仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

けっこう「 #博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々」出ています( #朝日新聞 デジタル)

<今回の内容>

1.はじめに

やっと、ここまで来たか~!というのが、次のニュースがTwitterで流れてきて、共有されたURLにアクセスして、抱いた気持ちです:

「博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々」(朝日新聞デジタル2017.9.24、リンク切れ確認済み)www.asahi.com

 

博士院生をどうやって生きるのか?という問いに答えるような雑誌『博士世界』、院生やポスドク向けの修書K情報やジョブマッチングのサイトを運営するアカリクといった、ドクターコースの院生の今と不安な将来について、情報発信したり、就職をサポートする企業が、一応、朝日新聞デジタルに取り上げらて、嬉しいです。

 

そういうわけで、今回は少しずつでも変わりゆく、博士院生の生き方を取り巻く情報や就職活動に関する朝日新聞のニュースをお伝えすることに致します。

 

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2.「博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々」(朝日新聞デジタル)に見る博士院生に向けた雑誌や本など

毎度、お馴染みですが、朝日新聞のオンラインニュースを読んでいきましょう。

 

 2-1.導入部

博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々

佐藤剛志2017年9月24日19時20分

 

 大学院の博士課程を修了後、大学などでの常勤職を目指しながら、非常勤講師や任期制のポスドク(博士研究員)として働き続ける人が少なくない。将来に不安を抱えながら研究に励む博士学生の現状を知ってもらおうと、日々の生活や修了後のキャリアパスに焦点を当てた書籍や冊子が登場している。

(博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々:朝日新聞デジタル、リンク切れ確認済み)

 

 もっとも、ここ最近、急激に起こった動きではななく、2000年代の後半あたりから、フリーペーパー版の『アカリク』が発行され、また同名の会社が院生やポスドク向けの就職ガイドブックを2010年に出したり、じわじわと動きは感じておりました。

 

ちなみに、次の本は今年、7年ぶりに出た改訂新版です↓

 

改訂新版 大学院生、ポストドクターのための就職活動マニュアル

 院生の就業について、取り組んだパイオニア的存在のアカリクについては、後ほど、居り上げられています。次は、朝日新聞の報道に沿って、『博士世界』のほうを先に紹介します。

 

 2-2.『博士世界』の創刊

冒頭に少し名前を出した、『博士世界』について紹介が次のようにされています。

 

 昨年12月、雑誌「博士世界」が創刊された。企画したのは、東京大や東京工業大の大学院生ら4人。きっかけは、進学後に理想と現実のギャップや、世間からの無理解に悩む博士学生の姿を度々見かけたことだった。大上真礼(おおうえまあや)編集長(29)は、東大大学院教育学研究科の博士課程に所属し、今春からは和洋女子大で任期制の助手としても働く。

 (博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々:朝日新聞デジタル、リンク切れ確認済み)

この雑誌の存在については、後出しになりますが、既にこちらLab-Onの記事で存じておりました:

博士課程は不安がいっぱい?「無知の死」を防げ!【博士世界編集者インタビュー】

 

朝日新聞の報道を改めて読むと、予想以上に様々な大学の博士院生が『博士世界』に携わっているのだということに、驚きました。加えて、「きっかけは、進学後に理想と現実のギャップや、世間からの無理解に悩む博士学生の姿を度々見かけたことだった」というところが、企画の出発点になっているのは、私が弊ブログを始めた理由の一つと重なります。喋って説明しても、「情報がないし、抱えている状況が学外の先に就職した人たちと偶に会ってしゃべっても、伝わらない」から、私はこのブログを始めたし、少なかった情報を集めて、発信するという役割も付与しました。

 

それにしても、大上真礼編集長は29歳で、「東大大学院教育学研究科の博士課程に所属し、今春からは和洋女子大で任期制の助手としても働」きながら、博士論文の提出を目指すのは、似ても似つかない学内の研究所の契約職員をしていた私からしても、かなりきつそうです。

 

そもそも、企画するには熱意だけでなく、客観的なデータを示さないと、同志がいたとしても、協力者になってくれる可能性は低くなるのではないでしょうか?そのあたり、朝日新聞がデータを出しています。

