仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【 #大学・大学院 #ニュース】「地方大学の強化「明治以来の改革に着手する」」(朝日新聞)、「被引用多い論文数、国別10位に後退」(日経新聞)

<今週の気になるニュース2件>

1.5月末から6月初めの大学・大学院や研究業界のニュース

今週は、「文章フィルタリング研究」案件を追いかけながら、投稿論文や寄稿記事を執筆しておりました。Twitterやネットのポータルサイトトップに出てくるニュースに、今週も複数、大学や大学院、研究業界に関するニュースを見つけました。その中から次の2つを取り上げて、振り返りましょう:

www.asahi.com

www.nikkei.com

 

f:id:nakami_midsuki:20170602200200p:plain

 

 

2.「地方大学の強化「明治以来の改革に着手する」 安倍首相」(朝日新聞

コメント前に、短い本文を読んでいきましょう。

 

地方大学の強化「明治以来の改革に着手する」 安倍首相

2017年5月31日23時19分

 

安倍晋三首相(発言録)

 技術革新が加速し、(企業の)外部での人材育成が必要になっている。そこで、明治以来とも言える大学改革に着手する。地方大学を強化し、実践的な教育を充実させていく。

 

 第一に、実務経験のある教員を思いきって増やす。産業界のニーズに合う実務教育を行う。ここ(パーティー会場)にも、70歳を超えても80歳を超えてもバリバリ働く方がたくさんいる。リカレント教育(学び直し教育)の態勢を整えていく。

 

 第二に、大学の経営層に地元経済界の人材を登用し、ガバナンス改革を試みる。民間(企業の)出身者が大学経営に参画することで、大学教育が就職に結びつく。

 

 企業の外で人を育てる仕組みをつくるには、経団連の協力が必要だ。新卒一括採用だけではなく、大学でリカレント教育を受けた人材を積極的に中途採用していく方針を打ち出していただきたい。(都内で開かれた経団連創立70周年記念パーティーのあいさつで)

地方大学の強化「明治以来の改革に着手する」 安倍首相:朝日新聞デジタル

 

今回、「経団連創立70周年記念パーティーのあいさつで」安倍首相が話をした、「地方大学を強化」とは、【2017.4.26_1400追記】大学運営と学究の場について~「私大再編、国立傘下で」(日本経済新聞より)~ の前半で取り上げた、私大再編、国立傘下で 地方で定員割れ深刻 :日本経済新聞の中の「大学同士の再編」、そして教育成果によるの予算の配分を私大に行うこととセットになっているのではないかと思われます。

 

続く「実践的な教育を充実」については、

  1. 第一に、実務経験のある教員を思いきって増やす(産業界のニーズに合う実務教育を行う)
  2. 第二に、大学の経営層に地元経済界の人材を登用し、ガバナンス改革を試みる(民間(企業の)出身者が大学経営に参画することで、大学教育が就職に結びつく)

の2つのことが出てきています。実践的な教育一つ目については、ネット上の反応では「実務家の定義がはっきりしていない」とか、「企業の技術者やベテランの社員を教育機関に派遣しても、現場にしか当てはまらないノウハウがうまく伝えられるものではない」などの不安が挙がっていました。

 

私としては、現在の美容業界や医療現場に必要な国家資格の専門学校で行われるいるような、現場で必要、かつ国家資格を突破するのに必要な技術と知識という意味での「実務」が教えられる「実務教員」であれば、雇用してもよいと考えています。ただし、実務以外で、他の一般教養等のこれまでの研究職の大学教員がになって来た部分は、実務教員担当せない等、学生への教育の質の担保のために、教育コース別の大学教員のすみ分けを同時に考慮していく点はあるかと考えています。

個人的な意見としては、リカレント教育も含めた職業訓練としての教育は、政府の別の場所で検討されている専門職大学に丸投げしてもいいと思っています。そのあたり、詳しくは、次の拙記事をご参照下さい。

gray-naka3-3dsuki.hatenablog.jp

 

第二の「大学の経営層に地元経済界の人材を登用し、ガバナンス改革を試みる」というほうは、地元企業の経営層の退職後の就職先が大学や専門職大学になったり、その縁故で地方大学の学生採用が起きたり、それはそれで、問題ではないかと思いました。地元企業の経営層の退職後の就職先が大学や専門職大学は、この春に報道された「天下り」を彷彿とさせます。縁故採用が起こる可能性のほうも、ミスマッチや採用試験における平等性というところでフェアじゃないでしょう。

 

 

3.「被引用多い論文数、国別10位に後退 科技白書で指摘 」(日経新聞

2つ目のニュースに参りましょう。 

 

被引用多い論文数、国別10位に後退 科技白書で指摘
2017/6/2 9:05

 

 政府は2日、2017年版の科学技術白書を閣議決定した。研究価値が高いとされる被引用件数の多い論文の国別順位で日本は10位まで下がり、基礎研究力の低下が著しいと指摘。若手研究者の雇用安定や企業の資金を大学などに呼び込む施策などを進め、研究力向上につなげる必要があると訴えた。

 

 研究の各分野で被引用件数が上位10%に入る論文数から、各国のシェアを分析した文部科学省傘下の科学技術・学術政策研究所のデータを引用した。

 

 12~14年の平均でみると日本のシェアは5%。トップは米国の39.5%で中国、英国、ドイツ、フランスが続いた。日本はカナダ、イタリア、オーストラリア、スペインより下の10位だった。

 

 日本は02~04年にシェア7.2%で米英独に次ぐ4位だった。その後、順位を徐々に下げ、調査可能な1980年以降で初めて2桁台に落ち込んだ。

 

