仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【'18.3.25_0245更新】大学院に行きたいと思ったら身に付けるべき学力のこと~その2:専門科目編+院試全体の流れ等の補足~

1.はじめに~シリーズの紹介~

naka3-3dsuki.hatenablog.com

「大学院に行きたいと思ったら〇〇べき」シリーズの学力の章で、前回の「その1:語学編」では、主に文系大学院の修士課程の院試で課される外国語の学習法に焦点を当てました。今回は、修士課程の院試の専門科目の勉強の仕方について取り上げます。

 

これから、卒論生は本格的な執筆シーズンに突入してゆきます。卒論提出後は、冬季の院試に向けた勉強の再開、書類の手直しが待っていて、「勉強の牢獄に入れられた囚人」のようにハードだと思いますが、一度、この記事で勉強の仕方を見直してもらうのもいいでしょう。また、就活しようか、院試を受けようか、迷っている学部3年生には、これから戦略的に院試の専門科目を勉強していく情報の一つになるでしょう。

 

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どちらの方々にとっても、本記事が少しでも参考になれば、幸いです。それでは、本題に参りましょう。

 

 

2.専門科目の位置づけ

まず、院試における専門科目の位置づけを確認しましょう。大学院に入学後、新入生を待っているのは、授業に出て研究の進捗発表をし、その報告を文章にまとめていくことです。その研究活動には、修士論文や投稿論文を書くための分野ごとの学術的な知識および知識を体系化したもの=脳内の知識ネットワークです。大学院は大学学部より専門的でアカデミックな授業が多数開講されており、なかには内容レベルが学部の授業よりも段違いに難しいものが存在します。

 

大学院で開講されている授業は、院生が思考し、論文の構想を作る土台となる様々なものを提供してくれます。そういうわけで、新入生の目標は大学院の授業内容にある程度、ついていけることでしょう。修士になりたてのころ、私が受けた授業には美学に関するチンプンカンプンなものがありました。

それでも、授業に出てくる分野ごとの学者や思想家の名前、専門用語くらいは入学前までに知っておかないと、入学後、真面目な院生は知らなさすぎに気が付き、精神的に苦しむことになるかと。

 

基礎知識のない院生に対し、当たり前ではありますが、先生方は一から授業内容を説明するのは苦痛でしょうし、授業を進めるには合理的ではありません。そういうわけで、「修士課程に入学するには、うちの大学院の研究科や学府では、こういう基礎知識のある学生が欲しい」という、大学院の求める具体的な基礎知識を持った人を選抜するのが、院試の中の専門科目の位置づけです。

 

 

3.専門科目の勉強方法('18.3.25_0245更新)

 3-1.まず専門科目の出題内容を過去問で確認する('18.3.25_0245更新)

大学入試と同じで、まずは傾向と対策を立てるべく、過去問を確認しましょう。過去問の入手方法については、「その1:語学編」に書いたとおりです。

院試の過去問については、別の記事を立て書くことになるかと思いますが、ここで簡単に書いておくと、だいたい、大学院と提携している大学図書館に過去数年分はファイリングされています。志望先が大雑把にしぼれてきたら、その各大学院の提携大学図書館のサイトを見て、案内を読み、長期休みや学会参加を利用して行ってみて、入館手続きをし、閲覧するのもよいでしょう。だいたい、どういった科目が出されるのか、予想ができます。

書き忘れていましたが、過去問は必ず、コピーして持って帰ってくださいね。

 

('18.3.25_0245更新)==================================================

なお、次のブログ記事によると、近年では大学院によって、オンライン上に過去問を公開しているところもあるようです:

www.makoto-sencho.com

の 志望校の専門試験・論述試験の過去問

 

少し検索したところ、確かに一部では、大学院のサイトで院試の過去問を公開しているところがあるようです。以下は、参考ページになります↓

www.daigakuten.com

 

「大学・大学院展」は、私が学部生の時代から、院試の情報を集めるのに利用していたところで、資料請求もできました。タイムラグはあるかもしれませんが、そこそこ、情報収集には役立つところです。

 

