仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

煙草とキャンパスの人々~「大学喫煙所に「放置タバコ空箱ランキング」清掃職員のコメントが秀逸 」(withnews)~

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<本記事の内容>

1.はじめに~煙草にまつわる思い出~

 8月もお盆を過ぎ、そろそろ、小中高生の皆さんは、残った宿題に必死になり始める頃ではないでしょうか。大学や大学院では、夏季集中講義に向けて、先生方が準備に大慌てを始める時期ではないでしょうか。

 

研究作業が切羽詰まってくると、私は構内のあちこちを歩き始め、用もないのに 大学生協の書籍部をうろつき、平凡社ライブラリー岩波新書、東方選書あたりをうろついて、研究に関係ありそうな本を探してしまいました。つい、ぱっと手に取って衝動買いしてしまった時もありましたが、大抵は書棚をざっと見渡しただけで終わり、すごすごと己の研究棟のある方角へ帰ってゆきます。

 

書籍部の建物から、歩いて研究棟の正面入口の向かい側、少し人目につきにくい場所に、うちの部局の喫煙所はあって、本を買って帰ろうとした日は時々、「ねぇ、仲見さん、今日は何を買ったの?」と、よく台湾や韓国から来た男性の先輩院生に声をかけられ、そこに中国人や日本人の院生が加わります。この頃、喫煙所に集まる人々の話では、中国のことはわかりませんが、台湾と韓国の方々は、兵役に行っている間に、喫煙習慣がつく人がいると聞いたことがありますが、噂程度の話かもしれません。日本人の場合は。個人個人で喫煙し始める理由は様々だそうです。

 

彼らには、自分が喘息のキャリアだということで、禁煙者である上に煙草がダメと伝えてあるので、私がコミュニケーションしに近づくと、設置されている灰皿で、たばこの火を皆さん消されます。そして、煙がおさまった頃、私は灰皿のところに来て、先輩方は燃え殻を灰皿に入れ、缶コーヒーを開けて飲み始めます。時に、煙草の匂いが強いと、私んくしゃみや咳をはさみ、「場所、変えようか?」と聞かれながら、買ってきた本のプレゼンに入ります。

 

そんな感じで、喘息キャリアの私は息抜き目的で、喫煙所に配慮をされながら、立ち寄っておりました。殆どの方々は、高そうなマルボロメビウスなど、色んな銘柄の煙草の箱を握りしめ、あるいはポケットに入れて、立ち話が終わると研究室に戻っていったのを覚えています。喫煙所が屋外の屋根なしの場所だったこともあって、雨の日は別の喫煙所を探し、院生たちは分散して煙草休憩をしていたようです。

 

そんな、院生時代のキャンパス内の喫煙所を思い出したのは、不謹慎ですが、ちょっと面白い煙草空き箱のマナー啓発が行われていたニュースを思い出したからです: 

withnews.jp

 

そういうわけで、今回は「放置タバコ空箱ランキング」のニュースを紹介しながら、キャンパス内での喫煙所でのマナーを考えてみようと思います。

 

 

2.「大学喫煙所に「放置タバコ空箱ランキング」清掃職員のコメントが秀逸 」(withnews)の内容および仲見の見解

それでは、ニュースを読んでいきつつ、間にコメントをしてきましょう。

 

2017年08月05日

大学喫煙所に「放置タバコ空箱ランキング」清掃職員のコメントが秀逸

丹治翔

 

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 静岡大の工学部などがある浜松キャンパス(浜松市)の喫煙所に掲示されたランキングがツイッターで話題です。その名も、喫煙所に放置された、たばこの空き箱を調査した「放置タバコ空箱ランキング」。個数の多かった1~10位を空き箱だけでなく、捨てられ方のコメントを添えて紹介。その秀逸な内容も注目を集めています。大学に経緯を聞くと、清掃職員さんの切実な思いがあったようです。

 

大学喫煙所に「放置タバコ空箱ランキング」清掃職員のコメントが秀逸 - withnews(ウィズニュース)

 

ホワイトボードの設置を見たところ、室内にある喫煙所か、渡り廊下や軒下等の中外といった空間に設けられた喫煙所に、ランキングが作られたと思われます。喫煙所の大きな吸殻入れや灰皿は、ゴミ箱ではありません。吸殻や灰を清掃員の方が回収して、清潔に保っていらっしゃるようです。何で知っているかというと、私は研究室に泊まった翌朝、学生街の牛丼屋へ朝食を食べに出かけた際、先の喫煙所に朝7時半ごろ、ビニール袋を片手に吸殻らしくものを集めて、清掃していらっしゃるトイレでも見かけていた清掃員の方を見て、挨拶したことがあったからです。

 

そういうわけで、空き箱のような大きいごみを置いていかれると、吸殻の清掃準備でいらした清掃員の方には、非常にマナーとして迷惑をおかけしていることになります。「空き箱用のゴミ箱を設置すればいいんでは?」というご意見もありますが、大学側の予算もありますし、喫煙目的ではなくて立ち寄った人が、別の種類のゴミを捨てていく、といった新たな問題が発生することも有り得ます。

