仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【過去の報道から】電子書籍の「成長」とGoolgle電子図書館プロジェクト~「ドイツ 電子図書館でGoogleに対抗」(中國時報、2010年2月)ほか~

電子書籍をめぐる時間旅行>

1.はじめに

最近、論文のリライトに加え、様々なことが重なったためか、今度はメンタル面が悪化しております、管理人・執筆者です。

 

メインでやっていた学術論文の書き直しで、最新の関連する研究論考を調べていたところ、データベースにお世話になる機会が、ぐんと増えました。また、過去に自分でだうんろーどしていたり、査読論文の自分の原稿PDFを開いたりして、「論文記事や書籍の電子化って、やっぱり便利なところがあるな!スゴイ」と感動しました。

 

現在は2017年6月末ですが、上記のような経緯で電子書籍に関する「デジタル雑記帳」のファイルを漁っていたところ、7年4カ月前のGoogle電子図書館プロジェクトに関する記事を見つけました。しかも、元が台湾で発行されている新聞の『中国時報(“中國時報”)』のオンライン記事。当時の私はガッツがあったのか、よほど暇だったのか、繁体字から中日辞典の入った電子書籍を使って、日本語に翻訳したようです。ただ、当時のニュース記事をプリントアウトした紙やオンライン記事のURL、翻訳に使ったメモは、処分したように記憶しております。

 

一応、いろいろとネット検索でサーチした結果、『中國時報』のトポータルトップの右上の日付をいじったら、過去のオンライン記事一覧と内容を表示できることが判明しました。そのようなわけで、原文が失われないうちに、リンクをさせて頂きます:

www.chinatimes.com

 

今回は、7年4カ月前に『中國時報』でタイムスリップし、ドイツの図書館で一体、Google電子図書館プロジェクトに対して、どのような取り組みが行われていたのか、紹介を致します。

 

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2.”德國推數位圖書館 抗Google”(「ドイツ 電子図書館Googleに対抗」(『中國時報』2010.2.22)の内容

ネット上から消失しないうちに、原文を記録させていただきます。

 

德國推數位圖書館 抗Google 

2010年02月22日 02:40 蔡鵑如/綜合報導

 

搜尋引擎龍頭Google積極建構全球最大的數位圖書館,為對抗Google,繼歐盟在前年推出的「歐洲數位圖書館」後,德國政府也推動「德國數位圖書館」(DDB)計畫,把數百萬筆書籍、影片、影像及錄音檔案數位化,並可從線上搜尋,將有逾三萬家圖書館與博物館參與。


在慕尼黑「巴伐利亞州立圖書館」的數位化中心,「掃描機器人」(ScanRobot)會自動翻頁掃描書籍,速度為每小時一千兩百十六頁,每星期完成五千冊書。機器人累計產量已達四萬五千筆,包括載於羊皮紙上的日耳曼史詩《尼伯龍根之歌》(Das Nibelungenlied),依此進度,四年內將可掃描完畢。

 

在珍貴古籍方面,數位化可以電子檔取代容易破損的珍貴大部頭書。德國東部古城威瑪的安娜阿瑪莉亞圖書館(Anna Amalia Library)在二〇〇四年遭祝融襲擊,五萬冊書付之一炬,其中不少只此一部的古籍。若以電子書當複本將可避免此類憾事重演。

 

現任德國文化部部長紐曼(Bernd Neumann)直言,這是對Google數位圖書館的「回應」。Google因版權爭議,尚在法院纏訟,尚未成立,但已掃瞄一千兩百多萬本圖書。

 

德國國家圖書館表示,試用版要二〇一一年才能上線,且只限少數團體使用。負責電腦技術的弗萊堡研究院(Fraunhofer Institute),正開發能辨識影片中人物、把演說轉為可搜尋文字檔的軟體,以擴大索引範圍,因此光技術就浩大繁雜。

 

此外,漢堡美術館等聲譽卓著的圖書館或博物館,目前仍未納入DDB名單中。經費亦是難題,掃描一本十六世紀古書花費七十至一百四十歐元(約新台幣三千至六千元)。德國圖書館協會提議十年內把五百五十萬冊書數位化,將花費一.六五億歐元。

(中國時報)

(德國推數位圖書館 抗Google - 中時電子報)

 

 次に、私が7年4ヶ月前に日本語の対訳を以下に提示します。

 

=(以下、2010年2月末前後の仲見満月による日本語訳の記事、および記録)====

 

「ドイツ 電子図書館Googleに対抗」

蔡鵑如(『中國時報』2010.2.22)

検索エンジン大手Googleが積極的に構築を進める世界最大級の電子図書館Googleに対抗し、続けてEU(欧州連合)では前年に「欧州電子図書館」を打ち出した。その後、ドイツ政府も「ドイツ電子図書館」(DDB)計画を推進。これは数百万冊の筆写本、映画フィルム、映像および録音記録をデジタル化ならびにオンライン上での検索を可能にするもので、3万を超える図書館と博物館が参与すると思われる。

