仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

続・人文学の「価値」を「正面から問うこと」の一連の議論について

 本記事は、次の記事の続編に当たります。

 

【追記】人文学の「価値」を「正面から問うこと」の一連の議論について

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

①の記事について、4月15日あたりにKASUGA, Shoさんにお読みいただき、Twitter上で話し合いをさせて頂きました。それが次の②のtogetterまとめです。

 

②「人文学は役に立つのか?」という問題について

togetter.com

 

話し合いのポイントとしては、経済的な面から「役に立つ・立たない」を強調し過ぎると、その「役に立つ・立たない」は主観から来るものであり、人によって「何だ、人文学って役に立たないじゃん」と思われてしまう危険があるということ。KASUGAさんの見方によりますと、人文学は役に立つというブームが20年くらい前に起こったけれど、その時、政治家や官僚その他の人たちが「その役に立たないじゃん、人文学系の予算、減らしちゃえ!」ということに繋がっているのではないか?ということです。

 

主観による「その役に立たないじゃん、その分野の研究予算、減らしちゃえ!」は、先鋭化してしまうと、人文学だけでなく、他分野に対しても非常に危ないことになるのではないかと、思いました。他分野に対しても現在進行形、いや日本の学術業界全体に対して、起こっていると言ってもいいかもしれません。

 

f:id:nakami_midsuki:20170420170011j:plain

 

そこで、私はエンタメ業界とある程度、手を組むべきでは?という考えを持っていたのでツイートしたら、KASUGAさんがお返事として、

KASUGA, Sho @skasuga

「教養を楽しめる人に向けてコンテンツを提供する」モデルは、人文学が受け入れられる下地を作るという意義はあるかもしれませんが、一方で「じゃ、税金じゃなくて受益者負担でやっていってください」ということになる可能性があるわけです。

 

なので、究極的には、人文学の成果は、「それを楽しめる人」のためにあるのではなくて、社会が広く浅く負担すべきインフラなんですよ、という言い方にすべきかと思います。

(【議論】「人文学は役に立つのか?」という問題について - Togetterまとめ)

というご指摘を頂きました。それに対して私は、

仲見満月@経歴「真っ白」博士 @naka3_3dsuki

難しいですね。社会に広く、インフラとして広く浅く、負担して下さい、という言い方で、かつ負担者を納得させていくアピール方法は、どのようにしたらいいのでしょうか?私は受益者負担でやってください、を入り口にするラインまでしか、考えられなくて、困っております…。そこを生み出したいと。

(【議論】「人文学は役に立つのか?」という問題について - Togetterまとめ)

とツイートをさせて頂き、KASUGAさんより次のリプライを頂きました。

KASUGA, Sho @skasuga

難しいですが、私の意見としては、結局社会が民主的、包摂的、多文化的であろうとすれば、人は人文学的知見を利用せざるを得ないわけで、そういう社会が「目指されるべきだ」という合意を徐々につくっていくしかないと思うのですね。

【議論】「人文学は役に立つのか?」という問題について (2ページ目) - Togetterまとめ

 

議論はしばらく続きますが、結論としては、社会が民主的であるためには人文学が必要となるような、そういう社会を目指さざるを得ない、ということになりました。ある意味、①の議論の出発点となった「人文学は何の役に立つのか? - 道徳的動物日記」に戻った感じは否めませんが、結局、学問としてのヒューマニティは、人間がよりよく生きる道を追究するところに行きつくのでしょう。

 

本記事では、②のまとめをだいぶ端折って書きました。②のまとめには、今までの「人文学は役に立つのか?」という議論に関する諸々のまとめ、および次の関連書籍を挙げております。どうぞ、よろしくお願い致します。 

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