仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

漫画で読む更級日記~菅原孝標女著∕小迎裕美子作画『胸はしる 更級日記』~

<目次>

1、はじめに

時代的に蜻蛉日記紫式部日記、と来て、ここでは更級日記を漫画化した作品で読んでみようと思いました。

 

 ●菅原孝標女著∕小迎裕美作画等∕赤間恵都子監修『胸はしる 更級日記KADOKAWA、2024年

 

はてなブログで紹介した、『新編 本日もいとをかし!! 枕草子』と同じ、小迎氏作画&赤間恵都子氏監修により、コミカライズされた古典文学作品の第3弾です。今回は、更級日記を取り上げます。

 

著者の菅原孝標女は、親しみをこめて本書では、ムスメと呼ばれております。彼女は冒頭で、継母でムスメの父親の地方赴任に付いてきた上総大輔や、趣味の近い姉により、源氏物語の面白さに胸を突かれて、オタク化。

 

上総国から都へ帰る途上を描いた旅路の部分、源氏物語を求めて仏像を作らせて額をこすり付けて祈るエピソードがある部分(結局、都で源氏物語を全帖ゲット!)や、年を取ってから宮仕えに出た際のことを記した手記等を、50歳を過ぎてから振り返るように書いたのが、更級日記

 

伝え聞いた話では、ムスメは源氏物語で妄想することもあり、源氏物語の第3部の主役・薫の君のことを、しきりに考えていたとか。ひょっとしたら、薫 と自分のカップリングで、ムスメは、夢女子的な妄想をしていたかもしれません。そんな少女・青年期を終えて現実を見据えるようになったムスメは、薫の君とのお別れを告げる時があったとも記しています。

 

私には、読む前から親近感満載のムスメ。楽しみです。

 

 

2、漫画で読む更級日記菅原孝標女著∕小迎裕美子作画等『胸はしる 更級日記KADOKAWA

 2ー1、「◆一心不乱にぬかづいて!!」から「◆祈り続けたその結果…」

「あづまの果て 常陸の国よりもっともっと奥のほうで育った」、そんな「野暮ったい娘」が、菅原孝標女こと、ムスメです。彼女は13歳の時に、物語、特に源氏物語のことを知ります。

 

継母と姉が話す源氏物語の内容を聞くうち、話の中の姫君たちのことが気になって、気になって、仕方ない!でも、田舎暮らしをしていては、源氏物語の本は手に入らない。そこで、ムスメは等身大の薬師如来を彫刻師に依頼して造り、「一刻も早く京へ上らせてください ありったけの物語を読ませてください」と、額をついてお祈りしまっくたのでした。

 

さて、祈りが届いたのか、父親の上総国での任期が終わり、一家は京都へ戻ることになりました。引っ越しのため、物を片付けると、屋敷はガラーンとしてしまいました。牛車に乗った後、振り返ると、何度も額をついてお祈りした薬師仏様が、ポツンとたたずんでいらっしゃる。見捨てて行くのは申し訳ないものの、重すぎるため、都へは持っていけないのでした。

 

この後、ワイルドな牛車と徒歩による上総国から、京都への旅が2パートにわたり続き、「竹芝の伝説」など、面白いです。が、長くて少し冗長なため、割愛させて頂きます。

 

ちなみに、「赤間先生のよく分かる更級日記講座②」(p.62~63)よれば、平安時代の女性が旅をするのは、国司である夫や父親の赴任に伴って、付いていく場合が多かったようです。特に、ムスメは、物語や和歌に詠まれた各地の伝説や説話、景物に心を惹かれ、後に作家としての視野を養ったのかもしれません。

 

そのほか、平安時代の貴族女性は、日常的な旅として、京都の清水寺、奈良の長谷寺、滋賀の石山寺で、いずれの寺に現世利益の観音様が祀られており、そこへ詣でていたそうです。

 

 2ー2、「物語が手に入ったパート」

さて、やっとこさ京都へ戻ってきた菅原孝標とその妻子たち。京都に残っていたムスメの実母が、出迎えます。数年ぶりの再会なのに、ムスメは「お母さん、物語は?物語はないの?ねえ」と迫るばかり。

 

ちょったガッカリした実母が取り出したのは、親戚の衛門の命婦にお願いして入手したという、源氏物語を、ムスメは渡されます。彼女は、

夜も昼も読みふけったが、そうなるともっと読みたくなり…

でも上京したてのこんな都会の片隅で生きている私に誰が物語を読ましてくれようか!?

(P.69)

と思い浸るのでした。

この続きはcodocで購入
↓いいね!だったら、ポチッとお願いします。

にほんブログ村 大学生日記ブログ 博士課程大学院生へ
にほんブログ村