仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【ニュース】「大学在学中は授業料無償化 自民が検討案まとめる」(NHKニュース)

<今回の内容>

1.はじめに

弊ブログでは、以前から何回かに分けて大学授業料無償化の与党を中心とする、議論の内容やニュースを取り上げてきました。直近の関連したのが次の数記事です:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

naka3-3dsuki.hatenablog.com

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

先に私自身の見解を申し上げますと、上記のリンク記事で与党や一部の官僚から出ている、安易な大学の授業料や入学金を含む納付金の無償化、および卒業後の無利子による出世払い方式の返済のシステムによる「学費支払いシステム」には、反対です。何度か書いていますが、身近に日本奨学生支援機構ことJASSOの無利子奨学金を借りて、10年以上かけて返済する過程で、非常にお金のことで苦労した人たちを見てきたからです。

 

具体的な理由として、私の父親、学部の同期仲間、大学院の先輩方、同居人たちの親御さんが返済に苦しんだり、苦しんでいたりするからです。父親に至っては、私が生まれる前に、残りの返済額に気が付いた母親が計算して、何とか父の学部卒業から10年強ぐらいで返済が終わったと聞きました。学部時代の友人や先輩方は、転職を重ねながら、正規の職で安定して返済できるようになった矢先、体調を崩してしまって医療費が増えたり、出産や育児で思わぬ傷病にかかってしまい、想定外の治療費で保険料プラスで出費があったり、そういった現実があります。私自身はj上記理由により両親の反対があり、仕送りと授業料免除およびバイトで生活していました。しかし、自分の家族がJASSOを利用していたので、まったく、大学の納付金に関する話題とは無関係ではありません。

 

じゃあ、お金はないけれども、学業のなかで「これなら、伸びそう」という、続けられそうで秀でた力を頼みに、大学の学部で学んだり、院に進学して研究したり、そういった進路を希望する人はどうしたらよいか?弊ブログの右サイドメニューのタグ「授業料」、「お金」で出てくる記事や、次の目次記事、研究資金獲得の記事に書きました:

【2017.3.14更新:目次】避けて通れない大学・大学院にかかるお金問題まとめ - 仲見満月の研究室

科学研究の支援財団設立と維持の難しさ【結論まで無料、`17.10.7追記】~「ノーベル賞受賞の大隅さん、財団設立」(日経新聞)ほか~|仲見満月(なかみ・みづき)の「分室」|note

 

ご参考になれば幸いです。また、近日中に上記の目次を更新して、便利にしようと考えております。

 

さて、大学授業料無償化の与党を中心とする、議論内容を伝えるニュースが昨日、新たに出ました。今回は、その報道内容を見て、いろいろと考えてみましょう:

 

大学在学中は授業料無償化 自民が検討案まとめる | NHKニュース

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2.「大学在学中は授業料無償化 自民が検討案まとめる」(NHKニュース)を読む

 2-1.今回の報道内容

大学在学中は授業料無償化 自民が検討案まとめる

11月2日 15時17分

 

自民党教育再生実行本部は、大学などに在学中は授業料を支払わず、卒業後に一定の年収を超えた場合、所得に応じて国に納付する新たな制度の導入に向けた検討案をまとめました。この中では、納付の対象となる一定の年収について、「250万円以上」など複数の案を例示していて、今後検討を進めるとしています。

大学在学中は授業料無償化 自民が検討案まとめる | NHKニュース

詳細は後述されていますが、「納付の対象となる一定の年収について、「250万円以上」など複数の案」が出ているとのこと。

 

さて、この250万円。私の先輩に当たる助教先輩は、JASSOの奨学金を借りようとしたとき、出身家庭の年収は250万円を超えていましたが、兄弟姉妹3人とも大学に行っていたとそうです。そんな事情で、長子は父方の祖父母の仕送り、真ん中の助教先輩は生活費は親御さんに頼って、授業料はJASSOの無利子を選び、末っ子さんは母方の祖父母が生活費を援助し、医師会病院での無償奉仕活動で学費免除となる医療系大学の看護学科に行かれたそうです。そういう年代の助教先輩は、博士課程満期取得退学後、非常勤講師で年収150万円の中から月々、2万円ずつ返済。有期雇用の助教になってからは年収が300万円台になって、返済額は上がりましたが、金銭的に楽になったそうです。

 

もともと、助教先輩は核家族。大学の費用について、両親と兄弟三人、そして親族も交えて親族会議をしていたから、お金のことで後々、揉めることがなかったと聞きました。一方、高校の同級生には、同じ人数の姉妹の進学費用をめぐって、家族仲が険悪になってしまった人もいました。このあたり、教育費の話は将来につながる禍根ともなり得るでしょう。

 

様々な出身家庭を背景にした学生もいる中、自民党は次のような案を出したということです。

自民党憲法改正の検討項目としている、高等教育を含めた教育の無償化をめぐって、党の教育再生実行本部は、大学などに在学中は授業料を支払わず、卒業後に一定の年収を超えた場合、収入に応じて国に納付する新たな制度を導入すべきだとしていて、このほど制度設計の検討案をまとめました。


