仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

論文に関する意外で素朴な疑問~「博士論文とジャーナル論文の9つの違い」(Editage Insights)~

<素朴な疑問を解きほぐす>

1.はじめに

今まで、本ブログでは、博士論文とジャーナル論文(主に投稿論文に関してのこと)を、次のような記事で取り上げてきました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

naka3-3dsuki.hatenablog.com

他にも触れた記事はたくさんありました。上記2件の記事では、ざっくりと、「研究分野や研究室によって、暗黙の基準があり、例えば国内の全国レベルのジャーナルに2本、国際レベルのジャーナルに1本、掲載されて、やっと博士論文を書く基準を満たす」とか、「それらの掲載論文を組み直して、加筆・修正して、新たに出すのが博士(学位)論文となる」ということを書いた記憶があります。

 

実は、博士論文の査読が通って、博士号取得者になった後も、ポスドクや非常勤講師、大学教員や研究員になっても、研究成果をジャーナル論文の形で発表し続けること。それが、現在はプロの職業研究者として、課された義務であると私は考えております。

(一応、今の日本はまだ、専任の教員と研究職員とが職業的に分離されていないことを前提とした認識に立ってお話しております。)

 

ここで、素朴な疑問なのですが、「博士論文とジャーナル論文って、一体、どこがK違うんだろう?」と首をかしげる方も、いらっしゃるかと思います。ちょうど、論文翻訳会社のエディテージのwebメディアに、この疑問の答えが出ていました:www.editage.jp

 

というわけで、今回はエディエージ・インサイトのオンライン記事をもとに、博論とジャーナル論文の具体的な違いについて、紹介させて頂きます。

 

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2.「博士論文とジャーナル論文の9つの違い」(Editage Insights)の内容から見る両者の具体的な違い

いつものように、さっそく、オンライン記事の内容を読んでいきましょう。

 

博士論文とジャーナル論文の9つの違い
Andrea Hayward | 2017年9月6日 | 

 

研究者は、論文の出版という大きなプレッシャーに晒されています。そうした状況において、博士号取得後に博士論文をジャーナル論文として出版することは、論文出版を始めるにあたっての1つの足掛かりとなるでしょう。執筆を開始する前に、まずは博士論文とジャーナル論文の違いをよく理解しておくことが重要です。以下の図は、博士論文とジャーナル論文の9つの違いをまとめたものです。2種類の論文が、学術文献としての存在目的や読者ターゲットという点でまったく異なるものである、ということを理解する一助としてご利用頂ければ幸いです。

 

※こちらの図は、PDF版の無料ダウンロードが可能です。プリントするなどして、参考資料としてお気軽にご利用ください。

(博士論文とジャーナル論文の9つの違い | Editage Insights)

博論とジャーナル論文の9つの違いは、大きな視野で見ると「2種類の論文が、学術文献としての存在目的や読者ターゲットという点でまったく異なるものである、ということ」を理解するとよいそうです。

 

では、その9つの違いとは何か?論文翻訳会社らしく、英語と日本語の両言語の表を掲載していました。せっかくですので、両方の表を転載させて頂くことに致します。

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(画像出典:博士論文とジャーナル論文の9つの違い | Editage Insights)

 

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(画像出典:博士論文とジャーナル論文の9つの違い | Editage Insights) 

 

9つの相違点を読んでいて、全体的な大きな傾向は、次の2点です。

  • 博論は、 著者の研究テーマに対する詳細かつ包括的な、その分野における知識に対し、「どのような視点から新たな知見をどのように示したのか」ということを、丁寧に書いて示したものであり、指定字数が多い傾向があること
  • ジャーナル論文は、著者の研究テーマに対して、可能な限り、極めて重要かつ有益な先行研究を取り上げて批判した上で、「どのような視点から新たな知見をどのように示したのか」ということを、シャープかつ簡潔に示したものであり、指定字数が博論の何分の1かであり、ある程度の短さであること

 

ちなみに、日本語版では、「1. 目的」が「教育: 知識を示す」こと、および「2. 読者
教育委員会/教授: 学位授与にふさわしいかを審査」となっています。これは、博論を提出した博士学位申請者について、審査側が「この申請者は、今後、プロの研究者として、ふさわしい知識を有しており、かつ研究教育の指導者として最低限の能力を有しているか、否か」という視点を持ち、審査を行っていることが窺えます。要は、博士号取得者とは、研究者かつ研究教育の指導者の最低限の力を持っている人としての資格、ということになりますね。最近、よく言われているように「博士号は、職業研究者になるためのペーパーライセンスである」と。

 

その「ペーパーライセンス」に、実力を足していく。つまり、業績を上げるため、研究を続け、その成果を簡潔に短い文書にまとめて、投稿していくのがジャーナル論文ということになります。

 

ジャーナル論文は、いかに鋭利な視点から、簡潔に書かれているか、ということが、まず大切です。審査する査読者は、「多忙な科学者や研究者: 裏付けのある実用的な情報を求めて」います。そこは、日本語の表にはありませんが、信頼性のある検証が行われているか、といったポイントとして、絶対的に存在するように、私は考えました。元ジャーナル投稿者の私も、「 裏付けのある実用的な情報は、あなたのこの投稿論文には、ありいますか?」といったコメントが再査読でつき、院生時代は指導教員と一緒に、「さあ、もっと裏付け情報が読み手に伝わりやすいように、どうか書こうか」と作戦を練ったことがあります。

 

以上、「博士論文とジャーナル論文の9つの違い | Editage Insights」を一読して、自分の経験をもとに、博論とジャーナル論文の違いについて、コメントを書かせて頂きました。

 

 

3.最後に~その他のことで注意すべきこと~

実は、エディテージ・インサイトの今回のオンライン記事に載っていた、博論の9つのポイントは、修士論文卒業論文とも重なるところがあります。私が卒論に関して、院生の方に見て頂いた際、特に注意するよう、言われたのは次のことでした。

「参考文献のところは、研究文献の列挙を通じて、卒論執筆者の持っている総合的な知識について、審査員がチェックするポイントだ。少しでも目を通した文献は、包括的に挙げておいたほうがよいやろうな。仲見さん、大学院進学を希望しているなら、なおさら、参考文献リストは、気を付けたほうがええで」

 

その他、書き手が論文を書く時に、注意すべき点は以前のエントリ記事に書きました。ご参照ください: 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

加えて、「博士論文とジャーナル論文の9つの違い | Editage Insights」のジャーナル論文を書く時の9つのポイントについて、実際に文章を組んでいく詳細な手順は、度々、本ブログに登場する下の書籍の第5・6章をガイドにするとよいでしょう:

 

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書) 

 

最後に、今回のエントリ記事が、皆さまの博士学位論文、修士論文卒業論文の提出、およびジャーナル論文の投稿のお役に立てることをお祈り申し上げます。

 

おしまい。

 

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