仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

大学生活は忍耐が必要なのか?~「「大学って必要?」浪人までした女子大生に我慢の日々」(神戸新聞NEXT/Yahoo!ニュース)~

<憧れと現実の間で>

1.はじめに

バレンタインを過ぎ、2月も下旬にさしかかろうとしています。世の中は、韓国のピョンチャン・オリンピックで盛り上がっています。私立大学では、学部の一般入試と採点が行われている時期ではないでしょうか。ここ最近、数日間で寒暖差が大きく、インフルエンザ、風邪など、体調面でも受験生の皆さんは、気が抜けないと思います。

 

入試に備えて、最後の追い込みをしている方々がいらっしゃる一方、今週半ば、私が気になったのは、大学入学後の学生を取材した次のオンラインニュースでした:

headlines.yahoo.co.jp

 

読んだところ、入学後に「こんなはずじゃなかった」という落胆に打ちひしがれ、早々に仮面浪人に入っていった同期や、他大学から編入試験を受けて私のいた学部に入って来た人を思い出しました。オンラインニュースで体験を語った学生は、どのような受験を経た後、大学に入学して、何に「落胆」したのでしょうか。

 

今回は、入学に希望を抱いていたものの、入学後のキャンパスライフに失望したような語り口のオンライン記事を通じで、2年次頃までの学部生の忍耐の日々を考えてみようと思います。ある意味、入学後に失望するようなことがあるのは、大学院でも同じようなことが起こった後輩がいたので、本部ブログで取り上げるテーマと致しました。

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2.「「大学って必要?」浪人までした女子大生に我慢の日々」(神戸新聞NEXT/Yahoo!ニュース)を読む

 2-1.兵庫県南東部で生活する学生の「イメージと現実」

それでは、さっそく、記事を読んでいきましょう。冒頭には、取材を受けた学生の現状が、簡単にまとめてありますので、注意してみてください。

 

「大学って必要?」浪人までした女子大生に我慢の日々
2/15(木) 11:00配信 神戸新聞NEXT

 

 兵庫県三田市内の居酒屋。大学1年生のサクラさん(20)=仮名=がせわしなく働いていた。実家は三重県の山間部。大学に入学した昨年の春、三田で1人暮らしを始め、今は居酒屋とパン屋のアルバイトを掛け持ちしている。大学ではサークルに入り、友達と遊んで、それなりに楽しい。「でも、授業が面白くないんです。高校を出て働いている地元の友達の方がすごいなあって思う」。憧れのキャンパスライフとは少し違うようで…。

(「大学って必要?」浪人までした女子大生に我慢の日々 (神戸新聞NEXT) - Yahoo!ニュース)

 

大学1年生のサクラさんが語るところでは、

  • 兵庫県三田市内で2017年の春に一人暮を始め、大学に通っている
  • 今は居酒屋とパン屋のアルバイトを掛け持ち
  • 学内のサークルに入り、友人と遊んでそれなりに楽しい

という現状を見ると、忙しいながらも充実した毎日を送っているように思われます。しかし、「三重県の山間部」出身で、「でも、授業が面白くないんです」と話す部分に、私は非常に引っかかるものを覚えました。ちなみに、この学生が住む三田市は、調べてみると神戸市の北部に位置し、六甲山地の北側にあることから、阪神地域のベッドタウンと田園都市という2つの顔を持つところのようです。人口は11万人ほどで、高等教育機関は、

の2つがあるようです*1。冒頭を読んだイメージでは、まず、サクラさんは、アーバンな都市にある大学での暮らしを思い描いてやって来たものの、実際は実家のある地域と似た雰囲気の場所に大学があり、そこで拍子抜けしてしまった印象を持ちました。

 

ニュース記事の続きを読んで、学生の心の内を確認してみましょう。

 山に囲まれた田舎で育ちました。お母さんが美容師で、子どものころから「なんで髪は染まるの?」「トリートメントで、どうして髪がサラサラになるの?」とよく聞いていたそうです。理系の学部に進学したのは、身近にある不思議を理解するのが面白かったからだと思います。

