仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【2017.9.12_1606_リンク切れ確認:ヒアリ・ニュース】短い時間で「判別キット 研究開発へ 環境省」(NHK ニュース)&「「九州大学ヒアリ研究グループ」が発足! 」 (九州大学)~

<今日はヒアリ・ニュース>

1.ヒアリに関するニュースを2件ほど

ヒアリと言えば、弊ブログでは過去にこちらの記事で少し、扱いました。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

偶然、ヒアリに関するニュースが本日のはてブ「学び」に2件、入っておりました。今週は仕事で更新が今まで以上に滞りがちになりそうです。ので、今日は次のニュースを置いておきます。

 

 その1.「ヒアリ 短時間判別キット 研究開発へ 環境省 」(NHKニュース)

  アイキャッチの説明>全国各地の港などで見つかっている強い毒を持つヒアリが国内に定着するのを防ぐため、環境省は、ヒアリかどうか短時間で確認するキットの開発や、殺虫…

(2017.9.12_1606_リンク切れ確認)

www3.nhk.or.jp

 

 その2.「「九州大学ヒアリ研究グループ」が発足! 」 九州大学

  <アイキャッチの説明>九州大学の「「九州大学ヒアリ研究グループ」が発足!」のページです。

www.kyushu-u.ac.jp

 

f:id:nakami_midsuki:20170828124645p:plain

 
 
 

 

 

2.今週頭のヒアリ・ニュース

 2-1.「短時間判別キット 研究開発へ 環境省」(NHK ニュース)

よくリンク切れし、動画が付いていることで、不便なNHKニュースのオンライン版です。

 

ヒアリ 短時間判別キット 研究開発へ 環境省

8月27日 11時46分

全国各地の港などで見つかっている強い毒を持つヒアリが国内に定着するのを防ぐため、環境省は、ヒアリかどうか短時間で確認するキットの開発や、殺虫効果が高い薬剤の使用方法の研究を進める方針を決めました。

ヒアリ 短時間判別キット 研究開発へ 環境省 | NHKニュース

とうとう、国が動き出しました。環境省主導で、「ヒアリかどうか短時間で確認するキットの開発や、殺虫効果が高い薬剤の使用方法の研究を進める方針」を決定。

 

強い毒を持つ南米原産のヒアリは、全国各地の港などで見つかっていて、環境省は国内に定着するのを防ぐため全国68の港でヒアリがいないか調査し、水際での対策を進めています。

 

しかしヒアリはほかのアリと見分けることが難しく、現在行っている調査では発見されたアリを専門家に送り判別しているため、対応に時間がかかることが課題となっています。

 

このため環境省は、国立環境研究所で短時間で誰でもヒアリと確認できる簡易なキットの開発を進める方針を決めました。アリを入れるとDNAの型からヒアリかどうかわかるキットを目指すとしています。

ヒアリ 短時間判別キット 研究開発へ 環境省 | NHKニュース

現在は、日本各地の港で見つかったヒアリに対して、定着しないように環境省が調査と水際で対策をしている模様です。問題は、「ヒアリはほかのアリと見分けることが難しい」こと。民間では、Twitterヒアリ警察さん個人のアカウントに「これは、ヒアリですか?」という問い合わせが殺到したこと自体が話題となっておりました。「国立環境研究所で短時間で」DNAの型によって「誰でもヒアリ」だとわかるキットについて、私は来年以内に販売されることを希望します。ヒアリの定着は防げる確率がアップしますから。

 

またヒアリがすでに定着している中国や台湾の研究機関と連携し、現地で薬剤を使って殺虫効果が高い薬剤やその使用方法について研究する方針です。

 

環境省は、必要な経費を国立環境研究所への交付金として来年度・平成30年度の予算案の概算要求に盛り込むことにしています。

ヒアリ 短時間判別キット 研究開発へ 環境省 | NHKニュース

 そうそう、「役に立つかもしれない」研究と九井諒子『竜の学校は山の上』のこと~ #ヒアリ と家畜だった「竜」の保護が社会問題である日本が舞台のSF漫画~ - 仲見満月の研究室の「3.本作で考えた現実の現代日本でいう竜とはあとヒアリ問題等」でお伝えしたように、台湾、そして中国ではヒアリがほぼ定着し、根絶に向けて各国研究機関が動いています。そちらと提携しつつ、キットの開発が日本で進められると見られます。

