ある理系院生のアカハラとの「たたかい」を振り返る~第一部まとめ~
<本記事の内容>
1.はじめに
先月から、お休みしながら、更新をさせて頂いております。
今回は、アカハラと戦い、その対策について、いくつかツイートのtogetterまとめを補足させて頂いた拙記事のツイート主・水無月さん。今まで、書かせていただものを、ざっと一覧に致しました。
- 「アカハラ相談をする時のポイント~学内のハラスメント相談室に持ち込んだ際に注意したこと~」(togetterまとめ)の補足 - 仲見満月の研究室
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【補足】「大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~」(togetterまとめ) - 仲見満月の研究室
次いで、6月にインタビュー記事が発表され、先月は、ご自身のTwitterタイムラインにアカハラの対処法に関するツイートがモーメントにまとめられていました。アカハラとのファイトが一区切りついたというこおで、本記事にまとめさせて頂こうと思います。
本記事のタイトルは、水無月さんのご要望で、「たたかい」を入れました。また、水無月さんの近況では、これまで弊ブログで取り上げた鳥取大学、先週更新記事の山形大学、大分大学等のケースで見たような、「申立て」が既に終わっており*1、そこから更に先のプロセスに移ってきているそうです。よって、今回はサブタイトルに「第一部まとめ」を付けさせて頂きました。
本記事では、まず、インタビューで水無月さんにあった出来事を振り返りながら、大学の自浄作用の低さの問題を見ていきます。その次に、学外の機関で水無月さんが利用されたところと、行われた手続きについて、紹介致します。
アカデミック・ハラスメントを断ち切ることに、少しでも悩んだり、苦しまれたりしておられる方に、役に立てば幸いです。
2.インタビュー「ブラックで済まされるアカハラ 大学の自浄作用の低さの原因は?」(『Lab-On』)
理系の研究分野のや院生向けのニュースを伝えるwebメディア『Lab-On』が水無月さんをインタビューしていました。まずは、このインタンビューを通じて、水無月さんに起こったことを振り返りましょう。
2-1.水無月さんのプロフィールと所属していた「黒いラボ」
最初に、水無月さんのことについては、「学年・所属」不明なものの、「工学系の研究をしている理系の学生」だったことが分かります。2016年末にうつ状態になって休学、現在、休学をしながら、他の分野のゼミや授業に出て、復学準備を進めていらっしゃるご様子が伝わってきます。
2016年末まで、積み重なったストレスに加え、休学のきっかけの一つとなったのは、次のメールでした。
実はこの忘年会メール、私は自分のTwitterのタイムラインで昨年12月ごろに見かけておりました。インタビューにあるように、幹事を務めたのは水無月さんの学年でしたが、「何かが教授の気に障ったのか、“有志忘年会"と称して」、当時のツイートでは水無月さんの学年が弾かれたように記憶しております。
忘年会や新年会、歓送迎会等では、研究室や講座(研究室が集まった単位の名称の一つ)のどこの範囲までメンバーに声をかけ、要望を聞いて、予算をどれくらいにするか。学生にはお金がないので、呼ばれた教職員さんに多めにお金を出して頂くことがあるので、私も経験があるのですが、幹事には人間関係や経済的なこと等を含めて、ものすごいプレッシャーがかかると思います。試行錯誤したセッティングの挙句、上のようなメールで自分の学年ごと、誘いのメール段階からつま弾きにされたら、たまったものではありません。
ところが、
「Bccで特定の人にだけメールを送る、または送らないということはよくあることで、これはまだ序の口だと思います。」
とおっしゃる水無月さん。彼が第一志望にした「理(不尽)系研究室」こと「黒いラボ」とは、一体、どのような研究室だったのでしょうか。
セクションの見出しを読むと、「第一志望の研究室はブラックで有名だった」とあります。事前に複数の研究室を見学後、最も興味を惹かれた「黒いラボ」を選んだ水無月さん曰く、
