仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【’17.10.31_1840更新:ニュース】「ゼミ入れず 学生が救済申し立て」(NHK 関西のニュース) ~龍谷大学の経営学部のケース~

<本記事の内容>

1.はじめに

今年に入ってから、あちこちの大学の学部で、授業科目の抽選が多く、落選した学生救済措置はないのか?原因は、大学教員の数が学生数に対して少ないのか、大学の経営方針が原因だったのでは?など少し、Twitter上ではホットになっていたと思います。

 

あれから約半年後、NHKのオンラインニュースを読んでいたら、関連する出来事が関西の大学生たちが救済申し立ての形で、報道されていたのをキャッチしました:

www3.nhk.or.jp

 

f:id:nakami_midsuki:20171030191222j:plain

 

ニュースゆえに、緊急ということで、すぐ消えてしまうことの多いNHKのオンライン記事。2017年10月30日の18時台の現在、情報が他のところに出ていないため、速報ということで転載させて頂きます。

 

また、オンライン記事の間を切って、コメントをさせて頂くこと、ご了承ください。

 

 

2. 「ゼミ入れず 学生が救済申し立て」(NHK 関西のニュース) ~龍谷大学経営学部のケース~

 

関西 NEWS WEB


ゼミ入れず 学生が救済申し立て
10月30日 16時54分


京都市にある龍谷大学経営学部の学生たちが、教員の不足などからゼミに入ることができず、学習する権利を侵害されているとして、30日、弁護士会に人権救済の申し立てを行いました。
申し立てを行ったのは、龍谷大学経営学部の学生や教員の有志でつくるグループです。

(ゼミ入れず 学生が救済申し立て|NHK 関西のニュース)

龍谷大学と言えば、関西では俗に私立の上位大学「関関同立」に次いで言われる、「産近甲龍」の四大学と言われ、仏僧の養成だけにとどまらない、様々な取り組みをしている大学として、関西では知られているようです。

 

日本の私立大学はここ十年、入学数を大幅に増加させていく大学について、例えば、関東の私立マンモス大学では、限られた昼休みにお弁当を持っていても、食べる場所がなく「昼食(をたべる場所のない)難民」となる学生が出てくる、といった話を私は聞いたことがありました。実際、私の通っていた私立大学でも、教室を開放しなければ、「難民」が発生しそうなレベルで、キャンパス内が学生で溢れていました。

 

今回、「教員の不足などからゼミに入ることができず、学習する権利を侵害されているとして、30日、弁護士会に人権救済の申し立て」を行ったのは、京都市にある龍谷大の「学生や教員の有志でつくるグループ」と伝えられています。大学で学術活動することに対して、人権救済の申し立てを弁護士会にしたのは、私が知っている限りでは、以前にアカハラの件で学外に申し立てをなさった方について、次の方がまとめらた情報を紹介した記事でした:

ある理系院生のアカハラとの「たたかい」を振り返る~第一部まとめ~ - 仲見満月の研究室


学生が大学教員らの支援を受けつつも、弁護士会に人権救済の申し立てをするというのは、おそらく、日本では非常に珍しいことなのではないでしょうか。ニュース記事の続きを読みましょう。

 

申立書などによりますと、経営学部では2年生の後期に学生たちが入るゼミが25必要ですが、実際には、教員の不足などから17しかない状況です。
今年度は2年生でおよそ80人、率にして15%ほどがゼミに入れない、いわゆる「未ゼミ生」になっているということです。
こうした状況は、数年前から続いていて、学生たちはことし6月に327人分の署名を添えて大学側に改善を求めましたが、正式な回答は届いていないということです。
このため、大学が適切な措置をとらず学習する権利を侵害されているとして、30日、京都弁護士会に人権救済の申し立てを行いました。

(ゼミ入れず 学生が救済申し立て|NHK 関西のニュース)

本来なら、経営学部で2年生が後期に入らないといけないゼミは25必要であるのに対し、実際は17しかない状態であったと報じられています。ゼミが8つも足りない理由については、「教員の不足など」とオンライン記事にはありますが、私の邪推では、龍谷大学経営学部も、他の日本の私立マンモス大学と同じように、開講・運営できるゼミ数とかけ離れた学生を入学させてしまったことが、問題の裏側にあるのではないかと。

 

ちなみに、私立マンモス大学に行っていた私の文系学部では、ゼミ生の数が20~30人のところもありました。卒論演習では、雇用の不安定な非常勤講師や任期付き講師の先生方が、学生の持ってくる卒論の草案を、早いところでは、今ごろの季節から赤入れし、捌いていくところもあると思います。20人の各ゼミにいた私や同期の別の専攻の人たちは、卒論を添削したり、使うデータに具体的なアドバイスをしたり、きちんと指導をしてくれる別の人をゼミの外に求めたい気持ちにかられました。正規雇用の大学教員であっても、適切な卒論も含めたゼミの指導人数は、12~13人程度が限界でしょう。

 

ニュース記事の終盤を読みましょう。

申し立てを行った経営学部2年生の葛城輝さん(19)は「私はゼミに入れたが友達には入れずに無気力になっている人もいる。ゼミに入らないと卒業論文も出せず就職に影響するともきいている。同じ学費を払っているのに差があるのはおかしいし、大学は一刻も早く改善してほしい」と話しています。
一方、龍谷大学はNHKの取材に対して「申立書を見ていないので回答できない」と話しています。

(ゼミ入れず 学生が救済申し立て|NHK 関西のニュース)