そこの大学院ごとの過去問公開状況の一覧を見たところ、筑波大学の多くの大学院の部局(研究科)、名古屋大学上越教育大学等の一部の大学院の公式サイトで、過去問を公開しているとのことでした。

東京大学千葉大学等では、大学図書館等の学内施設、研究科の関連機関への請求手続きを経て、院試の過去問を入手できる部局が、依然として存在するようです。

 

院試の過去問を入手したい方は、上記の一覧に加えて、ネット検索を駆使し、色々と調べてみてください。

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補足的なことを書くと、大学院の特定の研究科・専攻や専修によって、数年連続で受験者がおらず、過去問自体が存在しないことがあります(執筆者は経験済み)。じゃあ、どうしたらいいのかというと、志望大学院の教員についている院生と仲良くなり、過去問について教えてもらったり、勉強につかったノートをコピーしたり、します。

ただし、大学院の先生によっては、受験生=読者のあなたが試験勉強をしようとしている段階で、指導対象の院生がいない=過去問や勉強法について質問しやすい人がいないことがあります。ちなみに、執筆者が受験した大学院研究科の専攻の院生は、尋ねた8~9月に教育実習や海外調査等で全員、研究室には不在でした。

 

そんな場合は、どうしたらいいんでしょうか?多少無理をしてでも、志望する教員の授業を受講してみましょう。

 

 3-2.志望する教員や大学院の部局の授業を受講する

大学院に行きたいと思ったら見極めるべきこと~指導教員の選び方について:主に文系向け~ - 仲見満月の研究室

↑上の記事に書いたとおり、受験した大学院の一つは、たまたま、私が通っていた私立大学の学部と自転車やバスで片道一時間以内のところにありました。今よりも向こう見ずで、マッチョな思考をしていた私は、この大学院の志望教員の授業を受講してしまえ!と考え、次のような手段に出ました。

私の場合は、学部3年次の時、たまたま面白そうな先生の授業が、学部のある大学から公共交通機関で片道1時間以内の大学で開講されるという情報を、大学連携単位互換講義というシステムの掲示板でキャッチ。履修登録後、受講したら、自分の関心に刺さる感じの内容だったので、作った名刺をお渡し。それ以降、「ストーキング」を重ね、卒論を書く4年次の前期、その先生の大講義にもぐりこんで、その先生の人柄をTAの方々との関係を見つつ、人間性や研究室の院生たちとの関係を観察しました。

アンダーラインのところ、重要です。寛容な人たちが職員さんにも多かったところでした。「〇〇先生の△△学概論はどの教室で開講されていますか?」と、その大講義を統括している事務室に行き、自転車をかっ飛ばして来て、息も絶え絶えの怪しい他大学の学生に、開講教室を丁寧に教えてくださいました。半年、その先生の大講義を受講する中で、TAの方々とも仲良くなり、面白いのは先生だけでなく、どうやら、大学院の属する大きな大学組織自体が、ヘンテコなところだと認識するに至ったのでした。

 

ちなみに、この大講義は学部生の教養科目に入るタイプの授業内容。ただし、出てくる用語は志望先の部局では、重要なものが沢山出てきたので、配布されるプリントと、持参したノートにメモをしまくりました。あと、どうでもいい情報として、時期的にサークル勧誘のチラシが大講義室にばらまかれており、先生の説明をメモるのに忙しい時は、チラシを拾っては、裏面の空白スペースに書いていました。

その他、学部と大学院の合同授業をやっているところもあり、学部から大学院への学術レベルの橋渡しをするような内容を伝える目的で開講されている科目もありました。

 

以上、志望先の授業を受講することについて、書きました。開講されている授業を選ぶポイントとして、

 ①学部生でも理解できる基礎レベルだけど専門用語が出てくる内容の講義

 ②学部と大学院の合同授業

のあたりに注意して、もぐって受講するといいかもしれません。

 

もし、住んでいる場所と志望大学院が遠距離なら、アポを取ってから長期休みに志望する教員の先生に会いに行き、授業内容や勉強の仕方を相談してみるといいでしょう。

 

 3-3.自習方法

過去問で得た出題傾向、およびもぐって得た授業内容を、試験に生かすため、どうやって知識を脳みそに定着させたらよいのか。ここでは、その具体的な勉強方法として、情報のまとめ方を紹介します。

