【ニュース】「生活保護世帯 大学進学に給付金 厚労省検討」(毎日新聞)
16日の日曜日に、毎日新聞のオンライン版で公開されたニュースです:
毎日新聞2017年7月16日 06時30分(最終更新 7月16日 14時01分)
厚生労働省は、生活保護受給世帯から大学に進学した子どもに対する給付金創設の検討を始めた。併せて、子どもが大学生になると家賃相当の保護費が減額される仕組みも廃止する。経済的負担が進学を妨げ、親から子への貧困の連鎖を招いていると指摘されてきた。来年度からの実施に向け、年末の予算編成段階で制度設計し、使途や金額などを決定する。【熊谷豪】
私が驚いたのは、「併せて、子どもが大学生になると家賃相当の保護費が減額される仕組みも廃止する」というところが、まず一つありました。なぜ?実家の世帯から通うことになる学生もいるだろうに、どうして、このようなナンセンスなシステムがあったのでしょうか?
その謎は、毎日新聞の続きに書かれていました。
生活保護を受けながら大学に通うことは認められていない。大学に進学すると、子どもは同居していても別世帯として扱う「世帯分離」が行われ、親の保護費が減額される。東京23区内の母子3人家族の場合、生活費に相当する「生活扶助」と母子家庭への加算が計約4万4000円、家賃に当たる「住宅扶助」が約6000円それぞれカットされ、月額約22万円になる。
一方、生活保護世帯から独立した大学生は国民健康保険料を払わなければならず、新生活のためのお金もかかる。だが、アルバイト代など高校生の時の蓄えは受験料や入学金など使途が制限され、「卒業後への備え」は認められていない。
他のSNS等で、流れてきた新聞記事やタイムラインの投稿にも、制度上、生活保護を受給している世帯の子どもが、そのまま大学に通えない仕組みになっていることは、目にしていました。が、まさか、大学に通うためには、同居していても「世帯分離」までし、親の保護費がカットされなければいけなかったとは…。
月額22万円のカットの上、高校生の時の貯金は大学受験と入学金までしか使途が認めてもらえなくて、高校を卒業した後に授業料等の納付金を払うには、改めてお金を稼ぐ必要が出てきます。生活保護生態から独立したら、「大学生は国民健康保険料を払わなければならず」というのは、支払い猶予の制度も生活保護世帯を離れた大学生には適用されないというシステムだったんでしょうか。
入学早々、アルバイト漬けの生活を送らなければならず、授業にも出られないまま、大学を中退せざるを得ない。そのような、生活保護世帯出身の大学生、これまで、かなりの数、いたのではないでしょうか。つまり、生活保護世帯の出身者は、大学入学を諦めなさい、と制度上、 日本政府は言っていたように思えます。政府が生活保護世帯の出身者に大学に通うことを厳しくしているのは、次の段落にあるように、「保護を受けない貧困層との公平性などを考慮し」てのことだった模様です。
このため、進学意欲があっても経済的負担を考えて進学を諦めるケースがある。保護世帯の大学進学率は19%と全世帯の52%を大きく下回る。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」によると、大卒・大学院卒と高卒の生涯賃金の差は男性が約6000万円、女性は約7000万円に上り、進学が将来の生活にも影響を与える可能性がある。
支援団体などからは世帯分離の廃止を求める声が出ているが、厚労省は、保護を受けない貧困層との公平性などを考慮し世帯分離は継続する考えだ。ただし、同居を続ける場合、住宅扶助のカットをやめ、進学前と同額支給する。その上で、大学生が新生活を始めるための給付金を検討している。使途については学費は奨学金で賄うこととし、生活にかかる費用を想定している。
これからは、「同居を続ける場合、住宅扶助のカットをやめ、進学前と同額支給」し、「その上で、大学生が新生活を始めるための給付金を検討」。気になるのは、「使途については学費は奨学金で賄うこととし、生活にかかる費用を想定している」という部分です。
学費は奨学金で賄いなさい、と厚生労働省は検討しているようですが、2017.5.25_2303更新:ニュース】「大学授業料、出世払いで 自民教育本部が首相に提言」(日本経済新聞)+返済型奨学金や学費免除・学費自活の実例等まとめ - 仲見満月の研究室で書きましたように、給付性奨学金も現在の自民党内部には「大学の授業料は、出世払いにしよう」という案も出ております。
本ブログのあちらことらで、何度も言っておりますが、今の日本政府には、お金が本当にない。もし、あったとしても、大学をはじめ、教育のほうに使おうと考える人たちが国のリーダーにはいないように思われます。
生活保護世帯でなくとも、例えば、貧困世帯の出身者が高卒で働いたとして、「大卒・大学院卒と高卒の生涯賃金の差は男性が約6000万円、女性は約7000万円に上り、進学が将来の生活にも影響を与える可能性がある」ということが、上記のニュース記事で独立行政法人「労働政策研究・研修機構」のデータをもとに、指摘されています。なるほど、ネット上やTwitter上で、現在は大卒でやっと経済的に自立した個人の生活を送り、「人並みの生活が送れる」というのは、上記の生涯賃金の差を具体的な数字で見て、改めて認識致しました。
そして、貧困の連鎖を断ち切るためには、高卒で働く時期を挟んでも、様々なスキル記憶力や体力できるだけ若年のうち、大学に通って身に付ける。そして、大卒として働き出す、というのがベターだと考えてしましました。
ニュースの続きを読んでいきましょう。
政府は6月に閣議決定した経済財政の基本方針「骨太の方針」で、保護世帯の子どもの大学進学支援に財源を確保することを明記している。
【ことば】生活保護費
日常の生活費に相当する生活扶助▽家賃を支給する住宅扶助▽自己負担なしで医療機関にかかれる医療扶助--など生活に必要な費用を現金で支給したり、自治体が代わりに支払ったりする。金額は地域や世帯の人数・年齢で異なる。障害者や母子家庭などへの加算もある。
閣議決定では、「保護世帯の子どもの大学進学支援に財源を確保すること」が挙がっていても、他の与党内の議員や経済官僚たちと、どうやって意見をすり合わせていくつもりなのでしょうか。
返済なしの給付型奨学金、それから今回の生活保護世帯の大学進学に給付金が検討さていることについて、一体、国の中枢の方々は、どうやっていくつもりなのか。今後も引き続き、アンテナを張り、動向を見続けていこうと思っております。