 文部科学省が発表した今年度の学校基本調査(速報値)によると、博士課程への入学者数は1万4766人。10年前より2千人以上減った。背景の一つには進路への不安があると思われる。今年3月までの1年間の博士課程修了者のうち、進学も就職もしていない人の割合は18・8%になる。

 同省科学技術・学術政策研究所の「科学技術指標2017」では、日本の人口100万人あたりの博士号取得者数は、日・米・独・仏・英・中・韓の7カ国中6位だ。1位ドイツの344人に対して日本は121人にとどまる。日本では1990年代に国が推進した「大学院重点化」で博士の数は増えたが、修了後に活躍できるポストは思うように増えなかった。近年では非常勤講師やポスドクの高齢化も問題になっている。

(博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々:朝日新聞デジタル、リンク切れ確認済み)

だいたいは、弊ブログのあちこちで触れてきたことですので、ここで詳しいコメントは控えます。ですが、一点だけ、「近年では非常勤講師やポスドクの高齢化も問題になっている」という問題に関しては、次の拙記事:

【ニュース】「博士人材の追跡調査(速報版)を公開、キャリア構築困難な実態を裏付け」( 大学ジャーナルオンライン) - 仲見満月の研究室

の「2ー3.年齢が高くなっていく博士人材と流動研究員の事情」のところで言及しました。そちらをご参照下さい。

 

大上編集長曰く「自身は、修士課程の在学中から博士は大変だと聞いていたが、具体的にどう大変なのかはよく分かっていなかったという。「博士課程について知らないまま進学して苦労した点などをまとめれば、ニーズがあると思いました」とのこと。確かに、研究室によっては、修士院生の上に博士課程の学生がいないところが最近では当たり前のことろもあって、先輩の博士院生が修士院生をサポートするとか、手伝わせるとか、そういったところが人文社会系はなくなってきていても、不思議ではありません*1

 

どういうところにニーズがあるのか?大上編集長たちは、創刊号でお金に関する特集を組むところから、『博士世界』を始めました。

 創刊号の特集は「博士学生の家計簿」。6人の実例を元に、国立と私立の別、親との同居や配偶者・子の有無などによるお金のやりくりの違いをまとめた。奨学金の返済免除や、様々な補助・助成の規定を事前に調べる大切さも説いた。

(博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々:朝日新聞デジタル、リンク切れ確認済み)

 

この雑誌の現在は、「4号まで発行し、時間の使い方や恋愛事情などを特集。ウェブでは無料で読めるが、1冊100円の印刷版を5月に東大の学園祭で販売すると2日間で70冊近く売れた。今後6号までの発行を予定している」とうです。

 

 2-3.書籍『博士になったらどう生きる?』(勉誠出版)の話

インタビュー集と聞いて、勢いで私も買って、人文社会系の方々のところ、読んでしまいました:

 

博士になったらどう生きる?―78名が語るキャリアパス

 朝日新聞によると、監修者はこんなことを意図して企画したそうです。

 監修した東大大学総合教育研究センターの栗田佳代子准教授(47)は、大学教員志望の院生らが指導法などを学べるプログラムを担当している。修了生から、「このままやっていって将来家庭を持てるのだろうか」といった切実な声を聞き、これでは優秀な学生が博士課程に進学しなくなるとの危機感を抱いていた。

 修了生15人が協力し、美術史学、建築学、農学など15分野から5人ずつインタビュー。研究職以外にも様々なキャリアパスを紹介しながら、どうしてその選択をしたのか、その時々でどんな苦労や悩みがあったのかなどを含めてまとめた。結婚・出産といった「ライフプラン」も重視して、3人の子育てと研究を両立してきた栗田准教授ら3人の体験談も取り上げている。

 (博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々:朝日新聞デジタル、リンク切れ確認済み)