ミュンヘンバイエルン州立図書館電子化センターでは、スキャン・ロボット(Scan Robot)が自動で書籍のページをめくり、毎時1260ページの速度で読み取り、一週間で5000冊を完成することが可能。ロボットは累計45000字をすでにデータ化、中には羊皮紙のゲルマン英雄叙事詩ニーベルンゲンの歌』(Das Nibelungenlied)が含まれる。この速度だと4年の内にスキャンが完了する見通しだ。

貴重な古書籍における電子化は、破損した貴重書の大部分を容易に電子記録へ置き換えることが可能だ。ドイツ東部・古都ワイマールのアンナ・アマリア図書館(Anna Amaria library)は、2004年に火災に遭い、5万冊を焼いてしまった。その大部分が古書籍であったが、もし、電子書籍を使って本を復元できればこのような遺憾なことを防ぐことができる。

現ドイツ文化部部長のベルント・ニュルマン氏は、「これはGoogle電子図書館に対する"返答"である」と率直に言う。Googleが原因となって著作権争議が起こり、今なお法廷で審議中で和解成立に至っていない。しかしGoogleは、12000冊を超える図書をスキャンしている。  

ドイツ国家図書館は、2011年、ようやくDDBの試作版をオンラインにすると発表したが、使用可能な団体は少数に限られる。コンピューター技術を負うハノーファー研究所(Frauhofer Institute)は、フィルム中の人物を識別し、演説を転換した文字記録を検索できるソフトウェアを開発している。そのため、検索範囲を拡大することで光技術は規模が大きく、荒い。

このほか、ハンブルク美術館など名高い図書館や博物館は、当面、DDBのリストに入らない。経費確保は難題であり、16世紀の古書を一冊スキャンするためには70~141ユーロ(3000~6000新台湾ドルに換算)かかる。

ドイツ国家図書館教会は10年以内に550万冊の電子化を提案しているが、それには1.65億ユーロかかると見られている。

(Cnina Times)

 

 

 3.「Google電子図書館プロジェクト」について(2010.2.22の記録)

Google電子図書館プロジェクト」とは、2009年1月以前にアメリカで発行された書籍(絶版書・著者不明書含む)をGoogleがデータベース化し、オンライン上で検索で出来るようにしようという事業です。

 

2009年1月以後に発行される本については、Google著作権所有者と交渉、Googleがオンライン上で検索かつデータ販売を行う場合、著作権所有者に一定の利益を渡す契約を行うことも可能。

 

要は、Googleが世に出回っている本を全て電子化し、オンライン上に乗っけてアクセス可能にしようとしてるのです。

 

Googleは世界一の市場であるアメリカの本をとりあえずターゲットにし、電子化する場合、著作権所有者や書籍の所有者とできる限り和解して、書籍の電子化を推し進めようとしているそう。

 

現在、検索エンジンで一人勝ちしているのはGoogleであり、この事業を契機に書籍流通業界へ参入されれば、世界の図書館・書籍流通業は大打撃を受けるでしょう。

 

特に、その図書館・書店にしかないという貴重書がGoogleでデータ化され、世界の誰もがアクセスできるようになれば、貴重書を所有している図書館や書店はアドバンテージを失います。

 

貴重書を持っていれば貴重書の展示会で見物料金をとれますし、貴重書に関する研究書や翻訳に対する著作料、および撮影で発生する撮影料でお金を稼ぐことができると思います(*この段落は、私の幼稚な推測です)

 

アメリカで発行されている書籍には、イギリス、中国、日本や韓国など、外国から輸入・翻訳されて発行している本も存在します。そのため、Google電子図書館プロジェクトによる著作権争議の波紋は、世界に広がっているんだとか。

 

中国時報』に出ていたように、ヨーロッパの図書館ではGoogleに対抗し、各国の図書館で所蔵図書の電子化が進んでいます。

 

このほか、ネット上ではMicrosoftYahoo!が手を結び、Googleに対抗、Amazon.coもGoogle電子図書館プロジェクトに反対の意を表明するとか。

 

Google電子図書館プロジェクトは、これからの「本」の有り方も変えていくことになりそうです。いろいろと情報を集め、これから追って記事にしていきたいと思います。

 

 

4.日本での電子書籍のサービス開始について(2010.3.2あたりの記録)

3月の初めごろに、宿泊先でこの記事を見た瞬間、「日本の出版社も電子書籍、いよいい始まったか~」と感じました。

 

引用の部分は、asahi.com(朝日新聞社)のほうのネット記事から引用しました。タイトルは本紙とネット記事で違い、ネット記事のタイトルは、タダで読ませて売り上げ増?ネットで本を無料公開の動き」でしたが、新聞記事のほうをタイトル・転載ともにさせて頂きます。

 

一冊丸ごと無料配信、ネット作戦 注目浴び売り上げ増、出版社トップも試行

2010.3.6

 

ゲームや音楽ビデオがインターネットで無料配信される中、書籍の全文をネットで無料公開する動きが出てきた。3月1日から46日間限定で、保険の問題点や加入者へのアドバイスを分かりやすくつづった「生命保険のカラクリ」(文春新書)という新書の全文が公開され、5日までに約3万件のダウンロードがあった。タダで読ませて、本の売り上げには影響しないのか?


