仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

忍者文化による地域おこしと大学+中国と韓国の忍者に近い役職について~「三重大が忍者研究センターを開設 伊賀サテライトに新年度 /三重県 」(朝日新聞)ほか~

<今回は伊賀忍者の話>

1.はじめに

今週頭の5月8日に更新した次の拙記事: 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

こちらは、滋賀県甲賀忍者の末裔の渡辺さんの家で発見された「渡辺家文書」の読解によって、忍者の実態が分かってきたという話を紹介しました。

 

前回が甲賀忍者のことで、今回は説明しなくてもいいくらい、日本では有名な三重県伊賀忍者のことです。2017年の春先に話題となっていた、三重大学の「国際忍者研究センター」の設置の報道内容を紹介し、忍者文化による地域おこしと大学について、考えたいと思います。 

 

f:id:nakami_midsuki:20170512165427j:plain

 

 

2.三重大学の国際忍者研究センターのこと

 2-1.「三重大「国際忍者研究センター」開設!?教員公募にネットで驚きの声」(スポーツ報知)

実は、昨年度末の3月ごろ、私と一部のフォロワーさんの間で、Twitterに流れてきた次の三重大の求人内容が、ちょっとした注目の的になっていたのです:

www.hochi.co.jp

求人自体は、研究者向け公募求人サイトJREC-IN Portalで発見した人が流していたもので、求人ページ自体は〆切が来たらしく、無くなっておりました。ここでは、スポーツ報知のオンラインニュースを通じて、求人内容を見てみましょう。

 

三重大「国際忍者研究センター」開設!?教員公募にネットで驚きの声

2017年3月10日14時44分 スポーツ報知


 三重大の人文学部・人文社会科学研究科が「国際忍者研究センター」の教員を公募していて、ネット上で話題となっている。応募資格は「忍者研究に関して実績のある者。古文書読解能力を有する者」「大学院の授業担当が可能な者」などとなっている点も注目を集めている。

 

 三重県の北西部にある伊賀市は滋賀・甲賀と並び“忍者の里”として有名で、観光施設として「伊賀流忍者博物館」などがある。

 

 そして同学部・研究科の研究プロジェクトとして「伊賀連携フィールド忍者文化協議会」があり、「忍者食はストレス社会に活かせるか?」「伊賀上野武家屋敷」「芭蕉忍者説の傾向と対策」などのテーマで市民講座を解説している。

 

 9日に公表された「国際忍者研究センター」教員応募要項によると、(1)国内外を対象とした忍者文化論に関する研究と情報発信 (2)その他国際忍者研究センター(仮称)の目的を達成するために必要な業務(3)大学院人文社会科学研究科・修士課程の教育:担当科目は「忍者文化論特講」「忍者文化史料論特講」(予定)ほか、及び人文学部の教育:担当科目は「特殊講義忍者の歴史」(予定)。以上の授業は、原則として三重県津市の三重大学キャンパスで開講することになるという。

(三重大「国際忍者研究センター」開設!?教員公募にネットで驚きの声 : スポーツ報知)

 

スポーツ報知の報道から分かる求人内容をまとめると、以下のようになる。

 [機関名 Institution]

 [求人内容 Content of job information]

 業務内容、担当科目等

  • (1)国内外を対象とした忍者文化論に関する研究と情報発信 
  • (2)その他国際忍者研究センター(仮称)の目的を達成するために必要な業務(3)大学院人文社会科学研究科・修士課程の教育:担当科目は「忍者文化論特講」「忍者文化史料論特講」(予定)ほか、
  • 人文学部の教育:担当科目は「特殊講義忍者の歴史」(予定)
  • 以上の授業は、原則として三重県津市の三重大学キャンパスで開講することになる

 [応募資格 Qualifications]

  • 忍者研究に関して実績のある者
  • 古文書読解能力を有する者
  • 大学院の授業担当が可能な者、など

 

[研究分野 Research field]は書いていませんが、前回の甲賀忍者の「渡辺家文書」の土読解に関する新聞の内容、および今回の求人の応募資格に「古文書読解能力を有する者」とあることから、日本史とその周辺の分野を対象とし、専門とする人に応募資格があると思われます。 

 

忍者と言えば、前回の甲賀忍者のニュース紹介で、現代日本の様々なジャンルの「忍者もの」文化と古文書を読める人たちについて、

 

