仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【補足】「大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~」(togetterまとめ)

<今回の記事>

1.はじめに

togetterまとめについて、14日の日曜日に行ったもので9件目になりました。その9件目が、最近、本ブログのアカハラ対処法でおなじみのツイート主さま・水無月さんが呟かれていたものをtogetterまとめにしたものです:

 

togetter.com

 

前回の「書籍『ハラスメントの事件対応の手引き』の読書メモ」と関連情報まとめ - 仲見満月の研究室をはじめ、今まで本ブログでは、アカハラを受けた側が対処する方法を主に紹介してきました。今回は、アカハラの「加害者」とされた大学教員の先生方が、経験されたこと、どう対処なさったのか?といったことについて、水無月さんのツイートや、それに含まれるリンク先の記事を、1ページに取りまとめています。

 

まとめる途中、リンクを貼った先のアカハラ訴訟に関する経緯の記事が長く、詳細でした。正直に、はっきり申し上げて、内容と長さともに精神力を消耗しました。書かれた当事者の先生方、よく心労を乗り越え、記録に残されたと思いました。

 

まとめてから約一日、まとめに対して、一部、補足できるところは本記事で補足したいと思います。

 

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2.「大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~」(togetterまとめ)の補足

 2-1.大学教員からみたハラスメントとその所感 その1

  高史明さんの巻き込まれた案件

まず、高史明さんが巻き込まれてしまったアカハラ案件まとめ:

某大学のアカハラと、アカハラ防止委員会の対応が酷いらしい - Togetterまとめについて、高さんがまとめておられたらしき文書について、ツイート主の水無月さんは「ハラスメントの調査の顛末について」、「提出書類、調査結果など参考になる」と言ってらっしゃいました。

 

私も読みましたが、高さんの件は、読むだけで、当事者の人たちの置かれた独特の雰囲気が伝わってきて、ノックアウトされかけました。特に、「院生に銀行口座を開設させ、通帳/印鑑を自分に預けさせる」ところは、本ブログでも書きました研究に関わるお金管理の難しさを想起させるものであり、お金に関しては不正をさせない、かつある程度の余裕のある管理の仕方をする必要を感じました。要は、緩すぎてはいけないけど、締め付けすぎてもこういう事態は、起こると思いました:

院生が獲得した助成金をめぐる問題~人力検索はてなの質問から~ - 仲見満月の研究室

院生の助成金申請書類の作成過程~院生獲得の助成金使用問題の補足~ - 仲見満月の研究室

 

  apjさんが加害者とされたキャンパスハラスメントの件

続いては、水無月さんによると「ハラスメントの加害者であるとされた」教員apjさんについての、

私が加害者とされているキャンパスハラスメントについて — Y.Amo(apj) Lab

という記事です。水無月さんの言葉では、「学生のハラスメントの訴えを他教員に煽られた結果、自身が加害者とされ更に脅迫されたため告訴した」内容が分かります。私が拝読した印象では、どういった行為がキャンパスハラスメントと学生に解釈され、周囲の大学教員たちが関わり、泥沼化していったのか、詳しく、詳細につづられていました。

 

これは先に書いておかないといけないかもしれませんが、apjさんの巻き込まれたキャンパスハラスメントは、授業の出欠管理をしていた大学教員の先生方に、卒業のかかった単位を取得したい学生の死に物狂いで余裕がない心理状態を念頭においておいて頂き、また、学生側には大学教員側が人間だということを忘れないでいてほしいということです。原因は、授業に遅刻してきた学生に対して、apjさんがかけた言葉の「行って」(教室に早く行って、字実験作業を始めてね、の意味)が、どうやら学生にとっては言葉が足りなかった模様。学生は、この言葉を「行って、といのはあっち行けということだ、これでもう単位はもらえなく て留年確定だ」(原文ママ)と解釈していたらしいことが分かりました。

