仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

文系の中の地理学~理系寄りの特徴とその接点、および教員免許の話を少し~

数日前に書いたのが、下の記事です。

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

理系の中で文系寄りの地学。その裏側に位置するのは、何の分野か?答えは、同じく名前に「地」の漢字が入る学問、地理学です。文系分野の中でも、言語学、心理学、考古学等と並んで数字を扱う分野です。特徴を挙げていくと、地学で紹介したポイントと逆の位置に当たるところがあり、まさに「文系の中で理系寄り」で地学の対極にある分野と言えそうでした。

f:id:nakami_midsuki:20160903030918j:plain

 

院生時代、私のいた研究室の「文系棟」には、地理学系の研究室の固まり=地理学講座(講座は同じ分野の研究室の集まった大学院内の部局単位)がありました。この講座には私と同年度入学の院生が多く、共通の講義を取っている人もいて、お互いの研究室を行き来したり、ゼミが一緒だったり、先の地学研究室とは別の意味で、身近な存在でした。

 

そこで、今回は文系の中では、理系寄りのポジションにあり、特徴については、実際に理系の地学とセットで語られることの多い地理学について、取り上げます。

 

なお、本記事の見出し構成は、先の地学の記事と同じような構成となっております。地理学に関しては、学部時代にカリキュラムの関係で、いくつか授業をとっていたこともあり、多少は地理学専攻の人に近い位置から話せるかと思います。しかし、私自身は地理学の専門家ではありません。その点について、ご了承ください。

 

それでは、地理学とは何ぞや?というところから、話を始めましょう。

  

〈今回の目次〉

1.地理学はどんな学問分野なの?~身近な地理学講座を例として~

地理学と一口に言っても、切り口は様々です。便宜上、ここでは学部時代、私が地理学の入門授業で教わったことをもとに、地理学を大きく2つのグループに分けてしまいましょう。

 

まず、自然環境の成り立ちを扱う自然地理学があります。もう一つは、自然環境によって異なる地域ごとの人々の営みを、人間の移動(移住等)や歴史学民俗学等の視点から分析する人文地理学です。前者の自然地理学は、より地学に近い位置づけにあり、地球の火山や地震による大地の変化、流氷や海洋の波の動きといった自然の変化に伴い、地形がどのように変化するのか、変化してきた結果、どんなことが起こったのかということを追求します。後者の人文地理学は、風土と結びついた人間の有り方に注目し、人文科学の様々な観点から、経済活動や文化的事象について明らかにしていきます。前者が、自然に目を向けているのに対し、後者は人間に注目していると言えるでしょう。

 

ちなみに、自然地理学は地学や地球科学と非常に近い扱いをされ、特に東日本では、理学系の大学学部・大学院において、自然地理学で扱う分野は、地学や地球科学に授業が入っていることがあるそうです。人文地理学のほうは、文学部や人文学部等の文系学部・文系大学院の中に「地理学専攻」として設置されていることが多いそうです。特に、西日本では、自然地理学も人文地理学も「地理学」にまとめられ、文系学部・文系大学院の中に位置づけがなされている傾向があるそうです。

 

さて、ここからは私の身近にいた地理学講座で行われていた研究を、具体的に紹介していきます。だいたい皆さん、人文地理学に入るテーマで研究していました。

同期の井東さん(仮名)は、江戸時代後期、主に幕末の頃、地方から京都へ旅する人々の「京都」のイメージを当時の旅行手引き書、絵地図から読み解く研究をしていました。旅行を扱い、古地図を元にして、旅人が利用していたルートを分析しており、区分としては歴史地理学に入るようです。

もう一人の同期・下山さん(仮名)は、現在の日本の行政区分である都道府県制がいつからあるのか、議論の始まりから明らかにしようとしていました。英語の¨Prefecture¨が日本語に導入された経緯を調べ、中国の郡県制との関係に頭を突っ込み、廃藩置県の変遷まで幅広く考察し、修士論文に仕上げたようです。こちらは、本人が行政地理学に入ると言っていました。