「同じ学科内ではその研究室がブラックだということは知られていましたが、指導が厳しいというイメージでした。今思えば青臭い発想かもしれませんが、厳しい環境を乗り越えてこそ一流の研究ができると考えていました。」
取材者のLab-Onの久野さんの書くところ、
研究室に配属される前、もしくは配属された直後はブラック=指導が厳しいという認識だったのだ。
研究室の構成は、水無月さんの学年は全員で5人で他の学年も3-5人程度。*コアタイム*2の縛りはなく、やりたい人は深夜まで実験をする。どこにでもある普通の研究室のように聞こえるがー。
確かに、ここまではよくある話に聞こえます。「そういうこと、あるの?」というお話は続きの水無月さんのご回答です。
「押し付けられる実験、学会のスライドづくりが多かったです。期限を設定されて、仮設(原文ママ)どおりの結果を出さなければ怒られます。忙しくて出来ないと言っても、企業との共同プロジェクトを勝手に登録され断れない状況を作り出されることもありました」
私も、似たような雑務、やりました。私のいた研究室は、人文系に足を突っ込んでいたこともあり、学会発表で使うPC・プロジェクタ入りカバン持ちほか、授業のスライド作りも、当たり前。詳細は、ティーチング・アシスタント戦記~授業の裏方を務める人々~ - 仲見満月の研究室に加えて、以下の2つをご参照ください。
「仮設(原文ママ)どおりの結果を出さなければ怒られます」というところは、【2017.3.25追記】不正や捏造が起こる場所はアカハラの現場と似ている~「学生を追い詰める「ブラック研究室」の実態」(ニューススイッチより)~ - 仲見満月の研究室でも取り上げたニュースのように、不正を助長する環境に研究室がなりかねない危険をはらんでいるといえるでしょう。
このように、私から見れば水無月さんが戦っている研究室の大学教員は、真っ黒と言えます。もし、へまをしてしまえば、次のようなことが待っていました。
「また、気に食わない学生がいると、『こいつは出来が悪い』と全員の前で言ったり、Bccで他の学生一人一人に注意喚起と称してメールを回したりしました。また、学生本人にむかって『研究室のみんなお前のことを鬱陶しく思ってる』ということもありました。」
「僕に関しては、『学会に出させてやらない』ということを言われました。」
2-2.「学歴ロンダリングは許さない」ことについて
「黒いラボ」の大学教員からのメールは、研究室のイベントや運営に関するものだけではなく、学生が受験を予定している大学院へ妨害ととれるメールを送信したり、そのメールを他の構成員に流して見せしめにしたり、そういったハラスメントがインタビューに挙がっていました。問題の2通のメールは、容量の問題で省きます。リンク元の見て頂けたら、詳細が分かりますが、インタビューでは、次のようなことが書かれていました。
メールの文中には、研究室に落ち着きがなく、上級生の下級生への指導が欠けている。人間性、特に研究室、学問、人に対する謙虚さに基づく「仁義」と「縁」の尊重が肝要であること。さらに
「君たちがこの分野で生きようとする限りは、しばらくは僕(教授のこと)の掌の上の人間関係で動く」
ことが書かれている。(中略)
学部からの移籍は一切許さないという意思のもと、教授からの指導は受けられないことが書かれており、行き先の研究室に当該学生を切り捨てたというメールを送るという趣旨のことが述べてあった。
この大学教員の方は、どこかの国際学会の理事や会長をなさるほど、権力をお持ちの方なのでしょうか。しかし、そういった権威のあると思われる方ほど、現在の研究業界では、人間的なバランス感覚、それから人に対する謙虚さをお持ちであり、このようなメールを書くこと自体、ならさないと考えるのは、私だけでしょうか
あと、学歴ロンダリングについては、研究テーマの変更や計画のため、学部や修士課程の段階で、「やむなし」として学外の大学院へ進学する学生もいること。昨今は、大学院自体が多様性を求めて、積極的に他の大学や専門学校、企業等からの院生を受け入れているところもあって、結果的に「学歴ロンダリング」にならざるを得ないキャリアパスでもあります。つまり、見方によっては「学歴ロンダリング」を否定することは、ナンセンスな面もあるといってよいでしょう。
