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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

どんな人が文系だけどSEになれるのか?~『文系女子だけど新卒でSEやってます』をもとに高校数学が欠点な人間が考える~

ここ最近、Ciniiの動向、アカハラや図書館の司書職、学芸員に関する発言といったニュース、社会関を追っていました。いくつかレビュー記事時も含んでいますが、久しぶりに、文系院生(今回は主に修士卒)の進路について、考えるきっかけになりそうなコミックエッセイを見つけました。レビューしたいと思います↓

内容紹介の後、タイトルに女子が入ってはいますが、性別関係なく、どんな文系の人がなれそうか、考えてみます。

 

 

<本書の内容>

大学の専攻が国語学で神代の国文学を研究していた大学4年生の著者・しま子氏。サークルは漫研で、ゲームも大好き!そんな著者が「オタクに優しいアットホームな会社で働きたい」と会社説明会をいくつか回り、意気投合した大学OBのいた会社で内定をゲット。新社会人としてIT業界に入った著者を待ち受けていたのは、炎上、徹夜、残業×残業×残業…なシステムエンジニア=SEとしての日々でした。

 

無茶な案件を取ってくるSEに営業の通称「死神さん」、アニメやゲームが大好きで自宅サーバの製作に熱を入れすぎて冷却の方面を忘れて熱暴走させ、冷却まわりで通常のPCの倍のお金がかかってしまった先輩方がいたり。社内の売店では冬季限定のコーンスープに対し、通年で置いてほしいと言って、役員の配慮か、カロリーメイトが増えていることがあったり。入って来た後輩社員は、PCのデスクトップ画面がゴチャゴチャ過ぎて、ファイルや仕事メモをフォルダに振り分け、リマインダー機能付きデジタル付箋を教えるといった、仕事のライフハックを教えたり。そんな日々の中、使おうと思ったライブラリがクライアントの希望で使えず、短い納期までに仕事を進めようと徹夜、休日出勤が続くけれど、着実にしま子氏はシステムエンジニアとして、成長してゆきます。

 

 

<感想>

繁忙期の残酷さ・怖さに読んでいた私は、研究室の論文集の校正作業、論文の原稿ファイルの誤字・脱字のチェックで日付が変わった頃、自転車をこいでいた精神状態を思い出しました。しま子氏は、時期によって戦々兢々となっていたのかもしれません。

 

本書の構成は、序盤として、巻頭のカラーページにプロローグがあり、人物紹介→目次→「SEのタイムスケジュール」→「SEの基礎用語集」(ひと・専門用語)→第一章の本編の順にコンテンツが並んでいて、IT業界にあまり縁のなかった私でも、すっと話に入れました。全部で138ページほどで、漫画の内容は仕事事情、SEの恋愛事情、不健康なことをにおわせるエピソード(席替えで退職した人の机の引き出しを開けたら薬がたくさん出てきた!)など、業界の人からすると「あるある」という話だらけかと思います。読むうちに、IT系企業の友人に聞いた話がけっこう、出てくるんですね。

 

しま子氏にとっては、紆余曲折ある社会人初期の物語ではありますが、エピソードの掘り下げが浅めなところもあり、意外とさらっと読み終わりました。実験や観察、論文執筆等で研究室に泊まった経験のある人なら、ところどころ、共感するところがあるかもしれません。私が思い当たったのは、徹夜続きで着替えを準備していなかった明け方、その新しい一日が始まる時、著者が椅子に引っ掛けていたストールカッターシャツの上に羽織ったシーンです。スーツのジャケットがしわだらけで、どうしても予備が勤務先のロッカーにない時のため、皆さん、ストールを何枚か、置いておきましょう!上着の替わりにできます。

 

私は紙書籍で読みましたが、デフォルメの利いた絵柄なので、電子書籍版でも読みやすそうだと思いました。

 

 

<文系だけどSEになれるのは、どんな人?>

 その1.SE、プログラマーってどんな仕事をするの?