 

apjさんは学生に対し、一度、謝罪をしたのですが、謝罪=己の非を認めたと解釈した学生は、apjさんに慰謝料を請求すると言い出して、その前後のネット上での学生の書き込みを含む強迫行為も含めて、事態は複雑さを増していきます。apjさんは、そういった中で、告訴しました。

 

本当に、舌足らずな一言で、キャンパスハラスメントの問題はできあがるんだと、実感しました。そして、学生のほうは謝罪を受けたら、慰謝料を要求するとか、脅迫行為に当たる言動はしないとか、気をつけるべきでした。apjさんのコメントにもありましたが、ハラスメントの面談を学生に対して行った大学の教職員にも、学生に行動を慎むよう、注意を促す指導が足りなかったと思われます。

 

apjさんが加害者とされた件の記事の中には、"今後同様の事件に巻き込まれるかもしれない人向けの対応のポイント"があり、水無月さんが「告訴までの流れとその内容」かいつまんで、興味深いところを書いておられました。その中でも、

 

学生に訴えられた教員の立場からだが、大学の調査結果について法的に公開させる方法を含む対処の方法、実践的な被害報告のまとめ方などは、自分の学生の立場としても参考にできる部分は大きい。

大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~ - Togetterまとめ

 

という部分は、非常に実用的だと思いました。その他のポイントは、今回のtogetterまとめに入れましたので、お読みいただけたらと思います。

 

  next49さんの「アカデミック・ハラスメントへの防御としても報・連・相が大事」の記事

このnext49さんのエントリ記事は、水無月さんの説明だと「これも教員からの視点で、先の記事を引きながら、最初の引用ツイートの高先生のアカハラ調査結果に対する感想を延べている」そうです。

 

水無月さんの指摘では、

 

申請書の内容に対して、客観的な的な経緯やメールなどの証拠をあげたほうが良いなどの感想はまとめる上での参考になる。
また、個々の申立事項に対しての感想も、第三者からみてどう取られるかについて示唆をくれるもの。
前後関係が不明瞭であれば、調査側に受け取られづらいと言うのは納得できる。 

大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~ - Togetterまとめ

 

とのこと。私が気になったのは、「裁判したほうが教員と学生の双方にとって良いと思っている。うまいこと、大学教員職を続けられるのならば、たぶん1、2回は提訴されることを覚悟しないといけないと思っている」ということを、next49さんが意識されていることでした。 next49さんが書かれている記事には、大学教員側と学生の間に「齟齬」があったことが指摘されていました。思い違いや変な思い込みで、互いに齟齬を生まない為にも、タイトル通り、報・連・相は鍵になります。具体的な実践方法は、こちらをご覧ください:

卒業論文・修士論文における学生の指導教員との付き合い方を考える~「かやのみ日記帳」のエントリ記事から~ - 仲見満月の研究室

 

  まとめ

「大学教員からみたハラスメントとその所感 その1」の最後には、リンクされた各案件を踏まえて、更に水無月さんが総括をされておられます。

 

 2-2.「大学教員からみたハラスメントとその所感 その2」

続いて、next49さんによる2つの記事:

 

OKWaveアカハラ関連の
相談内容」リンク:OKWaveのアカデミック・ハラスメント関連の相談 - 発声練習

 

アカハラの外部裁定機関について」

next49.hatenadiary.jp

 

およびapjさんによる記事:

アカハラに対する教員による自衛提訴について」

Archives » 提訴の方が教員にとって安全

 

水無月さんが取り上げておられます。水無月さんのコメントを先に取り上げます。

 

予備知識無しで見るなら、自分はモンスタースチューデントではあるので、外部から見た時にアカハラを察知してもらうのは難しいかもしれない。

 

その意味で外部裁定機関は必要だと思っているのだけど、研究者でない人間に懐を探られることに反発を覚える人も少なくないと思う。うちの教授も言っていたが。
義務的に一年に一回程度監査を入れる"規則"を作ったらどうなるのだろうか。