一学年上の田口さん(仮名)は、大学のある市町村の特定のエリアを対象に、書店と図書館それぞれを利用する人の年齢層、エリア内の教育施設や企業、役所、学校や大学といった日中の移動人口を計算し、それぞれの立地によって書店と図書館は競合し得るのか、否かという研究をしていました。おそらく、田口さんの研究は、経済地理学に分類されるんではないでしょうか。

 

以上3人の人たちは、その他の人文科学の要素と地理学がくっ付いた研究テーマです。歴史地理学の井東さん、行政地理学の下山さんは、古い絵地図や都道府県制に関する公文書などの文献の所在が分かると、出かけて行ってはコピーやスキャン、できない時は手書きで文献を写す、といった地道な作業を調査としていました。経済地理学の田口さんは市町村の歴史について文献を調べていたようですが、どちらかというと、書店や図書館の職員や顧客、利用者にアンケートを取るのがメインで、心理学や教育学、社会学に近い手法をとっていたようでした。

3人に共通することといえば、調査や学会大会の時期が来ると学外に行っている時間が長くなり、研究室にいない日が続きました。もし、私が彼ら彼女らに用事があって訪ねても、捕まらないことが多かったように思います。また、田口さんのようにアンケート調査をする研究を先輩がしていると、その手伝いに後輩がよく駆り出されます。アンケート用紙を冊子状にまとめて(田口さん曰く、学校教員の間では「草取り」という)ホチキスで綴じたり、調査対象の書店や図書館の人たちに配布して記入をお願いしたりと、研究室の後輩全員が動員される時もありました。

 

こういったフィールド分野に入る学問には、文系分野だとアンケート調査やインタビューを行う心理学、教育学、社会学、それから家政学も一部、入ります。うちの研究室には、教育学と住居学の重なるところをテーマにしていた人がいて、アンケートの「草取り」は手伝っていました。

 

学会やシンポジウムについては、地学を含む理系ほど頻繁には出席して発表するということはないようです。特に、同期2人の研究は、文献の内容を解釈し、他の知識とその解釈の蓄積により、分析を進めていくタイプ。論文を書くには時間をかけ、考えを「熟成」させていく研究であり、年に何回も発表報告ができるタイプではありませんでした。

一方、田口さんのようなアンケート調査を行い、そのデータに統計処理を施して結果を分析する研究は、調査の回数が多ければ、学会やシンポジウムで定期的に発表できるタイプの研究だと思われます。その合間に、田口さんは地元のNPO自治体の会議に呼ばれて発表する機会もあり、現場に調査結果を届ける活動をしておられました。

 

 

まとめると、身近な人文地理学の研究をしていた院生の人たちは、研究室にいる時期といない時期のメリハリがはっきりしており、特にアンケート調査がメインの人がいると周りのサポートせざるを得ない研究もありました。地学ほどではないでしょうが、歴史や文学の分野に比べると、特に田口さんのようなテーマの人は、忙しい時期だと、一週間の大半は学外に出ているイメージです。

 

また、自然地理学では、砂漠の環境変化と農業をテーマにしていた地理学講座の先生がおられました。その先生は、夏休みや春休みには中央アジアに行き、現地でいろいろ写真を撮り、GPSで出てきたデータと比較するといたこともされていました(PCで特殊なソフトウェアを使うらしく、修士課程の入門講義で説明されても、私にはちんぷんかんぶんでしたが)。

 

この先生の自然地理学、田口さんの経済地理学のように、GPSでとったでデータや、アンケート調査の統計をもとに、地理学では研究を進める領域もあります。地理学は、自然地理学と人文地理学と大きな区分はありますが、数を扱う分野として見ると、文系の中では理系寄りということができると思います。

さて、次は地理学と理系の接点を具体的に見ていきましょう。

 

 

2.接点ポイントその1:理系の人にとって勉強しやすい科目

上にリンクを貼った地学の記事では、大学受験のセンター試験を考えると、文系の受験生にとって、暗記する内容の多いと思われる地学は、理科の選択科目として得点するのに有効だという話をしました。それはつまり、理系の受験生にとって、センター試験で有利になる社会科の科目とは地理ということになります。はい、これは本当です!