ちなみに、私も「学歴ロンダリング」した一人です。最初、自分の学部の上の大学院も受験しましたが、その大学院ではカリキュラム上、「君の研究テーマからして、博士課程へも希望しているなら、受け入れ教員の先生は修士課程までの指導でストップになります。だから、ここの大学院での修士・博士課程の連続した受け入れは、難しいですね」と面接官に言われ、その場で、不合格確定となりました。結局、別の国立大学の院で、正直に申し上げますと、第一志望だった修士・博士課程に進学できたので、入学までは嬉しかったです。が、その後、色々と研究テーマや将来のことで悩むこととなりました。そのあたりについては、別記事で書いておりますので、探してみて下さい。
2-3.「中にいる時はブラックだとは思わない」のと「なぜ改善されないのか?」
ここまで来て、中にいる人間は「黒いラボ」だと気がつかないのか?という謎について、水無月さんがインタビュアーの久野さんの質問にお答えになさっています。まとめていくと、次のようになります。
- 研究室がブラックだなと感じたのはいつ?:「休学して2ヶ月ほど立ってから」くらい。
- 休学するまではブラックだと感じていなかったのですか:「研究室にいる時は、厳しいという言葉で自己洗脳にかけるようなことをし」、「研究から離れても暫くの間は自分がついてけなかったということばかり」気にしていた
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中にいる他のメンバーも同じように厳しいとの認識なのか?:「他の人も似たような認識」かと。「教授自身が愛のある厳しさだと言っているので。」
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相談できる人はいたか?:「学内のカウンセリングに行ったりしてたが中の人は完全に信頼出来るとは」思っていなかった *3「かつて鬱で休んでいた先輩と、カウンセラーと教授の3人で話した内容を教授がうちの研究室で暴露したりしていたので。教授は『鬱は弱い人がなるものだ、俺にはそういう悩みはない』という持論があり鬱に対する理解はなかったと思います。」
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水無月さん以外にも消極的な休学をした先輩がいたのか?:「途中でやめた先輩もいれば、大学院進学辞退した学生、休学した先輩もいます。」 (ブラックで済まされるアカハラ 大学の自浄作用の低さの原因は?を再構成)
中にいる人間が「研究室にいる時は、厳しいという言葉で自己洗脳にかけるようなことをし」ているのは、私もしていましたよ。うちは、研究内容に対する厳しさはありませんでしたが、ガクシンの特別研究員がゴロゴロいる研究科だったせいも手伝って、自己洗脳で「私はどうしてダメなやつなんだ…」と博士課程まで、悩んでいました。ガクシンに通っていない先輩も、何かしらの人脈を既にもっていて、収入を得て、自活していらっしゃいましたから、親のすねを齧っていた私は劣等感満々でした。
なお、うちの中にいた留学生の男の先輩は、上手にタイミングを計って逃げたことや、逃げようとしたことがありました。他のメンバーにばれ、元締めのY先輩がブチ切れ、私がなだめるようにお願いをして、論文集の校正作業の分担をまわしたことがあります。でも、索引作業のやり直し他、いろいろと延長になりそうなときは、私が本棚への頭突きで、拒否の意思を示し、この論文集の仕事は追いやりました。
相談できる人、できない人や相談室については、私の周辺の話では、部局の人権委員会に着任したてで立場の弱くて相談が来ても部局の上に報告が難しいと思われる助教先生が据えられ、また隣の先輩院生Mさんに当たりの強かったV先生のケースでは、