(大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~ - Togetterまとめ)

 

ここから、私が気になったことを書いていきます。まず、next49さんの「アカハラの外部裁定機関について」にある指摘について。

 

私の理解では師匠と弟子の関係をとらない教育というのはあり得ず、その形態をとらない場合は実際のところ自習にしかなりえないと思う(講師は単に教科書がしゃべっているというだけ)。師匠と弟子の関係をとるならば、必ず封建的になり、立場に強弱ができるので、閉鎖的になるのは当たり前だと思う。

アカデミック・ハラスメントの裁定機関が欲しい - 発声練習

 

そう、師匠と弟子の関係をとるなら、立場に上下と強弱ができ、閉鎖的にならざるを得ないんです。これは、大学を含む日本の学校教育で問題が起こった時、例えばいじめによる自殺に絡む恐喝行為の疑いがあっても、外部の裁判所や警察を介入させにくい、慣習とも関係があるように思います。そのあたりの背景は、apjさんの先の「私が加害者とされているキャンパスハラスメントについて — Y.Amo(apj) Lab」の「検事に話したことなど」に詳しいです。

 

 学校においては、教育のために生徒の権利の一部を侵害することが普通に行われている。侵害の程度は、年齢によっても、小中高大の区分けよっても異なっている。権利制限の根拠については、教育学の方でいろいろ考えられていて、親による委任といった考え方もあるようだが、そのあたりの事情を私は詳しく知らない。とにかく、現実に、生徒あるいは学生の権利の制限が行われていることは事実である。

 

 一方、学校で起きたトラブルについては、学校外の社会におけるトラブルの処理基準がそのまま適用されない場合がある。成人同士であれば法律問題発生になる場合でも、生徒間であれば教師の権限でもって、法的手続きではなく別のルールで解決するという場面がかなりある。もちろん、重大な権利侵害であれば法の出番となる。

 

 学校は、教師のパターナリズムを認めるかわりに、法の適用については社会から切り離す、という形で秩序の維持を行っている。これは、一種の村社会ともいえるし、いわゆる「徒弟制度」といったものが現れる場面であるかもしれない。

 

(中略)

 学校では、もともと、教師のパターナリズムによる秩序維持が行われていた。個人の資質や個性に依存するため不安定であったかもしれないが、教師の側にも「教育者として振る舞う」ということを求めることで、パターナリズムの暴走に一定の歯止めをかけていた。そこに、学校外の社会と同じ基準で権利主張を認める「ハラスメント処理」の手続きが入ってきた。ハラスメント処理の手続きは、組織内でしくじったらそのまま裁判所に持ち込まれる種類のもので、ADRの一種と位置づけるべきものだろう。

 

 教師に対して「教育者として振る舞う」ことを要求しつつ、生徒あるいは学生に対しては学校外の社会と同じ基準での権利主張を認めることにしたら、学校内の秩序の維持は不可能である。だから、教師に対して「教育者として」という制限を外した上で、他のすべてを法的ルールに従って規律する以外に秩序を維持する方法はない。

 

 法的手続きに基づく制裁のかわりに「村社会的に人間関係に基づいて何らかの圧力をかける」方法で秩序の維持をしていたものが、圧力をかけることそのものがハラスメントであり違法とされるようになったのであるから、圧力などかけず、すべてを法的手続きにのせて適切な制裁を行うしかない。

 

 パターナリズムと人間関係を使って規律することと、法に基づいて規律するということは、両立しない。どちらか一方を選んだら、一方は棄てるしかない。そして、大学も含め、学校は、ハラスメント処理の手続きを取り入れるという形で、法的な規律を行う道を十年以上前に選んでしまった。

(私が加害者とされているキャンパスハラスメントについて — Y.Amo(apj) Lab)

