仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【ニュース】「博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け」( 大学ジャーナルオンライン)

<博士人材の行方>

1.はじめに

以前、こちら【ニュース】「ポストドクターから大学教員への道険しく、文部科学省調べ」(大学ジャーナルオンライン)~主に就職問題~ - 仲見満月の研究室で紹介しました、ポスドクから大学教員へ進める確率を調査した文科省の機関が、次に出したのは、博士人材に関する進路の追跡調査でした:

univ-journal.jp

 

今回は、この大学ジャーナルオンラインのニュースをもとに、博士人材の問題について、考えてみたいと思います。

 

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2.【報道】「博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け」( 大学ジャーナルオンライン)の内容

 2-1.2012~2015年度の博士課程修了者の被雇用先

さっそく、ニュースの内容を読んでいきましょう。

博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け

大学ジャーナルオンライン編集部

 

 大学院の博士課程修了者の半数以上が大学や公的研究機関で働き、7割以上が任期制雇用であることが、文部科学省科学技術・学術政策研究所の博士人材追跡調査第2次報告書(速報版)で明らかになった。博士課程修了者のキャリア構築が困難になったといわれているが、実態調査でそれがあらためて裏付けられた格好だ。

博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け | 大学ジャーナルオンライン)

 

冒頭は、ニュース記事の まとめを行う部分です。よって、今回の主題は、「大学院の博士課程修了者の半数以上が大学や公的研究機関で働き、7割以上が任期制雇用であることが、文部科学省科学技術・学術政策研究所の博士人材追跡調査第2次報告書(速報版)で明らかになった」です。それによって、ニュースが伝えたい結果は、「博士課程修了者のキャリア構築が困難になったといわれているが、実態調査でそれがあらためて裏付けられた」ということ。

 

それでは、具体的な数字が出ている続きの内容を見ていきましょう。

 

 調査は2016年11月、2012年度に博士課程を修了した2,614人、2015年度に修了した4,992人から修了後半年から3年半の状況を聞き取り、集計した。

 それによると、2012年度修了者の雇用先は52.6%が大学、7.4%が公的研究機関。2015年度修了者は52.3%が大学、8.8%が公的研究機関。ともにほぼ同じ比率になっている。

博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け | 大学ジャーナルオンライン)

データは、課程博士で博士号を取得者した「博士課程修了者」を対象にしていると考えらえます。それにしても、ニュースが伝えるように、

  • 2012度修了者の進路…大学(52.6%)、公的研究機関(7.4%)
  • 2015度修了者の進路…大学(52.3%)、公的研究機関(8.8%)

となっております。恐ろしいまでに、3年間で約半数の博士課程修了者が大学に雇用先を得ていることが分かります。公的研究機関については、3年間で、1.4%アップしています。

 

 2-2.その後の被雇用者の転職状況とその背景

さて、この被雇用者の人たちは、【ニュース】「ポストドクターから大学教員への道険しく、文部科学省調べ」(大学ジャーナルオンライン)~主に就職問題~ - 仲見満月の研究室で書いたように、任期付きの非正規雇用のポストで、大学や公的研究機関に職を得ている人がいます。若年世代は、特に非正規雇用ポスドクからキャリアをスタートしていることが多いでしょう。

 

今回のニュースでは、博士人材の被雇用者の転職状況について、詳しく主介されています。

 2012年度修了者のうち、大学や公的研究機関から民間企業へ移った人は全体の3%、非営利団体個人事業主などその他の分野へ移った人は8%にとどまり、大学から民間企業への移動が活発でない実態も明らかになった。

 

 2015年度修了者の大学や公的研究機関での就業状況は、博士研究員が27.8%、助教が24.1%と全体の半数以上を占めた。71.9%が任期制雇用で、将来の見えない不安定な立場に追い込まれていることも分かった。

 

 2012年度修了者に今後の展望を尋ねたところ、56.3%が大学や研究機関で安定的な地位につくことを希望しているが、年齢が高くなるにつれ、雇用先にこだわらない人が増えている。

博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け | 大学ジャーナルオンライン

転職先を整理し直すと、

 ◆2012年度修了者:

  ・大学や公的研究機関→民間企業への転職者は3%

  ・ 〃→非営利団体個人事業主への転職者は8%

という結果になっています。ニュースの指摘どおり、「大学から民間企業への移動が活発でない」ことが分かります。疑問として、逆パターンは少ないんでしょうか?

