仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

「資生堂“ネギやにんにく”ストレス臭を発見」(日テレNEWS/Yahoo!ニュース)~ある人がある人に「臭い」と言われる理由はこれなのか?~

<嗅覚の問題と科学の話>

1.「資生堂“ネギやにんにく”ストレス臭を発見」(日テレNEWS/Yahoo!ニュース)の紹介

本日、飛び込んできたニュースで、化粧品メーカーの資生堂が「大発見」をしたことが報道されていました。ネギ類の発する成分に敏感で、調理の仕方次第(タマネギでなくても、太いネギだと涙が止まらない程度)では近づけない私には、重要なニュースです↓

headlines.yahoo.co.jp

(「資生堂“ネギやにんにく”ストレス臭を発見」、日テレNEWS/Yahoo!ニュース、2018.10.2、15:53配信)

 

報道内容によると、資生堂が行ったらしき研究について、記者が「ストレス臭」を次のようなことで、確認したそうです。

  1. 暗算を続けたり答えづらい質問を受け続けたあと、手から出たにおい」を取り出す
  2. 「人数がたくさんいる時の場所のにおいにも似たにおい」だった

 

人数が多く集まる場所といえば、私が真っ先に思い浮かべたのは、遠い勤務先に向かう途中の通勤電車の中でした。

 

f:id:nakami_midsuki:20181002193944j:plain

(イメージ画像の出典:満員電車の通勤が最も疲れる原因(中年男性)|ぱくたそフリー素材

 

午前7~8時ごろの出勤ラッシュ、午後5~7時ごろの帰宅ラッシュは、スーツ姿のサラリーマンらしい乗客が目立ち、私もその一人でした。生い立ちの関係もあって、私は人混みが大変苦手ですし、緊張したまま往復で数時間を電車内で過ごしたこともあります。ときどき、気持ち悪くなった時は、乗換駅で降りてホームで休んでから、次に来た電車に乗車するなんてことがあり、ひょっとしたら、自分では気づかなかったものの、ネギやにんにくに近い臭いを発していたのかもしれません。

(そう思うと、私は怖くなってきました…)

 

次に、ニュース記事にある「答えづらい質問を受け続けたあと」といえば、社会人の方だと、日常の仕事での報告・連絡・相談に加えて、会議や取引先の前などで行うプレゼンが思い当たる人がたくさん、いそうです。研究者だと、学会大会や研究会、ゼミなどでの研究報告が思いつきます。学校教員だと、生徒からの答えにくい質問をされた時でしょうか。いずれにしても、人の精神が「危機的な状態」にあることには変わりなく、ひょっとすると他の生物にもあるように、危険を周囲に知らせるような機能を「ストレス臭」はもっていたのかも...。

 

そんな妄想を真面目に考えると、現在の(日本の)人間社会には嗅覚に頼らなくても、危険な状態を知らせる方法は、ほかに複数あるわけです。しかも、ドリアンに詳しい植物学者によると、嗅覚は個人差が五感の中で最も大きいものだそうです*1

 

嗅覚が人によって差が大きいということは、たとえ「ストレス臭」を発したとしても、まったく気がつかない人と、敏感にかぎ取る人との差が激しいことになる。そのように、私は思いました。

 

 

2.ある人集団にある人が「臭い」と言われる理由を考える~「会社で臭いと言われるのだがどうしていいかわからない」(はてな匿名ダイアリー) ~

こういったことを考えたのは、先月18日に話題となった、次の匿名ダイアリーの記事を読んだからです: 

anond.hatelabo.jp

(「会社で臭いと言われるのだがどうしていいかわからない」、2018.9.18付け、はてな匿名ダイアリー) 

 

このダイアリーの筆者のますだ(仮名)さんは、最近、会社に行くけば、自分が歩いた近くの人たちが窓を開けたり、上司に「お前は不潔だ。他の社員から苦情が出ている」と(時に別室で自分にだけ)言われたりして、悩んでいることを告白しています。

特に通り一遍というか特別気を使ってるわけではないが、同じ服を着続けるとか風呂に入らないとかそういうことは一切ない。

歯も三食食後に磨いている。

(「会社で臭いと言われるのだがどうしていいかわからない」)

という、身体の「メンテナンス」をしているのに、会社では「臭い」と言われ続けているそう。

 