 白書では研究力が低下した原因として、雇用が不安定な若手研究者の増加や海外の研究者との連携が少ない点などを挙げた。政府の研究開発投資が伸び悩む中で、企業など外部の経営資源を活用して成果を生む「オープンイノベーション」などを大学や公的研究機関も推進する必要があると強調した。

被引用多い論文数、国別10位に後退 科技白書で指摘 :日本経済新聞) 

 

ざっくり言うと、日本の科学研究のパワーが下がってきているということですね。日本の大学は研究と教育を分離するべき話~「現役工学系教授からみた日本の大学の惨状」(Htelabo::AnonymousDiaryより) にリンクを貼った次のニュース記事で報道された科学研究の失速が、より進んできているといったところでしょうか:

jp.sputniknews.com

 

最近、ニュース記事のリンク切れを発見するので、今回も報道内容を転載しておきます。

 

研究室日本の科学研究は「失速」- 英科学誌

2017年03月23日 05:50(アップデート 2017年03月24日 17:48)

英科学誌ネイチャーは23日、日本の著者による論文数が過去5年間で8%減少し、日本の科学研究は失速していると発表した。日本政府が研究開発への支出を手控えた状況が反映されたという。共同通信が報じた。

同誌は「日本は長年にわたって世界の第一線で活躍してきた。だが2001年以降、科学への投資が停滞しており、高品質の研究を生み出す能力に悪影響が現れている」と指摘している。


自然科学系の学術誌68誌に掲載された論文の著者が、どの国出身で、どんな研究機関に所属しているかをまとめたデータベースを使って調べた。

その結果、12年から16年の5年間で、中国の論文数が48%、英国の論文数が17%伸びた一方で、日本は8%減少したことが判明した。米国も6%減った。

 

外部の専門家が事前に内容をチェックする「査読」を受けた論文については、世界では過去10年間で80%増加したのに対し、日本は14%しか増えていなかった。

研究開発への支出額は、ドイツや中国、韓国などが大幅に増やす中、日本は01年以降、ほぼ横ばいだった。

日本の科学研究は「失速」- 英科学誌、jp.sputniknews.com)

 

若手研究者の雇用安定や企業の資金を大学などに呼び込む施策などを進め」とありますが、事態はもっと先を行っています。雇用の不安さで職業研究者を目指す若年世代が減少しており、それは、

続・博士卒のアカデミックポスト就職の現実~「ポスドク問題/「出口」対策が弱すぎる」(河北新報オンラインより)を起点に~ - 仲見満月の研究室

日本の研究職雇用の諸問題と法をめぐる話~着任予定者の内定取り消しに関するtogetterまとめを振り返る~ - 仲見満月の研究室

などの拙記事で書いてきたとおりです。

 

資金不足については、大学の授業料の出世払いの返済案で、国債の発行に手を出すことが報じられていて、「ああ、日本という国には、ここまでお金がないのかぁ…」と実感させれられました*1今回の日経新聞では、「政府の研究開発投資が伸び悩む」と言っていますから、国に資金がない、あるいは(首脳陣がこちらに配分しようという精神的、かつ)研究予算を渋るほど国庫に余裕がないと見みてよいのではないでしょうか。

そういうわけで、内閣は大学に外部から何らかの方法で、研究費を持ってこないといけない方向にしようとしている模様です。

 

企業資金を大学に呼び込む方向は、

【2017.4.29_0033追記:ニュース】「鉄腕アトム」の開発が早まる?~「博士、AI担う人材に 文科省、産学連携」(日本経済新聞より)~ - 仲見満月の研究室や、

【ニュース】香港科技大移籍予定の経済学者や産学官共同研究の文科省等によるファクトブックの話題 - 仲見満月の研究室の「2.産学官共同研究の文科省等によるファクトブック文部科学省2017427」で、文科省は他の省庁、経済界と結んで取り組もうとしています。なかなか、うまく行かなさそうですが…。

 

そういった中で、面白い取り組みをしているのが、次の記事で紹介したクラウドファンディングに近い形で寄付金を集め、応募された学生のプロジェクトや取り組みに資金を提供する「京都大学学生チャレンジコンテスト(SPEC)」です。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

京都大学学生チャレンジコンテスト(SPEC)」では、大学に設けられた寄付金を受けつける部署で集めた寄付金、学内に設置された自販機の売り上げや、中古の書籍やCD、DVD等の売り上げによる「本de募金」の収益金の一部を コンテストの賞金としています。その賞金は、コンテストに入賞した学生の活動の資金に使われています。

寄付金の具体的な方法や使い道は、京都大学学生チャレンジコンテスト(SPEC)」に詳しく書きましたので、お読みいただけたらと思います。

 

京大のような寄付金のやり方では、他に大手企業の卒業生に出資を募ったり*2、研究プロジェクトを持ちかけて産学連携をしてみたり、実践されていると聞きます。まあ、それでも限界はあります。

 

 

4.まとめ

今週の2つのニュースを見て、国のトップの地方大学の強化策に首を傾げたり、日本の研究力の低下の原因と思われる国のお金のなさに落ち込みたくなったり、ますます、気持ちがブルーになりました。自分なりに政策案の細かいところや方針、および参考になりそうな実例を出したものの、トップを思うと話に耳を傾けてくれるか、どうかわかりません…。

 

学術・研究業界の人間としては、大学・大学院、企業、団体、そして個人レベルで、何ができるか、自助努力を続けていくしかないという結論になりました。

 

どなたか有効性のあるアイディアがありましたら、私に教えてください。

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