仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【ニュース】「数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ」(CNNニュース.jp)~夏休みバージョン~

<本記事の内容>

1.はじめに

「天は二物を与えず」という言葉は、「天は一人の人間に、それほど多くの長所を与えることはしない」という意味として、よく使われます*1。しかし、世の中には、二つ以上のものに精通している人がおります。俗に「天は二物も、三物も与える」という例ですね。

そういった人たちの中には、キャリア上、どちらかを並行して続けていた場合、片方に専念するか、あるいは休んでいた道に復帰したいと希望して、片方のキャリアをストップする人もいるようです。

 

今回は、歩んでいたアメリカンフットボール選手が、数学の道に復帰したいと希望して、26歳でNFL選手の現役引退を表明したジョン・アーシェル選手のニュースをお伝え致します:

www.cnn.co.jp

 

夏休みも半ばということで、今回は、受験勉強に疲れた高校3年生を対象に、久しぶりに読み物のような記事を書いてみようかな、と思いました。または、部活やサークルをかけ持ちしていて、就活を始めるか、もう少し研究のために進学するか、悩んでいる大学生や修士院生の方。そして、キャリアに悩む社会人の方にも、読んでいただけたら幸いです。

 

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2.「数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ」(CNNニュース.jp)の内容

 

数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ

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(CNN) 米アメリカンフットボールリーグ( NFL)のボルティモア・レイブンズに所属し、数学者としての実績を持つことでも知られるジョン・アーシェル選手(26)は27日、現役から引退する意向を表明した。現在マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号の取得を目指しており、引退後はフルタイムで学業に専念するという。

 

レイブンズは声明を発表し、27日午前にアーシェル選手から引退の意向を伝えられたと述べた。アーシェル選手本人は同日午後、引退を受け入れてもらえたことへの感謝の言葉をツイッターに投稿。「簡単な決断ではなかったが、自分にとって正しかったと信じている」「数学の博士号を取るため、MITでフルタイムの勉強が始まると思うとわくわくする」とつづった。

 

アーシェル選手はペンシルベニア州立大学で数学を専攻し、学士と修士の学位を取得した。MITの博士課程ではスペクトルグラフ理論、数値線形代数機械学習を研究する。

 

2013年にはペンシルベニア州立大学で三角法や解析幾何学の講義を受け持った。研究論文も複数発表しており、そのうちの1つは計算数学の専門誌JCMに掲載された。

 

プロのフットボール選手としての能力と数学の才能に加え、アーシェル選手にはチェスの達人という側面もある。2016年、ニュージャージー州で開かれた科学技術系のイベントに参加した際には、チェスの全米チャンピオンとの対戦が実現している。

 

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引退のタイミングは、米研究者らがNFLの元選手から死後に提供された脳を調べた結果、頭部への度重なる衝撃が原因とされる脳の疾患が99%にみられるとの論文を発表した直後となった。

 

NFLでは2015年に、サンフランシスコ・フォーティナイナーズの24歳の選手が脳への外傷の長期的な影響に言及して引退。アーシェル選手は当時、スポーツメディアへの寄稿で「客観的に見れば、私は(プレーを)すべきではない。数学者としての輝かしいキャリアが待っている」と述べつつも、「試合が好きで、人とぶつかっていくのが好きだから」プレーを続けていると語っていた。

 

レイブンズのジョン・ハーボー・ヘッドコーチは、アーシェル選手の今回の決断を尊重するとコメント。2014年に獲得した同選手に対し「過去3年間の彼の努力に感謝し、これからの取り組みが素晴らしいものになるのを祈っている」とエールを贈った。

数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ

 

報道内容を見ると、「アメリカンフットボールリーグ( NFL)のボルティモア・レイブンズに所属し、数学者としての実績を持つことでも知られるジョン・アーシェル選手(26)」が先月27日に現役引退を表明した、ということです。別のネット記事のレイブンズのCアーシェルが引退 - 元NFL選手の脳疾患に関する報道が影響か - アメフトニュースまとめによれば、「ボルチモア・レイブンズのCジョン・アーシェルがトレーニングキャンプ開始直前、突然引退を表明した」で、タイミングとしては、今年の9月の新学年開始から、後述のように「MITの博士課程ではスペクトルグラフ理論、数値線形代数機械学習を研究する」予定なのかもしれません。

 

実は、アーシェル氏、NFLのレイブンズに所属する前年の2013年、 「ペンシルベニア州立大学で三角法や解析幾何学の講義を受け持った」教育実績がありました。更に「研究論文も複数発表しており、そのうちの1つは計算数学の専門誌JCMに掲載された」という研究業績を上げていた、バリバリの数学研究者だということが窺えます。なお、「アーシェル選手はペンシルベニア州立大学で数学を専攻し、学士と修士の学位を取得」していたとのこと。確か、アメリカは飛び級システムや、一定条件を満たせば学士・修士課程が短縮されるところもあったと聞いたことがあるので、優秀なアーシェル氏も日本で言う学部四年間、修士二年間よりも短い期間で各学位を取得し、大学で教鞭をとっていたのかもしれません。

 

その後、2014年の時にアーシェル氏は23~24歳くらいで、NFLのレイブンズでアメフト選手としてプレイし、2017年の夏に現役引退を表明。ニュースの続きを読むと、

アーシェル選手にはチェスの達人という側面もある。2016年、ニュージャージー州で開かれた科学技術系のイベントに参加した際には、チェスの全米チャンピオンとの対戦が実現している。

 (数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ)

というチェスの才能も見せている人です。昨今、日本では2016年10月に将棋では史上最年少でプロ入りし、その戦績が話題の四段・藤井聡太氏ですが、その解説や取材でマスコミに引っ張り出される棋士羽生善治氏も、チェスで日本国内屈指の強豪だとされ、しかも本人の感覚では趣味だそうです…。

 

最近、進路に悩む藤井聡太氏は、将棋に専念したい希望を口にし、ご両親は進学してほしいと心情を吐露されておられ、その動向は注目されています。羽生善治氏は棋士として多忙すぎて、最終的に都内の通信制の高校に編入したそうです。藤井聡太氏の人生は彼が選ぶものではありますが、アーシェル氏や羽生善治氏のアメフトやチェスに当たる、将棋以外のものに楽しみが見つかり、そちらを並行して続けることも、年齢的に十分、ありだと私は考えました。特に、理系のほうの趣味はいかがでしょう?

