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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

「書籍『ハラスメントの事件対応の手引き』の読書メモ」と関連情報まとめ

<本記事のコンテンツ>

1.はじめに

アカハラの諸問題に取り組まれているフォロワーの水無月さんが、ハラスメントの事例について法的な視点から扱った本の読書メモをツイートされていました。今回、ご許可を頂き、さっそく、togetterにまとめさせて頂きました↓

togetter.com

(以下、「読書メモまとめ」)

 

今回の「読書メモまとめ」では、水無月さんがお読みになった次の書籍について、メモ的にツイートされたことをまとめ、加えて今までの水無月さんのツイートのtogetterまとめを繋げた形となっております。 

「読書メモまとめ」について、水無月さんも、私も法律に関してはほぼ素人であり、法律の専門家の方に可能ならご教示頂きたく思い、まとめを公開させて頂きました。まとめる途中で、ネット検索したり、Twitterで拾ったりしたアカハラ案件や訴訟に関する問題を本記事では、「読書メモまとめ」を補足する形で、一緒に整理してお伝えしようと思います。少々、長くなりますがお付き合い頂けると、有り難いです。

 

f:id:nakami_midsuki:20170425195627j:plain

 

 

2.「書籍『ハラスメントの事件対応の手引き』の読書メモ」の内容

  2-1.『ハラスメントの事件対応の手引き』の概要

水無月さんによると、『ハラスメントの事件対応の手引き』(以下、本書)の内容は、全体として、「弁護士向けで職場のパワハラがメインですが、教員→学生や教員→教員のハラスメントについての判例や訴状文例などが載っています」とのこと。続けて、本書の一部が紹介されており、アカハラに悩まされている大学教員やが学生には、実際の判例や訴訟の事例をざっと知る上で、参考になりそうだと私は思いました。

 

アカハラ事例については、

ただよく読むと研究室内部のアカハラで教員→学生の例は比較的少ないですね。
教員が他の教員や大学を訴える例が半分ほど。

書籍『ハラスメントの事件対応の手引き』の読書メモ - Togetterまとめ

とのことでした。「教員→学生の事例」<「教員→他の教員や大学を訴える例」 の事例数の差があるようです。

 

ここからは、まず「教員→他の教員」のアカハラの事例を私が加えつつ、水無月さんの読書メモに沿って、見ていきましょう。

 

 2-2.「教員→他の教員」のアカハラ+秘書職員等へのセクハラ

まず、タイムラインで一部のツイートが私のところまで回って来ていたのが、次のオッカムさんのツイートまとめです:

togetter.com

(以下、オッカムさんのまとめ)

 

かつて、オッカムさんが専任講師として所属されていたところに、オッカムさんと意見の合わない教授がいて、色々と妨害行為等のハラスメントをされたという内容です。その例は、

その時その教授は「ほほう、あんた立派な人だ。定年まで専任講師でいいとおっしゃる。いやあ立派だ」とおっしゃった。顔を5センチくらいに近づけて睨みながら。「俺が現役の間は絶対に昇進させないし、申し送りをして退職後も昇進できないようにしてやる」。

 

(中略)

 

「俺は事務と親しいからな。必ずお前の落ち度を見つけて懲戒免職に追い込んでやる」とも言われたなあ。

(教授「君は定年まで専任講師だ」 - Togetterまとめ)

という専任講師からの昇進を阻む行動の宣言がありました。そして、実際に以下のように昇進を阻まれていたようです。

教授会に他にもメンバーはいるわけですが「強いベットー」を出す教授が一人いれば、あえてそれに反対意見も出ません。彼が言った通り私は見事に昇進できませんでした。給与・ボーナスそして退職金において多分300万以上安くなったわけで、その教授の攻撃は成功したし私は致命的な損害を受けました。

(教授「君は定年まで専任講師だ」 - Togetterまとめ)

また、ある時は、

飲み会のたびに、その教授は僕の採用書類のコピーを持ってきてそれを酒の肴にしていた。「こんな調子の良いこと書いてるが、話が違うんじゃないのか?」とすごい酒癖が悪い。僕は「先生、そういうのはハラスメントですからおやめください」と申し上げたところ、「あー訴えろ訴えろ。無駄だ」と居直る。

 

このやりとりをもう少し正確に再現すると、こうだった。僕「先生、採用されたからには私も正式な専任教員なんですから、その過程での資料を今持ち出すのはパワハラに該当するので、お辞めになってください」と申し上げると、その教授はこう言った。「いやだ」だった。指図するな俺はこうしたいんだと。