V先生のいないところで泣きそうな顔で話すMさんに、「カウンセリングルームや部局内の人権問題の対策委員会とかに、相談してみましょう」と言う院生もいました。しかし、Mさんは相談した部署から、部局内で権力のあるV先生に相談内容が漏れ伝わることを恐れて、ひたすら、耐え忍びました。私や同期の若手院生が動こうとしたところ、「あなたたちも、博士号取得にリーチがかかっているんだから、下手なことはしなさんな!」とMさんに言われ、ひるんでしまい、何も私たちはできませんでした。
(【2017.7.14_1505_冒頭追記】指導教員による学生の放置および指導の放棄・拒否によるアカハラ - 仲見満月の研究室の2ー2.Mさんの院生生活とV先生からの指導放置放棄)
ということが ありました。Mさんが「相談した部署から、部局内で権力のあるV先生に相談内容が漏れ伝わることを恐れ」たことは、上記の水無月さんの周辺で、「かつて鬱で休んでいた先輩と、カウンセラーと教授の3人で話した内容を教授がうちの研究室で暴露したりしていた」ことからも、杞憂ではないことが窺えます。
こういった大学・大学院の研究室や部局の実例を見ていると、水無月さんが仰る前に、自浄作用がなさそうなことは、何となく、感じ取れます。実際の自浄作用の低さについては、インタビューの最後「なぜ改善されないのか?」のところで、次のように書かれています。
たとえばハラスメント相談の多くは守秘義務があり、カウンセラーの情報はもれない。個人を守る上で必要なしくみではある一方、対症療法的な当座凌ぎの解決(というものがあればだが)にしかならない。つまり運営上問題がある組織が淘汰されることはないのだ。
また、告発した際に報復的な措置をされかねないいう恐れもあると水無月さんは言う。
「僕はもうこの分野には見切りをつけ、いまは別の分野の授業やゼミを受けています。なので他の学生ほど及び腰ではありませんが、自分がこうした訴えをおこすことで自分の同期や先輩後輩に何か被害が及ばないかが心配です。学会に出させない、実績をつませない、留年させる、などということをされたらー。そう思うと辛いです。」
先日、アカハラが起こった大学について、記事をいくつか更新しました。自浄作用を持つか持たないかは現時点で判断できませんが、その大学のうち、少なくとも整備されたガイドラインに沿って対応し、自殺した学生の遺族と示談が成立した大分大学の事例(
【過去の報道から】「大分大の学生自殺「アカハラが原因」 検討委が報告書(朝日新聞デジタル)等について考えたこと)は、ハラスメント防止方面での改善に向かう作用を持っていると私は評価したいです。
最後、インタビュー者の久野さんと水無月さんは次のようなやり取りをしています。
ーー最後にハラスメントを受けている学生に向けて、何か伝えたい事があれば
「まずはハラスメントを認知すること、そしてハラスメントが横行する環境からできるだけ早く遠ざかる。また、声を上げた時、報復が全く無いわけではなくて、そういう話は色んな人から聞きました。精神が不安定になった状況で返り討ちにあうことはよくある。とりあえず離れるなり自分の心の平成を保つことは大事だと思います。何があっても死ぬようなことは、絶対あってはなりません。」
3.学外機関への相談と申し立ての例
さて、水無月さんは作戦を立てて相談室に行ったり、大学側に申し立てをしたり、色々なことを学内で対策としてなさったようです。合わせて、学外の機関や組織にも相談や申し立てをなさったようで、その時の手続きと目的が自身のTwitterアカウントのモーメントに纏められていましたので、紹介をさせて頂きます。
3-1.「ハラスメントを人権擁護局に相談する」(水無月さんのモーメント)
「外部機関への相談でハラスメントが解決するかどうかは微妙なところですが、手段の一つを知っておくことは有効です」とは、水無月さんの言葉。私も同意です:
人権擁護局での手続きを水無月さんのまとめに従って書くと、次のようになります。
- 「 法務省には人権侵害の被害を受けた方に対して救済措置を行う、人権擁護機関があり」、法務省のこのペ―ジ「法務省:人権相談」から「人権侵犯被害の救済手続きを行うことが出来ます」。水無月さんの場合は、"インターネット人権相談受付窓口"(「法務省:インターネット人権相談受付窓口へようこそ!」)から相談された模様。