教え子たちからの切実な将来への不安に対する訴えを受け入れ、優秀な学生が博士課程に欲しい。そう考えた栗田さんは監修を務め、実際は修了生15人が協力して、文系と理系の合わせて5人ずつ取材。人生の節目節目で感じた苦楽や悩みを丁寧に聞き取りつつ、監修者の体験談も取り入れて出版しました。値段の割に、充実した内容となっていると私は感じております。

 

監修した「栗田准教授は「学術分野で働く人が多くなったが、それでもかなり多様なキャリアがあることを示せた。ぜひ高校生や学部学生にも読んでほしい」と仰っていました。

 

 2-4.10年ほど前から取り組んでいた「アカリク」

『博士世界』よりも、『博士になったらどう生きる?』よりも、昔にフリーペーパーから始まった、院生への情報提供活動。それが、『アカリク』でした。

 大学院生やポスドクらのキャリア支援事業を営む「アカリク」は、フリーペーパーのアカリク(アカデミー&リクルートメント)を今年2月、復刊させた。

 10年前に創刊し、院生らに特化した冊子は話題になったが、6号で廃刊に。以後はウェブでの情報発信に力を入れてきた。

(博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々:朝日新聞デジタル、リンク切れ確認済み)

 現在は、メディア展開も場所を増やしておられるようで、

といった、高等教育の個人個人のステップに合わせた情報を提供する目的で、複数のポータルサイトを運営なさっています。

 

フリーペーパーから始まったアカリクは、今は企業に成長しました。実は、そこからもう一回、冊子体に戻って、次のような企画をされたようです。

 

 林信長社長(42)は、京都大の博士課程で哲学を研究していた。この数年で博士学生やポスドク経験者を求める企業が増えていると感じ、社内の博士課程修了者や現役院生ら数人のチームで冊子を編集することにした。復刊して最初の7号では、林社長ら博士課程出身者3人の対談を掲載。修了者が研究の魅力について語るコーナーや企業の特集も充実している。

 

 林社長は「常勤の研究者になる道は今も厳しいが、自分の柱となるものを二つ三つ持った上で、広い視野でものを見られる人材には、文系理系にかかわらず企業側のニーズがあると感じる」と話す。(佐藤剛志)

(博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々:朝日新聞デジタル、リンク切れ確認済み)

 

う~ん、足を運べる地域で復刊した7号、配布されていたら、ぜひ『アカリク』冊子体、手に取って読んでみたいです。印象的だったのは、最後に 林社長の「自分の柱となるものを二つ三つ持った上で、広い視野でものを見られる人材には、文系理系にかかわらず企業側のニーズがあると感じる」という言葉です。

 

現在進行形で、博士卒の私自身、「「自分の柱となるものを二つ三つ」を模索し、使い方を見つけることができれば、どうにか、経済的に自立できないものかと、模索しております。

 

 

3.最後に

今回は、朝日新聞デジタルの「博士学生はどう生きる? 不安な将来向け書籍・雑誌続々」をもとに、博士院生の生活や生き方、就職活動やライフプランまで、見通しを立てられるよう、情報発信をする媒体を主に3つ紹介しました。

 

ほか、研究者応援マガジンとして、毎年2回、夏冬発行の同人誌『月刊ポスドク』:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 と、「研究の未来をデザインするメディア」として、主に理系の話題を扱っている

lab-on.jp

の2つを追加させて頂きます。

 

『博士世界』からアカリク、そして『月刊ポスドク』、Lab-Onまで、博士院生をターゲットにした雑誌やwebメディアは、ゆっくりですが、増えてきております。私としましては、「わーい!仲間が増えて嬉しい」と思うと同時に、弊ブログの舵をどこへ切ってゆこうか。最近の「改修工事」をしながら、読者の皆さんの役に立つため、書き続けていこうと思いました。

 

おしまい。

*1:ちなみに、文理総合系の院にいた私の場合、同じ講座(研究室の集まった部局内の単位)の同期が修士課程修了で就職してしまいましたが、ずっと博士院生の先輩方にくっついて、TAや雑務をしていたこともあって、「とにかく、どのテーマにしても論文を通すのは大変だ」と感じていたこともあり、中途半端な就職活動をしていたり、してはいました。

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