ますださんは、プライベートで友人や彼女に相談して、持っている衣類の多くを洗ってみたり、スーツをクリーニングに出したりして、臭いを取る努力をします。また、専門の医師のもとに行って検査をしても、病院にきつい体臭で相談に来た人たちに比べると、「あなたはまったく普通です。客観的にも主観的にもぜんぜん臭くない」と言われました。病院での結果を上司に報告すると、

一通り聞いた後で、だが臭いもんは臭いんだよ。

別にお前が嫌いとかそういうのはないからそれは信じてほしい。ただ社内からのクレームは多く、俺もそう思う。

頼むからなんとかしてくれとしか言えない。

(「会社で臭いと言われるのだがどうしていいかわからない」)

という反応。でも、ますださんご自身にはこれ以上、何もできないと仰っています。本当にわけが分からないというのは、読んでいた私もそうでした。ちなみに、ますださんは喫煙習慣もなし、スリッパが原因だと考えられる日課のこともないそう。病院に行ったのは会社帰りで臭いはずの時だったということです。

 

追記部分を読むと、

上司が言いはじめたのは上司の一存ではなく、女子社員が彼女の上長に訴え、それをその上長であるこの上司に訴えたのがきっかけだそうだ。

これは複数の人に聞いたので確認できた。上司としては臭いごときと最初は思ったそうだが、以前から臭いとは思っていたそうだ。女子社員が連名でこのままでは働き続けられないと何度も訴えた結果こうなったそうだ。

臭いごときで辞めさせるかということについてはその他の社員の職場環境を守るためということだった。

(「会社で臭いと言われるのだがどうしていいかわからない」)

ということで、上司がますださん本人に言わざるを得なくなった模様です。

 

連名で訴えてきた女子社員の人たちによると、ますださんの発する臭いは、「汗臭さが凝縮したような臭い」だそうです。おそらく、今回、資生堂が発表した「ストレス臭」の様子から、ますださんも仕事か何かによる精神的なものによって、この臭いを発していたのではないでしょうか。それに加えて、訴えた女子社員の人たちが、この「ストレス臭」について、非常に敏感な人たちだった可能性も高いと、私は憶測しています。

 

そのほか、この匿名ダイアリーに対する読者のなかには、ある人たちは、ある人の持つ臭いや(汗などの)成分に対して、アレルギーのような反応をするケースがあることを指摘する人もいました。血のつながる私の親族には嗅覚が鋭く、特定の臭いを感じると、鼻水が止まらなかった人もおります。私自身、嗅覚ではありませんが、先のとおり、ネギ類の存在を感じ取ると、涙が止まらないことがあったり、別のところではアレルギーを持っていて反応すると死ぬほどキツイかったりいたします。

 

それ故、「ある人たちは、ある人の持つ臭いや(汗などの)成分に対して、アレルギーのような反応をする」という説には、説得力を感じました。近い説には、ある人ちは衣類に使われている洗剤や柔軟剤、漂白剤に敏感で、その対象洗剤などが使われた衣類を身に付けた人が近づくと、目の痛み、肌がかゆくなるというものを、見かけたました。

 

その後、ますださんがどうなったのかは、 私は追えていません。

 

 

3.最後に

ますださんを臭いと感じる人たちが上司に訴えた背景については、ほかにも、様々なことが、もとの匿名ダイアリーに書き込まれていました。その真相は分かりかねますが、今回のニュースの報道内容、および、上記で紹介した植物学者による嗅覚の個人差、アレルギー反応といった話から、ますださんを臭いと会社で言う人たちがいる背景には、以下の可能性があり得るのでしょう。

  • 人はストレスを感じると、ネギやニンニクのような臭いを発することがあるということ
  • その「ストレス臭」に敏感な人たちがいて、(知らないうちに)アレルギー(のような)反応を身体がしてしまう、あるいはその臭いを不快に感じて無視できないことがあること

 

ニュースは、「資生堂では来年ストレス臭専用のにおいケア製品を発売する予定。」を伝えております。この一報を見て、非常に困難ではあるでしょうけれど、現代日本のストレスの人間にとってストレスの多い生活を改善することが、いちばん「ストレス臭」を消すのに効果があるんじゃないか、と思いました。そう考えると、今回のニュースは、けっこう、我々にとって根深い問題に感じられるのではないでしょうか。

 

おしまい。

 

 

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