 高校は公立で、地域で一番、偏差値が高い学校でした。制服を見て、近所の人に「すごいね」「賢いね」と言われるのが苦手でした。期待がちょっと重かったですね。

 高校で驚いたのは、周りの人がとんでもなく勉強ができたことです。いつも冗談を言い合って、部活も真剣なのに、テストではいい点を取る。「いつ勉強してるの」と感じてました。私は1年目の受験はセンター試験で失敗して、1年浪人して大学に入りました。

 大学にはもっと華やかなイメージを抱いていました。だから初めて三田に来た時は、こんなに田舎だったのか…と少し残念で。今は、サークルやバイト先の友達と大阪や神戸に出掛けたり、(夜通し遊ぶ)オールしたり、楽しいですけどね。時間がある時はたいてい寝てます。月10万円の仕送りはありますが、バイトで稼いだお金で遊んでます。

(「大学って必要?」浪人までした女子大生に我慢の日々 (神戸新聞NEXT) - Yahoo!ニュース)

 

サクラさんが理系の学部に進学したのは、美容師だった母親の影響があり、 「身近にある不思議を理解するのが面白かった」ことがきっかけ。通っていた公立高校は、いわゆる地元では一番の「進学校」であり、周囲の言葉を受けたサクラさんがプレッシャーを感じていたことが窺えます。私の経験では、学部時代に同じ地域の出身者がいて、出身校を聞き、名門校だと「すごーい!」と声を上げてしまうことがありました。自分の高校は中堅クラスの高校だったこともあり、羨望のまなざしを向けていたけど、中にはサクラさんのように、クラスメイトが優秀な人だらけで3年間、固められてしまう環境にいると、けっこうな引け目を感じてしまっても不思議ではないと思います。自己肯定感が下がっていく感じは、定期テストやセンター模試の合否判定で私も体験したことがあり、否めません…。

 

一浪の後、サクラさんは進学を機に、兵庫県三田市にやって来ます。上記のとおり、六甲山地の北にある都市の三田は、大学に華やかなイメージを抱いていたこの学生に、「こんなに田舎だったのか…と少し残念」と思わしめています。確かに、サークルやバイト先の友人達と遊びに行く神戸市、それから大阪市と比較すれば、田園都市でベッドタウンと言われる三田市が、20代初めの大学生の目に「田舎」と映るでしょう。

 

華やかな大学のイメージに対し、そうでなかった現実にやって来たサクラさん。彼女は、仕送り10万円とアルバイトのお金で、学び、衣食住をやり繰りし、友人達と遊ぶところは、自分で得た環境に「適応」しようとする気持ちを感じました。

 

 2-2.大学の授業に対して抱いた「ギャップ」

インタビューに答えるサクラさんの言葉には、「キャンパスライフを楽しむ大学生」と共に、「様々なことにやる気を燃やし、入学してきたモチベーションの高い大学生」の印象を私は抱きました。後者の印象は、特に大学入学後の授業に少し「落胆」しているようなことを吐露した、次の箇所です。

 

 大学に入って、中学や高校とのギャップを感じたのは授業です。教授の板書がへたくそで、落書きみたいなんですよ。話したいことを自由に話す人も多いですし、分かりにくいんです。受講する学生は多いんですけど、スマホを触ったり、寝たりする人もいます。私は将来、化粧品とか化学薬品に関係した仕事に就きたいんです。なので、必要のない勉強じゃないかと疑ってしまう授業もある。でも親にお金を出してもらってますしね。2年生になれば、興味のある授業が増えると信じて忍耐で受けてます。

(「大学って必要?」浪人までした女子大生に我慢の日々 (神戸新聞NEXT) - Yahoo!ニュース)

 

