仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

note.muの更新&ニュース「「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由」の要点と実行すべきこと

<本記事の内容>

1.note.muの更新と仲野徹のオピニオン記事について

本日、久しぶりにnote.muの「分室」を更新致しました:

note.mu

テーマは、大学サークルを舞台にして、描かれた漫画を通じて、現実の若手研究者の苦悩を抉り出してみよう、というものです。メインブログのほうでは、若年世代の研究者について、研究資金や社会制度、具体的には学振の特別研究員や博士課程の院生を経済的に支援する各大学の体制を紹介してきました。先月の次の記事: 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

で、最も投票が多かった選択肢のテーマにこたえ、かつ、人間としての若手研究者の姿をお伝えしたいと考え、本日、上記のテーマで「分室」を更新しました。よろしければ、ご覧ください。

 

さて、Twitterを徘徊していたら、ちょうど本日の「分室」テーマについて、国家レベルで何をしていったらよいのか?というオピニオンのニュースを見かけました:

www.nippon.com

筆者は仲野徹さんで、昨年6月、弊ブログで日本の科学研究の地盤沈下を指摘なさった記事を紹介させて頂いていました: 

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

今回は、博士号を取得した若手研究者を育てる上で、日本が現在、抱えている問題や要点を整理され、まとめていらっしゃる内容のオピニオン記事でした。細かく見ていくと、弊ブログでも取り上げてきたテーマが総括されていましたので、仲野さんのトピックとそれに対する答えや知るべきことを、ここでは簡潔に書き出していきます。

f:id:nakami_midsuki:20180319195116j:plain

 

 

2.「「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由」の要点と実行すべきこと

さっそく、「「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 | nippon.com」の要点を書き出してみたいと思います。

 

要点1「若手研究者の6割超が任期付きポスト」

 ⇒「大学院生、特に博士課程進学者に対する経済的支援」

欧米では、大学院生に給与が支給されるのが当然である。日本でもリサーチアシスタントとして雇用し、幾ばくかの謝金を出すことは可能だ。しかし、これは「競争的資金」(研究機関や研究者から研究課題を公募し、第三者による審査を経て優れた課題に配分される研究資金)が潤沢にある裕福な大学あるいは研究室に限られるし、最低限の生活も営めない程度の金額でしかない。

(「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 | nippon.com)

 

要点2「博士号取得者を採用する企業は少数派」

 ⇒「博士号取得者の主たる就職先は以前と同じく大学を中心としたアカデミアであること」を意識すべし

博士課程時代をなんとか生き延びたとしても、職に就けるかどうかが次の、そして最大の問題で、「高学歴ワーキングプア」という言葉があるほどだ。過去数年間、博士課程修了者の就職率は7割弱で推移しており、明らかに学部卒や修士修了者よりも低い数値だ。

分野によってかなり違うが、全体として、大学などのアカデミアに就職する者が約半分、民間企業への就職が約4分の1といったところである。毎年博士号取得者を採用する企業は約1割程度(科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査報告2017」)しかないことなどを考え合わせると、博士号取得者の主たる就職先は以前と同じく大学を中心としたアカデミアであることが分かる。

  (「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 | nippon.com)

 

要点3「任期付きから終身雇用への狭い道」

  ⇒「国立大学法人に対する予算措置を見る限り、終身雇用ポスト数が増加する望みはない」

肝心の大学における雇用状況が厳しくなっている。終身雇用の常勤ポストが減少し、非正規の任期付きポストが増加しているのだ。内閣府の統計によると、国立大学法人における任期なしの正規雇用ポストに就く39歳以下の若手教員比率は、2007年度に23.4%だったが、16年度には15.1%にまで低下している。34歳以下に限ると、その低下率はさらに大きく、8.5%から4.5%へとほぼ半減した。一方、39歳未満の任期付き教員の比率は10年前より25%も増加し、17年度には64%になっている。

(中略)

博士号取得後にポストドクター(ポスドク)として任期付きポストに就き、その後、正規雇用となるのが一般的なキャリアパスだったのに、それが難しくなったわけだ。

(「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 | nippon.com)

 

要点4「業績を上げるために7年の任期を」

 …「7年あれば、腰を据えて研究できるはず」

個別の状況によって任期はさまざまだが、プロジェクトの年限などから、5年を越えるものはほとんどない。5年は十分に長いと思われるかもしれないが、研究の高度化に伴い、ひとつの研究に要する年数が長くなる傾向にある。私が従事している生命科学の分野では、ある程度のレベルの研究を行うために4~5年かかることはざらである。次のポストを探すための期間も必要なので、最後の1年はどうしても浮き足だった状態になる。これでは落ち着いて研究などできはしまい。

