仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

#温泉 旅館で #論文 や原稿を書きたい夢、叶えます~温泉旅館の「卒論執筆パック」ほかの話題(ねとらぼ等)~

<ホテルプロデューサーの提案にざわめく人々の話>

1.はじめに

2月に入りました。事前連絡で予告されていたものの、私のところに先週末、査読論文のトンボ入り校正原稿が来ました。昨年の夏、心身ともに重圧をもたらした投稿論文ですが、その秋に審査を通過して査読者の方のコメントに沿って、修正。どういうわけか、昨年秋の頃、事務局のほうとやり取りがうまくいかず、イライラしてしまい、その節はひどく疲弊してしまいました。その次が、年明け1月末の一回目の校正確認です。色々と事務局の体制が変わっていた模様で、こちらの使っているシステムの不具合があって、昨年秋にはたくさんの方にご迷惑をおかけ致しまして、申し訳ございませんでした。

 

そんな感じで「論文関連の作業で、昨年は疲れたな~。スパ〇ールドや銭湯に行きたいものだ」と年明けに文学フリマの準備をしながら、Twitterを開いたところ、温泉旅館の「卒論執筆パック」なる話題がタイムラインに流れてきました。学部生、院生や研究者の多い私がフォローしている皆さまが、ザワザワ。ホテルプロデューサーこと龍崎翔子さんのご提案が、あまりにも、皆さんの夢を叶えるプランだったからかもしれません:

nlab.itmedia.co.jp

 

私もざわつきました。1月末はバタバタしており、この話題を追うことはできませんでしたが、気になっていたので、今になって調べていたところ、何とTogetterに龍崎さんとリクエスト者の方々のやり取りがまとめられていました:

togetter.com

Togetterまとめを読むと、博論執筆パックや原稿執筆パックが欲しい!という声のほか、「実験施設のないところで、論文は書けるのですかね?」といった実験系の研究者の方が発したと思われるツイートもありました。私自身、色々と温泉に浸かりたい気持ちでいたので、今回はこの温泉旅館で書きものをしたい学生や研究者ほか、各種の温泉パック提案側の龍崎さんとざわついた人たちとのやり取りを追ってみようと思います。

 

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2.「大学最後の追い込みに、温泉旅館にこもり卒論を書く「卒論執筆パック」が登場 書き終わった人は「卒論お疲れパック」もあるよ!」(ねとらぼ)を読む

まずは、ねとらぼのオンライン記事で、どこの宿で書きものができるパックだったのか、概要をみていきましょう。

 

大学最後の追い込みに、温泉旅館にこもり卒論を書く「卒論執筆パック」が登場 書き終わった人は「卒論お疲れパック」もあるよ!

集中できない人は温泉旅館へ急げ……!

[黒川シュン,ねとらぼ]

 

 温泉旅館にこもって卒論を書きたい! そんな大学生たちの心の声に応え、神奈川県の旅館「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」が「卒論執筆パック」を発表しました。

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 企画を発案したのは、ホテルプロデューサーの龍崎翔子さん。このパックでは、卒論の提出を間近に控える学生を対象に、期間限定で2泊3日(1泊2食付き)の宿泊プランを用意します。

(大学最後の追い込みに、温泉旅館にこもり卒論を書く「卒論執筆パック」が登場 書き終わった人は「卒論お疲れパック」もあるよ! - ねとらぼ)

 

 パックを発表した旅館は、神奈川県湯河原町のこちらの旅館のようです:

www.theryokantokyo.com

相模湾をのぞむ湯河原という説明から、調べてみたところ、神奈川県の南西部に位置する温泉地のようです。名前は聞いたことがあったのですが、私は神奈川県内での位置を知らなかったので、今回、湯河原町の西部が静岡県と接し、町の北には箱根町、東は小田原市でした。静岡県東部には熱海もあり、どうも神奈川県西端と静岡県東端のあたりは、温泉地が多いように感じました。個人的なイメージですが、温泉地は療養の地として、特に近代以降、人気が出るとともに、文豪が気に入って執筆するのに泊まりに来ていたことを聞いたことがあります。「卒論執筆パック」をはじめ、湯河原のパックを利用すれば、文豪のような豊かな癒しの体験ができるということでしょうか。

 