ところで、SEことシステムエンジニアって、どんな仕事なんでしょう?と改めて、「SEの基礎用語集」(ひと・専門用語)を読むと、

SE

システムエンジニア。コンピューターシステムやコンピューターソフトウェアの設計、開発、運用に携わる技術者全般のこと。

(本書p.11)

だそうです。似たような職としてよく聞くプログラマーのほうは、

プログラマー

設計書をもとにプログラム言語を書き、バグの修正をし、実際にコンピューターのプログラムを作る人。

(本書p.11)

とのこと。私のざっくりとした解釈では、SEにプログラマーが含まれるイメージです。というのは、SEには「上流SE」という「お客さんの打ち合わせや、プログラム全体の設計を主に担当するSE」と、「下流SE」≒プログラマーという説明が「SEの基礎用語集」の下のほうにあったのです。

 

それでは、SEやプログラマーの名前に含まれる「システム」と「プログラム」とは、本書では具体的に何を指すのでしょうか?「SEの基礎用語集」によると、

システム

コンピューターシステム。複数のプログラムを組み合わせて、コンピューターに一連の動作をさせる仕組みのこと。

 

プログラム

コンピュータープログラム。コンピュータへの命令(「この条件で動け!」「この条件で止まれ」など)を併記したもの。

(本書p.11)

つまり、SEはコンピューターに一連の動作をさせる仕組みに携わる技術者、プログラマーとはその仕組みの中でもコンピュータへの命令をプログラム言語を書いて作る人、といったところでしょうか?

更に「プログラム言語」とは、「コンピュータープログラムを書くための言葉」であり、Java(ジャバ、人間の言語でいうと英語くらいのレベルで広く使用されている)やC#(Javaと並んでよく使われる言語)などがあるようです。

 

 その2.SEになれそうな文系の人とは? 

著者のしま子氏は、大学の専攻が国語学で神代の国文学を研究していた人。おそらく、人文科学系の学部出身者だと思われます。人文学系には、本記事のサブタイトルにも入れているように、高1から数学が欠点だった私のような人間も少なくないと思われます。私は数Aの数列で脱落しつつ職員室に行っては数学の先生方に泣きつき、教わるも練習問題は解けず、高2から数Ⅱ・数Bともに欠点を連発しながら、提出物の点数で留年を免れた人間でした。要は数学嫌いと古典文学・歴史が好きで、文系クラスを選択した高校生でした。

こんな数学嫌いな人間がいる一方で、本書の著者のように、プログラムを書く上で、何とか必要レベルの数学能力を身につけ、SEができる人も人文学系の学生にはいると思われます。実際、高校の文系クラスにいて、数Ⅱ・数Bの得点が高く、センター試験では、文系・理系どちらの科目もバランスのいい得点をして、国立大学の人文学系の学部に進学した同級生がいました。

(高校時代の数学の良しあしが、その後の数学能力を必ずしも決めるとは言い切れませんが…)

 

本書を繰り返し読んだところ、著者は数Ⅲは高校生の時、やっていなかったようです。実際、p.38~39で先輩社員から作ってほしいプログラムがあると頼まれた著者は、数Ⅲが必要かもしれないと察知して、このプログラミングを断っていました。その一方で、プロローグでは、

デジモノが好きでホームページを作ったり

当時から簡単なプログラムを組んでいた私は

同好の士に巡りあえそうな気がして

以後はSEに絞った就活を行いました

(本書p.4)

という記述があることから、まったく、プログラムが組めなかったわけではないようです。

 

まとめると、文系だけどSEになれそうな人について、本書をもとに新卒で考えると、数Ⅱ・数Bくらいまでの力で、趣味で「ホームページを作ったり」、「簡単なプログラムを組んで」いたりするレベルの人で、しま子氏のようにSEのベースを持っている人と言えそうです。文系修士卒でSEとして入社した人だと、私の後輩では文化人類学の人がいましたが、ただ、この後輩が入った部署や担当している仕事内容で必要なプログラミングのスキルやレベルがどのくらいのものかは、分かりません。