 

院生のころから、高校の社会科講師をしていた田口さんによると、文系科目の社会科で理系の受験生がセンター試験で選択するのは、地理が多いそうです。

ちなみに、田口さんは修士修了間際まで内定が決まらず、修士2年の秋、いくつかの自治体の教育委員会に講師登録をしたら、その一か月後から各自治体の学校(公立・私立の両方)から何件か電話があったそうです。「理系クラスのセンター対策で地理を教えられる先生を探しています。うちに来ていただけませんか?」という話も出ていて、田口さん曰く「地理を教えられる社会科教員は需要があるのでは?」とのこと。

 

理系の受験生がセンター社会科で地理を選ぶというのは、次に紹介する地理の参考書

にも書いてありました。

 

 オキテ第32条「文系的な力と理系的な力、どちらが必要?」の冒頭には、

 社会科といえば文系科目なんだけど、センター地理は理系の子が多く選択するんだ。

とあります。ということは、地理が理系の人にとっては勉強しやすい科目であることは、事実だと言えそうです。この参考書の続きには、

 そんなことから、「結局、地理って文系の力がいるの?それとも、理系の力がいるの?」という質問が発生してくる。

 お答えしましょう!

 ひと言で言えば「両方の力」です! 

と著者の森先生は書いています。どういう具合に理系と文系の力が必要なのか?例えば、地理では、特定の地形を理解しようとすれば、イメージを図にすれば、簡単に理解できます。しかし、地理の試験の問題文や教科書の文章は、説明を読むと小難しく聞こえます。そこで、地理で地形を理解するには、本書の第32章では

・図やイメージを文章にする

 →文系的な力

・文章からイメージや図を構築する

 →理系的な力

 という、両方の力が求められます。また、大学の一般入試や二次試験によっては、論述問題で文章を使って説明できないといけません。元は図でイメージ的な理解できていても、文章に表現する力がなければ論述問題では解答できないので、こういった力は、大学入学後、地理を専攻した人が論文を書いていくにも必要だと思われます。

 

この参考書によれば、地理の学習には、中学生レベルの社会科の歴史や公民のほか、理科(2分野のほうの天文学や地学)の知識が役に立つそうです。そういった観点から考えると、やはり理系の人にとって、地理は勉強しやすい科目だと言ってもよいでしょう。

さらに、森先生が参考書で言うように、理系と文系の両方の力が求められるということから、地理、そして地理学は文系の中でも理系と接点を持つ学問分野とも捉えられると思いました。

 

 

3.接点ポイントその2:その他の文系分野より就職が比較的しやすい

 昨今、文系の中でも、法律や経済に関する高度な専門資格を取得した人でも、有資格者が飽和状態となり、就職しにくくなってきている―。そういう話は、身近でもよく聞きます。新米弁護士の奮闘を描く漫画『そこをなんとか』(麻生みこと、花とゆめコミックススペシャル)の1巻によると、司法試験合格者を国の方針で増やした結果、主人公たち新米弁護士も就職先を見つけるのに苦労している様子が、描かれています。

 

それでは、地理学はどうなのでしょうか?結論から言うと、少なくとも、哲学、文学、歴史学民俗学、宗教学といった文学部に設置されていることのい多い分野に比べると、潰しがききやすいので、就職の幅は広いようです。

 

 3-1.地理学講座の人たちの進路

地理学講座の同期たちの就職先を見てみると、歴史地理学の井東さんは、学会の伝手で地方の民俗博物館の採用試験を受け、合格後、修士卒で常勤の職員(正規ではない)をしていました。大学院まで、博物館や美術館などの専門職・学芸員の資格は取っていなかったそうですが、一定年、そこに勤めると、「学芸員補」の資格を得ることができ、学芸員の資格を得るチャンス(試験認定だと4年以上、審査認定だと8年以上)があるそうです。その後、博物館を経営していた法人が財政難でリストラされ、転職活動を経て、現在は都内の中高一貫校で社会科の専任教員(正社員に相当)をしているとのこと。