さて、龍崎さんご提案の「卒論執筆パック」の内容を見てみると、

  • 1/23から2/1まで、2泊3日で宿泊できる回が4回
  • 2食付き、温泉入り放題
  • 3人以上で泊まれば1人7000円/1泊2食

となっています。アルバイトを頑張れば、学生の手が届きそうな値段ですね。日本の大学では、12月中旬から、年明けぐらいが卒論提出の期限に設定されている学部が多いようです。日程期間から考えると、むしろ、1月末に提出を控える修士論文パックにすると、よかったかもしれません。申込はGoogleのメールフォームで、既に締め切られています。

 

記事の続きには、浴場や部屋、握り寿司のある食事、一時期に話題となった人をダメにするソファーのあるカフェ&バーの写真が掲載され、「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」の魅力を伝えています。

 

そもそも、学生の要望から設定されたパックであり、瞬く間に人気となって「売り切れ」たようです。

 告知を見たTwitterユーザーからは、「使ってみたい」「安値だよね」といった声や、「マンガの企画会議パックも欲しい」と、「卒論執筆パック」とは別に仕事環境として使いたいという声も。ツイートはまたたく間に1万RTを超え、早くも売り切れの日程も出てきました。

(中略)

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(大学最後の追い込みに、温泉旅館にこもり卒論を書く「卒論執筆パック」が登場 書き終わった人は「卒論お疲れパック」もあるよ! - ねとらぼ)

「卒論お疲れパック」のほうは、会社の研修や大学院の準備で忙しかった人のいた私の4年次の経験では、卒業旅行も兼ねて湯河原に行くのもいいかもしれません。また、「卒論執筆パック」は2018年度も実施予定で、11~1月の年またぎプランになりそうです。後のTogetterまとめに出てくる博論執筆のパックも、年またぎプランでいけそうな気がします。

 

その他、仕事で使いたいという声があがっているところを見ると、物書きや物描き関係の引きこもり作業が仕事にある職業の人には、適したパックだと考えられます。ただし、紙にバックアップも兼ねて、論文の原稿をプリントアウトし続けるタイプの私には、向かないパックかもしれません。安定して動き、故障が少なく、自分の持ち込んだPCと接続できるプリンタが温泉宿にあれば、文献も大量に持ち込んで、執筆するかもしれません。

 

なお、パックの予定や概要は、ねとらぼのオンライン記事の最後にありますので、気になる方は、2018年度の利用に備えて、見ておいてもよいでしょう。

 

 

3.更に色んな要望が飛び出したリプライ~「温泉旅館で缶詰になって卒論執筆…湯河原の温泉旅館で2泊3日の「卒論執筆パック」パイロット版を実施」(Togetterまとめ)

更に、龍崎さんのもとにはたくさんの要望が寄せられていたようで、その一部はTogeterまとめで確認することができます:

温泉旅館で缶詰になって卒論執筆…湯河原の温泉旅館で2泊3日の「卒論執筆パック」パイロット版を実施 - Togetter

 

要望として挙がっていたのは、例えば、院生や研究者、物書きの職業の方からは、

  • 「博士論文追い込みパック」(10月ごろ、卒論パックより高額でも可)
  • 「論文締め切りパック」(時期は随時のほうがよさそう)
  • 需要がありそうなのは、「原稿執筆パック」、「まとめパック」、「赤入れパック」

が挙がっていたり、人気がありそうという声がありました。「原稿執筆パック」はいいなぁ、と見ていたら、既に作られていました。龍崎さん、仕事がはやい:

docs.google.com

(*締切済みです)

 

漫画家や同人漫画家、および物描きが趣味の人たちと思わしき方々からは、

  • コミケ前とかに缶詰プラン
  • 温泉宿に籠ってネームやりたい
  • 原稿缶詰の温泉オフしたい

といったツイートがありました。…スマホゲームのFGOをプレイするというのは、プレイして、漫画を描くためというなら、ありだと思います。

 

一方で、Togetterには「温泉で論文執筆は不可能では?」という方々の声もありました。

  • 化学系の方は、研究室の外にデータを持ち出して、温泉で卒論が書けるのか?という疑問をお持ち
  • お風呂はのんびりするところであり、温泉まで行って卒論は書きたくない
  • 「温泉で何かを書こうというのは思いの外難しい」し、湯に浸かると頭がボーっとして書く内容を忘れるのでは?「作家も缶詰にされるのは温泉じゃなくて山の上ホテル」ではないか?
  • 短い原稿なら温泉宿でも書けるかもしれないが、卒論などの長大でまとまった文章を筋道の通った構想で書こうとすると、温泉宿は環境として正反対ではないか?
  • 温泉館で卒論を書こうとしなくても、実験室のシンクにお湯を張って代用すればいい