教授「君は定年まで専任講師だ」 - Togetterまとめ

という感じの中傷を公の場でされたり、

酔っ払った教授が、「ぐらー!」と研究室のドアを蹴飛ばすのをじっと耐えて、エピクテートスとかを読んでいいた。

教授「君は定年まで専任講師だ」 - Togetterまとめ

という物に当たるという名の威圧行為に相当する行為だったり、 明らかなハラスメント行為がなされていたと。

 

この教授は、「生え抜きの人でしたね。卒業生です。」ということで、職業研究者として、その大学では力のある先生だったようです。私の身近にも、かつて似たような方がいらしたような…。ハラスメントを受けつつも、オッカムさんは「そこで僕は、若手Bを1回、基盤Cを2回とってた」ほど、学者として研究者番号の維持努力をされていたそうです。本人が仰るように「頑張った」!のです。

 

おそらく、今でも力のある年配の大学教員が、意見の合わない(気に入らない)若手の大学教員にハラスメントを行うことは、ちらほら聞くため、けっこうな数起きていると思われます。

 

このようなアカハラ事例に関して、「読書メモまとめ」を読むと、「ハラスメント関連書籍② ギフトオーサーシップについての事例他 」として、「オッカムさんのまとめ」に極めて近い形で、Y1教授→助教X(相談事例2の相談者)のアカハラ事例が出ていました。相談事例2では、Y1教授が助教Xの投稿論文に対し、Y1が全く関わっていないのに共著者になるようにX助教に迫り、それをX助教が断ったことを契機として、Y1教授からのアカハラが始まったと書かれています。X助教は、精神科に行ってうつ状態と診断されました。

X助教は勤務先のY2大学のハラスメント防止委員会へ調査の申し立てをしますが、半年たっても、催促をしても調査の経過報告や処分への動き等が報告されません。X助教は、調査報告を待つ間にもY1教授からハラスメント行為を受け続けました。X助教はY1教授から謝罪を求めています。

 

本書には、これに近い別の裁判事例②(主任教授→講師へのアカハラ)が出ていました。裁判事例②では、講師に対する主任教授の言動は指導として適切さを欠き、講師の人格権を侵害したとして、「講師による損害賠償請求のうち、5万5000円(慰謝料5万円、弁護士費用5000円)を認容しました」という結果です。

私が裁判事例②を読んだ感想として、正直なところ、「講師による損害賠償請求のうち、5万5000円」というのは、講師が受けた精神的苦痛や昇進に対して、非常に安い!Twitterアカハラ被害を受けた方が、弁護士に相談してもアカハラ訴訟を引き受けてくれない、仰っていた理由に、ここで納得してしまいました。

 

オッカムさんのアカハラ、それから相談事例②でも、訴訟を起こしたとしても、認められるのが数万円では、安過ぎるように思います。とすると、残る道は続・アカハラ相談をする時のポイント+「レコーダーでの録音のやり方~アカハラ対策として~」で挙げた方法でハラスメントの証拠を集め、弁護士などの法律の専門家に相談するだけして、大学の別部署や大学全体の人権問題を扱う部署に行き、ハラスメントがあったことを報告し、大学の上層部に報告を上げてもらって、ハラスメントしてきた大学教員に処分をさせることでしょう。

 

水無月さんが別のツイートで仰っていましたが、法律を根拠にハラスメント行為を然るべき学内の部署に訴えれば、相手の大学教員への牽制になり得ることがあります。気を付けるべきことは、慎重に動き、出来るだけアカハラ相談や証拠集め等の対策の情報が漏れないようにすることです。具体的な動き方は、本記事の<関連記事>をご参照ください。

 

「読書メモまとめ」によると、ハラスメント教員への処分については、ハラスメントを受けた側で事前に、所属先の「大学教職員就業規則」や「ハラスメントに関連する通則」等を読んでおき、これらの規則・通則の何に相手の大学教員の言動が抵触しているか、資料を作って整理し、申し立ての際にアピールできると、よいようです。実際、「大学教職員就業規則」によって、京都大学ではハラスメントの申し立てを受け、「大学院農学研究科准教授に対して懲戒処分」がされたニュースがありました↓

教職員に対する懲戒処分について(2017年4月25日) — 京都大学 *1

 

大学教員の間でのハラスメントに対して、適用される法律については、水無月さんがツイートに挙げておられるので、「読書メモまとめ」をお読みいただけたらと思います。

 

この他、学内での教員の昇進に関して実際に起きた事例で、現在で大学教員→他の大学教員へのハラスメントに近いと思われる「騒動」を挙げておきます。

 