忍術書「万川集海」から数百年、現代日本の文芸・芸能、アニメやゲーム、映画等において、忍者ジャンルは人気となっています。今回の「渡辺家文書」の内容について新聞で報道されるほど、一般の人たちにも忍者の存在が注目されるようになりました。しかし、忍者の仕事内容や雇用形態に関する「くずし字」で書かれた古文書の読解は、専門知識と訓練を受けた人でなければ、正確に行うことはできないでしょう。くずし字が書かれ、忍術書「万川集海」の提出された江戸時代と異なり、現代の日本人が時代考証に基づき、リアルな忍者のフィクション作品を作ろうとすれば、古文書が読める人がいないと、難しいわけです。

 

私の周りのくずし字を読める人たちは、人文学系の大学・大学院で日本文学や日本史を専攻し、古文書を読む訓練とともに、文書の背景を含めて扱い方の知識を叩きこまれた人。それから、同じく大学・大学院の文化財や博物館の専攻で、古文書に関する訓練を積んだ人たち。加えて、市民講座のくずし字を読解するコースを受講し、練習を重ねて読めるようになった人たちでしょうか。

(「忍者もの」のフィクション作品と人文科学~「「トカゲ丸焼き」で毒薬配合…甲賀の「秘伝」忍術書見つかる」(ITmediaニュース/産経新聞)~ - 仲見満月の研究室)

 

と書きました。今回のスポーツ報知の最後には、「“ガチ研究”の教員公募にネットでは「どんな人が応募するのか気になる」などの声が上がっている」と書かれています。求人内容や前回の記事内容から、ガチで応募してくるのは、古文書読解能力のある日本史でしょう。

 

業務内容には、「(1)国内外を対象とした忍者文化論に関する研究と情報発信」とあることから、2000年代を代表する忍者漫画のひとつ『NARUTO』とそのシリーズ。それから、海外で作られ、日本にも入って来た、アメリカ人の著者たちによる近未来日本が舞台の「サイバーパンク・ニンジャ活劇小説」とされる『ニンジャスレイヤー』(NINJA SLAYER)、それから度々日本でもアニメ版が放送されている原作がアメコミの『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』Teenage Mutant Ninja Turtles)とその派生作品等、世界中の忍者を題材にした創作作品も研究対象にするようです。

 

もっと言えば、海外の「忍者もの」作品を研究することで、忍者を通じた日本の捉えられ方を明らかにしていくことが、国際忍者文化研究センターの目的のひとつと言えるのではないでしょうか。

 

 2-2.「国際忍者研究センター」の開設と三重大学の関わる地域おこし

三重大の開設した「国際忍者研究センター」ですが、先のスポーツ報知によれば、

 

同学部・研究科の研究プロジェクトとして「伊賀連携フィールド忍者文化協議会」があり、「忍者食はストレス社会に活かせるか?」「伊賀上野武家屋敷」「芭蕉忍者説の傾向と対策」などのテーマで市民講座を解説している。

(三重大「国際忍者研究センター」開設!?教員公募にネットで驚きの声 : スポーツ報知)

 

ということで、大学のある伊賀地方と組んで、忍者の食べていたものについて現代の祖ストレス社会から見てみたり、伊賀出身とされる松尾芭蕉の忍者説を読み解いたりする市民向けの講座を実施しているようです。忍者について全く知らない私が見ても、興味をそそられる面白そうな題目でした。

 

さて、三重県は県全体としては、旧国としては4つの国(西南部の紀伊、中央西・中央・北東部の伊勢、北西部の伊賀、東南部の志摩)にまたがっていて、地方色を打ち出そうとすると、盛りだくさんなようです。その中の北西部の伊賀地方は、伊賀忍者の「ふるさと」として、忍者に関する強力なコンテンツを持ち、それをベースに地域文化を発信していけることが分かります。

 

2-2では、三重大が伊賀地方を通じて、地域を盛り上げていく活動。ここでは「地域おこし」について、どのように「国際忍者研究センター」を位置づけているのか、次の朝日新聞の記事を中心に、見ていきましょう。:

 

www.asahi.com

三重大が忍者研究センターを開設 伊賀サテライトに新年度  /三重県 

中川史、高木文子 2017年2月21日09時25分

 

 「地域創生」への貢献を掲げる三重大学が、学外の研究拠点、 地域サテライトの設置を本格化させている。一足早く地域との連 携が進む伊賀市の伊賀サテライトでは17日、双方が協力を確認 し合う式典があり、大学側が2017年度中に「国際忍者研究セ ンター」(仮称)を市内に設ける考えを明らかにした。