行政地理学の下山さんは、地方公務員試験を受験し、修士卒の学歴で、大学院のある都道府県で職員をしています。専門だった行政地理学のことを考慮されたのか分かりませんが、観光事業を盛り上げるための条例案を作ったり、他の都道府県の地域連合の仕事に関わったり、数年単位で部署を異動しながら、様々な行政の仕事をしているんだと聞いています。

 経済地理学の田口さんは、修士終了間際、ショッピングモールを経営する企業に内定が決まり、現在は、その企業で新規出店のための調査、マーケティングの部署にいるそうです。入社して2年後には一時期、同じ系列のコンビニチェーンでスーパーバイザーをしていた時期があり、店舗を回って一店一店の状態を把握する業務をしていて、体力的・精神的に大変だったそうです。

 

さて、ここからは、それぞれの人たちの就いた職業や進路について、解説したいと思います。

下山さんの地方公務員は、ここ数年では文系の修士卒でも年齢制限内であれば、受験する人がけっこういます。京都市等では、大卒以上が受験する「地方上級」の上に、院卒資格で受験できる「上級Ⅱ」といった枠を設けているところがあり、 さらに採用する人材の幅が広がってきている模様です。なお、受験科目については、行政や経済、法律に関する科目があり、法学研究科、経済学研究科、公共政策研究科といった実学系の大学院生には有利なようです。下山さんは行政地理学の授業を一部、受験科目の勉強とし、ほかは学内の公務員対策講座に通って勉強していたそうで、今聞くと、なかなかハードだったとのこと。

 

田口さんのほうは、経済地理学という分野と少なからず、接点のある企業や部署でした。新規出店やマーケティング、開発部といった部署では、出店する場所を考える際、地理的な条件、地域ごとの年齢層や購買の傾向といったデータを集める仕事があります。田口さんが大学院でやっていた調査方法とも重なっていました。経済地理学のほか、政治学や経済学、社会学といった大学院で、街に出てアンケート、時間帯による人口の動きといったリサーチをしていた院生だと、一般企業のマーケティングや開発部門、それからコンサルタント業やリサーチ会社に就職している傾向が見られます。

 

 3-2.井東さんの進路:民俗博物館→学校教員と中高社会科の教員免許の話

最後に、民俗博物館から転職して学校教員となった井東さん。まず、博物館の職員になるには、伝手がないと、求人自体の情報が手に入らないことがあります。伝手があって、たとえ臨時職員の枠に応募できたとしても、最近は修士卒以上(博士卒の人もザラにいる)で、研究の関係で実務経験を伴っている人も多数応募してくるため、人脈と実力以上に採用側に引っぱってもらえる「何か」がないと、就職は非常に難しい。運よく臨時職員に採用されても、運営側の経済状態によっては契約を切られ、失業することもあります。実際、井東さんもリストラされました。

 

ここで、伊藤さんの次の職が決まったのは、中高両方の社会科の教員免許(一種)を持っていた上、歴史地理学という、社会科を教えるのに向いた研究をしていたことが大きかったようです。実は、中高の教員免許の社会科とは、文系の学部・大学院では、取得可能なところが多く、教育学部のほか、法学部、経済学部、文学部、社会学部等の教職課程が受講できます。学生は、法律で定められた授業科目の単位を取得し、いくつかの実習(中学校だと介護等体験と教育実習、高校は教育実習のみ)を終えると、教員免許の申請を都道府県の教育委員会に行い、認定されると教員免許を晴れて取得。国語や英語の科目よりも、教科に関する必要な授業科目数が多いのです。ややこしいことに、高校の社会科では、地理歴史と公民の2つの小科目の免許に分かれていて、その分、必要な科目単位数も多いため、毎年、脱落者が出ています。