机にテキストやノートを広げ、椅子に腰かけて、黒板の板書を書き写したり、先生がきれいな字で書き、言った重要ポイントをメモしたりする。自分の将来がかかっている勉強なので、みんな、必死で授業を聞き、予習や復習をしっかりこなして、内容を頭に入れる。おそらく、勉強に関してきちんと学ぶ姿勢の生徒が多く、先生方の板書の文字や、授業内容の情報整理がきっちり伝えられていた「進学校」の出身者・サクラさんには、大学の授業は色々と緩いように感じられたのかもしれません。そもそも、サクラさん自体、「私は将来、化粧品とか化学薬品に関係した仕事に就きたいんです」と将来に明確なビジョンをお持ちのようですので、かなり個人として真面目な学生だと思われます。

 

私の出身高校の場合、卒業生を学校が招いて、在校生が将来のことを考える場が設けられていました。そこで色々と大学生活の話を聞き、例えば「大学の先生の板書は読みにくいよ、自由気ままに書く人もいるし。体育館サイズの講義室だと、授業中に学生が後ろのほうで喋っている人もいるし」ということを知りました。

要は、大学などの高等教育機関は、受講者の理解力や自律(自立)性に頼っており、口頭説明を続けるだけ、あるいは黒板に書いた内容が順不同な授業が増えていく可能性を、割と早い段階で私は感じ取っていました。そのため、大学の授業に早い段階で慣れてしまったのかもしれません。

 

このあたり、通っていた学校の授業スタイル、進路指導や行事、集まった生徒の作り出す雰囲気によって、だいぶ変わってくるでしょう。真面目で厳格な空気の学校に通っていると、進学先の大学で授業出席を続けても「拍子抜け」してから、なかなか、馴染めない人がいても不思議ではありません。

 

 

それ以上に、私が気になったのは、サクラさんが「必要のない勉強じゃないかと疑ってしまう授業もある」と言っていたことです。サクラさんは現在大学1年生で、このように感じたのは、学部1年目は語学や教養科目が多くなりがち、というカリキュラムの事情でした。多くの大学では、学部1~2年次に第1・2外国語、幅広い分野から授業を選ぶ必修授業の多い教養科目の単位修得が課せられています。このシステムは、教職や学芸員など、私が取っていた資格修得の課程も同じような形式になっていました。1~2年次の時に履修するのは、3年次以降の専門科目の土台になる基礎的な内容の授業で、重要なものです。しかし、振り返ってみると、2年次までに履修登録できる語学や教養科目には、私には物足りない科目があったことを覚えています。

 

そういったシステム上、サクラさんが興味を持てなかった科目や、必要なのか疑問に思う授業があったとしても、よくあることだと言えます。

 

ところで、私が資格修得の課程で様々な授業に出ていた1年次、続く2年次に取れた授業を思い返すと、「合理的なカリキュラムの組まれ方ではないなぁ」という気持ちになります。単純な履修登録数で言うと、教職の「教職に関する科目」の枠では、1年次に4科目だったのが、2~3年次に倍くらいに増加し、専門的で高度な内容に移行します。専攻の科目や他の資格課程の授業もあって、オーバーワークになった私は、倒れかけました。なので、2~3年次になって取れる科目を1年次に履修登録し、授業に出られるようになっていれば、もう少し、3~4年次の履修スケジュールに余裕が持てたかもしれません。詰まるところ、1年次後期くらいの早い段階で、専門科目を履修登録し、受講できるようにしてもよいのではないでしょうか。

 

 

おそらく、サクラさんが所属する学部で、専門科目や実習が増えるのはもう少し先だと思われます。ご自身が自覚しているとうに、興味が持てる科目が増えるまで忍耐が必要でしょう。ですが、私個人の経験では、高校の段階で大学生活や授業の様子を情報としてキャッチしたり、なるべく低学年の段階で専門的な科目を受講できるカリキュラムにしたり、大学の新入生が早く大学生活に慣れる工夫はできると考えました。

 

 