 

続けて、「2015年度者の大学や公的研究機関での就業状況は、博士研究員が27.8%、助教が24.1%と全体の半数以上を占め」ているとあるます。博士研究員は、給与が出ていないケースがあったり(「無給」ポスドクや博士研究員とその周辺システムの「ふわっ」とした話~主に人文・社会系の場合~ - 仲見満月の研究室)、助教の場合は、ここ10年ほどでは「特任」や「特定」といった任期付きポストだと一目で分かる接頭辞がついていなくても、任期が5年以内であることが暗黙の了解になっていることがあるようです。

 

5年経ったら、大学教員の共同研究室とともに、その研究室の机の中の荷物を持って、出ていかなければならない、という厳しく、哀しい現実があります。

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 2-3.年齢が高くなっていく博士人材と流動研究員の事情

最後の段落には、

 2012年度修了者に今後の展望を尋ねたところ、56.3%が大学や研究機関で安定的な地位につくことを希望しているが、年齢が高くなるにつれ、雇用先にこだわらない人が増えている。

博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け | 大学ジャーナルオンライン

とあり、気になるのは「年齢が高くなるにつれ、雇用先にこだわらない人が増えている」点です。要は、博士号取得後の若年世代である30代半ばまでは、安定的な地位を希望し、歳をとってくると、雇用先がどこでもオッケイ!という気楽なことなのでしょうか。

 

いえいえ、もっと深刻な事情が隠れていると思われます。それは、次の記事で紹介したポスドクと流動研究員の問題と繋がっています:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

ポスドクと流動研究員の詳細については、上記記事でも紹介した研究者漫画をお読み頂くと、よくわかります:

 

 
表紙画像の右側の主人公・カキオのような研究員やポスドクの人たちは、
有期の在任期間に成果を上げなければ、研究職を続けられない可能性もあり、精神的には常に追い詰められている。腰を据えた研究に取り組みにくい状況は学術研究のレベル低下をも招く。
(社説|ポスドク問題/「出口」対策が弱すぎる | 河北新報オンラインニュース)
という状況が存在します。 『研究者マンガ「ハカセといふ生物(いきもの)」』作中には、短い任期を繰り返し、所属先と勤務先を数年単位で変えるうち、知り合いの研究者がどこの研究員になっているか、いつ出会えるのか、分からなくなっていく怖さが描かれていました。
その怖さは、下手すると、高い業績を上げられないまま、年齢を重ねていくと、実験スキルはアップしていくので、任期付き研究員を年齢制限がかからない年齢まで、ずっと続けなければならない「悲劇」が待っている。そういうのが、今回のニュース記事にあった「年齢が高くなるにつれ、雇用先にこだわらない人が増えている」という、「悲劇」です。安定した任期なしの研究ポストに就けなかった研究者の末路が、流動研究員にならざるを得ない、という現実が待っているのです。
 

3.最後に

第2項の終わりに書いた、高齢になって流動研究員とならざるを得ない「悲劇」を回避すべく、特に理系の博士院生は研究で培ったスキルを持って、別の業界へ就職していってしまうことがあるようです。物理や数学は、汎用性が高いイメ―ジが強いですが、実際、そらしいということを聞いたことがありました。

 

一方で、博士人材を正規職にしようという動きは、細菌の報道では東大の取り組みが注目をされていました。気になる方は、次の拙記事をお読みいただけたらと思います:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

ちょうど、3500字台で、読み終えるのに負担の少ない字数になったところで、今回は、おしまいです。ここまで、お読みくださいまして、ありがとうございました。

 

<気になっている研究者を目指す人の生き方ガイド>

 

 

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