 

さて、社会科の教員免許は、文系学部の中でも取得可能な学生の数が多いわりに、国語や英語に比べて公立・私立ともに採用者数が少ないのが現実です。取得に苦労する割に、競争率が高いのが社会科。そのため、職を得やすい「保険」として、文系院生の教員免許取得者は、小学校の免許と中高の社会、あるいは高校の英語・社会といったように、異なる校種の免許を複数所持、あるいは同一校種の別教科の免許を複数所持している人が、よくいます。

 

 井東さんの場合、文学部に進学後、院卒で就職がなかった時の「保険」として、中高の社会科免許を取得しようとしました。ややこしいことに、井東さんの学部では、中学の社会科、それから高校の社会科の片方・地理歴史=地歴の免許は取得できるものの、もう片方の公民の免許はカリキュラム上、取得できませんでした。ここで井東さんは教職支援課に行き、特別申請をして、法学部と経済学部の授業単位を取得し、高校の公民の免許も取れるよう算段して、中高の社会科だけですが、すべての教員免許を取得しました。

 

 大学院入学後、井東さんは縁に恵まれ、中高での出前授業をする機会をもらい、最初に就職した博物館で解説の仕事をしていたこともあって、どんな人の前でも専門的なことを分かりやすく、しゃべって伝える「訓練」をしていました。一般人の人が食いつく話題についても把握していたことは、転職先で中学生、高校生に対して、授業に興味を持たせるという意味で、非常に役に立ったと聞きました。

 

また、地理を専攻していたことも、井東さんの転職には有利にはたらきました。「2.接点ポイントその1」で触れたように、高校の理系受験生にはセンター試験で地理を選択する人が多いのに加え、文系の高校生には社会科で地理を選択する生徒も一定数、存在します。実際、求人では地理を担当する人材を採用側が欲していたこと、井東さんが専門で地理の研究をして人前で喋る経験を積んでいたことが、この人の学校教員への職に結びついたのでしょう。

 

 3-3.小結

以上のように、身近な例だけの紹介となりましたが、文系の中で地理学を専攻した人は、公務員、会社員、そして学校教員として就職しています。補足として、大学教員のポストの話を加えておきましょう。

 

田口さんの先輩に当たる原田さん(仮名)は、博士号を取得後、大学と高校で非常勤講師をしながら、研究機関で職を探して関西の国立・私立の大学で転職を繰り返し、今は某公立大学で専任講師(任期なしの正規職員)をしています。博士号を取得してから、約10年で専任講師になれたのは、ちょうど、人文地理学の人材が足りなかった関西で、原田さんが苦労しつつ、伝手と業績を作っていたことが功を奏したからだそうです。原田さんが大学教員の正規職を得られたのは、人文地理学専門の人が関西で少なかったというタイミングに当たったという、運のよさもあったようです。

 

説明してきたように、地理学は、哲学や文学、歴史学民俗学といった文系分野よりは、少なくとも就職しやすい分野だということが分かりました。その就職のしやすさ、潰しの利きやすさは、一般的な理系での就職のしやすさに通じるところがあると思います。

 

 

4.まとめ

今回、文系の中でも理系寄りの分野として、身近な地理学講座を入口にして、地理学の内容を見て、その特徴を挙げて説明しました。その次に、実際に理系との接点について、内容を整理すると、下のようになります。

 ・理系の人にとって勉強しやすい科目であること

  :センター試験で理系受験生に地理が選択されることが多く、

   その学習には文系と理系の両方の力が求められる)

 ・その他の文系分野より就職が比較的しやすいこと

  :公務員、会社員、そして学校教員として、就職した人が地理学講座にいた。

   ・公務員・会社員は、文系の法律、経済等の実学系と同じ業界に行く傾向あり。

   ・学校教員については、中高の社会科教員免許だけでは、他科目より競争率の

    高い社会科教員の採用試験には苦しい。

    だが、地理を教えられる人材に需要がある学校を狙い、授業ができる経験を

    積んでおけば、採用に繋がることもある。

   ・大学教員のポストは、人文地理学の人材が少なかった時期の関西に狙いを

    定め、努力をして採用をゲットした人もいた(が、今はどうかは不明)。

 