 

最後に注目すべきは、「環境省は、必要な経費を国立環境研究所への交付金として来年度・平成30年度の予算案の概算要求に盛り込むことにしています」としていること。改めて、「役に立つかもしれない」研究と九井諒子『竜の学校は山の上』のこと~ #ヒアリ と家畜だった「竜」の保護が社会問題である日本が舞台のSF漫画~ - 仲見満月の研究室環境省、それから省庁の職員の方々には、お読みいただきたいです。何も、こういった対策に必要な研究は、外来種に限った話ではないと思われます。

 

 2-2.「「九州大学ヒアリ研究グループ」が発足! 」 (九州大学

文科省からだけでなく、環境省から日本の各大学の関連分野への予算投入ができるようになったらいいな、と感じた九州大学の実例です。

 おしらせ

公開日:2017.08.24

九州大学ヒアリ研究グループ」が発足!

 2017年5月26日に兵庫県尼崎市に日本で初めてヒアリが侵入しました。その後、次々に侵入事例が報告され、7月21日には福岡市のアイランドシティでもヒアリが発見されました。ヒアリは一度定着すると根絶が非常に難しく、健康被害や経済被害も膨大になります。

「九州大学ヒアリ研究グループ」が発足! | お知らせ | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

 

冒頭に出ている「7月21日には福岡市のアイランドシティでもヒアリが発見されました」の件では、たしか、毎日新聞で読んだ出来事を指していると思われます:

mainichi.jp

具体的に起こったことは、次のとおり。

環境省は27日、博多港に近い福岡市博多区の倉庫で、コンテナから荷降ろししていた30代男性作業員がヒアリに刺されたと発表した。症状は軽く、病院で手当てを受けて帰宅したという。5月に国内で初めてヒアリの侵入が確認されて以降、人が刺されたとの報告は初めて。

 同省や福岡市によると、コンテナは中国広東省から運ばれ、24日に同市東区の博多港のアイランドシティに荷揚げされた。27日に倉庫に運ばれ、作業員は同日午前10時半ごろ、電子機器が入った段ボール箱を出す作業中に左腕を1カ所刺され、周囲に発疹が出た。

 コンテナには、さなぎを含めてヒアリ約30匹がおり、同日中に駆除した。男性は「腕に10匹ほどまとわりついたので振り払ったが、クラゲに刺されたような痛みを感じた」と説明しているという。

ヒアリ:作業員「クラゲに刺されたような痛み」 - 毎日新聞

被害に遭った作業員の方は、Twitterヒアリに刺された感想を述べ、また質問に答えられていました。そのtgetterまとめも貼っておきます:

togetter.com

 

日本での被害者が九州大学のある福岡県で起こってしまったわけで、けっこう、九州大学にとっては、身近な出来事だったのかもしれません。そのあたりの事情は置いておくとしまして、九大は村上隆弘准教授を代表に、ヒアリの研究グループを発足。以下のようなことを目的に、研究と啓発等の活動を行うことにしたようです。

 そこで、九州大学の村上貴弘准教授(持続可能な社会のための決断科学センター)を代表者として、細石真吾助教(熱帯農学研究センター)、緒方一夫教授(熱帯農学研究センター)、丸山宗利准教授(総合研究博物館)で「九州大学ヒアリ研究グループ」を立ち上げました。


 このグループの目的は、ヒアリの定着を防ぐために、九州周辺でのヒアリと疑わしいアリの同定支援、ヒアリの生態や行動に関する助言や情報提供を自治体や港湾・空港事業者等に向けて行うことです。

 

 九州内でこれまで見たことないようなアリを見た、もしくはこれはヒアリではないのか、ヒアリに関する啓蒙活動をお願いしたい、などの要望がありましたら下記メールアドレスまでお問い合わせください。

(中略)

 

研究者からひとこと

 持続可能な社会のための決断科学センター准教授の村上です。ヒアリの水際での発見率向上や基礎的な分類スキル、生態の知見増加などを目指して、九州大学の4名のアリ研究者でこのグループを立ち上げました。一緒にヒアリの定着を防ぎましょう。よろしくお願いします。