  その1.「東大駒場騒動」

1987年から1988年に新任の教官人事をめぐって、東京大学教養学部の教官の間で発生した対立紛争。

東大駒場騒動 - Wikipedia

東大の教養学部のポスト・モダン系統の人材採用について、社会科学科内の選考委員会が組織され、誰を採用するか、対立紛争が起こったとのこと。中心人物は、社会思想史研究室主任の谷嶋喬四郎教授とされ、この騒動に巻き込まれた中島義道と、関わった西部邁の二人が各著書で詳しく触れているようです。

 その2.秘書職員等へのセクハラ事例:「矢野事件」

事例として、少し異なりますが、「大学教員→秘書職員等へのセクハラ」について、私がネット検索で探した例がありましたので、併記させて頂きます。この事例は、男性の大学教員→女性の秘書職員(卒業生含む)へ行われたセクハラ。この後、被害者の元職員から訴訟が起き、それがいわゆる矢野事件 です。「1993年1月12日、京都大学東南アジア研究センター所長の政治学者・矢野暢教授」が、卒業生を含む女性の(元)秘書職員たちに、性的な関係を迫ったり、性的暴行を加えたりしたとして訴えられた事件です。

 

矢野教授は、

矢野は秘書と性的関係を持った事実は認めつつも、相互責任に基づく和姦を主張。1994年、京大への復職や名誉毀損の損害賠償を要求して京都地方裁判所に3件の訴訟を提起したが、自身では一度も出廷せず、1997年に全て敗訴が決定。この間、1996年には単身ウィーンに渡り、ウィーン大学客員教授(無給)となったが、日本に帰国しないまま1999年にウィーンで客死した。

矢野事件 - Wikipedia

とのことでした。この事件に関しては、次の二冊に詳しく書かれているようです。 

 2-3.「教員→学生」のアカハラ

本書には少ないとされるパターンですが、「読書メモまとめ」に含まれる「教員→学生」のアカハラ事例として、次の名古屋大学のケースが挙がっています。

www.sankei.com

短い記事ですので、記録を兼ねて、全文転載させて頂きます。

2017.4.24 17:28

「大学をやめろ」…学生に暴言、名古屋大のアカハラ准教授を減給

 

 名古屋大は24日、学生に暴言を吐くなどのアカデミックハラスメントをしたとして、未来材料・システム研究所の40代男性准教授を、平均賃金1日分の2分の1を減給する懲戒処分にした。減給額は数千円程度。

 

 名古屋大によると、准教授は平成26年から27年にかけて、指導する学生5人に「大学をやめろ」と言ったり、机を蹴り上げたりするなどの不適切な言動を繰り返した。以前にも違う学生へのアカハラがあったという。

 名古屋大は「極めて遺憾。服務規律の徹底と再発防止に取り組む」とコメントを出した。

(「大学をやめろ」…学生に暴言、名古屋大のアカハラ准教授を減給 - 産経WEST)

「40代男性准教授を、平均賃金1日分の2分の1を減給する懲戒処分にした。減給額は数千円程度」って、水無月さんが仰っておられるように、非常に「あまいあまいあまい」処分だと私も思います。指導担当の学生5人に対して、「大学をやめろ」と言ったり、「机を蹴り上げたり」するのは、明らかにアカハラ行為です。オッカムさんが教授から受けたのと同じような言動であり、しかも一人ではなく、複数の学生に対して行っています。名古屋大学の元の准教授の給与がいくらかはわかりませんが、平均賃金1日分の半分を減らし、その減った額は数千円程度って…。名古屋大学の処分が軽いものか否か、分かりにくいので、法律の専門家の方がいらっしゃったら、ご教示頂けないでしょうか?

 

「教員→学生」のアカハラのもう一つの事例を挙げましょう。以前、【2017.4.14_1010更新】院生を自分の意志だけで「休む・辞める」ことは難しい?!の拙記事で取り上げた、鳥取大学の事例です↓

www.sankei.com

鳥取大学の事例では、平成27年の夏、工学部4年だった学生の就職活動に対し、工学研究科の40代の男性教授が、

  • 就職活動で、入社希望の企業の採用試験に必要な推薦書の作成をいったん同意したがその後拒否し、進路選択の権利を侵害
  • 卒業論文の指導時も怒鳴るなどの高圧的な態度を取った
  • この学生の就職情報をメールなどで他の学生に漏らしていた

アカハラで鳥取大教授停職 企業への推薦書拒否 - 産経WESTより構成)

といったハラスメント行為をしたとして、2017年3月29日付けで男性教授を「停職1カ月の懲戒処分」にしています。進路選択の権利侵害や就職情報の漏えいは、アカデミックハラスメント以外に、法律に違反していそうであり、こういった面から「停職1カ月の懲戒処分」になったとも考えられます。

 