 

apjさんが仰るように、今までパターなリズムと人間関係を使って秩序を保とうとしていたところに、一度、法的な規律をハラスメントの問題処理に持ち込む選択を日本ではしてしまったがため、もう、戻れないところまで来てしまったんですね。小中高の話になりますが、こういう状況に変化しつつあるなかで、元学校の臨時教員だった身としては、例えばいじめによる自殺に絡む恐喝行為の疑いがあれば、警察や司法をある程度、受け入れることが学校や大学側にも必要になっているのだと思います。

 

これは、水無月さんが指摘されている「外部裁定機関は必要だと思っているのだけど、研究者でない人間に懐を探られることに反発を覚える人も少なくないと思う」というのは、パターナリズムによって、秩序が維持されてきた大学自治とも関係してくると考えられます。だからこそ、大学は村社会なわけでしょう。

 

更に、水無月さんは、「うちの教授も言っていたが。義務的に一年に一回程度監査を入れる"規則"を作ったらどうなるのだろうか」と仰っています。が、この監査は大学の村社会にいた身として、有名無実化する危険さえ、あります。まったくの学外からの監査でなければ、監査する意味はなくなっていくでしょうし、内部監査なら、有名無実化していく危険があります。

 

日本の研究職雇用の諸問題と法をめぐる話~着任予定者の内定取り消しに関するtogetterまとめを振り返る~ - 仲見満月の研究室で書いたように、日本の大学には、

 

「日本の研究業界って大学は特に、人脈が物を言う特殊な世界」であり、時に法律を捻じ曲げてしまう人も、残念ですが、おります。大学の自治を守る、という言葉がありますが、それは日本の法律内の話です。大学は治外法権の場所ではありません。

日本の研究職雇用の諸問題と法をめぐる話~着任予定者の内定取り消しに関するtogetterまとめを振り返る~ - 仲見満月の研究室

 

という実情がありまして、いかにパターなリズムと人間関係によって、いろんなことが決まっていたか、所属しているとが肌感覚で分かるんです。

 

おまけに、大学や大学院の「日本の指導教員制度について」は「人間関係が常に良好な状態であるという前提」になっていることが多く、「人間関係の悪化は、時に指導教員からのアカハラとして院生を追い詰め、また院生自身が希望するキャリアへの道筋を妨害するといった」、危険をはらんでいることは、こちらで書きました:

【2017.4.14_1010更新】院生を自分の意志だけで「休む・辞める」ことは難しい?!~日本の大学院の指導教員制度を中心に考えてみた~ - 仲見満月の研究室

 

それ故、私はapjさんが仰るように、ハラスメントをめぐっては、司法を介入させた方が大学教員にも学生にも 、明文化された法律に基づいた判決が出る点において、メリットがあると思います。それから、外部裁定機関について。大学自治の名のもと、法律を捻じ曲げてしまう人が学内にいることを踏まえれば、外から調査に入ってくる存在を受け入れたほうが、高史明さんのように、ハラスメント等で今まで理不尽な思いをしてきた人たちを思うと、少なくとも学内の人間関係に左右されない裁定が下される点は、大きいのではないでしょうか。

 

なお、外部裁定機関=「学外の機関の活用」については、国側が動いており、今回のtogetterまとめの最後に拙記事を載せていますので、ご参考にして頂けたらと思います。

 

 

3.最後に

以上、今回の大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~ - Togetterまとめについて、水無月さんのツイートやリンク先の各記事の内容を読んで、私の考えたことや本ブログのハラスメントに関する以前の記事から、補足をさせて頂きました。

 

apjさんの記事を読んでいると、きちんと順を追いつつ、間に周囲の人たちやご自身の置かれた状況、起こった出来事について、冷静に書かれておられました。読むほうは大変でしたが、ハラスメントに巻き込まれた大学教員、学生、彼らを取り巻く人たちにとって、法的にどう手続きをしたらよく、こう動いたらアウト、といったことが分かりやすい事例になるでしょう。

 

ここで、本記事を閉めさせて頂きます。お読みいただき、ありがとうございました。

 

 

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