仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

大学院生や研究生・研修生の出てくる漫画_理系編その2(海洋生物学)

実験室で菌の培養するような『もやしもん』とは、また違った理系もの。
 
 

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連休中、作業片手に読了。表紙から色づかいがパステルカラー、しかもピンクとブルーを基調としていて女性が手に取りやすいデザインです。

ネット上のレビューにもありますが、海洋生物の研究室へ大学三年生の春、編入で来た七海が、癖のあるメンバーたちと再開し、新たに鳥好きなポスドクとも出会い、調査や恋に悶々としながら進んでゆく話です。

一読してみた感想は、一般の読者には分かりにくい、大学院が修士課程と博士課程に分かれているシステム、スポンサーからの資金獲得でプレゼンする様子など、細かい事情をストーリー展開に合わせて無理なく組み込んでいる点は、好印象でした。

このお話が好きなら、理学部生物学科が舞台の十月士也『椎名くんの鳥獣百科』(マックガーデンBeatsシリーズ)、某大学・生物学科の動物形態学研究室、骨好き好きな椿先輩とその後輩で新入生男子・アヤメくんの出てくる町麻衣『アヤメくんののんびり肉食日記』(Feelコミックス)がおススメ。同じ生物学系の大学ものですが、前者は大学内が舞台、後者は半分がフィールドや学外が舞台の骨の話となっていて、海洋生物学が柱の本作とは、また違った切り口の二作です。

あと蛇足として、東洋学やってた自分としては、人文学系フィールドの大学を舞台とするなら、考古学研究室、文化人類学研究室、あと地理学研究室あたり、同じ視点で漫画にすると面白いのでは?と思います。


本作の話に戻って細かいところを言ってゆくと、主人公の七海やほかのメンバーが幼少期にドリトル先生やチコの話に親しみ、それに憧れて海洋生物の世界へやって来た、という話の運びは、同じ雑誌『KISS』(「のだめ」も連載してた雑誌)の前作『本屋の森のあかり』で書店業界を描いた作家としては、なかなか、繋がりで魅せるものだな~と。両方の作品、知っているファンには、たまらないんじゃないでしょうか?
かくいう私は、「バイオロギング」の説明に『ニルスのふしぎな旅』の世界を体感しているようだ、というところに、うんうん、頷いてました。衛生アニメ劇場で「ニルス」見ていたのて、懐かしかったんです、ハイ。


実際のフィールドやってる研究室とは違う印象だという読者もおられるみたいですが、巻末漫画で作者が描いているように、いろんな研究室を取材し、いろんな要素を混ぜているようなので、ストーリーに組み込む上で混ざっちゃっても不思議ではないかと思います。

それから、女性目線なので、男性読者、しかも元フィールド屋さんの方からすると「違う!」とお感じになられるのも、私はうんうんと頷きますが、それは七海が研究よりも恋愛方向にアンテナを持っていっている面を強調しているから、というのもあるかと(これは掲載雑誌『KISS』が誌名のまんま、20代の恋を物語に求める(?)女性をターゲットとしているためもあるかと思います)。実際の女性研究者の方にも、いろんな方がおられると思うので何とも言えませんが、このお話に出てくる以外にも様々なタイプの人がいるので、そこは注意かなと。
 
 
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