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仲見満月の研究室

元人文学系、現・文理総合学系の「真っ白」博士が大学院とその周辺問題を考える

日本語教師を目指す人への本紹介③~蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語』シリーズ:後編その1(主に3巻)~

レビュー 漫画 日本 異文化 言語の話

今回は、前編の続きになります↓

naka3-3dsuki.hatenablog.com

 

1.2巻の補足~「スッパ抜く」と忍者~

蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語2』メディアファクトリー.2010年

 

前回の記事で紹介した2巻の頭に、今年の大河ドラマに出てきた職業が語源の日本語がありました。まず、そこから補足として紹介いたします。

 

個性豊かな日本語学校に勤務する海野凪子先生。そこへ日本の時代劇ファンのスウェーデン人のエレーンさんがやって来て開口一番。

「スッパ抜く」のスッパって何ですか

と質問しました。

 

この「スッパ」って擬音?すぐ答えられない海野先生は、この質問おを持ち帰り、宿題にして調べることにしました。

図書館で調べていると、

スッパ=『透破』または『素破』

お分かりいただけただろうか?そう、大人気放送中の「真田丸」に出てくる真田昌幸の脇を守る井出昌相が第6回で、言った「素っ破」。つまり、戦国大名が抱えた「忍び」*1(忍者)のことを指すのです。

 

2巻に戻りましょう。更に海野先生が調べると、

 ・「忍者」=「透破」が素早く情報を手に入れるさま

  →「スッパ抜く」と言われるようになる

ということが分かりました。これをエレーンさんに伝えると、聞き手は大喜び!そして、忍者が現代日本にいることを信じ続けるエレーンさん。

忍者はいるよ。伊賀と甲賀では、末裔がアトラクションや道場で、いろいろと術を教えていますよ。エレーンさんに教えてあげたいですね。

 

さて、2巻のことはここまでにして、とりあえず、今回は3巻へ行きましょう。

(第4巻は次回の後編その2で取り上げます。内容を変更致します。予告のとおりの更新でなくて、ごめんなさい。)

 

 

2.更に上級編へ進む「祝!卒業編」の3巻

下の3巻で、日本にある日本語学校編は一旦、区切りがつきます。

 

蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語3  祝! 卒業編』メディアファクトリー.2012年

F:ID:nakami_midsuki:20160930224636j:平野

 

1~2巻にあった外国人留学生が日本語に対して持つ素朴な疑問、日本語の歴史、外国人に伝わりやすい話し方と敬語の使い方といった内容がパワーアップ!それらの話を主軸に、間間には各国のクリスマス事情、日本の芸能・落語を英語にして講演する落語家の経験談といった文化に関する様々な話が、濃いキャラクターのかけ合いのもと、展開してゆきます。

 

さっそく、個人的にツボに入ったり、ためになったりした箇所をピックアップしていきましょう。

  

 2-1.第2章:意外とできない「簡単な話し方」&第3章:敬語とマナーのおさらい

セットで挙げたのは、外国人留学生が日本での生活の中で、病院にかかって症状を日本人の医師に伝えたり聞かれたり、日本で就職してからビジネスをスムーズに進めたり、そういったことの基本的なところで特に重要だと感じたからです。外国人留学生だけでなく、彼らと日本人が日本で円滑なコミュニケーションをとり、お互いに快適な日常を送るため、気をつけたいと思ったポイントが多かったと私自身が感じたところでした。そういうわけで、日本人の読者のみなさん、いざというとき、役立ちます。

 

第2章は、日本人学校に通う日本語初心者のダイアナさん(ロシア人)が倒れ、海野先生の同僚・カトリーヌ先生(注:ネイティブ日本人の教師)が付き添い、救急車で病院に行くところから始まります。

運び込まれた先の医師は、ダイアナさんに

「腹痛と伺いましたが心あたりは?」

と尋ねるものの、ダイアナさんには通じない。そこで、カトリーヌ先生(注:ネイティブ日本人の教師)が医師の漢語&難しい敬語の日本語を聞いて、和語&です・ます調を入れた日本語に翻訳して、ダイアナさんに伝えます。

 

具体的にどういった難しい日本語→やさしい日本語に翻訳されたたというと、

 ・漢語を和語に直す:腹痛(漢語)→お腹がいたい(和語)

 ・難しい敬語をです・ます調に直す:伺いました→聞きました

 という具合に、日本語初心者のダイアナさんが聞いて理解できる文型と語彙を使て、カトリーヌ先生は話しました。

 

ほかにもポイントもう一つあって、文章は短く区切って伝えること。あとは、外国人のみんながみんな、英語が分かるとは限らないので、以上のようなポイントに気を付けて、やさしい日本語で会話をするといいそうです。

 