理系では文系寄りの場所にある地学と比べると、①文系の中では理系寄りの位置にあり、②理系の人には勉強しやすく、③その他の文系分野より就職が比較的しやすい、といった地理学について、私は地学の真逆に当たる分野という印象を受けました。

 特に、学校教育の現場での需要、教員として就職しやすい・しにくいという点では、「需要がほとんどなく、教えられる人も求められない」という地学に対し、「探せば需要があり、教えられる人がある程度は求められる」という地理学は、まさに状況が対極にあると言えるのではないでしょうか。 

 

もし、本記事を読んでいる人がいて、理系とも文系ともバランスのよい成績をとっていて、「地」に関することを学びたいという人は、いるでしょうか?そして、理系学部の地学にするか、文系学部の地理学にするか、進学で迷っている人も、出てくるでしょうか?そういう人がおられたら、将来、進みたい業界や職種を決めておいてから、更に大学院に行くか否かまで視野に入れた上で、

 ・期限(学部卒、修士卒までなど)を設けて、その間だけは存分に好きな地学、

  もしくは地理学を学んで研究すると割り切る

 

そうやって覚悟を決めた上で、進路を決めるのもありだと思います。その際、ここのブログ記事だけでなく、実際の大学の研究室に行ってみて、学部生や院生に直接、話を聞いてみるとよいでしょう。それが難しいようでしたら、志望大学の地学や地理学の専攻、研究室のサイトやフェイスブックページでメンバーを調べ、インターネット上で研究論文や発表報告ほか、研究生活の分かる生の「つぶやき」や「コメント」にアクセスして、できる限り、現実的な状況を把握するようにしてみてください。

 

*追記.学校教員の免許取得について

最後の最後に、学校教員の免許取得について一言。

 

教員免許は現在、この国の教育政策の元締めをしている部署や議会の方針で、取得が大変困難になってきています。単に就職先が見つからなかった時の「保険」として、教職課程を受講すると、肉体的・精神的にも死にます。先日、井東さんとと二人で会ったら、「あの頃の教職の授業課題は死にそうだった」と、教職課程を振り返りました。実際、私は潰れました。今は、その時よりも必要修得単位数が増えていて、ひとまわり学年が下の後輩たちはしんどそうです。

 

それでも、大学院、特に博士課程まで行こうと考えている人がいたら、理系(特に地学、生命科学、数学といった「それ単体では就職が難しそうな」専攻)、文系関係なく、中高の教員免許の取得をしましょう。「転ばぬ先の杖」として取っておくと、井東さんのように就職に結びつくことがあります。また、言い方は悪いですが、原田さんのように目指すポストを得るまでの「つなぎ」として、生活していく収入を得る「カード」の一枚にもなります。

 

教員免許は取得まで、時間も手間もかかります。でも、博士課程に進学してから、基本的な在籍年限である3年以内にジャーナルに3本の査読論文を掲載させ、博士3年目の冬から春に博士学位を取得して、その後に研究機関に非常勤でも職を得るほうが、もっと困難です。それから、いずれ研究職に就くと、プロジェクトのために研究内容を分かりやすく、その専門ではない人にもプレゼンしなければいけません。そういう意味で、人前で自分の専門分野の説明をする技術を学ぶという側面において、教職課程を取ってもよいと思います。

詳しい事情は、また記事を別に立てるつもりでいますが、大学院で博士号取得を目指す人にとっては、学部時代から教員免許を取得しておくことは、何かしらの役には立っても、無駄にはなりません。

 

長くなりましたが、以上で本記事の話は終わります。ここまでお読みいただき、心からお礼申し上げます。お疲れ様でした。

↓いいね!だったら、ポチッとお願いします。

にほんブログ村 大学生日記ブログ 博士課程大学院生へ
にほんブログ村