仲見満月の研究室

元人文系のなかみ博士が研究業界の問題を考えたり、本や映画のレビューをしたりするブログ

【ニュース】「オランダ坂の石畳 一部廃棄 長崎市土木部、文化財課に相談せず」(長崎新聞)

本日、ある自治体の歴史的景観に関するニュースを読み、思うところがあって、取り上げることに致しました:

 

まずは、ニュース冒頭を読んでみましょう。 

オランダ坂の石畳 一部廃棄 長崎市土木部、文化財課に相談せず

2018/3/13 12:47 

    3/13 17:23updated

長崎新聞社

 

 長崎市は12日の市議会環境経済委員会で、同市東山手町の外国人居留地跡にあるオランダ坂の石畳の一部(縦15メートル、幅4・5メートル)で一時的に剝ぎ取っていた板石を文化財課に相談しないまま廃棄していたと明らかにした。石畳は近く新しい板石を使い舗装する。

 

 市は歴史的景観を残すため、条例に基づいてオランダ坂の石畳の保存計画を策定している。

 

(オランダ坂の石畳 一部廃棄 長崎市土木部、文化財課に相談せず - 長崎新聞)

冒頭を読んだのみでは、「板石、文化財課が管理していなかったの?!」と、私は長崎市の敷石の管理背景に何があったのか、気になりました。長崎市の「東山手町の外国人居留地跡にあるオランダ坂の石畳」という説明を見ただけで、数々の江戸・幕末を舞台にした時代劇に描かれた現地を想像するまでもなく、私は歴史的景観の一部として、石畳は価値のあるものだったと認識しています。

 

 市は2012年度に、付近の学校解体工事で通行する大型車両が石畳を破損する可能性があるとし、板石をいったん剝ぎ取って保管。しかし、板石の痛みが激しいことから、当時の土木部だけの判断で廃棄していた。昨年10月に石畳を復旧することとなり、保存計画を所管する文化財課に相談せずに廃棄していたことが判明した。

 

 石畳は文化財などに指定されておらず、保存計画でも老朽化した場合は新しい板石への張り替えは認められている。ただ、古い板石の調査や記録ができなかったため、市の工事担当者は「庁内の連携不足だった。地域住民にも説明する」と陳謝した。

 

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 (オランダ坂の石畳 一部廃棄 長崎市土木部、文化財課に相談せず - 長崎新聞)

 

続きを読んで、だいたい、事情が分かりました。近くの学校の工事で、車輌の出入りによって、石畳が傷むのを防ぐ目的で、板石を5年前に一旦、剥ぎ取っていたと。その間、長崎市の土木部が板石を管理していたが、板石の傷みが激しいものがあって、土木部の一存で板石を廃棄してしまったようです。

 

要は、歴史的景観の保存事業を担当している文化財と土木部の連携が取れておらず、古い板石は全部、なくなってしまったということでしょうか。

 

実は今回の件は、地元の自治体がオランダ坂重要文化財にしていしていなかったのも、回収された板石の記録や計測が行われず、管理が杜撰になった遠因のように思われます。重要文化財に指定されていたら、建築物に文化財が多く、管理が大変そうな長崎市文化財課は、もう少し、書類面で注意しやすかったでしょう。それに、土木部だって、重要文化財というだけで、職員の方々も慎重になっていたかもしれません。

 

石畳は近く新しい板石を使い舗装する」そうですが、かつてのオランダ坂の風景は写真に残っているとはいえ、板石のサイズや色の記録がないと、細かな復元は難しいのでは?と、私は考えました。

 

過去、院生時代、私の身近には、歴史的景観の保存や、都市計画等の研究をしていた人がいました。その一人は建築学科の人で、指導教員に実地調査で連れ回され、地元の人たちの前で報告プレゼンをしており、大変なようでした。修士修了後、Uターンで出身地の建設や土木の課に入ったようですが、その人が長崎市の土木部にいたら、少しは対応がかわっていたかもしれません。文化財になれた人がいれば、肌感覚で、板石の扱いが変わり、廃棄に対する防波堤になったのではないかと。

 

長崎市オランダ坂の板石について、市の部署の連携不足で廃棄されてしまったのは残念です。今回の件を教訓に、長崎市の関係部署の方々には、もし条例に基づき、他の歴史的景観の保存をすすめる事業があるなら、より慎重になって頂きたいところです。

 

おしまい。

 

 

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