仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

社会人院生受け入れをする大学院のアカハラ課題~「アカハラで大学と元教授に130万円の賠償命令 神戸地裁」(NHK NEWS WEB、リンク切れ確認済み)~

<将来的に身近で起こるかもしれない話>

1.はじめに

今月は同人活動に関する記事が多い一ヶ月でした。そちらのほうの準備を色々としながら、弊ブログのメインテーマの記事を書いていきたいと思います。

 

さて、今回はTwitterで今週に入ってから流れてきた、兵庫教育大学アカハラ訴訟のニュース です:

アカハラで大学と元教授に130万円の賠償命令 神戸地裁」(NHK NEWS WEB、リンク切れ確認済み)

www3.nhk.or.jp

 

速報が消えないうちに、取り上げておきたいと思います。

 

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2.「アカハラで大学と元教授に130万円の賠償命令 神戸地裁」(NHK NEWS WEB)を読む

 2-1.今回のアカハラの背景と研究業界側の「文化」~社会人キャリアアップの「壁」~

気になるのは、今回のアカハラ訴訟で、訴えた側に院生が50代の学校教員がいたことが一つ、挙げられます。それでは、ニュースを見ていきましょう。

 

アカハラで大学と元教授に130万円の賠償命令 神戸地裁
11月27日 19時08分

兵庫教育大学の大学院に通っていた女性が、当時の教授からの暴言で精神的な苦痛を受けたなどと訴えていた裁判で、神戸地方裁判所姫路支部は、学問の場での嫌がらせなどにあたるアカデミックハラスメントがあったと認め、大学と元教授に賠償を命じる命じる判決を言い渡しました。


中学校教諭の54歳の女性は5年前、兵庫県内の自治体の教育委員会から派遣されて兵庫教育大学の大学院に通っていた際、当時の担当教授から「おばさん」とか「地獄を見ろ」などと暴言を吐かれたり、差別的な扱いをされたりするなど精神的な苦痛を受けたとして、大学と元教授に損害賠償を求めていました。

(アカハラで大学と元教授に130万円の賠償命令 神戸地裁 | NHKニュース)

 

なるほど、兵庫教育大学の大学院に通っていた「中学校教諭の54歳の女性」は、「兵庫県内の自治体の教育委員会から派遣されて兵庫教育大学の大学院に通って」いた事情が女性が大学院に入った経緯としてあったようです。

 

ひょっとしたら、女性が自治体の意向で選ばれ、中学校での教育現場の問題研究のため、兵庫教育大学に派遣される形で、入学したのかもしれません。研修や教育技術向上の方法の一つとして、学校教員には勤務期間の途中で、研究大学院の教育学研究科や専門職大学院教職大学院等に入学し、テーマを設定して研究したり、学校での高度な指導技術を修得したりする目的で、高等教育機関に通うことが制度上、認められています。

 

余談として、中学校や高校の教員の一種免許は、修士号と修士課程で要卒単位を修得すれば、ワンランク上の専修免許に切り替えが可能です。専修免許に切り替えると、給与が一種免許時代よりも上がったり、昇進に関わる条件を見たしやすかったり、そういったメリットがあると聞きます。そのため、勤務途中で一度、勤務校を退職して大学院に通うか、勤務先で教鞭をとりながら、通信制の大学院で専修免許を修得するため、科目単位修得を目指すか、そういった先生がたまに学校教員(の経験者)には存在します。

 

どのような事情があったからかは不明ですが、要は学校教員がキャリアの途中で大学院に入学し、研究や教育技術の向上をはかる機会は割とよくある話なんです。つまり、今回、アカハラ訴訟で訴えた女性教諭のように、50代の院生が教育系の大学院に通っていたとしても、まったく不思議ではなくなってきていると言えるでしょう。

 

そういったキャリアの上で、もっと仕事のスキルをアップさせたい、と(自治体から派遣されたにしても、それを受け入れる)向上心を持って、女性は大学院に来ていた社会人院生だったのかもしれません。その院生に対し、今までの大学や研究の業界しか知らず、ある意味で文化・慣習的に、自分より年上か、同年代の学生の指導について、元担当教授は「困惑」や「嫌悪」の気持ちを持った結果、「「おばさん」とか「地獄を見ろ」などと暴言を吐」いたり、「差別的な扱い」をしてしまったと考えられます。

 

なぜ、私がこういった「邪推」をしてしまうかというと、身近で似たような状況のアカハラのがあったからです:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

 2-2.社会人院生を受け入れる大学院側の課題

今回のアカハラ訴訟のニュースを目にして、今まで本ブログで書いてきたように、仕事でキャリアを築いてきた社会人が、更なる技術向上を目的として、日本の大学院に入学した場合、今回のアカハラ加害者とされる元担当教授のように、自分の年齢より上か、それに近い学生の指導に戸惑い、それがハラスメントとして出て来る可能は沢山あると感じています。

 

ニュースの続きを読むと、それは大学や大学院のほうも、同じではないかと認識を致しました。

27日の判決で、神戸地方裁判所姫路支部の惣脇美奈子裁判長は「元教授は女性の人格を傷つける発言をしていて、担当が変わったあともいやがらせを続けた。大学も安心して研究できる環境を整備しなかった」としてアカデミックハラスメントがあったと認め、大学と元教授におよそ130万円を支払うよう命じました。

 

元教授は「裁判所の判断を重く受け止め、深く反省しています」と話しています。一方、兵庫教育大学は「判決文が届いていないのでコメントは差し控えたい」としています。

(アカハラで大学と元教授に130万円の賠償命令 神戸地裁 | NHKニュース)

