仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

役者とストーリーで魅せる『 #映画刀剣乱舞 』

<歴史の改変を阻止せよ!>

1.はじめに

前から気になっていた『映画刀剣乱舞』。そろそろ、 上映中終了になる劇場があるらしいと聞き、先日、 何とか割引デーに見て来ました↓

touken-movie2019.jp


映画の原作は、DMMで配信されたゲーム『刀剣乱舞 ONLINE』です。原作では、プレイヤーが「審神者」となって、 長い時を経た刀剣の付喪神として現れた「刀剣男士」 の隊を組んで過去に送ります。タイムスリップした刀剣男士たちは、 過去に現れては歴史の改変を狙う敵を倒し、 その歴史改変の阻止を目指すのがゲームの主旨。


刀剣乱舞」は、漫画にアニメ、舞台やミュージカルなど、 幅広くメディア展開がされています。もし、人間の姿をした刀剣たちが戦闘するとなれば、演じる役者が刀剣を手に立回る姿は、どんなものになるのか。機会があれば、そうした刀剣男士たちによる実写アクションを見てみたいと思ったのです 。


その後、公開された『映画刀剣乱舞』は、 どうやら、舞台版の役者さんが映画に出演されているらしい。 その噂を耳にした私は、色々と一区切りついた日に、 見に行ってきました。


前置きが長くなりましたが、今回は「刀剣乱舞」 の映画についてレビューをいたします。 ネタバレにご注意ください。

 


2.役者とストーリーで魅せる『映画刀剣乱舞』~ 感想とコメント~

序盤から、とにかく、刀剣男士は美しい! 慣れない冒頭のほうでは、 どうも私は気持ちが落ち着きませんでした。織田信長豊臣秀吉、 それから配下の兵、歴史修正主義者の送り込んだ「時間遡行軍」 を見て安心感を覚えたほどです。

( 自分が美麗な登場人物に慣れるまで、 時間がかかることに気づく…)


主役ポジションの三日月宗近を演じるのは、鈴木拡樹さん。 声が能楽師のように、渋みのある独特のものでした。 最も古く、美しいとされる刀剣に合ったキャスティングでしょう。
(なお、鈴木さんは本作以外で、最近はアニメ『どろろ』( 2019年版)の百鬼丸を担当されるんだとか。)


美しいといえば、刀剣男士たちと、その主である審神者 のいる拠点のお城と、タイムスリップ先の行き来もそう。 審神者の命を受けて過去に赴く時、またはお城に帰還する際、 桜の花びらが刀剣男士たちを包み込むように舞います。 和風の雰囲気が全開!のシーンで、とても美しかった。


本作の魅力はビジュアルだけでなく、物語にもあります。まず、 ストーリーのポイントは、「本能寺の変」 で亡くなるはずだった信長が、 歴史修正主義者の介入で生き延びてしまったこと。 その歴史改変を「誰にとっても正しい歴史」に戻すため、 時の政府は審神者を選出します。 審神者は刀剣が人の姿をとった存在= 刀剣男士の三日月宗近たちを戦国時代に送り込み、 信長暗殺を成そうとしました。


生き延びた信長は、明智光秀を討とうとした晩、光秀を庇うように裏切った「無名」に攻撃を受けます。そこへやって来た三日月宗近は信長を守り、2人は 安土城へ向かいました。書状で信長に呼び寄せられた豊臣秀吉は軍勢を率いて、かつての主君と対峙することに。

 

豊臣軍を待つ安土城では、宗近と信長が「歴史とは何か?」 の問答に入っていきました。 そのなかで三日月宗近が発する台詞には、 刀剣として彼が千年以上の時を経るなかで、 所持者を変えた経緯が明かされ、「守りたいものが増えた」 の一言の重みが増していくことに。 信長が亡くなった後のことについて、 三日月宗近が詳しい謎については、彼の語りだけでなく、 持ち主を映像に映すことで、見る者に伝えられます。


この作品のテーマは、私の考えるところ、「何者かによって、 変えられた過去の時点にタイムスリップし、改変者の送り込んだ時 間遡行軍を倒して、あるべき『正しい歴史』を取り戻すこと」。 歴史学をかじった人間として、私はこのテーマを考えました。


