仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

学生も教員も大学のアカハラで「ゾンビ」と化す~「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 」(ダイヤモンド・オンライン)~

<今回の内容>

1.はじめに

ポツポツと全国の新聞に出るようになってきた、大学でのハラスメント行為による報道。またまた、発覚したのは、氷山の一角と指摘する現場の方々もおられます。そんな中、ダイアモンド・オンラインで、昨今の大学でのアカハラに対する事情に突っ込んだ記事が出ました:

diamond.jp

 

タイトルの「学校辞めるか死ぬか選べ」の一言は、強烈なインパクトがあります。が、追い詰められて、「生ける屍」と化しているのは、実はアカハラ加害者となってしまった大学教員のほうにも、それなりの苦しい事情があることをダイアモンド・オンラインでは、伝えています。

 

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(イメージ画像:少年-ゾンビ少女-ゾンビ、仲見の加工あり)

 

本記事では、アカハラの起こる背景について、ダイアモンド・オンラインの記事を通して、何が問題として背景にあるのか、見ていきたいと思います。

  

 

2.「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 」(ダイヤモンドONLINE)~を読む

 2-1.小中の学校教員の問題行動との比較から見たアカハラ

最初ほうから、読んでいきましょう。

2017.9.14
「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態

清談社

大学教授による学生への嫌がらせ、「アカデミック・ハラスメント」。当事者が大人同士であるがゆえ、なかなか表面化しにくい傾向にある。なぜ教育者である大学教授はハラスメントに走ってしまうのか?(取材・文/清談社)

「教授に嫌われたら終わり」
知られざるアカハラ被害

 今年7月、埼玉県の小学校で教師が特定の生徒に対し、「飛び降りろ」「明日から来るな」といった暴言を吐いたり、嫌がらせをした事実が発覚し、大問題へと発展した。

 

 過去にも、小学校、中学校の教員による生徒へのいじめは、たびたび問題になってきたが、一方であまり表ざたにならないのが、大学教授による暴言や理不尽。いわゆる、「アカデミック・ハラスメント」だ。先日、東京学芸大学の男性教授がアカハラで処分されたが、明るみに出るのは氷山の一角である。

「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

本記事で冒頭に書いた通り、中学までの教員による生徒への問題行動、つまり、いじめは問題にされやすいで一方、大学等でのアカハラは表に出にくいことが指摘されております。

 

なお、一部の学生が精神疾患を発症し、通院が必要なほどの被害を出した、東京学芸大の案件は、こちらに書きました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

生きていながら、心身ともに限界になった学生たち、元学生たちの状態は、死を思うほどの苦しみだったのではないでしょうか。

 

 2-2.受ける側に自覚されいなかった「ハラスメント」と認知の広まり 

ダイアモンド・オンラインのほうでは、別のケースが匿名で紹介されていました。 

 都内の中堅私立大学文学部に通っていたAさん(25歳・男性)も、アカハラの被害に遭っていたという。

 

「うちの学科は、何より“教授に気に入ってもらうことが重要”という風潮がありました。逆に言うと、嫌われたら最後、学生生活終わりです。ある日、ささいなことがきっかけで教授の機嫌を損ねてしまったことがありました。するとその日から、『学校辞めたら?』『なんでいるの?』と毎日詰め寄られるようになり、挙句、『学校辞めるか、死ぬか、選びなよ』とまで言われました。今考えると明らかにアカハラなんですけど、そのときは感覚が麻痺していて、わからなかったんです。ただ、耐えるだけでした」

 

 アカハラは、卒業まで続いたという。しかし、Aさんが卒業してから数年後、予期せぬ出来事が起きる。その教授がアカハラで訴えられたのだ。

 

「僕と同じような被害に遭った後輩が、専門窓口に駆け込んだという話を人づてに聞きました。それを聞いたときに、あれはアカハラだったのかと、やっと気づいたんです」

 

 Aさんのように、明らかなアカハラであっても、気づかない、耐えるだけ、という被害者は多い。とはいえ近年、アカハラの相談件数は増えつつあるとNPO「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」の代表・御輿久美子(おごし・くみこ)氏は言う。

 

「新規のアカハラの相談件数は、年間250~300件ほどあります。トータルだと800件くらいです。アカハラという言葉が世間に認知されたことで、相談に訪れる人が増えたのだと思います」

(「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン)

 

