仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

ラボ配属から学位論文完成までの現実~「「卒論あるある」研究室のホワイトボード」の「理想と現実の絵が闇が深すぎる…」 (Togetter)~

<卒論だけでなく修論、博論も…>

1.はじめに

今週末にゴールデンウィークが迫り、新入生の皆さんは、一息つく頃でしょうか。最近では、私立大学を中心に連休前半の4月末は休まないところが増え、私なんかは、5月1日にグッタリしていた覚えがあります。上の学年の人は、卒業生が去った後、研究室の空いた席への引っ越しや、新年度の片づけを連休にすることがあるかと思います。

 

さて、この春から新しく研究室配属となった人にとっては、早い人では、卒論や修論のテーマを固め始める頃でしょうか。「自分でテーマを決めて、ゼミで先生や先輩方、同期にアドバイスをもらって、書いていくんだ!」とやる気に満ち溢れている人もいるでしょう。そんな学生に、ぜひ見て頂きたいTogetterまとめを今回はご紹介致します:

togetter.com

 

アイキャッチ画像は、ある大学の研究室のホワイトボードです。そこには、今年の初め、アニメ版がテレビやネット配信で話題となった漫画『ポプ●ピピッ●』の主要人物のいる漫画風のイラストが描かれていました。研究室配属直後、卒業研究のモチベーションが高い学生を表す「ポプ子」と、厳しい数々の言葉を投げかけて研究の現実を教える「ピピ美」。2人の様子に対して、Twitter上では様々なコメントが寄せられ、上のTogetterページにまとめられました。イラストでは卒論が取り上げられていますが、以前よりも短期で研究成果を学位論文にまとめざるえを得なくなった、修士課程の院生にとっても、実は読むと心に刺さる言葉が書いてあると思います。

 

本記事では、このホワイトボードのイラストをとおして、学位論文の理想と現実について、考えてみましょう。

 

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2.ラボ配属から学位論文完成までの現実~「「卒論あるある」研究室のホワイトボードに書いてあった理想と現実の絵が闇が深すぎると話題に」 (Togetter)~

まとめページの冒頭のイラストを見ると、右側に研究室配属直後と思われるポプ子は、やる気に満ちていることが、分かります。「学部4年についになった…」という呟きから、ポプ子は理系学部の4年次の学生を表すと推測できます。人文・社会系の学部では、ゼミや研究室の配属が1学年早く、3年次の春になることがあります。大学院では、入学したての修士1年生でしょうか。学部生・院生の読者の方は、それぞれ、ご自身の所属先や学年に合わせて、ポプ子をご自身に重ねてみて下さい。

 

ポプ子が考えていることは、以下のようなことです。

  • これから好きなことを研究テーマにするんだ…!
  • 使ってくれる人がみんな嬉しいとか、楽しんでくれるシステムを作るんだ…!!
「卒論あるある」研究室のホワイトボードに書いてあった理想と現実の絵が闇が深すぎると話題に - Togetter

自分が好きな研究テーマを設定し、物づくり、システム作りをして、使ってくれる人たちの役に立ちたい、という気持ちが伝わってくる言葉です。私の場合は、他の人にとって、直接的な役に立つかはともかく、自分にとって好きなテーマは設定して、卒論を書きました。人文・社会系の卒論では、とりあえず方向としては、興味・関心のある分野を選び、先行研究を調べていくことで、テーマを固めていくことはできると思います。

 

頑張るぞー!というポプ子に対し、大学教員や上の学年に当たる学生を表す・ピピ美は、色々と厳しい言葉を言っていました。

  • 研究の有用性は?
  • 新規性は?
  • 関連研究は?
  • 成果だして
  • それ、どうやって評価するの?
  • それ、他とかぶってるよね
「卒論あるある」研究室のホワイトボードに書いてあった理想と現実の絵が闇が深すぎると話題に - Togetter

ピピ美の言葉全体に対して、かつて学部生だった時代を振り返ったようなものでは、「新規性があるかは、学部生には分からないことが多いよね」とか、「卒論で自分の発想が凡人波で、できることの限界を知るのが重要」といったコメントがありました。実際、好きなテーマで卒論を書いていると、分野は関係なく、ある程度のところで詰まることはあるんじゃないでしょうか。

 

指導する立場らしき方のコメントには、

(研究を始めたばかりの)学生さんが「やりたい」テーマは世界ではもうとっくにやられていて起業ならいいんだけど研究としては成り立たないことがあるので、指導教員は学生さんの興味と研究の意義をすごく苦労して両立する努力をする