 

文系と言っても、本ブログで取り上げてきた地理学心理学、一部の社会学、経済学、言語学といった実験や統計で数学の力が必要な分野は、私の邪推ですが、文系分野の中でもSEに向いた人が多そうです。

先日、書店で見かけてタイトルから手に取った『文系が20年後も生き残るためにいますべきこと』(岩崎日出俊 、イースト・プレス 、2017年)をパラパラ捲ったところ、「文系でもプログラミングできる能力を身につけることで生き残れる。私だって、できたんだから読者もできる」ということが書いてありました。そんな本の著者は早稲田大学政治経済学部から銀行に就職し、スタンフォード大学の経営大学院で経営学修士MBA)を取得し、金融業界をわたり歩いたという人。やはり、数学の力を持つタイプの文系出身者だと感じました:

 

 話をまとめると、

  • 数Ⅱ・数Bくらいまでの力で、趣味で「ホームページを作ったり」、「簡単なプログラムを組んで」いたりするレベルの人で、しま子氏のようにSEのベースを持っている人
  • 文系の中でも地理学、心理学、一部の社会学、経済学、言語学といった実験や統計で数学の力が必要な分野

の人たちがSEになれそうだと私は考えました。

 

 

<最後に>

今回は『文系女子だけど新卒でSEやってます』というコミックエッセイを通じて、どんな人がSEになれるのか?考えてみました。結論としては、高校数学の文系で習う数Ⅱ・数Bくらいの能力で、コンピューターでホームページやプログラムを組める人、文系の中でも数学の力が必要な分野の人ではないか、ということを邪推しました。実際の企業でSEをするといっても、企業ごとにSEが扱う仕事内容には差があると思いますし、SEと言いながらプログラムよりも、システムやソフトウェアの計画を主に組んでいる人もいるようです。要は、一口にSEと言っても、仕事内容に幅があるということです。

 

ところで、このブログを書いている私は、JavaC#も知らず、学部一年次にかじったHTMLlも忘れる始末です。このブログのタグ打ちについては、「見たまま編集」の画面と「HTML編集」の画面を切り替えて、見え方を調整しています。プログラミングはできませんので、作りたくてもホームページ(サイト)を作ることは能力的に今の時点では、難しいです。

 

話をもとに戻しましょう。もし、文系の学部卒・修士卒の人で、得意でなくても、「そこそこ、努力でプログラム組めそうかな?」という人は、しま子氏のように趣味についてのサイトを作ってみては、いかがでしょうか?あるいは、やらせてもらえれば、研究室の紹介サイトを学内のサーバーを借りて作ってみるのもいいと思います。チャレンジしてみて、私みたいに「やっぱり、ダメだわ」と思えば、違う道を模索してもいいですし、「何とかなりそう」と手ごたえがあれば、就活で企業説明会でIT企業の話を聞きに行ってもいいかと思います。ダメそうなら、別のできそうなことを探しましょう。

(繰り返しますが、SEと言っても仕事内容は幅広いです)

 

以上、『文系女子だけど新卒でSEやってます』のレビューでした。

 

 

<余談:もっとSEの世界を知りたい人への読書案内>

IT業界を知るための漫画作品として、まず、よしたに氏の作品が挙げられます。『ぼく、オタリーマン』、『理系の人々』など下のブログでご本人による情報がアップされています。

ameblo.jp

より詳しく知りたいという方には、きたみりゅうじ氏の著作がおすすめです。ご自身の下のサイトに漫画がアップされていて、少し文字でゴチャゴチャしているけど、私は雰囲気として、きたみりゅうじ氏のほうが好みです。

www.kitajirushi.jp 

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