいと思うので、まず、そこから大雑把に説明していきます。

  

 

2.国立研究開発法人・科学技術振興機構ことJSTって何?

 ホーム|国立研究開発法人 科学技術振興機構のトップを読むと、「科学技術振興機構(略称JST)は、イノベーションの創造を推進します。知の創出から研究成果の社会還元とその基盤整備を担うわが国の中核的機関です」という説明があります。分かりにくいので、科学技術振興機構 - Wikipediaの頭の説明を読むと、

国立研究開発法人科学技術振興機構(かがくぎじゅつしんこうきこう、Japan Science and Technology Agency、略称:JST)は、科学技術振興を目的として設立された文部科学省所管の国立研究開発法人。文部科学省の競争的資金の配分機関の1つ。

(科学技術振興機構 - Wikipedia)

とのこと。先の公式サイトとWikipediaを合わせて読むと、日本の科学技術の開発や、その技術を広め、あるいはその活動をサポートする機関のようです*1

 

JSTが携わっている事業分野の一つに、「科学技術イノベーション創出のための科学技術基盤の形成」というものがあります。そのあたりの研究者の情報を活かした事業、例えば「研究人材キャリア情報活用支援事業」の1つとして、国公立・私立の研究機関や高等教育機関(大学・短大・専門学校・高専)の求人がアップされている「JREC-IN Portal」が考えられます。この求人サイトの詳細は、【2017.2.17追記】文系(特に人文科学系)博士卒のアカデミックポスト就職の現実と求人情報掲載先の紹介 - 仲見満月の研究室を見て頂くとして、実はresearchmapに登録した自分の研究者情報を使って、JREC-IN Portalの中で履歴書や業績リストを作れるようになっています。聞く限り、便利なようで、どうやら今回挙がっていた、研究者の業績をresearchmapにAIで拾ってこよう、という案は、コンセプトとして関わってそうだと、私は邪推しております。

 

このJST、実は私が今週更新した次の記事と関連が深い事業をしております。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

naka3-3dsuki.hatenablog.com

Cinii内でのPDF文献の閲覧機能について、その引っ越し先が「電子ジャーナル出版プラットフォーム」であるJ-STAGEです。このJ-STAGEの管理・運営をしているのが、JSTであります。ちなみに、4月6日の記事で書いた通り、先月中旬に外部からサイバー攻撃J-STAGEは受けており、対応に追われていたのもJSTだと思われます。

 

JSTの事業は他にも様々なものがありまして、様々な研究プロジェクトを打ち出し、研究者や企業を募ったり、プロジェクトの成果を発信したり、しているようです。

 

 

3.researchmapって何?

 3-1.researchmapの概要

JSTに続いて、今回のメイン舞台のresearchmapについて、説明をしてきます。

researchmapは、Ciniiを管理・運営している国立情報学研究所(NII)の「社会共有知研究センター」が研究開発・提供し、JSTの「知識基盤情報部」がサービスの提供を行っています*2。researchmapそのものについては、国の研究者のデータベース&SNS的なコミュニティ機能を持つサイトと言える場所であり、既に登録している研究者による招待、あるいは新規登録のメールフォームに必要事項を記入して送信することにより、登録が可能となります。

 

招待性のところが流行時のmixiを思わせますが、実はmixiにresearchmapが似ているのはそれでだけではありません。researchmapに登録すると、研究者一人につき、プロフィールページの「マイポータル」(個人経歴・学歴、種類別の研究業績、所属学会や団体等の情報をまとめたページ)、mixi日記に当たる「ブログ」(Twitter等のSNSと連携あり)、資料をアップして訪問者がダウンロードできる「資料公開」といった、ホームページやサイトをresearchmap内に持つことができます。登録後に時間が経つと、「おとなりの研究者」ということで、登録者の分野と同じ分野の研究者を知らせる機能が付いています。研究者を集めたコミュニティを作ったり、検索したりできるサービスもあって、マイナーなテーマで研究している院生が仲間を探すには、助けとなりそうです。

 

  3-2.researchmapの便利な機能と河野議員の報告にある方向性

researchmapは単なる研究者DB&SNS的サイトではなく、実用的な機能があります。それは、先述のとおり、研究者向け求人サイト「JREC-IN Portal」と連携させることで、履歴書や業績リストを作成する機能です。この機能は便利なようで、私が院生時代にお世話になった助教先生も、使っておられました。ちなみに、researchmap自体にも公募の求人が出ているので、合わせて見てみるといいかと思いました。

 

研究職の求人への応募書類を準備していて、けっこうあるのが、

大学の求人は採用側指定の独特な書式書類を求人表の下に添付したり、ダウンロード先のURLのリンクが貼ってあったりしますので、指定の書類がある場合は、この求人サイトで作った書類が使えず、ストレスになります…。

【2017.2.17追記】文系(特に人文科学系)博士卒のアカデミックポスト就職の現実と求人情報掲載先の紹介 - 仲見満月の研究室

というところ。冒頭の河野議員の報告の続きには、ヒアリングで分かった意見が紹介されています。

各大学・研究機関の公募もリサーチマップに統一をという声があります。

文科省でヒアリングしていますが、履歴書の部分は問題ないようですが業績に関しては、現在のリサーチマップでは査読付きの論文かどうかわからないとか、インパクトファクターがわからないなど情報不足だという声もあります。