「卒論あるある」研究室のホワイトボードに書いてあった理想と現実の絵が闇が深すぎると話題に - Togetter

という、努力を伝えるものがありました。特に、理系分野の方で修士卒での就職を目指すなら、一定水準を満たした修論でオッケイなことがあります。しかし、博士課程に進もうとする修士院生なら、研究として新規性や成果をあげるという点が重視されるため、指導側も大変だと思われます。

 

ちなみに、私の通った私大の文系学部、院の文理総合系学部の文系では、「卒論は先行研究をまとめて整理したレビュー論文的なもの、修論は先行研究を踏まえた上で自分の考えを入れ込むんだもの」で、一定の水準以上があり、卒論生や修論生の次の進路が決まっていれば、合格でした。求める水準が高く、厳しい学科や専攻では、理系同様、ピピ美のような条件から卒論や修論が審査され、水準になければ進路が決まっていようと、落第・留年になる学生がいました。

 

分野関係なく、就活で選考を受け、各種採用試験を進むうち、あっという間に時間は過ぎていきます。合間に文献を読んでゼミ発表したり、実験をしたりするけれども、取り組む学生は途中で慌て出します。落ち込んで、研究室やゼミに顔を出さなくなって、引きこもってしまう人が出てくるかもしれません。そんな学生にとって、後半のピピ美の言葉は、追い打ちになりかねません…。

  • もう時間ないよ 院進しなよ
  • 研究全然 進んでないのに 就活うまくいくわけ
  • てか、好きなこと やるなら、もう成果 保証しないよ
  • てか、先輩の研究受け継いだ方が成果出るよ

 (「卒論あるある」研究室のホワイトボードに書いてあった理想と現実の絵が闇が深すぎると話題に - Togetter

途中で卒業研究が停滞、もしくは、うまくいかなくなった場合、どうしたらよいのでしょうか。仕切り直し、および卒業・修了を目指した方策としては、

  1. 自分のできていないことを認め、指導教員に現状を報告して、指導を仰いだり、こまめに状況報告を重ねて、とにかく、卒業・修了ラインに研究を持っていく(参考:「卒業論文・修士論文における学生の指導教員との付き合い方を考える~「かやのみ日記帳」のエントリ記事から~ - 仲見満月の研究室、ピピ美の言うように、先輩の研究を引き継ぐこともあり)
  2. 指導教員や先輩方のアドバイスは受けるも、その言葉は半信半疑程度の参考にして、自分で最後まで研究に取り組む

といったことが考えられます。どちらのやり方もありではありますが、1の場合、博士課程を前提にした院志望者の学生だと、卒論・修論のレベルが低くなりそうな危険があります。2の場合は、うまく人間関係を良好に維持できなければ、指導教員やラボの人たちとのギスギスしてしまい、就職や進学で推薦書類が必要になっても執筆を頼みにくくなったり、実験やゼミに顔を出しにくくなったり、する可能性があります。卒業・修了の審査用に1つ、好きなテーマで1つ、全部で論文を2つ書いてしまう、というのも手でしょうが、よほどエネルギーと時間がある人でないと、オーバーワークで倒れてしまうでしょう。

 

結局、現実的な落としどころを見つけて、卒論や修論、場合によっては博論は、妥協したレベルに落ち着くことになるでしょう。ホワイトボードのポプ子が「私の作りたいものって こういうのだっけ…?」と出来上がった論文を握りしめていますが、私は博士論文について、学位授与式直後は納得がいっていない気持ちがあって、苦い顔ばかりしてました。私の周りには、指導教員の健康状態がよくなく、あまり博士課程の在籍を延長できず、基本在籍年数プラス1年で出て行かれた方がいます。テーマ的にその先生しか指導できなかったようで、そういった制約があるケースを考慮すると、書いているほうは辛いですが、学位論文はある程度、妥協せざるを得ません。

 

 

3.納得のいく学位論文を書くには~むすび~

時間的、体力的、そしてラボで指導をしてもらえる人たちとの人間関係的な制約に加えて、学生には大学や大学院に通える経済的な限界があります。研究を続けたいけれど、もう授業料や学費が払えない、家庭の事情で卒業・修了直後から就職して働かなければならない、などの事情を抱えた方は、昨今の日本では少なくないと思われます。

 

現実的なところでは、

あたりで書きましたように、社会人になってから、大学院に戻ってくる方法があります。その時々の状況によって、進学できるかは個々人それぞれでしょう。借りた学費や生活費の返済で、経済的に余裕のない社会人の方は、少なくないと聞きます。

 

現在、徐々に門戸を社会人に開いてきている研究教育機関があるようです。一旦、卒業・修了した後、学究で入学できる制度を知っておき、機会が来たら挑戦できるよう、準備をしておくこと。学部時代からご検討いただければ、と思いました。

 

おしまい。

 

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