 

ニュースの続きに戻りましょう。

 

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「論文書けそう」「観察眼が素敵」

 

 大学によると、掲示されていたのはキャンパス入り口にある喫煙所です。ツイッターで投稿された写真には、ホワイトボードに「この喫煙所にはゴミ箱を設置していません。タバコの吸殻以外のゴミは持ち帰り、お近くのゴミ箱へお入れください」と書かれ、その下に空き箱の銘柄を集計したランキングが載っています。

 

 ランキングは個数以外に、捨てられ方などの特徴をとらえたコメントが載っています。例えば3位の空き箱は「柱のカゲに放置するチキンハートの持主」、8位の空き箱は「夏になってから追い上げてランクイン」。「ハードパック以外も含むフィルターギリギリまで喫煙する」(6位の空き箱)といった細かい観察によるコメントもあります。

 

 ランキングによると、今年4月中旬から約3カ月にわたって放置された空き箱は、47銘柄148個。この掲示を撮影したツイートは2万5千近いリツイートを集め、「コレで論文書けそう」「観察眼が素敵」などといったコメントもされています。

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 大学喫煙所に「放置タバコ空箱ランキング」清掃職員のコメントが秀逸 - withnews(ウィズニュース)

 

やはり、空き箱向けのゴミ箱は設置されていない喫煙所だったようです。さらに、私が清掃員の方に感心したのは、空き箱の捨て方に関する、次のような細やかなプロファイリングです。

  • 「空き箱の銘柄を集計したランキング」
  • ランキングは個数以外に、捨てられ方などの特徴をとらえたコメントが載っています」:3位の空き箱は「柱のカゲに放置するチキンハートの持主」、8位の空き箱は「夏になってから追い上げてランクイン」。「ハードパック以外も含むフィルターギリギリまで喫煙する」(6位の空き箱)といった細かい観察によるコメント
  • 「今年4月中旬から約3カ月にわたって放置された空き箱は、47銘柄148個」

掲示されていたのはキャンパス入り口にある喫煙所」ということですから、いわば、静岡大の工学部などがある浜松キャンパスの「顔」となる場所。そこが汚れ、不衛生な状態にあると、研究会やプロジェクトで訪れた学外の訪問者に見られては、静岡大の浜松キャンパスのイメージ自体がダウンしてしまいます。

 

京大あたりのユニークな先生がいたら、ニュース記事にあるネット上の声のように、「○○大学▲▲キャンパス内の喫煙所に放置されたタバコの空き箱の銘柄や数等の心理学的調査:キャンパス内の喫煙環境の衛生状態の向上に関する研究の準備として」と題して、学内の衛生環境の向上を口実に、科研費に限らず、保健機関や公衆衛生機関などの助成金で研究プロジェクトに応募されそうです。

ただし、そこにプライバシーや個人情報保護の観点から、問題が潜んでいそうです。冒頭のエピソードの喫煙者の先輩方を見ていた私は、「マナー守ってないほうが悪いけれど、執念深く、空き箱や吸殻の状態を観察されるのは、ストーカーみたいで怖いも…」と、個人情報保護の面で清掃員さんに問題があるという気持ちを抱くかもしれません。

 

「空き箱ランキング」の反響は大きかったものの、大学側が認めたものではなかったようで、結局、撤去されることとなりました。

 

大学は知らず…、反響の大きさに撤去

 大学によると、このランキングを掲示したのは大学の清掃を担当しているパート職員だということです。これまでも貼り紙などで空き箱を捨てないよう啓発していたそうですが、なかなか減らないためこの職員の判断で設置したそうです。

 しかし、大学側が把握しておらず、反響も職員が「想定外」とするほど大きくなってしまったため、この掲示は3日に撤去されました。大学側は「一生懸命に働いている職員なので、喫煙所をきれいにしたいという思いがあったのだろう」と話しています。

大学喫煙所に「放置タバコ空箱ランキング」清掃職員のコメントが秀逸 - withnews(ウィズニュース)

 

清掃員さんは、どうやら、貼り紙やポスターによる告知では、なかなか、空き箱の放置は減らなかったため、ランキングによるインパクトのある方法に、やり方を切り替えたと大学側は考えているようです。「大学側は「一生懸命に働いている職員なので、喫煙所をきれいにしたいという思いがあったのだろう」と話しています。」と、その働きを認めていらっしゃるように、認めた大学側と清掃員さんとの間で、何か、対策の話し合いをすれば、打つ手があったのではないでしょうか。

 

 

