1993、中国は華南を行く~星野博美『謝謝!チャイニーズ』~
「あなたたちの考えること、教えてくれませんか?」
私が「中国」に魅せられ、「中国」に関わってしまった理由は、この一言に尽きます。
同じように思い、「中国」を定期的に訪れるようになった写真家。
今回はそんな人のノンフィクション↓
:ここで紹介した星野博美の処女作。
1993年の中国南部、ベトナム国境から上海まで華南地方を長距離バスで走る。福建省から台湾国境の島々へ船で向かう。改革開放の波に翻弄されながらも力強く生きる人々との一瞬を書き綴っています。
世界のあちこちに出稼ぎへ行く人でごった返す。そんな福建省長楽で出会った林宝珍との縁は「終章 東京」、そして『転がる香港に苔は生えない』と繋がっている。「新華僑」の動きも見られるので、「文学に見る在外チャイニーズと中国語圏の現代史」で紹介した作品と読み合わせると、中国語圏の情勢が分かるかもしれません。
星野博美が中国と関わるようになった切っ掛けは「はじめに」参照。
大学在学中、留学先の香港を拠点に中国へ足をのばすようになった筆者。
「深入りすると面倒なことになりそう」な中国をこのように言う。
自分にとって中国は、ふたことめには「俺に惚れるんじゃないぜ」とおどけてみせる、下手に首をつっこんで人生を滅茶苦茶にされたくないような、本当は好きなのに惚れるのが怖い不良男のようだった。
ところが世界じゅうどこへ行っても、「中国人」は執拗に私を追いかけた。
どこへ行ってもいた中国人の包容力を気に入った写真家は、謎を解くべく、旅に出たという。
ほか、改革開放が始まって以来、中国全土に広がったであろう闇と光、当時の中国の抱えていた情勢、失われてゆくものとの結びつき…。
などなど、1993年は2010年の中国の前進であることが分かります。
書ききれないことがあるくらいの440ページ!
一読して、筆者の得た答えに唸ってみてください。