- 「申し込みフォームに名前とメールアドレス等を入力すると」、以下のような「メールが送られてきます」。「届いたメールのURLから人権相談内容記入フォームに飛び、被害者,出来事,日時などを入力して送信」。「申込みは匿名匿住所では出来ないため、注意が必要」とのことです。
From:jinken999@i.moi.go.jp 5月27日
To 自分
あなたからの人権相談の申し込みを受け付けました
続いて,下記のURLにアクセスし,相談内容を入力してください。
https://www.jinken.go.jp/soudan/▼▼
*このメールは,あなたからの相談の申し込みを受け付けたことをお知らせするメールです。
*このメールに対して返信することはできません。
(ハラスメントを人権擁護局に相談するの画像から、仲見が作成)
入力フォームについては、
入力フォームにはかなりの量を書き込むことができるので、予め書き溜めておいたテキストがあれば、貼り付けておくといいと思います。
自分の場合はこのアカウントや投稿したツイートのURLを送りました。
内容を送信すると、自動返信で受付番号が返ってきます。
ということが書かれていました。
3.「人権新版被害申告シート」に記入します。
続いて、水無月さんは次のような手続き行いました。
自分は法務局に土曜日に連絡を送り、次の木曜日に連絡を受けました。相談フォームに書いた内容が多かったので実際はもう少し早く連絡が行くようです。
続いて日程を調整して法務局に出向き相談を行います。
先程の用紙を提出することで、事実の調査と対策を求めることが出来ます。
残念ながら、人権擁護局に基本的に関係者への任意の聴取を元に、円満解決を目指して、
拘束力の無い手続きをするものということらしいです。
なお、今回の人権擁護局の使い方については、相手に制裁を加えるような効果は期待できないようです:
人権擁護局の手続きについて⑦
相手が任意の聴取を断ればそれまでですし、相手に対する処分も期待できません。
従ってここを強力な手段として利用して解決を図るといった目的は持たない方が良いでしょう。
この点は人権擁護局のHPやpdf等にも明記してあります。 pic.twitter.com/FZcTXyjj7z— 水無月@アカハラ (@giugno_june) 2017年7月8日
4.手続きについては、大方、以上で終わりのようです。
その他、水無月さんが補足として、次のようなことをお書きになっていました。
水無月@アカハラ @giugno_june
人権擁護局の手続きについて⑨人権擁護局についてはこのような感じです。
自分の場合は外部への相談実績の確保と法的助言を受ける為に行いました。
自分は未だに調査を依頼しては無いのですが、これは大学の調査が進んでいない段階で、外部からの調査で混乱を呼ばないためと→
人権擁護局の手続きについて⑩
大学がもみ消しにかかるようであればそれも含めて調査を依頼する言わば牽制手段のためです。
何れにせよ、状況が変化した段階でそれに対応して調査を依頼するつもりでおります。
人権擁護局の手続きについて⑪また以前人権相窓口についてのツイートをされた方がいたので、そのツイートのを引用の形で紹介します。
さらに返信に自分とのやり取りがあります。
だいたい同じ発想ですが参考までに。
「人権擁護局の手続きについて⑪」でのRTでは、
であるというツイートでした。
長いといえば長いプロセスです。しかし、実際に解決実績が法務省のサイトに公開されているようです。アカハラを受け、申し立てを学内で行うのと並行して、もしもの時、人権擁護局に相談しておくと、アカハラ加害者と「紛争状態」になった時は、牽制にもなる一手となりそうです。
3-2.「ハラスメントに対して弁護士会への人権救済申立を行った例」(水無月さんのモーメント)
実は、もうひとつ、弁護士会への人権救済の例を色々とアップしてらっしゃいました:
申し訳ございませんが、現在、9千400文字に達しようとして、両手の指の神経が痛み始めたため、モーメントからの転載+コメントで、このセクションは対応させて頂きます…。(自分が四肢を療養中ということ、忘れかけておりました)