3.終わりに

 今回は、地元で偏差値が一番高い「進学校」出身で、華やかなキャンパスライフをイメージていたものの、進学後、田園都市での大学生活に「拍子抜け」したり、緩い大学の授業に「落胆」の思いや疑問を抱いたりする、「真面目」な大学生のサクラさんを通じて、大学生活は学生に忍耐が必要なのか、考えてみました。結論から言うと、私は現状として、忍耐が必要だと考えるに至りました。

 

入学後、学生に忍耐は必要だとはいえ、受験生と周囲は、進学前と進学後の大学生活や授業に対するギャップを埋め、なるべく早く大学になじめるようにする工夫はしておいたほうがよいでしょう。サクラさんがインタビューのところどころで言っているように、大学に通うにはお金がかかっています。できるだけ、自分が受験に合格し、手に入れた大学という環境で、踏ん張れるだけ、踏ん張る努力や工夫は、心身の状態を悪くしない程度にであれば、する価値はあると思います。

 

それより前に、進路を選ぶ時、現役の高校生や大学生、大学院生に考えて頂きたいことがあります。ある進路を選ぶ際、その先に設定する目標や目的を何にするか、ということです。サクラさんの場合、大学の理系学部を進学先に選んだのは、「将来、化粧品とか化学薬品に関係した仕事に就きたい」という、ビジョンがあったからでした。私の場合は、中国の歴史に関する研究をしたい目的と、自分の発達障害について学び、自分を含めて似たような人たちの生き方を改善したい目的と、2つのことを達成するため、大学の文系学部に行きました。この記事をお読みの皆さまは、いかがでしょうか。

 

例えば、「都会に行って生活してみたい」とか、「バンドや演劇のサークルを通じて、有名になりたい」とか、そういった目的で大学に進学しても、私はアリだと思います。実際、私は上記の目的のほか、好きだった歌手の後輩になりたい、とか、大学のある都市の名物スイーツを食べてみたい、といった希望も持っていたのが正直なところです。

 

東京をはじめ、大学や短大等の多い大都市には、学生だけでなく、様々なエンターテイメントを提供する場所やショッピングモール、面白いプロジェクトを進める企業や自治体があるでしょう。人が多い大都市は、個人の努力次第で目的の業界で仕事に就くための人脈を築き、目的達成をしやすい環境が得られる、という可能性があります。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」のヒロインの義姉役をはじめ、様々な場所で活躍するキムラ緑子さんも、女優キャリアの最初は、同志社女子大時代の友人の縁で、同志社大の演劇サークルに所属したことだったと、某番組で紹介されていました。

 

どのような目的や目標があって、どこの大学に進学するにしても、繰り返しますが、資金調達については、熟慮して頂きたいと思います。それから、どの道をとるか、ということについても、です。

 

昨今、JASSO(日本学生支援機構)の返済型奨学金のことで、様々な問題が報道されています。色々と私が思うところはありますが、2月17日ごろ、俳優でYouTuberの瀬戸弘司さんがご自身の半生を振り返って、次の動画をアップされましたので、リンクを張らせていただきました:

瀬戸弘司の「奨学金返済物語」第1部 〜弘司の青春〜

www.youtube.com

 

全部で20分弱の長さ。俳優時代の最初から、YouTubeで動画配信を以降、返済するまで、JASSOの返済型奨学金のことが心の底にあったこと。東京に行くため、東京工業大学に進学したものの、大学1年次で、授業単位を取得する勉強に力尽きてしまったこと。その後、ある劇団の養成所に入る際、実家の親族に入所の30万円を借り、俳優を目指す過程で大学を辞めることになったこと…など、赤裸々かつ真面目に語っておられました。

 

動画を試聴して、大学入学の目的とか、入った後、踏ん張れない辛さとか…。目指す方向は、俳優のほうが楽しかったとか、身につまされる内容でした。特に、高校生や現役大学生に見て頂きたい動画です。

 

おしまい。 

 

 

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*1:以上、次のページを参考のこと:三田市 - Wikipedia

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