ちなみに、私の身近なところでは、クリニックに診察を受けに行った際、日本語に不自由している外国の方と、その方の付き添いで日本語が話せるけどダイアナさんレベルの方がいて、スタッフの方々との会話がスムーズにできていない、ということがありました。そうしようかな~、助けに入ろうかな~と考えていたところ、外国の方の対応に慣れた看護師らしき方が来てから、スムーズに手続きが進むようになり、ホッとしました。

 

 

第3章では、まず「間違いやすい敬語」が役に立ちます。2巻では尊敬語を、本書の第2章では初学者に分かりやすい日本語「です・ます調」の丁寧語ときて、この節ではネイティブ日本人でも使い分けで混乱してしまう謙譲語を海野先生が解説しています。 p.37には動詞の尊敬語・丁寧語・謙譲語の変化を整理した表が付いていて、手紙やビジネスメールを書くのに重宝しそうです。

実際に、留学生の先輩が資料調査で他大学の先生にアポイントを取る際、敬語の使い方を確認するのに、p.37の敬語表を見せて、敬語を確認してもらいました。

 

後半の「面接のマナー」では、進学や就職に向けたマナーを解説。教室の面接での入り方をドアのノックの回数から開け方、コートを脱ぐタイミングまで、扱っています。洋室だけでなく、和室における礼儀作法の指導も行われているようで、外国人留学生にとっては、なかなか、難しいようでした。知っているようで、実はネイティブ日本人も知らなかったマナーもあり、後半も勉強になる内容でした。

 

第五章の「表記いろいろ」では、原稿用紙の使い方をはじめ、お礼状等の手紙の書式ルールについて丁寧に解説してあります。第3章と合わせて読むと、ビジネスの場で使えると思いました。

 

 2-2.第6章:違いを楽しむ

「指で数えたら」では、数を数える時、日本と中国、フランス、ロシア、更にインドと、指の折り方や皺の使い方が異なる様子が紹介され、面白かったです。後半の「それなんて読むの?」では、「人々」と表記する時に使う「々」等の記号」おどり字であること。一か月・二か月と数えるときに「一ヶ月」の「ケ」は、月数を数える「個」の別字「个」が読み間違えられて使われるようになった経緯など、某雑学知識の品評番組に出てきそうな興味深い話が出てきました。

 

 2-2.第7章:キャラクターと言葉

日本語が、いかに個人個人の性別や社会的地位、家庭内でのポジション(父親とか母親とか娘とか息子とか)、年齢といったステータスによって、キャラクターが特徴づけられているか、ということが説明されています。日本語ほど、性別や年齢によって主語にバリエーション(わたし・おれ・ぼく・わし、あなた・きみ等)があり、口調にも性差の大きな言語は世界でも珍しいということが、よく分かります。

なお、こういった表現は日本語小説を個性豊かにしてきたそうで、詳しくはこちらのレビューで紹介した本をご参照ください。

 

 2-3.第8~9章:卒業が近づいた外国人留学生と日本

3巻が「祝!卒業編」となっているように、日本語を一定のレベルまで学び、日本語学校を卒業していく学生が、日本のどこを気に入ったとか、日本語のどこが好きだとか、そういう話に絡めて、ストーリーが進展します。その中で、日本語が好きだという学生が「悪口が少なくて穏やかな感じがします」と言っていました。海野先生によると、日本語は卑罵語(相手を罵る言葉)が少ないそうです。

(が、最近、拝読しているドイツ留学中の方の記事では、日本語は悪口が少ないのは、相手に直接言わずに、陰口や皮肉のある文化だからではないか?という指摘がありましした…。さて、実際はどうなんでしょうか?)

 

なお、第8章・第9章の終わりには、それぞれ、「覚えておくと役に立つ(かもしれない)日本のコト・モノ」として、和室の各部の名前、手紙の封筒の書き方を紹介。絶対、役に立ちますって、と読みながら心で呟きました。

 

 2-4.第10~11章:卒業生のその後と番外編

第10章では、みんな相変わらずです。海野先生が中国人の留学生たちと食事をすると、実は学生たちが連れて来たお見合い相手だったり、卒業生のイタリア人がナンパしていたり、その後も個性豊かな人物たちの人生は続きます。そんな賑やかな日本語学校に出勤してきたカトリーヌ先生(注:ネイティブ日本人の教師)がある日、大騒ぎ。海野先生が騒ぐ理由を尋ねると、どうやら勤務先がなくなったと勘違い。学校の入っていたビルの会社がなくなっており、会社の入っていた空間と日本語学校の位置を勘違いしていたようです。海野先生はカトリーヌ先生を先導し、授業に向かいます。

 

第11章では、描き手の蛇蔵氏が登場し、どのようなきっかけで本シリーズを描くようになったのか、語られます。そして、著者の2人は次なる舞台へ!というところで、4巻へ続きます。

 

(*後編その1終わり、後編その2へ続く)

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