3.喫煙者から煙草とキャンパス内の人々について思うこと~むすび~

本記事の冒頭に書きましたように、私自身は禁煙者であり、かつ喘息に羅患したことがあります。苦手な薬品っぽい臭いのせいか、煙草の臭いを察知すると、くしゃみや咳が出始めるたり、煙で目が刺激されて涙が止まらなくなったり、身体が受け付けません。これも一種の「アレルギー」なのかもしれません。

 

感覚過敏のせいか、アルコールにも過剰反応して、ビール一杯で頭がガンガン痛くなった時があり、他のお酒もゆっくり、チビチビとしか飲めません。飲み放題では損するほうですね*1

また、ネギ類はタマネギだけでなく、30歳を過ぎてから、すき焼きに入れるタイプの太いネギを切るだけで目から涙ダバダバ。 調理後のものは口にして、「辛いかな?」と感じるくらいで、痛めたものを中心に食べることができる料理もあるので、生活には困りません。

 

この生活に困らないという意味で、私は喫煙者の方に対して、いますぐ禁煙に向けた努力を始めろ、とは言わない立場です。どちらかというと、「設けた喫煙所だけで吸って頂けたら助かります派」ですかね…。近年、キャンパス内の喫煙所を徐々に減らし、キャンパス内を全面禁煙にしました!という大学や大学院があります。が、それって、喫煙者の方々の喫煙できる場所を奪うことになる恐れがあります。

 

もっと言えば、学内外の死角でこっそり煙草を吸い、吸殻をキャンパスの植え込みや、路上に捨ててしまうタイプの喫煙者を増やしてしまうことになりませんか。吸殻に火が残っていて、植え込みや路上の可燃物に燃え広がったら、火事になりませんか。こういったことって、杞憂におさまらず、実際にありそうなことではありませんか。

 

私だって、「ネギ類、調理できない人、お断り」という学食のキャンペーンでもされたら、たまったもんではありません…。身体が苦手なりにも、食べる方法はいくらでもあります。喫煙者の方にに対してもそうで、体質的に煙草を受け付けない私と、喫煙者の方々が、冒頭のように一緒に過ごすことはできるでしょう。

 

もちろん、煙草を吸い続けることによる本人、周囲への人たちへ健康被害は、私も知っております。受動喫煙がガンを引き起こすリスクは、喫煙者本人よりも何倍も大きいことは、高校までの授業で習いました。また、喫煙が私の身体が煙草の煙に対して、アレルギー的な反応を見せているのも、幼少期に煙草の臭いを嫌だと感じ、それを嫌いな薬品の臭いと結び付けたせいで、いまだに私は色々と気を使うことがあります。その他の臭いには鈍感ですが、薬品に近いもの(酒類のアルコール含む)と煙草の臭いには、今でも敏感なほうで、正直に言えば、目の前で煙草を吸われるのは、健康上、ひどい咳が出る前にやめてほしいですし、吸ってはほしくないです。

 

 

そういった健康に悪影響のある背景を知ったうえで、私は喫煙者と禁煙者が共存できる研究環境がキャンパス内にあってほしいと考えいました。言い方は悪いですが、喫煙者を排除ではなく、大学の喫煙所に向かわせる。喫煙所についても、シンプルに喫煙しやすいデザインにする。煙草のゴミに関するマナー啓発として、「空き箱ランキング」は設けてもいいかもしえません。が、嫌悪感を煽るポスターや写真で禁煙を促すような刑事は避けたほうがよいでしょう。

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ある大学の喫煙所を研究会で使った先輩の話では、禁煙を迫る大学当局が喫煙所に「肺がん患者の肺の写真を貼って」、喫煙者を減らそうとしていたそうです。嫌がった喫煙者たちが学外の木陰で吸い出し、警備員のおじさんたちに説教された話を聞いたことがありました。喫煙者の研究者が多い研究団体だと、こういった大学のキャンパスは、今後、集まりの会場としては使いづらくなるでしょうね。

 

以上のとおり、私は体質と健康面で、自分の前では可能な限り、喫煙者の方には煙草を吸うのを控えて頂き、喫煙所で吸って頂きたいは思っています。だからといって、大学や大学院のキャンパス内から喫煙所をなくし、喫煙者を排除することで、発生する喫煙者への疎外感や「吸わざるを得ない人」がきっかけとなる火事の危険性等は、新たな問題を起こすと見なしております。だからこそ、禁煙者と喫煙者がお互いに、気持ちよくコミュニケーションできるよう、キャンパス内の場所を工夫して設ける必要があるのではないでしょうか。

 

おしまい。

 

 

タバコが語る世界史 (世界史リブレット) | 和田 光弘 | たばこ・禁煙 通販

 posted with ヨメレバ

*1:ついでに書いておくと、聴覚の情報処理の方に何か障害があるらしく、大人数の飲み会での会話は非常に苦手で、最近は控えています。詳しくはこちら:

大学院は「隠れ発達障害者の沼」だった 発達障害と研究者の不思議な関係 – メンヘラ.jpの「3-3.五感の情報処理の「障害」によるコミュニケーションで困ったこと」

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