水無月@アカハラ @giugno_june
福岡県弁護士会が人権申立事件としてHP上で扱っているアカハラに関する福岡県立大学に対する勧告(http://fben.jp/jinkenkyusai/d …*2017.8.8_リンク切れを仲見が確認済み)です。
教員間のハラスメントに対してですが、教授-教授間のトラブルに対して、ハラスメント認定をしています。
3:14 - 2017年7月15日
ただ、人権救済事件について実際の強制力はなく、大阪弁護士会のように下線付きで強調して明記してあるところもあります。
ここは気をつけるべきところですが、それでも牽制になるという点では非常に参考になります。
単位弁護士会の公表しているハラスメントに関する人権救済事件は
ざっと探した限りこれの他には東京弁護士会のこの件(http://toben.or.jp/message/pdf/20 …*2017.8.8_なぜか仲見はアクセス不可)のみ。
教員の懲戒に関して当該教員が大学法人に対して人権救済を申し立てたもの。
その他
人権救済事件全体について、弁護士会が個々の事例について公開しているところは少なかったのですが、刑務所や裁判所への勧告や警告が多く、時々その事案についてニュースになっている様でした。
あまり大学がニュースになることを望むとは思えないので、抑止力にもなるのかもという印象。
ハラスメントがあるような大学,学部,分野って積極的に公表していったほうがいいんじゃないか。
極論だけどそれが残っていくのは不味いよ。
積極的に淘汰されるべきじゃないのか。
ハラスメント対策を行わない医学部 - 医学部教員の独り言 http://smedpi.hatenablog.com/entry/2015/05/20/140021 …
特に二次被害が発生した後や、大学の調査に対して客観的な判断をしてもらえる可能性があるというのは心強い。
大学がそれを防ぐべきだろうという思いも有りますが、現状どの大学においても期待できないでしょう。
それくらい腐ってると思います。
大学関係者の方申し訳ありません。
暴言や恫喝に加え、教授会での"殺人さえ犯しかねない"ので役職を下ろすべきという発言(2枚目)、
さらには"お前のあの発言はなんだー!"という罵倒(2枚目)あたりは最近のある議員の発言でおなじみのパターン。
関係者に送りつけるメールの文面の幼さ(3枚目)もよくみるやつといった感じ。↓
捏造という類似点も然ることながら、ハラスメントが実際に人権侵害事件として扱われ勧告されていること、
同等の役職の教員間でもハラスメントであると認定していることなど、自分の様な学生以外の教職員でも参考になるところはあるのではないかと思います。
加害者が学部全教員に送ったメールの文面について
— 水無月@アカハラ (@giugno_june) 2017年7月15日
「最近●●を馬鹿にしているともっぱら評判の××です。(中略) フォーマットを教えてあげるといったのが(中略)えらいかちんときたらしいですう。」という書き出しで始まり……云々
というのは中々の破壊力。 https://t.co/S0Ngk0AFOi
先日、法務局に人権侵害の調査を依頼すると言う内容のツイートをした際、引用ツイートで日弁連への人権救済申立を行えるという話を伺いました。
— 水無月@アカハラ (@giugno_june) 2017年7月15日
これについて全国の単位弁護士会のHPでざっと調べてみたところ、いくつか面白い例がありました。 https://t.co/IfhFWyZoDx
もっと驚くことに、このハラスメントの事例では、告発後にもかかわらず、加害者が被害者に対して研究/授業妨害を行い何人も退職者が出ています。
— 水無月@アカハラ (@giugno_june) 2017年7月15日
さらに凄いのが、二枚目。
記述は少ないですが、加害者が学生を使って逆にハラスメントを捏造しています。 pic.twitter.com/N9b1HH2RRa
(ハラスメントに対して弁護士会への人権救済申立を行った例、なお、仲見が指疲れを起こした為、途中からツイートのリンクとなっております)
