【'18.6.16_1525追記:ニュース】「福井)恐竜研究者育成へ、県立大大学院に古生物学コース」(朝日新聞)
(*元は2017.7.12.執筆の記事)
<本記事の内容>
- 1.はじめに
- 2.「福井)恐竜研究者育成へ、県立大大学院に古生物学コース」(朝日新聞)の内容
- 3.最後に
- 4.('18.6.16_1525追記)恐竜などの古生物学関係の学部新設を目指す?!~地元の福井新聞から~
1.はじめに
洗濯機を回しながら、この記事を書いております。昨日、Twitterのタイムラインに流れてきた、興味深いニュースがありましたので、最初に紹介しようと思います:
福井県立恐竜博物館と地元の県立大学の院が協力して、恐竜研究者の養成を目指す取り組みが始まった、という話題のようです。
県立博物館のレベルは、恐竜博物館として、日本を代表する恐竜博物館という程度。恐竜といえば、私も幼少期に恐竜図鑑を買ってもらい、めくっては眺め、ティラノサウルスのパノラマ図を模写していたほどでした。恐竜というものは、子ども、それから一部のファンを魅了する存在であり、コンテンツとしては扱い方次第で、ビジネスで活用しやすい存在でもあると私は認識しております。
ある程度、専門的な教育を受け、研究業績をあげ、人脈を築き、留学をして研鑽を積めば、就職の道はあるかもしれません。そして、養成に挑戦するのは、公立大学の福井県立大学。
今回は、恐竜研究者を地方の公立大学で養成することについて、考えます。
2.「福井)恐竜研究者育成へ、県立大大学院に古生物学コース」(朝日新聞)の内容
ニュース記事を詳しく見てみましょう。
福井)恐竜研究者育成へ、県立大大学院に古生物学コース
福宮智代 2017年7月11日03時00分県立大学が2018年度から、大学院生物資源学専攻に恐竜や生物進化などを研究する古生物学コースを新設する。定員は生物資源学専攻5コース全体で前期課程12人、後期課程4人。
県立大学は13年に恐竜学研究所を設置。県立恐竜博物館の特別館長を務める東洋一特任教授ら研究所に所属する3人が、学部生を対象に講義する一般教養科目はあったものの、恐竜を専門的に学ぶ場はなかった。高校生や学部生から「恐竜を専門的に勉強したい」という要望を受け、新たにコースを設けることにした。
コースでは研究所の特任教授らが恐竜博物館と協力し、野外調査を重視しながらコンピューターなどを活用した研究指導をし、専門の研究者を育てていく。(福宮智代)
なるほど。福井県立大学は2013年に恐竜学研究所を設置し、福井県立恐竜博物館の特別館長の東洋一氏を特任教授に迎え、学部生を対象に恐竜について扱う講義を一般教養科目で開講していたようです。
ちなみに、同博物館は、「日本でも有数の恐竜化石の産地、福井県勝山市。平成元年に第一次恐竜化石発掘調査が結成され、それ以降現在も恐竜の化石が発見され続け」おり、
カナダにあるロイヤル・ティレル古生物学博物館、中国にある自貢恐竜博物館と並んで、世界三大恐竜博物館と称されている。
2010年3月17日にはカーネギー自然史博物館と、2011年7月7日にはロッキー博物館と姉妹提携を結んだ。(http://info.pref.fukui.jp/brand/000_index/kyoryu/kyoryu.html)
と言うほど、素人の私からすると、すごい恐竜博物館なんだという印象を受けました。 なお、福井県立恐竜博物館 - Wikipediaによれば、見つかった恐竜の化石は、
括弧内は、学名が認められた論文の発表された年。
フクイラプトル・キタダニエンシス(2000年)
フクイサウルス・テトリエンシス(2003年)
フクイティタン・ニッポネンシス(2010年)
コシサウルス・カツヤマ(2015年)
フクイベナートル・パラドクサス(2016年)
の5種類。
同博物館の東洋一氏が呼ばれ、設立された恐竜学研究所のサイトを閲覧すると、
一般教育科目「恐竜学」、「地球生命史学」等で、研究所教員が恐竜の化石、発掘などの研究成果を交えながら、学生に恐竜の魅力を教えます。今年度から「構造地質学」、「古脊椎動物学実習」を新たに開講しています。
とあって、恐竜だけでなく、他の古生物や生物学に関する授業を行っていたと見られます。院生時代の地学の人たちだったら、興奮して受講してそうなラインナップ。
このレベルで「恐竜を専門的に学ぶ場はなかった」。少なくとも、生物に関する学部の中に専門科目がなければ、私が学生だったら「もったいない」と思ったでしょう。「高校生や学部生から「恐竜を専門的に勉強したい」という要望を受け、新たにコースを設けることにした」ということです。設置するのは学部ではなく、研究者要請目的の大学院で、