例えば、学部から浪人の時期を置かず、ストレートに20代前半の年齢で大学院に入学してきた院生が多い研究室や部局、および若年世代が院生の多くを占める大学院の場合、なかなか、社会人院生に対する周囲からのハラスメントへの対応は、慣れていないと、適切に動けないと思われます。

 

兵庫教育大学の公式サイトによりますと、大学院は専門職学位課程も含めて「学校教育研究科」を設置しています:

www.hyogo-u.ac.jp

 

上記のページには、

アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針) - 兵庫教育大学 入試情報 大学院修士課程や、大学院入学相談室 - 兵庫教育大学 入試情報 大学院修士課程のページ、設けられているコースには、昼間コースと夜間コースの2つがあります。様々なページを読むと、この大学院では向上心のある社会人院生をしっかりとサポートしようとする体制があると感じました。

 

しかし、実際には今月27日の判決については、

神戸地方裁判所姫路支部の惣脇美奈子裁判長は「元教授は女性の人格を傷つける発言をしていて、担当が変わったあともいやがらせを続けた。大学も安心して研究できる環境を整備しなかった」としてアカデミックハラスメントがあったと認め、大学と元教授におよそ130万円を支払うよう命じました。

(アカハラで大学と元教授に130万円の賠償命令 神戸地裁 | NHKニュース)

と報じられています。ハラスメントがあったのは、5年ほど前の話であり、実際は兵庫教育大学の大学院で社会人院生をバックアップする体制は、多少は向上している可能性があります。しかし、現場で社会人院生を指導する大学教員の方々、それから、事務手続きや相談を担当する大学職員の方々の意識は、実際のところ、いかほどに変化しているのでしょうか。

 

 

3.最後に

 大学や大学院をはじめ、研究業界では様々なハラスメントが起こっています。昨今、「社会人の学び直し」の促進の流れが日本にあって、例えば、

「新たな夜間部」の試み:長時間労働を避けて働く大学生が安心して学ぶ制度~「「夜間大学」という可能性 昼間は大学の正職員として稼げるケースも 」 (AERA dot.)~ - 仲見満月の研究室

のエントリ記事では、理系の大学が社会人向けの技術向上の講座を設けているケースがあることを紹介しました。兵庫県教育大学の大学院をはじめ、社会人向けの修士課程を設けたり、夜間コースやサテライトキャンパスの整備をしたり、キャリアアップをはかる社会人が一応、研究や学習ができる体制を整えようとしているところは、増えています。

 

ただ、実際に現場で研究や教育の指導をしている大学教員や、事務的な面で社会人院生がお世話になる職員は、その体制と「社会人の学び直し」に対して、精神的についていけていない人も、多いのではないでしょうか。

 

ある時、某知恵袋か某小町で、社会人院生を目指す質問者の相談がありました。その質問者は、仕事を終えた後、大学院の夜間コースの説明会に出席した際、研究室を持つ教授との面談で、ある男性教授は、こう仰ったそうです。

 

「働きながら、大学院の夜間コースで研究活動を行い、学位取得を目指すのは、非常に困難なことです。正直なところ、私は夜間コースの担当をしていて、仕事が忙しく、研究がおろそかになった学生の面倒を何人か見たことがあり、うんざりしました。

 

本気で学位を取得したいのであれば、大学教員としては、仕事と学業の両立は無理だと諦めて、お仕事を休職なり、退職なりされて、社会人としてではなく、昼間コースの大学院生の生活一本で一定の期間、研究やスキルアップに打ち込んで頂きたい。私個人としては、そのように考えています。

 

実際、私が大学院で博士号を取得するまでは、大学院が生活の中心でした。その後、大学の非常勤講師や公立学校で契約職員の臨床心理士として働きながら、研究業績を積み、何とか大学教員になりました。働きながら、研究するというのは、大変でした。こうした私の経歴と考えを知って頂いた上で、この夜間コースを選択されるか、考えて頂きたいと思います」

 

この話を聞いた質問者は、「やはり、本気で研究をして修士号や博士号の取得を目指すには、仕事との両立は難しいのでしょうか。一応、うちの会社は、社員のまま大学院生になることには、規定上、また相談した上司としても、問題はないようなのですが…」と不安な気持ちを書いておられました。

 

日本では、まだまだ、社会人が大学院に通う上で、指導側の意識だけでなく、大学が教員をサポートする柔軟な体制がとれていない、という課題がありそうです。

 

それと、アカデミックの世界しか知らず、院生→任期付きポスドクの連続→任期なしの正規大学教員として、途中まで経済的・精神的に不安定な研究者のキャリア一本で来た指導者には、

「安定した仕事と収入を得ながら、 大学院に通おうとする学生は、死ぬ気でアカデミックポストを目指した自分に比べて、仕事という保険をかけている時点で、本気で研究や学位取得に取り組もうとしているとは、思えない」

という、「やっかみ混じり」のような、複雑な気持ちを抱いたまま、社会人院生の指導を担当することになった人たちもいると、院生時代の助教先生から聞いたことがありました。

 

今回の兵庫教育大学大学院のアカハラ訴訟を起点として、社会人院生を受け入れる側の大学院で起こるアカハラ課題を考えました。そこには、大学教員や職員の社会人院生に対する年齢に関する意識問題だけでなく、指導教員のサポート体制や、色々と不安定なキャリア一本で来て複雑な感情を抱える大学教員の存在を容れながら、ハラスメントを防いでいくシステムの構築が不可欠ではないでしょうか。

 

長くなりましたが、まだまだ、日本では「社会人の学び直し」を大学院で受け入れるには、課題が多いようです。

 

おしまい。

 

 

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