 地域サテライトは、津市にある三重大学から離れた地域に大学の拠点を設けて、自治体や企業と連携を深め、人材育成や研究開発などの相談に乗るのが狙い。昨年11 月に「伊賀」「東紀州」の両サテライトができ、今年4月には「伊勢志摩」、18年 度中に「北勢」を設置する予定だ。  

 

 伊賀サテライトは、伊賀地域(伊賀市名張市)の「固有文化と地域資源の活用で 地域再生に寄与する」のを目標に掲げる。忍者などの歴史文化、医薬品企業との連 携、森林資源の活用などで地域の人材育成や課題解決にあたる。 

 

 実際は、09年に産学連携を目指して設置された研究機関の三重大伊賀研究拠点と、12年にできた人文系の三重大サテライトオフィス「伊賀連携フィールド」を継続して使う。


 忍者の研究センターには、専門の研究員1人を配置。国際的にも注目されている忍者についての学術拠点にするという。  

 

 17日の式典には、大学と伊賀市、市文化都市協会、上野商工会議所の関係者がそ ろって出席。06年以降に個々に結んだ友好、連携協力の六つの覚書を確認し、さら に「引き続き相互に連携協力」を強化する内容の覚書に署名した。  

 

 駒田美弘学長は「大学は県民と協働の活動を試みているが、トップを走っているの が伊賀地域。さらに発展させるために伊賀サテライトを設けた。分野もさらに広がれ ばと願っている」と話した。

 (三重大、忍者の国際研究センターを伊賀に設置へ:朝日新聞デジタル)

 

どうやら、最初に情報が挙がっているように、三重大学の「「地域創生」への貢献」にもとづき、置いた「学外の研究拠点」のサテライトのひとつ・「伊賀サテライト」で、自治体やその商工会議所と手を取り、「大学側が2017年度中に「国際忍者研究セ ンター」(仮称)を市内に設け」、いろいろと「地方創生」の活動支援をしていこうとしていた模様です。

 

具体的に伊賀サテライトでは、「伊賀地域(伊賀市名張市)の「固有文化と地域資源の活用で 地域再生に寄与する」ことを目標に、「忍者などの歴史文化、医薬品企業との連 携、森林資源の活用などで地域の人材育成や課題解決にあたる」としています。

医薬品の企業との連携については、前回の甲賀忍者の記事で書きましたが、眠らせ薬や忍者の兵器に関する文書が見つかっています。伊賀地方のほうでも、研究や開発次第では現代兵器だけでなく、医療分野で応用できるものも出てくる可能性があるでしょう。

 

「実際は、09年に産学連携を目指して設置された研究機関の三重大伊賀研究拠点と、12年にできた人文系の三重大サテライトオフィス「伊賀連携フィールド」を継続して使う 」ことにし、「忍者の研究センターには、専門の研究員1人を配置。国際的にも注目されている忍者についての学術拠点にするという」。 

 

実際に、伊賀サテライトと思われる三重大学の伊賀研究拠点の概要を読むと、「 平成26-27:忍者“Ninja”の知恵を活かした人にやさしい循環型社会の構築ー文理融合型Ninja研究の成果を世界に発信」という記述があり、数年かけて「国際忍者研究センター」の設置準備のためのプロジェクトをやっていたんだな、と感じました。このプロジェクト三重大学 人文学部・人文社会科学研究科 | 忍者・忍術学講座については、今年前期のテーマに、「身体で学ぶコツ・身体技術上達法」や「戦国時代 伊賀国の石造物情勢は複雑奇怪なり」等、忍者の実態に関する研究を生かしたと思われる、面白そうな内容が見え、伊賀市の施設を借りて行うことが予定されていました。

 

センターに置く人数は、開発途上ということでしょうか、1名…。す、少なくないか?

 

今年2月17日の式典において、「駒田美弘学長は「大学は県民と協働の活動を試みているが、トップを走っているの が伊賀地域。さらに発展させるために伊賀サテライトを設けた。分野もさらに広がれ ばと願っている」と話した。」ということ。

 

先に書いたように、研究の広げ方や方向次第では、食品や医薬品等の実用的で商業的な品も生み出せるでしょう。アミューズメントへの応用では、忍者による城や要塞等の建造物の研究が進めば、現地のアトラクションだけでなく、地域的には離れていますが、私が行ったことのあるところでは、京都・新京極にある忍者に関するショーや武術体験、グッズ販売を行うNINJA KYOTO 忍者京都などにも、一部、技術提供すると面白そうです。

 

とにかく、忍者文化は三重県伊賀地方にとっては、地域おこしにおいて、地元の三重大と組むことで、その可能性は広がりそうです。

 

 

3. 最後に

そういうわけで、滋賀県甲賀忍者に続き、今回は伊賀忍者のふるさとであり、三重県伊賀地方について、三重大の「国際忍者研究センター」と組み、強力な忍者文化という武器を使った地域おこしの可能性について、考えてみました。いかがだったでしょうか? 

