仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

【ニュース】「大学図書館、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を超す」(大学ジャーナルオンライン編集部)

<今回の内容>

1.はじめに

ついにやって来ました、2018年度。幼稚園生・保育園生から高校生までは春休み、大学生・大学院生は、入学式や各種ガイダンスが始まりかけている頃ではないでしょうか。一部の私立大学では、3月末に前年度の成績発表と進級・留年の発表があると聞き、戦々恐々していた人たちがいたと思います。

 

弊ブログでは、先月末から、

【2017.4.22追記】大学・大学院で使うコピーカードの話 - 仲見満月の研究室

の記事がアクセス数をのばし、昨年と同じく、新年度の始まりを感じております。

 

さて、本日は学び始め、研究始めの方が多いのに合わせて、新入生はお世話になり始めることの多い、大学図書館と電子媒体資料の話題です:

univ-journal.jp

 

紙媒体の購入を、電子媒体の購入費が抜いた、というニュースです。この話は、実は大学・大学院という学術研究、そして教育を行う機関に属する図書館にとって、特に様々な問題を含んでおります。そういうわけで、どうして電子媒体にかける費用が増えたのか、ニュース記事を読んでいきましょう。

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2.「大学図書館、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を超す」(大学ジャーナルオンライン編集部)から分かる電子媒体にまつわる事情

適度にオンライン記事を切って、コメントをしていきたいと思います。

2018年3月28日

大学図書館、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を超す

大学ジャーナルオンライン編集部

 

 全国国公私立の大学図書館で2016年度に使った資料費のうち、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を上回ったことが、文部科学省の2017年度学術情報基盤実態調査で明らかになった。資料費自体は2013年度以降、増加傾向にあったが、前年度より減少に転じている。

 

 文科省によると、2016年度の図書館資料費は719億円。前年度より27億円(3.6%)減少した。内訳は図書と雑誌を合計した紙媒体が302億円、電子ジャーナルと電子書籍を併せた電子媒体が315億円。紙媒体は前年度より38億円(11.1%)の減少、電子媒体は10億円(3.2%)の増加となった。

 

 各大学では電子媒体の多くを海外の出版社から購入しており、日本以上に電子化が進む海外の状況を反映したと同時に、代替品が存在せずに競争が成立しない市場の特殊性から価格が上昇したとみられる。

大学図書館、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を超す | 大学ジャーナルオンライン

文科省の上記調査は、日本にある大学図書館を対象に行われました。図書館の資料購入費用の内訳は、2016年度について、

  • 紙媒体・・・302億円(図書と雑誌、全体の42%)
  • 電子媒体・・315億円(電子ジャーナルと電子書籍、43%)

という割合となっています。両者は、ほぼ拮抗しているものの、「紙媒体は前年度より38億円(11.1%)の減少、電子媒体は10億円(3.2%)の増加」が指摘されました。

 

大学図書館早慶クラスのマンモス大学では、全キャンパスで250~300万冊を所蔵していると聞いたことがあります。上記の紙媒体と電子媒体の資料割合を無理やり適応すると、125~150万冊はPCやタブレット端末を通じて読めないわけです。もはや、研究者は電子端末抜きで研究に関する資料を読めないところまで、きているのかもしれません。

 

ちなみに、電子ジャーナルの種類と価格に関しては、

 各大学では電子媒体の多くを海外の出版社から購入しており、日本以上に電子化が進む海外の状況を反映したと同時に、代替品が存在せずに競争が成立しない市場の特殊性から価格が上昇したとみられる。

 

 このうち、電子ジャーナルにかかる経費は302億円で、前年度より8億円(2.6%)増えた。大学図書館で閲覧できる電子ジャーナルのタイトル数は国外388万、国内47万となっている。

大学図書館、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を超す | 大学ジャーナルオンライン

ということが書かれています。私が図書館学の授業で聞いた話では、この「代替品が存在せずに競争が成立しない市場」を、ヨーロッパに拠点を置く科学ジャーナルの出版を担う某E社が独占しているのでは?といった噂を聞いたことがあります。また、欧米の学術雑誌の年間購読料はめっちゃ高く、「永田礼路「「論文ハウマッチ」+論文とお金の少し真面目な話」+『螺旋じかけの海』の紹介~理系学術ジャーナル論文掲載の裏事情~ 」によれば、「大学等の法人契約だと1誌あたり数十万円がザラ」で、有名な『ネ〇チャー』にいたっては年間90万円するそうです。

 

卒論を書くにも、修論の研究をまとめるにも、投稿論文の準備をするにも、学術誌に投稿された当該分野の論文をチェックすることは欠かせません。だから、学生や職業研究者を抱えている大学・大学院の図書館は、高額ではありますが必要ということで、電子ジャーナルを契約しているのです。ただ、昨今は大学図書館は予算を減らされる傾向にあり、契約が打ち切られてしまい、ショックを受けた大学教員の方の叫びがTwitter上で響いているのを見かけます。

 

さて、オンライン記事の続きを読んでいきましょう。

 

 このほか、教育研究成果をインターネット上で無償公開する機関リポジトリを持つ大学は、前年度より50校(10.3%)増え、536校に上った。学生の主体的な学びを促すアクティブ・ラーニング・スペースを設けたところは、全体の65.4%に当たる512校に達した。

 

 一方、セキュリティポリシーは全国立大学で策定されているものの、公立大学で12.4%、私立大学で30.4%が未策定だった。

 

参考:【文部科学省】平成29年度「学術情報基盤実態調査」の結果報告について-大学における大学図書館及びコンピュータ・ネットワーク環境の現状について

大学図書館、電子媒体の資料費が初めて紙媒体を超す | 大学ジャーナルオンライン

リポジトリでの研究成果公開とその利用については、以前に別記事で取り上げたことがあるので、次のものをご覧ください: 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

電子ジャーナルにしても、リポジトリにあがっている研究成果を見るにしても、ルールは必要で、それに当たるセキュリティポリシーの話が出ています。「全国立大学で策定されているものの、公立大学で12.4%、私立大学で30.4%が未策定だった」とのことですから、公立・私立大学には頑張って頂きたいところですね。ちょうど一年ほど前には、文科省の関連機関である「科学技術振興機構(JST)が運用する電子ジャーナル出版プラットフォーム「J-STAGE」」が外部からサイバー攻撃を受け、対応に時間がかかって利用停止が長期化してしまったことがありました。そういうわけで、これからは「職業研究者のいる学術機関、それから民間企業、自治体でも学術情報の検索サービス」(大学や研究所等のリポジトリ等)を作って管理したほうがいいのでは?と私は考えており、セキュリティポリシーは更に必要になってきていると言ってよういのではないでしょうか。

 

 

3.最後に

これからは、まずます電子媒体の資料が大学図書館で増加していくと考えられます。上がり続ける費用は、その機関に所属する利用者の研究活動を圧迫していくでしょう。国内ジャーナルの電子媒体もおそらく増えてきているでしょうから、リポジトリの利用を含めて、それぞれの機関にはセキュリティポリシーの策定・運用に取り組んで頂きたいところです。

 

そして、新入生の皆さんには、大学・大学院に所属している時しか使えない、電子ジャーナルを含んだデータベースを存分に使って、学究活動に勤しまれることを期待しております。その機関に所属しなくなったら、データベースは使えなくなります!今の私がそういう状態で、けっこう不便です。

 

ということで、大学図書館の電子媒体費用増加のニュースでした。

 

おしまい。

 

 

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