仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

手に取りやすい学術系レーベルの講談社学術文庫の紹介~グレンベック『北欧神話と伝説』を例に~

はじめに

今週の半ば更新の「【'18.7.26_0055追記】ゲーム等による学術系の本の需要とその周辺の話~「女性やソシャゲユーザーは学術書を読まない? 「復刊ドットコム」インタビューに批判殺到→謝罪へ」(ねとらぼ)~ 」の記事。FGO等のゲームで遊んだ人たちが「もっと、ストーリーや好きな人物について、詳しいことを知りたいんだ!」と「思い立った時、学術系の本が取れるといいよね」という話や、主に人文系版元の人たちの読者像が現実のそれに追いついていなかったり、「特需」でたくさん本を供給する体制が版元には整ってなかったり、そのあたりの話をさせて頂きました。

 

まとめには、「学術書は3000円以上する高いものもあって買いにくいし、供給が今までの版元体制では急な需要に対応しづらいから、まずは図書館に購入希望を出しましょう

!」ということを書きました。最後のほうでは、学術ジャンルのほうが、エンタメジャンルより、図書館の購入希望では通りやすい説をTwitterで見かけたのと、学術ジャンルの購入希望を出し続ければ該当ジャンルの本を買う予算が図書館に付きやすくなる可能性についても、書きました。それで、もし購入希望が却下された場合は、次の2つの学術系レーベルの文庫の中から、知りたい分野の本を探して買ってみてはいかがでしょうか?というところまで、上のリンク先の記事で書きました。

  1. 講談社学術文庫
  2. 角川ソフィア文庫

 

どちらのレーベルとも、大手出版グループから出ており、急な需要にも比較的スピーディーに対応できそうなところに、メリットがあります。角川ソフィア文庫については、以前、日本の古典文学作品の初心者向けシリーズを取り上げた「角川ソフィア文庫「ビギナーズ・クラシックス日本の古典」」等の記事、中国の漢文を読む人向けの「「正史」入門者向け『十八史略』や 明治書院「 #新釈漢文大系 」他で漢文に慣れる~続・ #古文 や #漢文 をもう一度~ 」とった記事で紹介してきました。今回は、1の講談社学術文庫に関して、私がおすすめしたいポイントをまとめました。参考にして頂けたらと思います。

 

 

講談社学術文庫のおすすめポイント

文学、歴史学民俗学、哲学をはじめ、芸術に関わる分野まで、幅広くカバーした作品がそろっている文庫レーベルです。例えば、Fateシリーズのゲームプレイヤーには、古典文学の作品の注釈・現代語訳、講談社の創業100年記念で出された全集「興亡の世界史」シリーズあたりが、おすすめです。「興亡の世界史」シリーズについては、以下の記事後半で説明していますので、合わせてご覧ください:

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

この文庫レーベルのよいところは、電子書籍(少なくともKindleはある)で作品が配信されている点が1つ。学術系の本は、人文系は初版が数百部というのがよくあり、タイトルによっては絶版になりやすい問題を抱えています。それは、ちくま学芸文庫等の学術系レーベルで出ている本も、例外ではありません。その問題に対して、電子書籍が配信されている講談社学術文庫の場合、紙版が絶版になったとしても、電子書籍の配信が続くなら、少ない供給に対応し続けやすいと考えられます。 

 

ところで、スマホRPGの『Fate/Grand OrderFGO)』では、この7月後半にストーリークエストの第2部第2章「無間氷焔世紀 ゲッテルデメルング「消えぬ炎の快男児」」が配信され始めました。北欧神話の世界が題材になっているということで、ワルキューレブリュンヒルデとシグルド、巨人族について知りたくなった人もいらっしゃるのではないでしょうか?その他、スクエアエニックスのゲーム『ヴァルキリープロファイル』シリーズ、木下さくらの漫画『魔探偵ロキ』シリーズというように、北欧神話が元ネタのメディア作品は、けっこう日本では多く出ています。ということで、講談社学術文庫より出ている北欧神話に関する本を1つ、リンクしておきます:

 

もとは、1971年に新潮社から出版された本でした。訳者は、私が北欧神話に関する専門の本で見かけることのない、山室静さん。私が所持しているのは新潮社版で、パラパラ捲った印象では、著者のグレンベックが北欧神話を知りたい初心者に向けて、章を主な神に関わる神話、伝説に分けて紹介する入門書的な構成になっています。本の後ろのほうにある「ヴォルスング家の物語」では、財宝を抱えた竜を退治する話や、FGOでいうところのワルキューレブリュンヒルドデとシグルドの出会いあたりの話が、著者によって再構成・解説されています。

 

注意事項としては、著者が神話や伝説のどのバージョン文献、学説を採用したのか、出典を明記していないところがあると見られるところです。もともと、文献を研究で扱っていた人にとっては、非常に気になるところでしょう。そのあたりは、本書が出版された経緯、北欧神話の概要について、巻末で翻訳者の山室さんがされているようですので、本文と合わせてお読みになると、フラストレーションが少しは解消されるのではないでしょうか。

 

 

最後に

以上、割と手に取りやすい学術系レーベルの講談社学術文庫のおすすめポイントでした。講談社学術文庫以外にも、ちくま学芸文庫を含めて学術系の文庫は複数、出ています。気になる方は、各自でチェックしてみてください。

 

おしまい。

 

 

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