2018年度から、大学院生物資源学専攻に恐竜や生物進化などを研究する古生物学コースを新設する。定員は生物資源学専攻5コース全体で前期課程12人、後期課程4人。
という規模で、来年度から始まる模様。この 「大学院生物資源学専攻」は、ネット検索したところ、福井県立大学の生物資源学研究科 の中にありました。2017年7月12日の次点で、この研究科のページを読むと、「生物資源学専攻(博士前期課程・博士後期課程)」と「海洋生物資源学専攻(博士前期課程・博士後期課程)」の2専攻があるようで、遺伝学的なところから、食品開発まで、幅広く、実学にも向いた研究が行われているようでした。生物資源学研究科の下位学部として、生物資源学部も置かれています。
つまり、素人の私の邪推では、同専攻に古生物学コースを設置するための基礎的なものを、同大学は持っていると考えられます。加えて、朝日新聞の報道内容による古生物学コースの規模を考えると、「定員は生物資源学専攻5コース全体で前期課程12人、後期課程4人」ということでした。
福井県立大学は、経済学部/生物資源学部/海洋生物資源学部/護福祉学部の4学部、大学院は経済・経営学研究科/生物資源学研究科/看護福祉学研究科の3研究科を設置しています。平成29年、つまり今年5月の時点で、学部生は合計1705 人、大学院は全研究科と課程を合わせて95人。これらの大学のデータを加味して、恐竜学研究所の規模と新設予定の古生物学コースの定員は、地方公立大学として現実的な人数といっていいでしょう。
もし、レベルの高いと思われる福井県立恐竜博物館と、福井県立大学の以上の状況をもとに現状以上の連携ができ、受け入れる学生にガッツと野心があり、それに大学教員の人脈や(院生輸出という名の)「留学」をさせる力があったとします。 希望的観測を私が申し上げれば、ここで要請された恐竜研究者は、どうにか研究したことを糧に食っていく道を切り開くことも不可能ではないでしょう。ただ、その活路は日本国内よりは、欧米、それが難しいなら他のアジア地域に見出さなければならないかもしれません。
3.最後に
今回の福井県立大学が大学院に古生物学コースを設置し、恐竜学者養成に挑戦することについて、私は応援はしたいです。恐竜のこと、好きでしたしね。定員を見ても、既存の研究科や大学全体の規模を見ても、現実的ではあるし、協力ができる博物館のレベルも高そうです。
似たようなケースとして、以前の拙記事「忍者文化による地域おこしと大学+中国と韓国の忍者に近い役職について~「三重大が忍者研究センターを開設 伊賀サテライトに新年度 /三重県 」(朝日新聞)ほか~ 」の三重大学の国際忍者文化研究センターおよび人文学部&大学院の人文学研究科に関する科目と比較すると、やはり三重大学は国立大学であり、研究資金的な面と、忍者のほうがコンテンツとしては、恐竜に比較すると年齢・性別ともに日本では人気が高いです。
よって、院卒者の進路を考えると、三重大の忍者文化に関するコースのほうが、福井県立大の大学院生物資源学科古生物コースよりも、日本国内では職を得やすいのではないか。私はそのように考えました。
更に、恐竜研究者の養成については、次のシリーズ記事の学芸員、キュレーターという視点からも、読者の皆様には関係が浅くないことだと捉えて頂きたいです。
おまけとして、生物学系だけど、動物の骨どころか、恋愛対象の男性でさえ骨格で選ぶ学部生の椿先輩と、帰国子女で恐竜オタクの新入生・アヤメくんほか、ナルシストな院生の先輩も出てくる、理系研究室漫画の画像を置いておきます。現在、6巻まで出ていて、骨を扱う生物学系の人の留学話もあるとか、です:
4.('18.6.16_1525追記)恐竜などの古生物学関係の学部新設を目指す?!~地元の福井新聞から~
本記事の投稿から約一年後、次のようなニュースが出ました:
他の学部・学科の新設に紛れて、けっこう、思い切ったことをなさるなぁ、と思いました。
古生物学関係の新学部は、13年開設の恐竜学研究所の学術成果を基に、水月湖(若狭町)の湖底堆積物「年縞(ねんこう)」に関する古気候学なども取り入れる。恐竜と年縞という福井固有の研究材料を生かして他大学との差別化を図り、世界的な学術拠点を目指す。
(福井県立大に「恐竜学部」新設へ 古生物学を研究、世界の拠点に | 学校・教育 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE)
学部まるごとと大学院研究科の1つのコース、新設の規模は違うんやで!と 、少し心配になってきました。
果たして、どうなるんでしょうか?