著者は岩瀬大輔ライフネット生命副社長。岩瀬さんはこれまでも、業界の常識を覆し、「タブー」とされてきた保険料の原価開示に踏み切るなどしてきた。「今も多くの人は、自分の保険の保障内容を正確に理解していない。一人でも多くの人に、保険の仕組みを知ってもらうことが、本を書いたそもそもの目的。ネットでの公開も、その延長線上にある」と話す。


すでにこの本は6刷3万部を売り、「元は、十分とった」というが、無料のネット公開をきっかけに注目され、それがさらに本の売り上げ増につながることもある。


例えば米国誌の編集長、クリス・アンダーソン氏が書いた本「フリー」は昨年11月、国内で翻訳版が発売される前、「先着1万人、全編無料公開」としてPDFファイルを無料でダウンロードできる販促を試みたところ、43時間に1万人が殺到。その後、ブログでの書評も相次ぎ、発売前から増刷が決まったといういきさつがある。アンダーソン氏は、ネットの無料サービスをテコに、有料商品・サービスでのもうけにつなげるというビジネス理論「フリーミニアム」を提唱している。


角川グループホールディングス会長の角川歴彦氏も自著の今月10日の発売に先駆け、1日から全文を公開中。出版社トップ自ら追随する動きも出てきた。

 

本の売り上げに悪影響を与えないかとの懸念もあるが、出版業界は、静観の構え。「著作者・出版者の意図しないところで、著作物が勝手に再利用・流通されるのとは違い、販売戦略などとして行われるのであれば、あずかり知ることではない」と、社団法人日本書籍出版協会の担当者は話している。(鈴木淑子

 (朝日新聞、2010.3.6、朝刊、12ページ目より)

 

今までオンデマンド書籍は知っていたんですが、新刊または発売前の電子書籍を公開・配信するのを広告することは、これまであんまり聞いたことがなかったもので。

 

著作者・出版者の意図しないところで、著作物が勝手に再利用・流通されるのとは違い、販売戦略などとして行われるのであれば、あずかり知ることではない」と、業界団体の社団法人日本書籍出版協会の担当者は話している。

(朝日新聞、2010.3.6、朝刊、12ページ目より)

 

と引用末尾にあるように、どれも電子書籍の無料公開・配信は紙媒体の書籍売り上げを伸ばす販売戦略だったでしょう。

 

しかし、記事の冒頭「ゲームや音楽ビデオがインターネットで配信される」のと同じく、本自体も前文電子化される時代がいずれ、来ると思われます。

 

今回の動きは、電子書籍の公開・配信が広がる大きな一歩と言えそう・・・。(実際、すでに一部の漫画雑誌や単行本、ファッション雑誌など有料配信されていますし。)

今はまだ、紙に印刷されたページをめくる物理的な「本」が主流。この状態は電子書籍の公開・配信で徐々に変化してゆくでしょう。

 

Google電子図書館プロジェクトとともに、今後は日本の出版業界の動向を追っていきたいと思っています。

 

 

5.2017年6月末の現在の電子図書館について~まとめ(以下、2017.6.27の追記)~

ここから、再び2017年の現在に戻ります。最近の身近な話では、学術論文の参考文献の再確認をした際、絶版になっていた英語の先行研究の論文集を検索していて、Googleブックスの中に丸ごと公開されていて、助かりました。「これが、Google電子図書館というものか!」と、助けられた私は感動しました。

 

実は、上記の電子図書館プロジェクトの記録を書いた2010年は、i padやKindleが発売された年でもありました。その後、「電子書籍元年」と言われるようになった、ある意味、図書館だけでなく、出版・書店業界を巻き込んだ記念の年だったようです*1

 

7年4ヶ月の間に、電子書籍のシェアは広がり、電子書籍配信サイトでのヒットを受けて、紙書籍が再版されたり、出版されたりした本も、幾度か出版関係の報道で私は聞きました。無料公開のほうは、Amazonの「なか見!検索」が広がっているかと言われれば、分かりません。それでも、紙書籍では出版されず、電子書籍のみで販売される読み物で確実に増えてきているように思います。

そして、ページ数の少ない2万字程度の本は、電子書籍オンリーで販売されているものが目立ってきており、カスタマーレビューや書評がついているものあることから、紙書籍に代わるところまでは行ってはいないものの、電子書籍は確実に市場を拡大していることを感じました。

 

無料で読めるコンテンツについては、私が書いているブログのほか、様々な情報コンテンツを扱うオンラインマガジンや、ニュースのweb配信記事、メンヘラ.jpのようなwebメディアを読み、SNSで気軽にシェアする生活が定着してきているのではないでしょうか。ここまでタダで読める電子コンテンツが増えると、課金コンテンツを売るため、両社の差別化が鍵となっている業界が多いと考えられます。

 

 

ブログで文章を書いている妖怪「記録魔」の私としては、これから自分の生き方と重なる問題でもあり、しっかりと情報を集めて、行き先を見定めたいと考えております。

 

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