 

〈筆記用具に加えて準備するもの〉

↑いわゆる「キャンパスカード」の一種。

 ↑情報カードをまとめて収納しておくファイル。

 

 

  ①専門用語を専門の辞典や概説書で調べて、情報カードにまとめる

私が受験したところの一つ・東洋学専修を置く大学院では、東アジアから東南アジア、南アジア、中東やイスラーム圏まで含む先生方が教鞭をとられていて、専門科目の出題範囲が地域的・時間的にも幅が広かった。しかも、大学の学部レベルの知識が要求されるため、ギリギリ、高校世界史Bの用語集が使えるくらい。

困っていても時間は経つだけだと思い、まず過去問の問題文に出てくる歴史的出来事を大学図書館に行き、次の辞典シリーズを引いて、地域ごとの出来事やそれに関わった人物を調べ、出来事や人物につき1枚ずつ情報カードに書き写していきました。 

新版 韓国 朝鮮を知る事典

新版 韓国 朝鮮を知る事典

 

 

東南アジアを知る事典

東南アジアを知る事典

 

 さらに、出来事の項目について、詳しい人物関係や時間の流れの説明が必要な場合は、上の「知る辞典」に載っていた概説書を読み、その中の説明を情報カードに書きだしました。

  

  ②記入済みの情報カードを持ち歩き、暗記していく

過去問の内容に合わせて、地域やジャンルごとにまとめてファイルを作り、どんどん、記入済みのカードを蓄積していきます。そこで満足せず、持ち歩いては図書館や自習室でファイルを開いて、カードの項目下の説明欄の中の重要語に番号をふり、オレンジのペンで書き直し、かっこで括って、上から赤シートをかぶせて加工。加工した情報カード自体を問題集に見立てて、専門用語およびそれに絡む出来事の順序を覚えました。 

ポイントは、B6サイズのファイルだと小さいので、さっと取りだせて、バスや電車の待ち時間にも見て、勉強ができるところです。

 

 

4.まとめ

 専門科目の勉強の仕方について、いろいろと書いてきましたが、全部、アナログ!情報カードに説明を書いていく時くらい、Wordを使ってもいいかと思いました。実際にやってみると、当時使っていたプリンターがB6サイズに対応しておらず、しょうがないのでB5サイズの紙に印刷後、それを半分に切って情報カードに貼り付けておりました。

「Wordとプリンター使う方が、面倒くさい!」ということで、結局、アナログな手書きに落ち着いたようです。手書きの方が、私は暗記しやすい人でもあったようですし。

 

ここで紹介した方法は、我流です。院試勉強をされている方々には、やりづらいところもあると思いますので、各自、アレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

 

5.補足:院試全体の流れや他に準備すべきこと('18.3.25_0245追記)

大学院修士課程の入試準備では、語学と専門科目の試験対策にくわえて、様々な準備が必要です。

例えば、院で受け入れてくれる研究室や、指導教員の候補の先生にアポをとって、受け入れや指導の相談を行い、受験の許可を取ること。

(こちら参照:大学院に行きたいと思ったら見極めるべきこと~指導教員の選び方について:主に文系向け~ - 仲見満月の研究室

入学後に進める研究の計画書や志望理由書等、卒業見込みの書類や願書と一緒に提出する文書の作成が必須!の大学院が多いでしょう。

(一部、研究の計画書や志望理由書が求められないところもあります)

 

大学院の受験準備から 院試当日まで、一連の流れと準備すべき事項については、次の別記事で紹介した社会人修士の方の体験記をもとに、整理してまとめました:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 の「3.大学選びから受験まで~第2章を中心に~

 

院試の受験資格を得る審査を除いて、学部卒見込みで大学院修士課程を受験する人にも、大筋で取り組むべきタスクと順番は共通しています。森井ユカさんのコミックエッセイを参考に、受験までのTo doリストを作って、どこまで準備できているか、まず、チェックしてみるのもよいでしょう。

 

大変だと思いますが、焦らず、対策をして院試にのぞめるよう、取り組まれてみて下さい。

 

おしまい。

 

 

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