 

最悪、学部ゼミの卒論の場合、人に寄りますが、サークルOBやOGの面倒見のある院生と親しければ、卒論を読んで指導してくれる人もいます。あるいは、学術論文の翻訳会社などが、院生も含めて、論文添削サービスを展開ているところがあり、そういったサービスを利用して、添削から校正までお金さえあれば、頼れるところもあります。

 

今回の龍谷大学経営学部の「ゼミが足りない問題」は、「卒論を自力で何とかする」以前に、卒論を書いて大学側に評価される資格のゼミに入れない、学生の自力では解決できない非常に厄介なところがあります。就職活動の場合、大学の就職課や外部のエージェント会社の力をかりるなどすれば、内定が取れる人もいるでしょうが、入社の条件に「大学の卒業」があり、その大学学部の卒業要件に卒論合格があったら、ゼミに入れなかったけど、内定はとれていた学生は、内定を辞退せざるを得ないのではないでしょうか。

 

そのような意味で、自分の将来が不安となり、無気力な学生を生んでしまう。私の学部時代の別の同期には、ゼミには入れたものの、先に述べたように、ゼミの抽選で第8希望になった上、学生の所属人数が多すぎて、まともな討論が授業でなされなかったそうです。真面目だった彼は、研究のモチベーションを大幅に下とし、本人は3年次に経済的に学費を払えなくなったことも重なって、退学しました。今は、フリーターをしているようです。

 

 

3.今春の追手門学院大学の騒動と他の大学の動きについて~まとめ~

龍谷大学経営学部の「ゼミが足りない問題」。このハロウィン前に報道されたことによって、これから日本の他の大学でも、学生団体や非営利団体などによって、司法的な提訴や弁護士会への人権救済申し立てが全国的に広がっていくかもしれません。冒頭にも述べたように、既に今年の春、科目受講の抽選が多すぎて、履修登録できる科目が少なすぎる人が続出した実例では、追手門学院大学の件がネット上で大きく取り上げられました。詳細は、次のJ-CASTニュースの記事があります:

www.j-cast.com

 

追手門学院大学に取材し、J-CASTニュースが伝えるところでは、

J-CASTニュースは今回、改めて真相を同大広報課に問い合わせた。担当者は6日、履修授業の抽選方式について、

”「必修科目は抽選で決まりません」”
と一言。

”「あらかじめ履修が決まっている授業、学生の判断だけで履修できる授業を除くと、抽選授業のクラス数は、全体の3分の1ほどです」”
と明かした。

 (全文表示 | 追手門学院大で履修登録めぐり「大騒動」 「教務課に爆竹投げこみ」デマも拡散 : J-CASTニュース)

とのこと。 追手門学院大学の広報課担当者は「抽選授業のクラス数は、全体の3分の1ほどです」と応えていますが、抽選授業が全体の33%程度って、十分、抽選式の科目としては多いと思います。

 

今日、NHKが報じた龍谷大学経営学部の「ゼミが足りない問題」にしても、J-CASTニュースの取材した追手門学院大学の抽選授業にしても、日本の私立大学の経営のやり方が一部、ガタガタになってきていないかと、不安に感じてしまいました。

 

「ゼミが足りない問題」について、明日以降、様々な情報が出てくるかもしれません。報道を待ちたいと思います。

 

 

4. (’17.10.31_1840続報)「教員不足でゼミ受講できず…龍谷大生ら申し立て」(読売新聞)

読売新聞のオンラインによる続報です:

www.yomiuri.co.jp

 

教員不足でゼミ受講できず…龍谷大生ら申し立て

2017年10月31日

 

 龍谷大(京都市経営学部の学生が教員不足でゼミ(演習)を受講できず、学習権を侵害されているとして、同学部の学生や教員の有志が30日、京都弁護士会人権擁護委員会に人権救済を申し立てた。

 

 申立書などによると、同学部には2年生の後期から受講するゼミが数年前に25あったが、今年度は17に減少。専任教員1人あたりの学生数54・5人は、法学部(32・4人)や文学部(37・1人)などと比べて多く、今年度は2年生約500人のうち、約15%にあたる80人前後が、ゼミを受講できない「未ゼミ生」となっているという。

 

 学生側は今年6月、改善を求める学生327人分の署名を大学に提出したが、大学側は適切な対応を取らず、学習権侵害を放置した、と主張している。龍谷大学長室(広報)は「申立書を見ていないので、コメントできない」としている。

(教員不足でゼミ受講できず…龍谷大生ら申し立て : ニュース : 読売新聞(YOMIURI ONLINE))

新たに分かった事実として、具体的に専任教員一人当たり何人のゼミ生を担当しているのか、現時点での数字が挙がり、更に今年の6月にも学生側から署名が集められ、大学側に対応をするように求めたことも。

  •  経営学部の「専任教員1人あたりの学生数54・5人は、法学部(32・4人)や文学部(37・1人)などと比べて多く、今年度は2年生約500人のうち、約15%にあたる80人前後が、ゼミを受講できない「未ゼミ生」となっている」こと
  • 「学生側は今年6月、改善を求める学生327人分の署名を大学に提出したが、大学側は適切な対応を」取らなかったこと

署名を327人分も集めたのに、大学側は対応しなかった。おそらく、龍谷大学側は対応したくとも、経済的にできなかったのかもしれません、専任教員を雇える余裕がなくて。

 

再び、続報を待ちたいと思います。

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