様々な声が出ています。実験系の場合、確かにデータを外には持ち出せませんが、温泉地の近くにある実験施設を持つ研究機関だって、あります!よって、卒論かはともかく、実験の合間に温泉へ行くことができる人もいます。機器を借りて実験するため、その研究機関へ「遠征」に行っていた理系棟の後輩は、機関に付属する宿泊施設の近くに、どうやら温泉があるらしく、行くのを楽しみにしていた、と言っていたことがありました。

 

温泉のある環境では、論文という、論理構成があって、まとまった形の文章は書きにくい、という意見がありました。温泉まで行って書きたくない、という気持ちはわかりますが、前者のご意見については、書く予定の立て方次第で、書ける人もいると思います*1。ただし、温泉は銭湯みたいな使い方をして、温まりにいくだけにして、泊まっている部屋に戻ったら、書くメリハリがないと、だらけるというのは、実際にあり得ます。それよりも、私には文献の持ち運びや、使い勝手のよいプリンタの有無が重要なのではないかと、思われます。

 

温泉宿まで行かなくても、実験室のシンクにお湯を張って代用すればよい、という意見ですが、同期には研究棟の共用給湯室に洗面器を持ち込み、お湯を入れて、洗顔や洗髪はした人がいたようです*2。その人たちの話では、ひっそりとしていて、人の少ない深夜に、洗顔だけではさっぱりせず、短くした髪を洗っていたとのこと。さっぱりはしますが、どうしても修士論文を書くために研究室に「こもる」時期は晩秋から冬季で、身体は冷える。そういうことが分かったので、その人たちで博士課程に進んだ人は博士論文を書いていた時、私も誘われて、研究室の棟の近くの宿に泊まり、そこで入浴もしていました。そのうちの一人が振り返って言うには、他の人がシンクを使おうとするとき、他の人が洗髪したシンクを使うのは、あまり衛生的にはよくないでしょうし、気持ちが悪い、とのこと。

 

総括すると、温泉宿で文章や絵を作成できる人はできるから、そういった人たちには、「原稿執筆パック」のようなものがあると、有り難いんじゃないでしょうか。私は温泉宿がに使い勝手のいいプリンタがないと、行かないとは思いますが…。

 

 

4.最後に

温泉宿で論文や原稿が書けるかどうかは、その人たち次第でしょう。銭湯感覚で、長時間、温泉には浸からず、数分入って温まれば脱衣所に行き、さっさと部屋に戻って執筆再開、なんていう人もいるでしょう。体質上、長時間、お湯に浸かれない私は、気持ちのリセットで湯船に浸かり、浴室を出たら、また書き始めることをしていました。

 

ところで、論文を書くために「原稿執筆パック」を大学教員が利用したら、研究室に残された院生やポスドクの人たちは、どうなるか。ということについて、最後に考えてみましょう。特に、期末試験の時期に関して、研究室には、課題レポートの書式や、授業の内容確認をしに、連日、学生たちが先生を訪ねにやって来ます。年度末には、シラバスや次年度の科研費のことで、事務のほうから電話がかかってくることも多いでしょう。今の時代、ネットで先生に伝言ができたとしても、先生が不在というだけで、まだまだ、学生や事務の連絡を取り次ぐことになる弟子や研究職員たちは、非常に面倒くさい思いをします。遠方の大学の先生が原稿を書くため、湯河原に留めると事前に言われ、私がその先生の研究室のメンバーだったら、内心、「やめて下さい!せめて、電車で1時間以内の温泉地にして下さい」と困惑します。

 

逆に、卒論や修論を書いている受け持ちの学生が、遠方の温泉地に行って執筆してきます!と言うと、担当教員の先生方は内心、戸惑ったり、面倒くさがったり、困惑したりするのではないでしょうか。

 

そういうわけで、温泉宿で原稿を書く夢をかなえたい気持ち、よーく察せられますが、龍崎さんのご提案されたパックを利用する時は、周囲の人たちの様々な負担や気持ちをを考えた上で、覚悟して書き上げるようにしてほしい、と利用者の方にはお伝え致します。

 

おしまい。

 

 

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