「うちの学科は、何より“教授に気に入ってもらうことが重要”という風潮がありました。逆に言うと、嫌われたら最後、学生生活終わりです」とか、「教授の機嫌を損ねてしまったことがありました。するとその日から、『学校辞めたら?』『なんでいるの?』と毎日詰め寄られるようになり、挙句、『学校辞めるか、死ぬか、選びなよ』とまで言われました。」…東京学芸大学の件で、絡めて書いた非正規雇用のゼミ講師の先生を思い出す言葉です。傷つく前に、ゼミ生は就活と受験で、適度に距離を置いていたゼミ生もいて、あまり心身にダメージが来ないようにしていたようでした。つまり、ゼミ講師の先生が「なんか、嫌がらせみたいなことを学生にしている」ということを、学生側が感じ取っていたようでした。

 

ところが、ダイアモンド・オンラインの例では、最初に出てきた卒業生のAさんは、「今考えると明らかにアカハラなんですけど、そのときは感覚が麻痺していて、わからなかったんです。ただ、耐えるだけでした」とのこと。その後、「僕と同じような被害に遭った後輩が、専門窓口に駆け込んだという話を人づてに聞きました。それを聞いたときに、あれはアカハラだったのかと、やっと気づいたんです」ということで、まず、ハラスメント行為を受けていたこと自体に気が付いていない、あるいは違和感は感じていても我慢しているうちに、ダメージに心身が麻痺してしまい、その結果がうつ状態などを引き起こすようなケースもあるようです。このような苦しみの状態についても、「ゾンビ化」と呼んでしまってもいいのではないでしょうか。

 

「近年、アカハラの相談件数は増えつつ」あり、紹介されたようなNPO「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」のように、学外に相談できるような団体がこうして、webメディアで紹介されるようになってきました。そういった意味では、このNGO代表の方が仰るように、「アカハラという言葉が世間に認知されたことで、相談に訪れる人が増えたのだと思います」。

 

 2-3.「アカハラ加害者はかつての被害者」~アカハラはいつ生まれた言葉?~ 

さて、大学教員が加害者になることの多いアカハラですが、ダイアモンド。オンラインは、かつての加害者は被害者だったこと、および、大学のブラック化も原因になっていると指摘しています。 

 

アカハラ加害者はかつての被害者
大学のブラック職場化も原因に

 

 なぜ大学教授は、学生に嫌がらせをするのか? 御輿氏は、大学教授を取り巻く環境に問題があると分析する。

 

「そもそも、アカハラという言葉が生まれたのは、1995年頃。それまではアカハラという概念そのものがなかったので、極端に言えば、大学教授によるパワハラが当たり前の時代がありました。圧倒的な師弟関係の中で、付いていけなくなった者は容赦なく切り捨てられる。それでも歯を食いしばって耐えた人が今、大学教授という地位に登りつめているわけです」

 

 自分が受けた“しごき”のような教育を、そのまま今の学生たちに実践する。時代錯誤な教育方法は当然、今の時代ではアカハラになるというわけだ。

(「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン)

御輿さんは、「アカハラという言葉が生まれたのは、1995年頃。それまではアカハラという概念そのものがなかった」と仰います。私が「アカハラ」という言葉について、Amazonでキーワード検索した経験からすると、1997年に出た次の書籍のサブタイトルに入っているのが、書籍タイトルとして、新しいほうではないでしょうか? 

 

 「アカでミック・ハラスメント」の概念が誕生してから、現場で使われ始める途中で、「セクシュアル・ハラスメント」、「パワー・ハラスメント」、「キャンパス・ハラスメント」といった言葉が登場して、先に浸透していったものもあるでしょう。特に大学では、パワハラや「キャンパス・ハラスメント」という言葉のほうを使っていたところもあると思われます。

 

その概念が生まれる前は、「極端に言えば、大学教授によるパワハラが当たり前の時代がありました。圧倒的な師弟関係の中で、付いていけなくなった者は容赦なく切り捨てられる。それでも歯を食いしばって耐えた人が今、大学教授という地位に登りつめているわけです」。切り捨てられた弟子たちには、人知れず、行方不明になったり、自ら逝ってしまうことになったり、時代とはいえ、悲痛な思いを胸に差っていった人たちもいたのでしょう。

 

「それでも歯を食いしばって耐えた人が今、大学教授という地位に登りつめ」た先生方は、「自分が受けた“しごき”のような教育を、そのまま今の学生たちに実践する。時代錯誤な教育方法は当然、今の時代ではアカハラになるというわけ」というわけです。ダイアモンド・オンラインが示した「時代錯誤な教育方法」=現在のアカハラを行う大学教員自体の存在をも、ある意味、周囲によくない影響を与えることのある存在として、「ゾンビ」と呼んでもいいのではないでしょうか。