前回の滋賀県甲賀地方、それから三重県伊賀地方は、現代日本では非常に分かりやすい忍者文化というものを地域的に持っていたことから、地域おこしとしては、使いやすいものを持っていると言えるでしょう。

 

さて、真面目な日本史研究からすると、忍者の使う道具のひとつ・水蜘蛛の使い方が今年3月の報道で明らかになり、私なんかは「けっこう、使い方は地味だったんだな」とがっかりしました:

www.sankei.com

 

今までの「かっこいいファンタジーとしての忍者の姿」が、忍者の実態研究が進むことにより、これからは、いっそう、生身の人間として仕事をこなしていた彼らのことが分かってくるでしょう。それはそれで、今までとは違った意味で、創作の世界においてリアルな忍者の物語を有むことになるのかもしれません。

 

 

ところで、忍者文化のような分かりやすく、大学・大学院によっては多分野で研究の可能性があり、コンテンツとして強力な地域おこしの武器となり得るものがない!そういう地域の方々は、前回と今回の忍者の記事を読まれて不安になられたかもしれません。私の地元も、ある意味では地域おこしが難しくなってきているところです。

 

忍者ほどメジャーではないにしても、今後は、何かしら人文科学も関わっていける形で産学連携が可能なモノを見つけ、あるいは新たに名物にしていくことは、地域振興においてキーとなってくるかもしれません。山本大臣の仕事である「地方創生」の滋賀県での講演ではないですけど。

 

以上、忍者文化による地域おこしと大学についてのお話でした。

 

 

4.余談1:『日本人の知らない日本語 2』の「忍者大好き」な外国人学生たち

 以前、本ブログの記事2つ:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

の中の、「スッパ抜く」と忍者以外にも、実は忍者に関する話題が『日本人の知らない日本語 2』には出てきます:

 

 

「忍者大好き」(p.68~)のお話で、日本語学校の学生で、時代劇ファンの一言をきっかけに、外国人学生たちが東京の地下鉄・半蔵門線半蔵門に行く話がありました。何をしに行くのかといえば、服部半蔵の墓参りに行くとのこと。言い出しっぺのエレーンさんによると、「半蔵門伊賀忍者組頭の半蔵の屋敷があったため」とのこと。凪子先生と一緒に、私も「かしこさが1上がりました…」。

 

その他、忍者が堀の深さを知りたい時、葦の長さを利用して、ピタゴラスの定理を使っていたエピソードがあったり、「忍者は平和主義者だったから、世界征服しなかったんでしょう?」という外国人学生たちの考えが見えたり、こちらも面白いです。

後者に関しては、忍者を使って情報操作や工作を行い、クライアントの大名や領主が政治的な手段=今でいう外交にうったえて、少ない戦争で利益を得ようとした側面があったとすれば、平和主義ではないにしても、江戸時代の大きな戦争なしな世には関係してそうではあります。

 

 

5.余談2:中国と韓国の忍者に近い役職について

ところで、他の東アジア地域の忍者に近い役職について、日本では一般的には知られていないと思われます。中華圏の時代劇や武侠映画、それから韓国の歴史ドラマがお好きな方なら、次に紹介する監察御史や暗行御史のことはご存知かもしれません。

 

地方の知事クラスの役人を監視したり、反乱の兆しをキャッチしたりするため、中央政府が派遣するタイプの隠密活動をする役人や監察に当たる官は中国、朝鮮半島の歴代王朝にもいたと言われています。いわゆる中国だと漢代の刺史や明代の「皇帝の耳」としての監察御史朝鮮半島だと朝鮮王朝の暗行御史アメンオサ)が、これに当たります。

 

中国の刺史や監察御史に関する作品は、ぱっと思いつきません。朝鮮王朝の暗行御史については、日本語で読める漫画があるので、挙げておきますね:

 

暗行御史を題材に、異世界ファンタジー作品としては、韓国出身の漫画家による次のシリーズがあります:

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