この中では、在学中に支払いを免除するのは「国立大学の授業料に相当する年間およそ54万円と、入学金およそ28万円を基本とする」としたうえで、私立大学などでこれを上回る差額分については、無利子の奨学金などでの対応を検討するとしています。


そのうえで、納付の対象となる一定の年収については「初任給の平均値にあたる250万円以上」や、「300万円以上」など複数の案を例示して、今後検討を進めるとしているほか、納付額は正規雇用の標準的な収入の人でおよそ20年で支払いが完了する程度に設定するなどとしています。

 

教育再生実行本部は、今後、この検討案を基にさらに具体的な制度設計の議論を進めることにしています。

大学在学中は授業料無償化 自民が検討案まとめる | NHKニュース

 

 2-2.具体的な検討案

具体的な話として、党の教育再生実行本部は、「大学などに在学中は

  1. 授業料を支払わず、卒業後に一定の年収を超えた場合、収入に応じて国に納付する新たな制度を導入すべきだとしていて、このほど制度設計の検討案をまとめ」た
  2. 検討案のなかには、「在学中に支払いを免除するのは「国立大学の授業料に相当する年間およそ54万円と、入学金およそ28万円を基本とする」としたうえで、私立大学などでこれを上回る差額分については、無利子の奨学金などでの対応を検討する」
  3. 2を前提として、「一定の年収については「初任給の平均値にあたる250万円以上」や、「300万円以上」など複数の案を例示して、今後検討を進めるとしている」
  4. 「納付額は正規雇用の標準的な収入の人でおよそ20年で支払いが完了する程度に設定するなどとして」いる

といった案を出し、議論をしていると伝えらえています。

 

1については、与党や別の省庁、国会議員だったか、どこのどなたかは忘れましたが、国立大学の授業料を私立大学のレベルに引き上げるべき、といった意見を言っている方々もいらっしゃるそうですね。免除額の基準を国立大学の年間授業料54万円と入学金28万円とするなら、先の国立大の授業料引き上げ賛成派の人たちの意見を抑えないと、話は進まないんじゃないでしょうか。

 

2の「私立大学などで」国立大学の授業料+入学金の合計額、つまり納付金を上回る場合、その差額を「無利子の奨学金などでの対応を検討する」とする案は、どちらにしても、学生が大学を卒業した後、きちんと一定の年収が得られる安定した仕事ができる社会にしておかないと、返済が見込めないどころか、国等への返済額が増えることになります。そのあたり、きちんと細かいところまで設計しておかないと、国債から無償分の学費を出す話と合わせると、返済金を回収できなくなる恐れが大きくなります。

(既に、JASSOでは返済ができなくて自己破産した卒業生や保証人がおり、未回収の額がかなりあるらしい、というニュースを耳にしたことがあります)

 

3については、助教先輩のところでしたので、次の4の「「納付額は正規雇用の標準的な収入の人でおよそ20年で支払いが完了する程度に設定する」という部分は、見直して、できるだけ早期に返済が可能な「納付額」を設定したほうが国家財政的には、健全ではないでしょうか。例えば、傷病を一度して、元気になってたとしても、再発や症状の再悪化で、安定した職に就けず、そうした人たちの返済額が大きいと国は「納付額」を確実に回収するのが難しくなります。

 

学部の同期には、就職先の人間関係がうまくいかず、うつ病で退職後、有期雇用の非正規職を転々としながら、生活費を稼ぐので手一杯で、返済に苦しんでいる人もいます。その人自身は、母方の祖母が学費と生活費を出して下さったそうです。が、精神的な疾患や、慢性的な後遺症の出る傷病を抱えると、調子がよくなっても仕事や人間関係で何度も症状が出てしまい、安定した収入を得ることが困難になるでしょう。与党は、そういったケースの人が、日本の大卒者、院卒者でJASSOほか、返済型奨学金や学資ローンを利用している人数を調べて、議論すべきではないかと。

 

教育再生実行本部は、今後、この検討案を基にさらに具体的な制度設計の議論を進めることにしています」とのことで、上記4つのことに関して、指摘したことを掘り下げていくべきだと思いました。

 

 

3.最後に

今回は、与党の 「大学在学中は授業料無償化」の検討案の続報についてお伝え致しました。教育費がどれくらいかかるかというのは、将来、生きていくスキルを伸ばす教育機関に通ううえで、非常に大切なファクターとなり得ます。ただ、昨今の大学では、その額に見合った質の授業を提供できるよう、国のトップが出来切にバックアップする策を持つことも、重要でしょう。

 

先日、起こった龍谷大学経営学部の未ゼミ生の問題しかり:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

クオーター制の導入による大学教員の業務的負担増加など、大学。大学院での教育の質低下の問題について、河野現外相だけでなく、他の政治家の方々には目を向けて頂きたいものです。

 

おしまい。

 

 

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