 

 

レイブンズに入って3年目だったアーシェル氏ですが、ニュースによると、どうやらアメフト選手としてのプレイにより、脳へのダメージに関する研究結果が影響していることが指摘されています。具体的には、

引退のタイミングは、米研究者らがNFLの元選手から死後に提供された脳を調べた結果、頭部への度重なる衝撃が原因とされる脳の疾患が99%にみられるとの論文を発表した直後となった。

 

NFLでは2015年に、サンフランシスコ・フォーティナイナーズの24歳の選手が脳への外傷の長期的な影響に言及して引退。アーシェル選手は当時、スポーツメディアへの寄稿で「客観的に見れば、私は(プレーを)すべきではない。数学者としての輝かしいキャリアが待っている」と述べつつも、「試合が好きで、人とぶつかっていくのが好きだから」プレーを続けていると語っていた。

数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ

ということが言われています。このタイミングでのアメフト選手として現役引退の真相はアーシェル氏のみが知っています。

 

もうひとつ、身体年齢のことを考えると、いくら社会人キャリアを持つ人の学生が多いアメリカとはいえ、柔軟な発想、ひらめきが時として鍵となる数学の場合、分野的にはより若年のうちに、博士課程で研究を開始しておきたい、という考えがアーシェル氏にあったのかもしれません。 また、アーシェル氏が研究テーマで希望している機械学習の分野は、世界中で日進月歩以上のスピードで研究、技術の開発が進んでいる分野と聞きますから、早く着手したいという焦りも含まれているのかもしれません。

 

アーシェル氏は、「「試合が好きで、人とぶつかっていくのが好きだから」プレーを続けていると語」りつつも、やっぱり数学者としての輝かしいキャリアが待っている」と、MITでの博士課程に入り、理系院生となって過ごすことにワクワクしている気持ちを隠しきれていません。同僚である他の選手には、「アーシェル、ちょっと落ち着けよ!」と諭した人もいたかもしれません。

 

選手を見守る立場らしき、レイブンズのジョン・ハーボー・ヘッドコーチは、

アーシェル選手の今回の決断を尊重するとコメント。2014年に獲得した同選手に対し「過去3年間の彼の努力に感謝し、これからの取り組みが素晴らしいものになるのを祈っている」とエールを贈った。

数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ

ということで、表面上は数学者の道を歩む彼を応援しているようではあります。

 

 

4. 最後に

そういうわけで、今回はNFL選手のジョン・アーシェル選手が、「おれ、数学者の道に戻って、MITのドクターコースに行きます」宣言のニュースを取り上げて紹介しました。その背後には、数学者として十分の教育実績と研究業績に加え、数学以外のチェスにも才能を見せつつも、「とにかく、早く数学の研究に戻りたいんだよう!」という、彼のワクワク感が伝わってくる報道内容でした。アーシェル氏のファンでない私も、数学に戻っても、ファイト!と言いたくなってきました。

 

ところで、本ブログでは、今までの人生のキャリアをストップして、別のキャリアに進んだ方々のことを紹介してきました。スポーツ分野では、サッカー選手を引退後、FIFAの大学院で、スポーツの経営を学び、そして研究する修士課程に進んだ宮本恒靖さんがいます:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

宮本恒靖さんの場合は、スポーツ選手のキャリアの延長線上の位置づけとして、FIFAマスターに入ったと言えなくもないです。実は、彼は大学時代に学んだ労働経済学のことがあって、そちらの延長線上として、スポーツ経営の大学院修士課程に進んだとも言えるでしょう。

 

FIFAマスター在籍時のことは、次の著作に詳しく書かれているようですので、気になる方は、探して読んでみて下さい。

 5.おまけ~夏休み宿題の読書感想文の対策について~

夏休みの読み物として、本記事を書いたので、あともう一つ。サッカー関連の仕事をしている人たちを追った、お気に入りのノンフィクション作品を挙げておきます:

 

もし、本記事の読者ご本人が中学生、あるいはお子さんがそのくらいまでのご年齢の方で、読書感想文の宿題があったとします。本人がスポーツ好きだけど、特に読みたい本が浮かばなかったら、とりあえず、上のどっちかの本を書店なり、図書館で見つけて、通読しましょう。読書後、読んで気になるポイントを箇条書きにして、間をつなぐように文章を足していくと、夏休みの宿題が一つ、終わるんじゃないでしょうか。

 

具体的なやり方は、こちらをご参照ください:

togetter.com

 

なお、私のブログをコピー&ぺ―ストして、編集すると、最近の学校教員や審査員側にも、コピペチェッカーのアプリケーションソフトを使って、宿題が済まされていないか、確認するところも皆無ではないでしょう。盗作判定になると、アウトです。その点、ご注意下さいませ。

 

<関連する目次>

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

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