ハラスメント事例のオンパレードに、改めて読んだ私は、「ひええぇぇっ!」と声と指先で悲鳴を上げました。「ハラスメントに対して弁護士会への人権救済申立を行った例」を読んでいて、学内や研究の現場で起こるハラスメントには、様々なものがあるのだと頭が痛くなりそうでした。
第3項で私が得たものは、法務省の人権擁護局への相談とともに、日本各地の弁護士会の判例を読み漁って、アカデミック・ハラスメントに該当しそうな判例を読んでおいて、ハラスメント加害者と「紛争状態」になった時のあらゆる状況を想定して、学外の機関に相談することだということでした。もちろん、証拠を残し、相手を牽制するという意味においても重要なことでしょう。
4.最後に
以上、インタビューで水無月さんが受けていたハラスメント行為の振り返りと大学の自浄作用の低さを読み、間に執筆者の私の経験から来たコメントをはさみました。続いて水無月さんが学外機関にも行った相談と弁護士会への申し立て例を通じて、学内での申し立てに加えて、学外の機関や組織を理由する際、どのようなことが具体的にでき、実際にどういったことが起こっていたのか、例を紹介しました。
インタビュー、それから私がフォロワーとして見ていた水無月さんは、苦しんでおられるところがあり、実際、うつ状態になることもあったのに、よくぞ、ここまで証拠を集めたり、学外に利用できそうな機関や組織を調べたり、Twitter等で質問をして教わったり、動かれたことには尊敬をしております。
最後に、水無月さんがモーメントでまとめておられた中で、見逃せなかったのは
次のまとめでした:
出来事を外部化して問題を炙り出すのは大変に素晴らしい技術だと思うが、一方で出来事を内部化して自分の身に置き換えて考える事はとても下手だ。
それが出来てないことを晒して恥ずかしさはないのか、と思ってしまった。
俺もできてないんだけど。
それでも。
あなた方も被害者であり加害者だよ。
その他
"信じられないでしょうが、こういったハラスメントは他の部署/大学で実際に起きている事なんです。"いいえ、違います。
"こういったハラスメントは、貴方の足下で転がっているかもしれないし、貴方が巻き込まれるかも知れない。
もっと言うと貴方が他の人にしてしまうかもしれない。"
そう、ハラスメント事件は、どこにでも起こり得ることなんです。例えば、ティーチング・アシスタント戦記~授業の裏方を務める人々~ で、学部生より上の立場として、働いていた院生が学部授業におけるティーチング・アシスタントの業務。授業プリントを配布したり、コメントカードを回収したりする中で、TAの院生と学部生の言葉のやり取り。それから、【補足】「大学教員からみたハラスメントとその所感~「加害者」とされて巻き込まれた時の経験談や考え得る対処法ほか~」(togetterまとめ) で紹介した、大学教員の些細な舌足らずな言葉が引き起こしたケース。
そうした大学生活のなかで、ちょっとした出来事によって、我々は退治される側に為り得る可能性は十分にあることを忘れてはいけません。水無月さんは、そういった戒めをも発信されています。
Twitterを見ると、水無月さんの戦いは、また始まったようです。また、めげずに新たな分野で研究をされようとしておられるようです。どうか、ご無理をなさらず、ご健康とご健闘をお祈り申し上げます。
おしまい。
*1:2017年7月25日のツイートでは、水無月さんの所属大学からハラスメント調査を実施する書留が届いたことが分かります。それによると、今後は「委員会の調整の後に自分に対して事情聴取、続いて関係者への事情聴取が行われます。相手方教授に対しては一番最後になされる」ということだそうです。
*2:コアタイム:研究室に在室しているべき定められた時間。:ブラックで済まされるアカハラ 大学の自浄作用の低さの原因は?
*3:「アカハラ相談をする時のポイント~学内のハラスメント相談室に持ち込んだ際に注意したこと~」(togetterまとめ)の補足 - 仲見満月の研究室ほか、相談室の信頼性をはかる方法に関するまとめを参照のこと。