 

■お問い合わせ

九州大学ヒアリ研究グループ
Mail:hiari-kenkyu★jimu.kyushu-u.ac.jp
※メールアドレスの★を@に変更してください。

 

「九州大学ヒアリ研究グループ」が発足! | お知らせ | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

 

九州大学ヒアリ研究グループ」のページには、注意事項に当たるところがありました:

お問い合わせに対応できる事例

  1. 港湾関係、防疫、保健所、学校等での講習会の開催。
  2. 公的空間でのアリ相調査。

※旅費や謝金等につきましてはご負担をお願いいたします。


対応できない事例(個人的なもの)

  1. 見慣れないアリがいて心配だから調べてほしい。
  2. 自由研究の支援。
  3. ご自宅に住み着いたアリ・シロアリ・ハチの駆除。 
「九州大学ヒアリ研究グループ」が発足! | お知らせ | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)

要するに、対応できるのは、民間企業では港湾関係の倉庫関係、ほかヒアリに対する行政機関や学校等での啓発・啓蒙の講習会、公的空間でのアリ調査に関する相談あたりですね。

 

例えば、港の作業員の方や会社員の方の荷物にヒアリが紛れ込み、民家に女王アリつき10匹単位で移動して、庭に巣を作ってしまった場合等、見つかってしまったら、「対応できない事例(個人的なもの」)」に状態が移行していますが、どうしたらよろしいんでしょうか?そういったケースは、水際作戦が次のフェーズに移行したものと見なして、「九州大学ヒアリ研究グループ」と、冒頭の環境省に窓口があれば、両方に相談したほうがよさそうです…。

 

 

3.まとめ

といった感じで、8月最終週の頭は、ヒアリ対策に取り組む話題でした。主にニュースは2つで、環境省→国立環境研究所への予算付けも予定した、ヒアリを見分けるキットの開発、および、「九州大学ヒアリ研究グループ」がヒアリの日本定着を食い止めるための活動や請け負う内容を紹介しました。

 

2-2の頭にも書きましたが、「九州大学ヒアリ研究グループ」の活動については、文科省よりも、環境省と国立環境研究所と一緒にプロジェクトをやって、予算をとって本格的に取り組んでほしいと思いました。財務省から必要な予算をブン取るイメージです。研究やキットの開発、啓発・啓蒙活動にかかる教材の作成には、けっこう、お金がかかると思うんですよね。

 

以前、取り上げましたクマムシ博士のブログの次の記事:

horikawad.hatenadiary.com

これによりますと、次の本の紹介でヒアリに関する生態が丁寧にまとめられていましたが、それ以外の本で、ヒアリに特化した図書は現在、あまりないようです。むしブロの上記記事の終盤では、

このように、ヒアリ社会生物学のモデル生物として、興味深い知見を提供してきた。これから日本でアリ研究者を目指す若い世代にとって、(日本国内で研究するのは難しいかもしれないが)ヒアリは防除研究と行動生態学研究の両方において魅力的な材料に映るのではないだろうか。

(『ヒアリの生物学』でヒアリの生態を知る - クマムシ博士のむしブロ)

という点が書かれていました。ヒアリは生物です。人間が感知している以上に、どんどん、行動や生態が進んでいることも否定はできないでしょう。むしブロのこの記事に出てくる、盛り土に似たアリ塚(日本だと公園や学校の運動場にも作られそう)の中で、どんどん、新しい進化が起こっている可能性はあります。

 

このほか、クマムシ博士の「むしブロ」には、ヒアリ被害での死亡者数や、マスコミ報道に関する検証記事が出ています。合わせて、お読みいただくのをおすすめ致します。

 

なお、紹介されていたヒアリの次の本については、Amazonでも、楽天でもメーカーお取り寄せ状態です。 

 

 

合わせて、出版社のリンクも貼っておきます。こちらから直接注文も可能らしいです:

ヒアリの生物学kaiyusha.wordpress.com

 

そううわけで、本日、紹介したニュースに出てきた省庁や九大の研究グループには、予定している計画と合わせて、最新のヒアリに関するハンドブックを作成してほしいです。

 

そういった感じで、酷暑が続きますが、皆さま、ご無理のない程度に生きていきましょう。おしまい。

 

 

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