 

 2-4.「大学のブラック職場化も原因に」

続いて、大学教員自身がある意味、「リビング・デッド」という意味で、「ゾンビ」となった背景が、詳しく説明されています。

 

 一方で、現代の大学教授たちの労働環境が、かなり悲惨であることも、アカハラが起きる原因だろうと御輿氏は言う。

 

「大学の教員はほとんど休みなしという状況が蔓延しています。少子高齢化で子どもが少なくなっている分、教育以外での仕事が増えました。まずは研究の成果を挙げること、そして地域貢献。さらにオープンキャンパスで受験生を増やすということまで大学教授に課されています。これらの仕事は、大学側から教授への評価対象になり、評価が高ければ成果報酬が得られますが、逆に評価が低ければ、減給、解雇ということもあり得ます」

(「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン)

そうです、そうなんです。大学の先生たちの労働環境は、かなり悲惨なんです!その悲惨さは、こちらをご覧ください。何回も申しておりますが、教育業務と研究業務、分けことを大学単位で初めてもよいと思いますよ:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

その分けた研究の分野においては、

 研究の分野においては、常に成果を求められるうえ、他大学との競争にも勝つ必要がある。研究で実績を出せるかどうかは学生たちにかかっているため、教授の指導も厳しくなるということだ。

「たとえば理系の場合、毎日朝から晩まで研究室に閉じこもって成果が出るまで繰り返し実験をするということが少なくありません。教授からのプレッシャーを感じながら、毎日12時間以上研究を強いられた結果、うつ病になってしまったという相談者を何人も見てきました」

(「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン)

 一台、数百万もする精密機器だと、当番制で機器を使う部局もあるため、実験していたら、金曜日の夜を超して土曜日の2時!!という大学もあり得ます。生き物を相手にしている研究室では、「毎日12時間以上研究を強いられた結果、うつ病になってしまった」という先生方もいらっしゃるわけで、やはり、長時間の実験が先生方をうつ病にして、「ゾンビ状態」にしていると考えられます。

 

 

3.「ゾンビ」を大学で量産する「アカハラは必ず解決できる」のか?

では、そろそろ、まとめに入ります。この「ゾンビ」の状態に学生たちや先生方を落としてしまう、アカデミック・ハラスメントは、御輿さんが言うように必ず解決できるのでしょうか?

 

しかし、御輿氏によると、アカハラは必ず解決できる問題だという。

 

「基本的に、アカハラは大学内で解決できます。問題があると感じたら、事務局なり、学部長なりに相談し、対応してもらえるよう求めましょう。実際に私のところに相談に来た学生さんたちの多くは、こうした対応でちゃんと解決することができています。泣き寝入りする必要はまったくありません」

 

 アカハラを完全になくすことは難しい。しかし、少子高齢化で学生の数が減っている今、アカハラをしている教育者は、自然淘汰されていくに違いない。そうなることを切に願う。

(「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン)

アカハラという言葉に対する認識が広まってきたこともあて、学生たちは、弊ブログで紹介してきた方法に加え、上記のような方法で泣き寝入りせず、 解決していくことができる道は増えてはきました。

 

しかし、「アカハラを完全になくすことは難しい」と言われているように、大学や大学院、研究教育機関に経済的、時間的かつ人手の足りるような意味で余裕が持てるようになるという意味で、「ホワイト化」しなければ、若手の大学教員たちにも、アカハラを行う可能性の出てくる「ゾンビ化」が進行していく人たちが出てくるでしょう。若手の大学教員たちもまた、かつての師匠の無理難題を「歯を食いしばって耐えた人が今」、大学の教員「という地位に登りつめ」たのですから。日本が最低限、学術研究と教育行政を国家レベルで分離する方針でないと、日本の大学から「アカハラ」と「ゾンビ」は簡単には消えないと思われます。

 

「現在を考えるには、過去を振り返れ」。それは、ノスタルジーに浸るのではなく、未来の似た事象に取り組むためです。本記事を閉める代わり、過去の様々な「困ったこと」が書かれた「工学部ヒラノ教授シリーズ」の一冊のリンクをさせて頂きます。

 

 工学部ヒラノ教授の事件ファイル(新潮文庫)[Kindle版]

おしまい。ここまで、お読みくださり、ありがとうございました。

 

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