(中略)

ある程度のセーフティーネットは必要だろう。とはいえ、博士課程を修了したというキャリアに対して、どの程度のセーフティーネットを準備するかは難しい問題だ。他の分野、例えば音楽やスポーツなどを志して挫折する若者もたくさんいるはずだ。前述のように、充足率の関係で、博士課程は入学しやすい状態になっている。研究だけが十分なセーフティーネットを設けるに値するほど貴い仕事なのか。税金を使うことに、果たして社会的コンセンサスが得られるかとなると、いささか疑問である。

(「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 | nippon.com)

 

要点5「「テニュアトラック」=独立のための“助走期間”」を大切に

 …「自立して研究させて大丈夫ならば、テニュアポスト=任期なしの正規ポストに就いてもらうという制度」

研究室の主宰者(PI:Principal Investigator)に要求される能力は、研究の立案・遂行、論文執筆、研究費獲得、人材確保など極めて多彩で、それ以前の大学院生かポスドク時代などに必要な能力とは大きく異なっている。実際、大学院生やポスドクとして有能であった人が、PIになってからは鳴かず飛ばずということは少なからずある。

そうなってしまうと、本人はもちろん、雇用した側にとっても悲劇である。そのような事態を避けつつ若手PIを育成しようというのが「テニュアトラック」制度である。「公正で透明性の高い選考により採用された若手研究者が、審査を経てより安定的な職を得る前に、任期付の雇用形態で自立した研究者として経験を積むことができる仕組み」(文科省)であり、「PIとして、自立して研究活動に専念できる環境が整備されていること」も要件に挙げられている。

(中略)

欧米では昔からあって、なかなか優れたシステムではある。しかし、そのシステムが機能するかどうかは、周辺の制度がそれに見合っているかどうかにかかっている。

(「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 | nippon.com)

 

要点6「抜本的改革がない限り失速は続く」 

 …「提言を重ねるだけではなく、思い切って大鉈(なた)を振る」こと!

テニュアトラック制度の定着には、

教育・研究・事務業務の非効率的な配分に見られる硬直化した運営システムなどを含め、大学の在り方そのものを抜本的に改革せねばならないということだ。気が遠くなりそうな話である。

(中略)

文科省が「科学技術イノベーション政策」の中で提案しているように、「若手人材のキャリアシステムの改革」と「多様な人材の活躍、人材の流動促進」が何よりも必要であることは間違いない。しかし残念ながら、誰もがそう分かっていながら、あまり進んでいる気配はない。議論を繰り返しても、同じ結論が出るだけだろう。提言を重ねるだけではなく、思い切って大鉈(なた)を振るわない限り、日本の大学の失速状態は続き、政府の唱える「イノベーション創出」など望むべくもない。悲観的過ぎると反論もあるだろうが、根拠なき楽観論で取り繕ってきた大学の末路こそが今のような悲惨な現状なのだとしか私には思えないのだ。

(2018年3月8日 記)

(「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 | nippon.com)

 

ざっと、読み返したところ、若手研究者を育てるには、テニュアトラック制度の活用がカギだと思われるが、仲野さんの書き方では、日本の大学周りの制度はテニュアトラック制度と相性が悪いらしいことが窺えます。大ナタを振るっていくにしても、「どこからお金を出すの?」という声が実行前にそここから聞こえてきて、改革者の手は止まりそうな予感がします。

 

本当に、気が遠くなりそうですよね…。

 

 

3.最後に

仲野さんの言うテニュアトラック制度は、大学教員の新規採用には枠としてJREC-INの求人に出てくることが増えてきてはいるようです。実際、私も何件か、応募したことがありました。ですが、やっぱり採用のシステムは依然としてブラックボックス的なところが否めません…。

 

一橋大のテニュアから、香港科技大のテニュアへ移籍した川口康平さんのように、いっそのこと、この制度が日本より機能している海外へ若手は行ってしまえ!と考えを切り替えて、日本のトップは若手研究者を海外で育ててもらう制度をととのえるのも、ひとつの手段ではあると思います。いかがでしょうか。

 

ただ、それ以前に私が日ごろ考え、同じ問題意識を持つ人たちと話す時に出てくるのは、「なぜ、日本では博士の地位が低いのか?」ということです。あるいは、研究者が大切にされていないのか?どうして、こうなったのか?と、疑問が消えません。「末は博士か大臣か」と呼ばれていた時代は、果たして、いつまでだったのでしょうかね。

 

どなたかそのあたり、教えてくださる方、いらっしゃいましたら、ご連絡いただけたら助かります。

 

おしまい。

 

 

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