仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【朗読 #ツイキャス 】魯迅『故郷/阿Q正伝』(光文社古典新訳文庫)とその他著作の紹介

<今回の内容>

1.はじめに

「構音障害」のことを書いて以来、聞き取ってもらいやすい発音の仕方を認識するべく、ツイキャスで朗読をやってみることに致しました。今まで、中国の古典文学を題材にして研究をしてきたこともあり、それなら時代を下って、中国近代文学を代表する作家の魯迅の作品を音読することに致しました。

 

選んだ日本語の作品集は、次の藤井省三訳のバージョンです:

 

 

2.魯迅について

 魯迅は、清朝末期の1881年、現在の浙江省紹興市の士大夫の家系に誕生。貧しい家庭でしたが、学問を学ばせる伝統があり、18歳で南京の理系の学校に4年間通う間、西洋の進化論など、新たな思想に触れる。以降の経歴は、Wikipediaによると、

1902年、国費留学生として日本に留学した。国の人々を救うためには最も良いと考え、医学を専攻したが、同時に西洋の文学や哲学にも心惹かれた。ニーチェダーウィンのみならず、ゴーゴリチェーホフ、アンドロノフによるなどロシアの小説を読み、後の生涯に決定的な影響を与えた。ヴェルヌの科学小説『月界旅行』、『地底旅行』を翻訳する[5]。1904年、仙台医学専門学校に最初の中国人留学生として入学し、学校側も彼を無試験かつ学費免除と厚遇した。特に解剖学の藤野厳九郎教授は懇切丁寧に指導し、彼もその学恩を終生忘れなかった。しかし、彼は学業半ばで退学してしまう。当時、医学校では講義用の幻灯機で時折日露戦争(1904年から1905年)に関する時事的幻灯画を見せていた。このとき、母国の人々の屈辱的な姿を映し出したニュースの幻灯写真を見て、小説家を最終的な自分の職業として選択した。その幻灯写真には中国人がロシアのスパイとしてまさに打ち首にされようとしている映像が映し出されていた。そして屈辱を全く感じることなく、好奇心に満ちた表情でその出来事をただ眺めているだけの一団の中国人の姿があった。のちに、はじめての小説集である『吶喊』(1923年)の「自序」にこの事件について以下のように書いた。

魯迅 - Wikipedia

 

Wikipediaでは、次の魯迅の考えは竹内好訳からの引用ですが、本記事では藤井省三訳を引用致します。

あのとき以来、私には医学は大切なことではない、およそ愚弱な国民は、たとえ体格がいかに健全だろうが、なんの意味もない見せしめの材料かその観客にしかなれないのであり、どれほど病死しようが必ずしも不幸と考えなくともよい、と思ったからである。それならば私たち最初の課題は、彼らの精神を変革することであり、精神の変革を得意とするものといえば、当時の私はもちろん文芸を推すべきだと考え、こうして文芸運動を提唱したくなったのだ。

(魯迅藤井省三訳『故郷/阿Q正伝』(光文社古典新訳文庫)、p.254)

 

その後、仙台で藤野先生と別れた後、東京で雑誌や翻訳作品集を出版したものの、あまり売れなかったこと、それから日本人の友人ができなかったことがあったのか、魯迅は帰国。

 

浙江省杭州紹興の中学校教師として生物学の教師として勤務し、1912年中華民国政府が成立すると、教育部の事務官の職位に就き北京に移住。中国古典籍の研究に没頭するなどして、しばらく隠遁者的な生活を送った後、上に挙げた藤井省三版の文庫にも収録された『狂人日記』を、陳独秀の発刊した『新青年』に発表。そこから、白話運動(文語をやめて、思想を「白話」=口語で表現する文学運動)を通じて、旧来の儒教道徳を批判を中心とする「文学革命」を目指して、西洋の技法を取り入れた小説「故郷」や「阿Q正伝」等を次々と発表していきました。

 

現在では、東アジアで広く読まれるほど、近代中国を代表する作家である魯迅ですが、その後半生は、激動の近代中国に生きたこともあってか、波乱万丈なものと言われています。気になる方は、先のwikipediaのページほか、調べて見られることをおすすめします。

 

 

3.魯迅作品の朗読をやってみた

 

第一回は、9ページほどの短い作品。練習なしの一発録音の朗読で、聞き取りづらく、申し訳ありません。 :twitcasting.tv

twitcasting.tv

 

 

第二回は、魯迅が医学から文学へ転向した自叙伝的作品:

twitcasting.tv

実は、「藤野先生」の作者を当てるクイズを世界史の授業で出したことがあり、本作コピーの冊子の最後に、本の奥付の著者とタイトルを伏字にした書誌情報の紙を付けて、回し読みしてもらいました。 

 

 

第三回は、日本の中学国語の教科書で、たぶん皆さま、おなじみの作品:

twitcasting.tv

twitcasting.tv 

作中の「豆腐西施」については、竹内好訳で確認してみて下さい:

「豆腐西施」のあと、私にとっての魯迅作品のことについて、パート2で、いろいろと喋っております。同じような内容をループで喋っているので、ウザったいなと感じられたら、聞くのをやめて下さい。

(一応、ひととおり、喋っているので、敢えて本記事では書きませんが…)

 

 

4.朗読作品を含む光文社古典新訳文庫版短編集以外の魯迅作品について

今回、朗読した『故郷/阿Q正伝』とはまた違った、新しい近代の思想や動きに対して疑惑の目を向ける人物や、不幸の連続で痛々しいほど心身が弱っていく女性を描いた短編など、魯迅の一面を知ることができる一冊です:

 

朗読はしませんでしたが、魯迅の代表作として外せない『阿Q正伝』のコミカライズ作品もあります。読んだことはありませんが、表紙のパンダのような隈取の人々の目線に引き込まれそうで、気になっている作品です:

次は、中国の古典文学の研究をしていると、外せないのは『中国小説史略』。二千年来の 中国の小説の歴史を大まかに開設した講義書。大学の授業がもとになっているようです。明代成立の『三国志演義』や『西遊記』なども含んでいます。日本語版は、下のちくま学芸文庫のほか、全3巻の東洋文庫のバージョンが出ていました:

 

私が気になって少し読んだりチェックしたり、研究でお世話になったりした、魯迅の著作は以上です。

 

 

5.最後に 

今週、練習なしで一発録音で朗読をしてみました。録音を聞いてみると、だらしなく伸ばしだ長音と、「えっと」といった間を取る言葉が混じって、聞き取りづらくしているのかと反省致しました。今後の課題ですね。

 

いっそのこと、魯迅の朗読CDを聞き、練習したほうが実践訓練でよいかもしれません:

ところで、魯迅の日本語に翻訳された作品には、竹内好訳、藤井省三訳ともうひとつ、井上紅梅訳のバージョンがあり、キンドルではいくつか作品が無料配信されています:

 

なお、井上紅梅訳のテキストは、こちらの青空文庫のものがもとになっているようです:作家別作品リスト:魯迅

 

朗読については、マイぺースに続けながら、聞き取りやすい発生方法を見つけたいと思っております。また、今回、紹介した魯迅作品については、まだ読んでいないもので、気が向いたら読んでみたいところです。

 

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