<目次>
1、はじめに
日本の古典文学の入門書やら、各作品の現代語訳・抄訳、コミカライズ等の紹介・レビュー記事を、弊ブログで書いてきました。ですが、体系的にそれらを紹介した本を読んだことがありません。そのため、今回は改めて、中高生向けのポッドキャストのラジオ番組を元にした案内書を読みました。
●三宅香帆・谷頭和希『実はおもしろい古典のはなし 「古典の授業?寝てたよ!」というあなたに読んでほしい』笠間書院、2025年
今回は、本書のレビューの前編として、江戸文芸から始まり、時代を遡って平安時代以降の物語や日記文学までをお送りします。
2、三宅香帆・谷頭和希『実はおもしろい古典のはなし 「古典の授業?寝てたよ!」というあなたに読んでほしい』を読む:前編
2ー1、「江戸文芸のはなし」
各時代・各ジャンルの古典文学の作品やキーパーソンに光を当てて、2人で注目ポイントを語ってゆく本です。
まず最初に来るのは、江戸文芸の世界のお話です。蔦重こと、蔦屋重三郎がどうやって、日本橋周辺しか栄えていなかった狭い「江戸」において、版元として活躍できたのか?それは、読み本や浮世絵、狂歌といった異業種のキーパーソンを仲良くなることで押さえ、コラボさせることで、ヒット作を生み出していたから。三宅香帆さんによると、それはDMMみたいな戦略で、他業種で得た利益を異なる業主の投資金に充てていたようなものだったと。
蔦重の続きには、『東海道中膝栗毛』やら、平賀源内の『根南志具佐』の紹介が続きます。『東海道中膝栗毛』は、今にしては際どい描き方をして、風刺の利いた作品でもあったようです。平賀源内『根南志具佐』のほうは、こちらの著作:
を取り上げた「ゆる言語学ラジオ」の回で、「異種寝取られハーレム幼馴染BL」と紹介されていました。
●"【平賀源内のBL同人誌】新進気鋭の小説家が、江戸文芸をポップに教えてくれた【江戸時代の携帯小説】#292" を YouTube で見る
うん、その一言に尽きますね~。本書ではヘンテコと称されていましたが。だって、閻魔様が浮世絵で歌舞伎の役者に惚れて、眷属の河童に「お前、この役者を殺して地獄に連れて来い」って、命令するんですよ?そこから始まる、実際にあった役者の溺死事件を入れ込んだ作品です。
2ー2、「物語のはなし」
続いて、「物語」の箇所です。伊勢物語はミュージカルとか、源氏物語は読み通さなくても気になる帖だけ読めばいいとか、今昔物語集は巻19にある六の宮の姫君の話だけ取り上げて当時の女子が置かれた厳しい生活の現実を掘り下げるとか。語る部分が物語ごとに違っていて、自由だな、と感じました。
キーパーソンや作品の概要は、キーパーソンや各作品を語る前のタイトル下に、小さく四角の枠の中にまとめてあります。ので、気になる方々は、そちらで概要を確認されるとよろしいでしょう。とはいえ、今昔物語集はあまりにも、六の宮の姫君の1話にフォーカスしすぎだったので、他にも芥川龍之介が翻案した「絵仏師良秀」の話にもスポットを当てて欲しかったです。あれも、ホラーといえば、ホラーですし。
その後で、軍記物語(軍記物ではなく)の代表作として、『平家物語』を入れちゃう、と。 この物語は、和漢混合文で書かれており、写本だけでなく、琵琶法師等の語りで広まった特性上、 付け足しで、やたら長くなり、メインストーリーの後に複層的な視点からメインの登場人物の語るエピソードが挿入されているそうです。
メインの登場人物のよい点と悪い点の両方が分かる複数のエピソードが、メインストーリーの後に挟まっている。それは、現代の高齢者が1つの話題について喋っている途中で、間に思い出した似たような話を挟んで語っちゃうのと構造的に似ている、と。
こんな複雑な構造をしている『平家物語』の読み方は、好きな話から読んでいけばいいよ、というものでした。那須与一の弓技のストーリーから読んでもよし!ラストの安徳天皇が抱かれて、海に沈んで平家が滅びるところから読んでもよし!ちなみに、現代語訳では、古川日出夫さんのものがお薦めだそうです。和漢混合文のこともあってか、リズミカルな現代語訳がいいんじゃないかとのこと。
ところで、「コラム ドラマティックファンタジー 古事記」として、「物語のはなし」の章末に史書である古事記が置かれていることに、納得がいっていません。