映画の題材は、今の日本でポピュラーな「本能寺の変」で、 これまで様々なメディアで取り上げられてきたもの。私には、 正直なところ、やり尽くされてるモチーフゆえ、『映画 刀剣乱舞』では「本能寺の変」 を新しい形で展開させるところを楽しみにしていました。 その新しさとは、後世の大勢の人々に「正しい歴史」 として語り継がれる、信長の最期です。 今回の任務にやって来た刀剣男士には、 信長ゆかりの刀剣もあって(いて)、彼(ら) の記憶がよみがえるシーンは、今作の「本能寺の変」 における新しさと相まって、 絶妙な物語のターニングポイントを見る者に示します。


再び、ビジュアル的な話題に戻りましょう。 刀剣男士の衣装については、 スーツに甲冑の一部を付けたスタイリッシュなものもあって、 原作ゲームのイメージが忠実かつ美麗に再現されているようです。 エンドクレジットを見ると、スタイリストのスタッフが多いこと、 多いこと!私が見てきた時代劇の映画では、 衣装に携わった人が多い作品ではないでしょうか。


衣装といえば、作中の主な舞台は戦国時代の日本で、 刀剣男士があのスタイリッシュな格好のまま、現れていました。 心の中で、私は「『怪しい者たちめ!』 と信長や秀吉の家来に警戒され、斬られるのでは?」 とツッコミまずにいられません。ストーリー展開を考えると、 信長にとっては命の危機を迎え、 秀吉には天下取りの絶好のチャンスで、 変わった姿をしている刀剣男士たちを気にするどころではなかった のかしれません。
(歴史的な背景からすると、 大名は海外の色んな地域と交易をしていましたし、 どこか西洋風の衣装の者たちがいても、 気にされなかった可能性も…)


美術的な面では、再現された安土城がポイントです。ここは終盤に
 ・秀吉が攻撃を仕掛ける
 ・時間遡行軍が秀吉の軍を迎え撃つ
 ・刀剣男士が秀吉側に加勢する
という流れで、城内のあちこちが映し出されます。この城攻めは、 今作のクライマックスであり、 刀剣ごとのアクションの違いが最も出るシーン。 リーチのある刀剣は立ち回りが美しくも大きく、 短刀だと刀剣男士は飛んで切りつけるアクロバティックな動きでし た。刀剣男士たち、かっこいいです!

 

そんな魅力的な刀剣男士を見ていると、戦国時代、日本の刀が重要な輸出品だったことを思い出しました。高校生の時、日本史Bの教科書を眺めていた私には、刀の輸出は不思議なものでした。しかし、この映画からは、刀剣が果たした武器以外の側面が窺え、それにより輸出された背景も分かるような気がしました。

 


3.最後に

全編とおして、刀剣男士が美しい! 和風な演出がそれを引き立てます。そうそう、 キーマンとなる信長はどっしりしたラスボスとして描写され、 秀吉はコミカルだったり、したたかで度肝を抜く役どころでした。


ストーリーは、ポピュラーな題材に新しく切り込んだものでありながら、新しい切り口で、 楽しめる内容でした。原作ゲームに親しんでいない方でも、 スクリーンから目が離せません! 小林靖子さんによる脚本の評価が高いというのも、納得です。


映画といえば、グッズも見逃せません。


劇場で買えるパンフレットには、刀剣男士たちの写真に、 出演者の座談会を収録し、 巻末には袋とじにメイキング的な内容が含まれている様子。 本作でほぼ初めて「刀剣乱舞」の作品に触れた私は、 読むことで新たな世界を知るのにワクワクしております。


作品を振り返りたくなった方には、

フォトブックやシナリオブックはいかがでしょうか。

 

映画刀剣乱舞公式フォトブック

映画刀剣乱舞公式フォトブック

 

 

映画刀剣乱舞 公式シナリオブック

映画刀剣乱舞 公式シナリオブック

 

 

刀剣男士の活躍を切り取ったワンシーンを堪能してもよし! 気になった台詞を読み返してもよし!特に、 小林靖子さんの脚本は出版されることが少ないそうで、 私は創作の勉強するのに読んでみたくなりました。

 

そうそう、ラストでは、次回作の告知がありました。 サブタイトルは、 今作のもうひとつのテーマともリンクを匂わせるものでした。


今作をご覧になってない方は、 上映期間中に見に行かれることをおすすめ致します! 終了が近い劇場もあるので、行かれるなら、お早めにどうぞ。


おしまい。

 

 

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