名古屋大学のケース、そして鳥取大学のケースのそれぞれで、注目して頂きたいのは、アカハラが起こってから処分が下るまでの期間です。名古屋大学の場合、「准教授は平成26年から27年にかけて」行われたハラスメント行為に対して、処分が下されたのはこの平成29年4月24日で、最後の行為から約2年後。鳥取大学の場合は、「平成27年の夏」からのハラスメント行為について、「昨年3月、学生が卒業前に大学の窓口に相談して発覚」ということで、平成28年3月に発覚して、アカハラ行為から約2年後の平成29年3月29日付けで処分が下っています。つまり、どちらのケースでも、ハラスメントが行われ始めてから約2年後に処分が下っていることになります。

 

ハラスメントについては、院生時代、研究室の先生方からお聞きしたことによると、「ハラスメントがあったと報告があった」と部局の会議に挙がることはありますが、会議自体では真偽が先生方も判断できないそうです。おそらく、その報告を審議するために時間が調査委員会が立ち上がり、調査が実施されて処分が決定するまで、時間がかかるのは現在の大学のシステムでは、仕方がないのかもしれません。

 

この2つの 「大学教員→学生」への事例について言えることは、握りつぶされず、窓口や相談室、人権委員会等に報告され、それを受けて大学側で調査から処分まで、一応、行われている点がマシということです。何度も繰り返しますが、拙記事「アカハラ」からどう身を守る?学生・院生のためのメンタルヘルス対策 – メンヘラ.jpの冒頭で触れましたように、大学によっては、学生等の立場の弱い人たちへのハラスメントで被害者が自殺し、遺族によってハラスメント可能性が報告されても、結果的に「黙殺・隠蔽」されたと見なされるケースが存在します。ハラスメント事例は氷山の一角であり、水面下では報道されていないハラスメント行為があるのではないでしょうか。

 

もし、ハラスメントを受けた学生がいたら、慎重に証拠を集めること。次に、ハラスメントの経緯をまとめた資料を作成し、弁護士等の法律の専門家に相談しつつ、水無月さんが指摘されたように、所属先の「大学教職員就業規則」や「ハラスメントに関連する通則」等を読んでおき、これらの規則・通則の何に相手の大学教員の言動が抵触しているか、チェックすること。そして、申し立てをする時にハラスメントが当該大学の各規則・通則に当たるとアピールして、なるべく速やかに大学側で調査を進めてもらえるよう、はたらきかけることでしょう。この段階で、大学側に握りつぶらされないように、証拠や資料の予備を外部のNPO団体や相談できる期間に提出しておくことも、余裕があれば、してもいいかと。

申し立てをする際、根拠となる規則・通則にハラスメントの証拠がそろえば、ある程度、相手を牽制してハラスメント行為を抑制することができるかもしれません。

 

 

3.最後に

以上、 『ハラスメントの事件対応の手引き』について、水無月さんの「読書メモまとめ」を中心に、関連する情報を合わせて紹介しつつ、私のコメントを入れました。法的な訴訟で大きな額の損害賠償請求が難しい現状では、「大学教員→他の大学教員」、「大学教員→学生」のどちらのハラスメント行為にしても、証拠を集め、握りつぶされないようにしながら、、所属先の「大学教職員就業規則」や「ハラスメントに関連する通則」等を読んで、法律の専門家にアドバイスをもらいながら、申し立てを行って、大学側に処分をさせるのが、とりあえず、有効な手段として考えられるでしょう。

 

注意して頂きたいのは、水無月さんが言われているように、「読書メモまとめ」のツイートは、「付け焼刃の知識なので、用語使用、解釈、その他が正しいかどうかは分からない」ということです。このことについては、法律の専門家の方のご意見をお待ちしております。

 

 本書以外では、以前、本ブログで紹介したことのある次の本があります。

 

キャンパスハラスメントの対策ハンドブックで、セクハラの事例が含まれています。パラパラ捲って読んだ印象では、ハラスメントの予防策として、効果のある「適切な「ハラスメント研修」」の方法を中心に、書かれていました。えふわら先生のように、ハラスメントの対策に取り組まれている大学教員の方々に、読んで参考にして頂けたら幸いです。

 

長くなりましたが、本記事はここで閉じます。ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。どうか、本記事が皆様のお役に立てますように。

 

<関連記事>

naka3-3dsuki.hatenablog.com 

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naka3-3dsuki.hatenablog.com

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↓国のアカハラ対策に関するニュを逐次、更新しております。

  学外の外部機関の利用が検討されているようです。

naka3-3dsuki.hatenablog.com  

*1:京大内のハラスメト事情については、えふわら先生のツイートまとめを合わせて、お読み下さい:京大ハラスメント? - Togetterまとめ

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