(お花見中の研究者の皆様へ | 衆議院議員 河野太郎公式サイト

これを読むと、各大学・研究機関での公募も、履歴書も、全部researcmapで済むように、ということなんでしょうか?今回の報告だけ読んでいる限りでは、よくわかりません。河野議員の公式サイトをさかのぼって、他のページも読む必要がありそうですが、業績に関する機能、公募の求人情報の掲載はともかく、履歴書はresearchmapのデータをもとにした字データで履歴書を統一書式で作成し、受け入れてもらえるようになると、個人的には非常に有り難かったです。

 

 3-3.登録者が代理の人に登録情報更新を頼む場合とAIによる業績拾いの案

SNS的な機能を持つresearchmapの「マイポータル」。小耳にはさんだ噂では、科研費を取得している研究者の中には、登録後にひとまず「マイポータル」に最低限情報を登録しておき、後は所属先の研究機関や秘書の方に情報更新を頼んでいるケースがあります。多忙な職業研究者の場合、科研費助成金のプロジェクトで報告書を書いたり、論文集を出したりした後、次の新たなプロジェクトの準備に取りかかる人が多く、なかなか、researchmapの登録情報の更新まで、手が回らないことがあるのでしょう。このあたり、仕事や生活で忙しく、SNSに書き込みができなくなった利用者と同じかもしれません。

 

プライベートで個人的な交流や書き込みを楽しむSNSなら、まだ更新が途絶えても仕事のほうに影響はないかもしれません。一方、researchmapのほうは、研究者のデータべス、そしてコンタクトを取ったり、携わった業績の情報が載せてある場所です。他の研究者、指導教員を探す院受験者等にとっては、SNSというよりも、国の機関が運営し、研究者の情報を閲覧できる場所という意味合いが強い場合が考えられます。

 

そういうわけで、海外の研究者が日本の研究者を調べる際、アクセスすることがある可能性もあるわけで、登録者(とその周辺の人たち)には、できるだけ頻繁にresearchmapの登録情報は更新しておいたほうがよいこともあるでしょう。そうは言っても、登録者自身は忙しい!そういうわけで、数年間の研究業績を更新していない人もいるでしょう。研究プロジェクトの関係で、雇われた秘書、あるいは研究機関の職員で、業務上、所属研究者の登録情報を最新のものにしないといけなくなった、とします。研究機関の刊行物で、該当研究者の業績はある程度、拾ってresearchmapに登録できたけど、それ以外の把握できない業績はどうしたらいいのか?

 

というようなケースは、おそらくresearchmapのサービスを担当するJSTの耳にも、入っているのかもしれません。秘書や大学職員が代理で登録者の情報をなるべく正確に拾って更新したいけど、すべて拾って反映するのは困難である、と。ならば、「国立研究開発法人 科学技術振興機構」ということで、AIすなわち人工知能を使って、研究者の業績を拾ってきてはどうか?と、JSTの中の人は考えたのかもしれません。

 

例えば、登録者の「マイポータル」の情報を読み込ませたAIに、その登録者に関するネット上の出版物や関わった企業のプロジェクト、講演会や学会発表の題目等の情報を拾ってくるように命令して、収集ができたらresearchmapに登録させる。このようなことを目指しているのでしょうか?便利といえば、便利ですが、集めた情報をもとに更新された箇所に誤りがないよう、新情報の公開前に登録者自身の確認という段階が必要だと思われます。他にも、個人情報流出といったデメリットが考えられ、私はちょっと不安だなと感じました。

 

 

4.最後に

JSTが考えている「AIを使ってリサーチマップに研究者の業績を拾ってくるという改修」は、その具体的な内容に私がたどり着けていないため、更なる情報収取と、今後の報告を待つしか、できることはありません。正直なところ、JSTの中の人たちには、管理・運営しているJ-STAGEへのCiniiからの機能の引っ越し、J-STAGEだけでなくresearchmap等に対するサイバー攻撃対策やセキュリティ面の強化への対応のほうに力を入れてほしいと考えております。

 

河野議員が仰るように、AIに関わる改修案については、私としても「まあ、やればいいじゃんということで、それがないと何か始まらないということにはなりません。」という方向では、同意ではあります。加えて、国立情報学研究所だけでなく、JSTのほうの懐具合も不安視していまして、国の機関だけに研究者のデータベース事業を任せていていいのかな?とも感じております。

 

とりあえず、各研究機関には自分たちの公式サイトに、researchmapとは別で引き続き、所属研究者のプロフィールを載せるページを維持して頂き、定期的に更新して頂きたく思います。researchmapと所属機関、人によっては個人サイトのどれもを更新していくのは、面倒くさいですけどね。

*1:「新技術の創出に資することとなる科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する基礎研究、基盤的研究開発、新技術の企業化開発等の業務及び我が国における科学技術情報に関する中枢的機関としての科学技術情報の流通に関する業務その他の科学技術の振興のための基盤の整備に関する業務を総合的に行うことにより、科学技術の振興を図ることを目的とする」:国立研究開発法人科学技術振興機構法(平成十四年十二月十三日法律第百五十八号)

*2:researchmapとは - researchmap

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